通学列車から見る、松舞の山並みも随分と紅葉が進んで来ました。
赤と黄色と緑のグラデーションが綺麗ですよ。
話は変わりますが、松舞保育園の収穫祭以降、すれ違う園児達に、キュアピーチのお姉ちゃんと呼ばれる様になりました(笑)
こんばんわ、楓です。
―――――――――11月10日(火)―――――――――
松舞保育園の父兄の方から、収穫祭の時の写真を頂きました。
キュアピーチのコスプレをしてフルートを吹く私の写真に、部員一同大爆笑でした。
青木先輩との餅突きしている写真も有りました。
ツーショットの写真って、実は未だ撮った事無いので、宝物にしたいと思います♪
一年生のリーダーの本田が、一枚の写真を見ながら、ニヤニヤしています。
「ちょっと本田、何、写真見てニヤ付いてんのよ」そう言いながら、本田の手から写真を奪い取る。
そこに写っていたのは、沢田副部長と本田が餅突きをしている写真でした。
「こら、森山。勝手に見るなよ」顔を真っ赤にさせながら、私から本田は写真を奪い取る。
私は、彼の耳元でこっそり耳打ちする「ゴメン、みんなには内緒にしておくから」
「ばか、そんなんじゃ無いって」そう言いながら彼はそっぽを向く。
シラを切ったってバレバレですよ。
何たって、私と本田は幼馴染みなんですから。
そして、生まれて初めて好きになった人ですから。

部活が終わり、クラスメイトの春ちゃんの家に寄って、最近お気に入りの少女漫画の1巻から5巻を借りて帰りました。
少し話し込んでいたら、もう7時です。
慌てて春ちゃんの家を飛び出し、駅へと向かう。
駅に着くと、電車は出た後でした。
「あちゃ~次の電車まで、30分も待たなきゃ。」
お兄ちゃんに送ってもらおうかなって考えていたら、駅に見覚えのあるディパックを背負った男子が。
「あっ、本田」
私の姿に気付き、本田が話し掛けてきた。
「森山、お前随分前に学校出なかったっけ? やっぱとろい奴は、歩くのも、とろいんだな」
「誰がとろい奴よ。あんた、またゲーセン行ってたの?」
「おうよ、ばっちりハイスコア出して来たぜ」
あ~、お兄ちゃんと言い、本田と言い、男子ってどうしてゲームが大好きなんでしょうね。
「森山、お前今日は青木部長と一緒じゃないんだ?」
「ん? 今日は私が友達の家に寄ったから、別々に帰ったんよ」
「そっか、お前がとろいから、他の女の子に盗られたかと思ったぜ。そうだよな、お前らいっつもラブラブだもんな。」
「だから誰がとろいんよ。あんたこそ、沢田先輩にちゃんと告ったの?」
「馬鹿、俺が何で沢田先輩に告白しなきゃいけないんだよ。」
「良く言うわよ。幼馴染みの私が見たら、あんたの行動なんか一目瞭全だもんね。どう図星でしょう?」
「ちっ、好きにしろ」
鼻の頭を掻きながら、プイッと本田が横を向く。
そうそう、あんたは都合が悪くなると、鼻の頭を掻く癖が有るんだよね。
「俺には、沢田先輩なんて高嶺の花なんだよなぁ。」
ボソッと本田が呟いた。
「えっ?そんな事無いって、お似合いだと思うけどな」
「だって沢田先輩って言ったら、学年1位2位を争う美人だぜ。スリムでスタイルも良いし、頭も良いんだろ」
う~ん、確かに沢田先輩は漆黒のロングヘアが似合う美人です。
同性の目から見ても、見取れてしまう程の女性です。
片や本田と言えば、背はそこそこ高いんだけど、イマイチ、パッとしない顔立ち、はっきりとしない性格。
褒める所を探すのが大変な奴なんですよね。
さっきお似合いって言ったけど、背の高さが釣り合ってお似合いってだけだって事に今改めて気が付きました。
「まぁ本田、当たって砕けろって言うだろ。駄目元で告白してみたら?」
「お前、今のセリフ励ましている様には、聞こえないんだけど。でもありがとうよ。」

入ってきた下り列車に一緒に乗り込む。
「んで、森山。お前の方は、青木先輩とは順調に進んでいるのか?」
「えっ? う、うん。」
「キスとかしたん?」
「ちょっと本田、それセクハラ! もしキスしてたとしても、絶対にあんたには教えないんだから。」
「お~相変わらず気が強いな~。もっと女らしくしてないと、青木先輩に嫌われるぞ。」
「あ~またセクハラ発言した~。大きなお世話だって」
「はは、スマンスマン。ところで、今日の写真の件は絶対に内緒だぞ。」
「分かってるって。でも部屋に篭って写真見ながら、ニヤニヤするのは、止めろよな。なんか変態っぽいよ。」
「誰がするか! お前じゃあるまいし」
「ちょっと、私がいつ、写真を見てニヤニヤしてたのよ」
「だってお前、今日写真もらった時、すっごく嬉しそうにニヤニヤしてたぞ」
あちゃ、見られてたか~
「ほっといてよ、お互い様でしょ」
「それもそうだ。お互い今日の写真が宝物だな。あっ、お前はこの先も一杯写真撮れるか」
「なんで?あんただって沢田先輩と一緒に写真位撮れば良いじゃんか」
「いや、俺はこの一枚で充分さ。どうせ実らない恋なんだから。」
あ~、もう~、こいつはどうして、いっつもこんなにマイナス思考なんでしょう。
あの頃と全然変わってないんだから。

駅を降りて、本田の後ろを歩く。
「ねえ本田。この間の餅突きを見てる感じじゃあ、沢田先輩もまんざらあんたの事、嫌いじゃないと思うんだけどなぁ。勇気を出して告白してみたら?」
「いや、告白して変に意識される位なら、今のまま普通に馬鹿話に付き合ってもらっている方が幸せだよ」
「あんたねぇ~。それじゃあ一生彼女出来ないわよ。そんなウジウジしたマイナス思考の本田を、好きだった奴だって居るんだから。」
「そうだったよな、そんな奴が居たな。未だにおせっかい焼いて来るんだよな。でもそんな奴のおかげで、どれだけ自分に自信が付いた事か。それには今でも感謝してるぞ。」
「あんたには小さい時から、心配掛けさせられてばっかりだよ。もっと前向きに考えてみたら。このピュアピーチ楓様が、保証してるんだから。」
「ピュアピーチかぁ。イメージが崩れるよな。でもサンキュー、今、直じゃなくてもいつかは告白すっかな。んじゃぁな。」
「うん、頑張れよ。じゃあ又明日ね。バイバイ」
そう言って、私の家の前で手を降る。
好きだったあの頃も、こうやってここで別れてたんだよな。
でも、あの頃とは違う想いで後姿を見送る私が居る。
淡い初恋で、もう少し話をしていたかった、でもそれを言い出せずに、さみしく手を降っていた私とは。
結局私も、マイナー思考だったんだよね。
でも、そんな私を変えてくれた大切なボーイフレンドなんだよ、あんたは。


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