「ちょっと~健吾、起きなさいよぉ」
佳奈絵さんに借りた合鍵で、お兄ちゃんのアパートの玄関を開ける。
「うわっ、汗臭ぁ」ムンムンとした臭いが部屋中に漂っています。
おはようございます、楓です
―――――――――8月8日(月)―――――――――
今日から、2泊3日でブラバンのサマーキャンプなんです。
サマーキャンプって響きはお洒落なんですが、実情は体力作りとパート練習で2日間が終わっちゃうんですよね。

「ちょっと健吾、もう5時回っちょうよ。早こと着替えて歯磨くだわね、佳奈絵さんが朝ご飯作ってごいちょうけんね。」
「う~ん、後5分したら起きるけん。」
「ダメダメ。部長自ら遅刻してどげす~かね。あ~もう、だからお兄ちゃん、健吾に夜更かしさせんでよって、言っといたのにぃ」
「んぁ・・・ヒグラシ・・・あと、10分寝かせてよぉ。なっ、一生のお願いだからぁ」
・・・佳奈絵さんと勘違いしてますね、しかも普段は亭主関白な態度なクセに甘えた声なんか出しちゃって(笑)
お兄ちゃんの見てはいけない一面を、見てしまった気がします(^_^;)


歩いて駅に向かうつもりでしたが、結局は佳奈絵さんに車で駅まで送ってもらって、何とか集合時間に間に合いました。
「うぉっしっ、みんな遅刻せずに揃ったな」
なんて部長らしい事言ってますけど、一番危なかったのはあんただかんね健吾(笑)
これから、列車を乗り継いで大山のペンションに向かいます。
今年のサマーキャンプは、副部長の私が企画運営していますから、サマーキャンプ会場も毎度お馴染みの沢井市では無く、隣県鳥取県の大山にしてみました♪


「ちょっとぉ楓ぇ、私のポテチ半分以上食べたわねぇ」
「ゴメンゴメンあっちゃん。代わりに私のプリッツあげるから、許してぇ」
「あっ森山先輩、そのプリッツ夏季限定のレア物じゃないですかぁ。私にも一本下さいよぉ」
「うん良いよぉ。その代わり神田さんのクッキー1枚頂戴ね。」
部活の合宿なんて、遊びみたいな物ですよね。
先輩後輩なんて関係無く、女子は盛り上がってます。
「うぉ~い飯塚、お前ちゃんとDS持ってきたか? おっ?3Dに買い替えたん?」
「そうっすよ本田先輩。やっと買えたんっすよ」
「俺の物は俺の物。飯塚の物も俺の物だったよな。」
「何をジャ○アンみたいな事言ってんすか。それより、PSPとモンハン持って来ました?」
「おう、持って来たぞちゃんと。」
・・・話の内容が小学生並みですが、一応男子も盛り上がっているみたいですね(^_^;)


「じゃあ、男子は西側の棟の部屋番号1から6番ね。女子は、こっちの東棟よ。じゃあ健・・・本田、10時に玄関で集合ね。」
「おう、分かった。お~い男子、俺について来いよ。」

そして10時、玄関前に部員全員が集合しました。
「んじゃあ、先ずはマラソンね。男子5Km女子3Kmよ」
「マジかよ森山ぁ」
「そうよ、本田。ブラバンとは言え体力は大切だからね」
「三年は、もう引退なんだから必要無いだろ~」
「あんたは、受験生なんだしやっぱり体力必要でしょ。これ以上文句を言うと、距離増やすわよ」
「部長~副部長~、痴話喧嘩なら二人っきりの時にやって下さいよぉ」
小村君の一言で、皆がドッと笑った。

「ふ~ん小村君、あんたも距離増やして欲しいのかなぁ?。さぁ男子達、文句を言わずに走り始めなさいよ。」
「しゃあないなぁ、おっしお前ら行くぞ。最下位の奴は今夜の懇親会で一発芸披露だぞ。」
「え~っ、マジっすか部長~。」
男子達はブツブツ言いながらも走り始めた。
「じゃあ、女子も出発しようか」
私が走り出すとみんなが後に付いて走り始めました。


「暑~ぅ。さすがに真夏に5キロはしんどいぞ森山。」
「はいはい、文句言わないの。みんなもお疲れ~、アクエリ冷やしてあるからね。それ飲んでひと休憩したら、次は腕立てと腹筋よ。」
「え~っ」全員から悲鳴に近い声が上がったのは言うまでも無いです。

お昼はみんなで流しそうめんを楽しみ、午後からはペンションのオーナーが営んでおられる近くの牧場の一角を借りて、個人練習です。
3時には、顧問の清水先生がわざわざ車で湯梨浜町まで下りて、買って来て下さった大栄スカイを食べました。

「森山~、腹減った。夕ご飯まだかよぉ」
「何よ本田、今まだ4時半よ。あんたはスイカを人の倍は食べたでしょ、夕ご飯は6時半からなんだからね。それまで我慢しなさいよ。」
「マジかよ・・・んで、夕飯のメニューは何なんだ?」
「男子の為に、バーベキュー準備してもらってるから。」
隣であっちゃんがクスクス笑っています。
「ちょっとあんたら、今の会話って普通に夫婦の会話じゃないのぉ。ったく、見せつけちゃってぇ」
「ちょっと、なんで健吾と夫婦なのよ、あっちゃん。変な事言わないでよぉ」
「そうだぞ大村ぁ。楓と夫婦なんて気持ち悪いじゃないか。」
「はいはい二人とも。お互い名前を呼び捨てが板に付いているる時点で、もうアウトだからね。」
「うっさいなぁ、大村」健吾は、顔を真っ赤にしながらサックスパートの方に走っていった。


「良いわよねぇ楓は。青春真っ盛りって感じで・・・」
「あっちゃんだって、サマーキャンプの間に門脇と仲良くなりたいって言ってたじゃん、どう?少しは近付けた?」
「う~ん、少しだけね。流しそうめんの時、門脇君と一緒にオーナーの手伝いしたからね。」
「そっか、まぁ今夜はバーベキューだし、明日は花火大会やるから、せいぜい頑張ってね。」
毎年サマーキャンプで何組かカップルが出来るんですよね。
青木先輩と沢田先輩もそうだし、部活は違えどお兄ちゃんと佳奈絵さんだって、夏合宿の時に急接近してますからね。


「おい、飯塚ぁ。お前、マラソンで最下位だっただろ。何か一発芸やれよ。そうだ、AKB48のヘビーローテーションを振り付きで歌えよ。お~い誰かスカート代わりのバスタオル貸してやれよ」
「マジっすか本田部長。振り付けは勘弁っすよ。大体あれは、小村が間違ったコースを教えるからですよ。」
「そうか・・・小村が悪いんか。じゃあ連帯責任だ、二人でヘビロテな。」
男子はお酒飲んだ訳でもないのに、はっちゃけてますね(^_^;)
「飯塚君、はい、バスタオル♪ もちろんジャージは脱いで生足で踊ってね」
「やだぁカンちゃん~、それキモいから止めてよぉ」
「そう言いながらキムちゃん、何をデジカメ構えてるのよぉ」
・・・女子も男子と一緒になって騒いでます。
あれ?あっちゃんの姿が見えない?

「・・・ねぇ健吾、あっちゃん見なかった?」
みんなに気が付かれない様な小声で健吾に話かけた。
「ん? あぁ・・・ちょっとな。」
良く見ると、門脇の姿も見えません。
「あっ、ひょっとして門脇君とあっちゃん・・・」
健吾が口に指を当てて「シーッ」と呟いた。
・・・そっか、あっちゃんと門脇って、お互いを意識していたんですね。
その晩、あっちゃんが部屋に戻ってきたのは、0時近くなってからでした。
二人の間に何が有ったかは、聞かない様にしておきましょう(^_^;)


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