「ただいまぁ」
「あっ、パパだ。お帰りなさい~」
美結がパタパタとスリッパを鳴らし駆け寄ってきた。
小学生になって、周りの子供に刺激されたのか、また僕達の事をパパママと呼ぶ様になりました。
パパって響きに馴れてないから、少し照れ臭いんですよね。
こんばんわ、木下幸一です。
―――――――――9月10日(土)―――――――――
「あのね、今日の夕ごはんは、かわいいごはんだよぉ」
・・・可愛いご飯!? 何だ、それは?
まさかして、タコさんウィンナー山盛りってんじゃあ無いんだろうなぁ?

「あっ、お帰りなさい幸ちゃん」
「ただいま眞子。何だい可愛いご飯って?」
「あぁ、今日は雲山市役所に書類届けて直帰だったんで、帰りに雲山のスーパーに寄ったら珍しいパスタを見つけたのよ。」そう言いながら、鍋の蓋を開けた。

「あっ!? リボン型」Image043a.jpg「ねっ、可愛いでしょ。ファルファッレってパスタなんだよ。さぁ、早く着替えてきたら?」
「おっ・・・おう、分かった。」
俺には、忘れようにも忘れる事の出来ない、見覚えの有るパスタだった。
それは、まだ美結が弥生のお腹の中に居る頃の話だ。




「ただいまぁ」
「あっ、幸一お帰り。」
弥生が僕に抱き付きキスをしてきた。
・・・
「とうとうお腹がつかえる様になってきたな。どうだった検診の結果は」
「うん、順調に育ってるって。今日はね、検診の後、雲山に出掛けて日向と合流したんだよ」
「妊婦が遠出して大丈夫かよ?」
「遠出って、雲山までだってぇ平気平気、日向が一緒だしね。雲山のねベビーショップに行ってみたかったんだ。」
「そうかそろそろ、出産準備始めなきゃいけないんだ」
「ボチボチとね。その後ついでに、雲山のスーパー寄ってみたんよ。松舞じゃあ買えない食材有るからね。」
「妊婦が大荷物ってやばいだろ、これからは俺が休みの日にしろよな」
「うん、ありがとう。それでね、可愛いパスタ売ってたから、買って帰っちゃった」
「可愛いって・・・?」
「それは、夕ご飯の時のお楽しみ。取りあえずシャワーでも浴びなさいよ、汗臭いわよ。そんなんじゃあ生まれてくる子供に、嫌われちゃうから」
「おう、悪い悪い」
俺は、小さなクローゼットから、ジャージを取り出し洗面所に向かった。

「あ~、さっぱりしたぁ。ビールビールっと」
「もう、うちらまだ未青年なんだからね。」
「はいはい・・・んあぁ~、仕事後のビールは最高だね」
「親父臭いんだから、幸一は。はい、これが今夜の夕ご飯♪」
「おっリボンの形してる。」
「でしょでしょ、ファルファッレって言うんだって。奮発してトマトピューレまで買ってきたんだから。なかなか、本格的なパスタでしょ。」
「うん、それなりに旨いぞ、これ。」
「『それなりに』って、どう言う意味よぉ。そんな事言う子は、夕ご飯抜きにするわよ。」
「わ~、ごめんなさい。世界で一番美味しいです。」
「そりゃそうよ、私が作ったんだから」そう言いながら、弥生がクスクス笑った。
それに釣られて、僕も笑顔になった。

「ねぇこの料理、子供が見たらどんなリアクション取るのかなぁ」
「う~ん、男か女かによって違うかもな。女の子なら、『可愛い』とか言ってはしゃぐんだろうけど、男の子だったらノーリアクションだったりするかもな。」
「うわぁ~、ノーリアクションって意外と辛いわねぇ。確かに女の子だったら、はしゃぐんでしょうね。あ~女の子が欲しいなあ」
「う~ん、俺はやっぱり男の方が良いなぁ。女の子って絶対大きくなったら、『お父さん、気持ち悪い』とか、言いそうじゃんか。ママゴトとかお人形遊びとか面倒臭いし。男の子だったら、キャッチボールしたりゲームで盛り上がったりと楽しめそうだしな。」
「娘に気持ち悪がられない父親に為れば良いじゃないのよ、幸一。私は、やっぱり女の子よね。一緒に料理したり恋バナで盛り上がったり。そうだ女の子だとして、どんな名前にしたいの幸一は?」
「ん~、そう言えばまだ考えていないなぁ。幸一の幸を取って、『さち』とか、『ゆき』なんてのは、どうだ?」
「響きは可愛いかもしれないけど、安直よね。」
「じゃあ弥生はどうなんだよ?」
「そうね、『何とか美』って昔憧れてたなぁ」
「由美とか、清美とか?」
「そうそう。朝美とか、里美とか可愛くない?」
「朝美は朝生まれなきゃ意味が無いだろうなぁ。そう言えば、昔、鈴木結女ってアーチスト居たよなぁ。結女って響き可愛いって思ってたなぁ。」
「結女かぁ、確かに可愛いかもね。」
「でも、ジャケ写を見て愕然としたけどな。『結う』に『美しい』で、結美(ゆみ)なんでどうだ?」
「それだったら、文法的には美結よね。あ~、『みゆ』って響き、可愛くない?」
「おっ、確かに可愛いな。じゃあ、女の子なら第一候補は美結だな。男の子だったら、何にする?」

そんな話で、夕食後も盛り上がっていたと思う。
今も、もちろん幸せだ。
でも、弥生との生活も、金は無くても、夢や希望に満ちあふれた楽しい生活だったと思う。

「パパ、きがえ終わった? ねぇ、早くかわいいご飯食べたいよぉ」
「おうっ、今、行くからな美結」
・・・弥生、お前の望んだ通り、女の子で良かったな。
やっぱり美結は、リボンのパスタを見て、「可愛い」ってはしゃいでいるぞ。そこからでも、分かるかぁ?




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