松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2009年05月

たあさんと話込んでいる間、燻製を放ったらかしにしていて、真子にこっぴどく叱られました。
チーズは、網目の間から流れ落ち、ササミとカマボコは、ヤニだらけで到底食べれる代物じゃ有りませんでした。(p_q)シクシク
おはようございます、幸一です。
―――――――――5月30日(土)―――――――――
昨夜は、たあさん、一家と一緒に夕ご飯食べました。
メニューは、真子特性ローストビーフにサラダ、由美さん特製グリーンカレーも、美味しかったです。

美結と優ちゃんは、花火した後、たあさんのテントで寝ちゃいました。(-o-;)
真子と由美さんは、意気投合しちゃって、ベロンベロンに酔っ払っうまで呑んでるし。
僕とたあさんと言えば、ヘベレケに酔っている相方を尻目に、焚き火に薪をくべながら、静かに呑んでました。
たあさんが、マッカランの18年物を、持って来ていたから沢山ご馳走になりました。
ピートの香りとシェリーの甘さが、焚き火の煙とマッチしていて、本当に美味しかったです。
お開きにしたのは、午前零時を回ってから・・・
美結は起こすのが可哀想って事で、そのままたあさんのテントで寝かす事に。
って事は、僕のテントは真子と二人っきり。ひとつ屋根の下?に二人っきりですよ。
しかし、酔っ払って爆睡しちゃってます、真子は。
でも、スースーと寝息を立てる、幸せそうなあどけない寝顔を見ていたら、こっちも幸せな気持ちになって、思わずほっぺにキスして、軽く抱きしめた。
寝ぼけながらも、抱き返してくる真子が俺の腕の中にいて・・・
ちっちゃな身体が、すごく愛しくって・・・


キャンプの朝って、結構早く目が覚めちゃうんですよね。
朝靄に煙る木々を眺め、野鳥の囀りを聞きながら、ひとり佇んでいます。
パーコレーターの中で、コーヒーがコポコポと沸き始めました。
お気に入りのチタンマグカップに、静かに注いで、口にする。
豆は、会社の近所に有るお気に入りの店のマンデリン種。濃くの有る苦味がお気に入りです。
テントの中で、ゴソゴソと音がする・・・真子が目覚めたみたいです。
テントのチャックを開け、顔を覗かせた真子と目が合う。
・・・何だか照れくさくて、目を逸らしながら「おはよう」って呟く。
真子も少し照れくさそうに、「おはよう」って、返してくる。
「真子も、コーヒー飲むか?」
「うっうん・・・」
真子が僕の隣に座る。
パーコレーターに豆をセットして、コンロに火を入れる。
「・・・真子・・・」
「・・・幸一・・・」
同時に口を開いた
「何?」お互いに聞き返す・・・
しばらく沈黙の後、先に口を開いたのは、真子の方だった。
「あのね、幸一・・・これ・・・」
そう言って、真子が机の上に置いたのは、一枚の紙・・・婚姻届だった。
「ごめんね、中々返事出来なくって・・・」
「いや、俺も、中々切り出せなくって・・・」
きっと、昨日、たあさんと話をしなければ、真子の気持ちを確かめられないまま、無駄に時間を費やしていたかもしれない・・・
恐る恐る、折り畳まれた用紙を開いてみる。塚田真子の名前が書いてあった。
「不束な女でございますが、これからも宜しくお願い致します」
そう言って、深々と頭を下げた。
「真子・・・」
「こちらこそ、不束な男でございますが、宜しくお願い致しまする~」
だぁ~、こんな時に噛んでどうする~
真子が思わず吹き出した。
「まする~って、何よ~。頼みますよ、お父さん・・・」
お父さんかぁ・・・「あなた」じゃないのは、変な気もするが、美結の事もちゃんと、真子は考えてくれている。
「あぁ・・・」コーヒーの沸き具合が気になる振りをして、僕は席を立った。
頬っぺたが、赤くなるのを悟られないように・・・



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「パパ、うさちゃんのぬいぐるみ、つんだ?」
後ろで、美結が喋りかけて来ました。
「あぁ、ちゃんと積んだよ。ミーちゃんと、ラビ君。先に美結は車に乗っておきなさい」
後ろのスライドドアを開けて、美結を車内に促した。
「うん」
「テントは積んだし、クーラーボックスもOK。後はスーパーで食材の買出しだな」
トランクを閉めようと、見上げた空は、どこまでも青く澄んでます。
こんにちは・・・って言うか、実は初めましての、木下幸一です。
―――――――――5月30日(土)―――――――――
DSC_9348s.jpg
最近、仕事が一段落して、週休二日で休めるようになりました。
そうなってくると、天気のいい週末は体が疼いてしょうが有りません。
僕の趣味は、オートキャンプなんです。
そう、車でキャンプ場に行って、車の脇にテントを貼って楽しむんです。
と言っても、貧乏なシングルファザーですから、テントもクーラーも、リサイクル品ばっかりです。
でも、美結に、自然の大切さ、命の尊さをしっかり教えてやりたいんです。
子供の頃、松舞川や支流の大森川で捕った、アメリカザリガニやメダカ、フナ等が激減しているじゃないですか。
松舞は中山間村地域だから、大丈夫だと思ってましたが、美結と同じ保育園に通う子のお父さんに聞いてみると、松舞川も結構居なくなっているそうです。
命の尊さは、きっと子供なりに分かっていると思います。
それに、これは親のエゴなのかも知れませんが、シングルファミリーだからって、肩身の狭い思いはさせたくないんです。大きくなった時、「あの子は、母親が居ないから、料理が出来なくても仕方ないよ」とか、「お母さん居なくて寂しかったでしょ」とか、言われたくないんです。全国のシングルファザーの皆さんなら、分かってくれますよね、この気持ち。
「だから、キャンプなの?」って言われると、困りますが・・・(汗)

そして、もうひとつキャンプをする理由が・・・
フィアンセの真子の存在です。
まぁ、普通に親子三人でデートでも全然問題ないんですが、真子も結構アウトドア派なんです。
だから、デートはアウトドアスタイルで行こうと考えてるんです。

おっと、なんて言っていたら、次の交差点を右に曲がれば、真子の住むアパートです。
アパートの下に車を止め、真子の携帯を鳴らします。
「あっ、幸一? 着いた?・・・そう今、降りるから・・・」
・ ・・そう言えば、気が付いたら、真子が僕の事を苗字じゃなくて名前で呼ぶ様になってます。
その方が、嬉しいんですよね。
「まこちゃ~ん」
美結が大きな声で叫びながら、手を振ってます。
「お待たせ、木下君、美結ちゃん」・・・・・そっか、美結の前では「木下君」なんだ。
真子は助手席じゃなくて、後ろの美結の横に座ろうとした。
「まこちゃんダメ、ここは、みーちゃんとらびくんのすわるところなんだから。おとなはまえにすわってください」
「はいはい、分かりました・・・でも美結ちゃん、ちゃんとジュニアシートに座って、シートベルトしてるのよ。ほら、みーちゃんにラビ君もちゃんとシートベルトしてるでしょ」そういいながら、真子はウサギの縫いぐるみにシートベルトを締めてやっていた。
・ ・・大人は前に座ってか・・・美結なりに気を使っているかも知れないなぁ・・・美結は変にオシャマな所が有るからなぁ(笑)

真子が助手席に座りシートベルトを締めたのを確認して、僕は「じゃあ出発~」って叫んだ。
「しゅっぱ~つ」真子と美結が同時に叫んで手を上げた。
「先ずは、買い物だな・・・真子、メニューちゃんと考えた?」
「もちろん・・・真子ちゃんが飛びっきりのメニュー考えてきたからね。美結ちゃんもちゃんとお手伝いしてよね。もちろん幸一お父さんもだよ」
「は~い」美結がまたもや手を上げた。
「つまみは俺が作るから・・・燻製作りやってみたいんだ」
「へぇ~燻製かぁ・・・面白そうだね。何を燻製にするの?」
「ん~っと、予定では、チーズに手場先、かまぼこ辺りかな・・・牛タンブロック売ってたら、それも燻製にしてみたいけどな」
「牛タンかぁ・・・サンモールにはスライスしかないかもね。  そうだ、ちゃんと美結ちゃんの着替え持ってきた?」
「ああ・・・言われた通り、3日分くらい持ってきたぞ、あと、バスタオルも多目にな」
・・・うん、真子は本当に美結の事を気にかけてくれる。ありがたい話だ。
車は程なくサンモールに着いた。
「まこちゃん、はなびもかっていい?」
「ん~、パパが良いよって言ったらね」
「ん?美結は花火がしたいんか?じゃあ、後でオモチャコーナー行って買おうか。」
「やった~はなび~」
「じゃあ、美結はカートの後ろに乗っていい子してるんだぞ。そうしないと花火買わないぞ」
そう言いながら、美結をカートに乗せた。
「先ずは、メインのお肉から選ぶね」
美結を乗せたショッピングカートを僕が押して、真子があれこれ食材をカートに入れていく。
時には、二人で値段を比べたり、「こっちがうまい」「いや、あっち」などと、反発したり・・・
弥生と、過ごした短かったけど幸せだった日々を、つい思い出してしまう。
・ ・・弥生

「クーラーボックスに、お肉やジュース移し終わった?」
美結をトイレに連れて行っていた、真子が戻ってきた。
「あぁ・・・」トランクを閉めて振り返ると、美結の手を引いた真子が歩いていた。
誰が何と言おうと、二人は立派な親子だよな。
「じゃあパパしゅっぱ~つ あんぜんうんてんでおねがいしますぅ」
「はいはい(笑)」僕は真子と顔を見合わせクスリと笑い有った。
今回向かうキャンプ場は、広島県に有る中国地方屈指のオートキャンプ場。
ネットサークルで知り合った、キャンプ仲間と何回かオフキャンプをした事あるオートキャンプ場です。
露天風呂も有りますし・・・混浴ではないのは残念ですが(^^ゞ
大型遊具も有るし、自然豊かだし・・・ここなら美結もノビノビ遊べる事でしょう。
緑豊かな山道を走る事1時間、キャンプ場に到着です。
管理棟で受付を済まし外に出ると、顔見知りのキャンプ仲間に出会った。
「あれ?キノサン(僕のハンドルネームです)? 来てたんだ。」
「あっ、たあさん、久しぶり~」
「何?今日は彼女連れてんだ~♪ あっ、初めまして~」
美結の相手をしていた真子が「こんにちは」って頭を下げている。
「デートの邪魔しちゃ悪いかな・・・もし喧嘩してテントを追い出されたら、泊まりにおいで(笑)」
そう言いながら、たあさんは管理棟に消えていった。
「いや~、いきなりサークル仲間に会うとは思わんかったわ。彼が、いっつもお世話になってるたあさん。サークルの会長さんなんだ。」
「いきなり挨拶されるから、びっくりしたわ。」にっこり微笑む真子にキュンっとなった。
この先、僕の奥さんって紹介する日が来るかと思うと・・・

「ねぇ、ポールはここに刺せばいいの~?」
「美結、あそこのとんかち取って」
「まこちゃん・・・のどかわいた~ジュースのみたい~」
三人でワイワイ言いながらサイトが出来上がったのは、お昼過ぎでした。
「さぁ、美結ちゃん。お昼ごはん作るよ~」
「は~い。まこちゃん、ちゃんとてをあらった?」
「そ・・・そうよね、先ずは手を洗わなくっちゃね」ペロッて舌を出して、真子が美結を手を洗っている。
「真子、お昼は何作るんだ?」クーラーボックスの中を覗き込みながら、僕はビールを取り出した。
「お昼はね~、バゲットサンド・・・美結ちゃんは噛み切れないだろうから、サンドイッチだよ」
「わ~い、サンドイッチだぁ~」美結が踊りながら喜んでいる(笑)
「ちょっと幸い・・木下君、ビール飲んでないで、手伝いなさいよ。これからは、ビシバシ料理の特訓してもらうんだから」
うっ・・・この前のたぬきうどんを根に持っているんでしょうか?
「はいはい・・・」僕も流しで手を洗った。
「食パンはこうやって包丁を温めててから、耳を落として・・・バゲットは横に切れ目を入れておくだけで、良いから。」
うん、相変わらず真子は手際がいい。
「美結ちゃん、レタスときゅうりさんを洗って下さいな。えっ?きゅうりは嫌い?だめだよ好き嫌いしちゃあ・・きゅうりは美容にも良いんだよ」
「美容に良い」って言葉に美結は反応した・・・うん、真子は美結を扱い慣れてるなぁ。
「さぁ、出来上がったら、今度はテーブルの準備ね。美結ちゃんは、綺麗なお花を摘んできて下さいな。」
真子が、家から持ってきたトートバックの中から、黄色い布を取り出した。
「へへ~この前、雲山の雑貨屋で、可愛いテーブルクロス見つけちゃった」
クロスをバッっと広げる真子
青空に黄色いテーブルクロスそして真子・・・なかなか絵になります。
広げたテーブルクロスの上に、真子が3人分の青いランチョンマットを置いていき、その上に僕が、ナイフとフォーク、マグカップを置いていく。
「まこちゃ~ん、ほら、きいろいおはながいっぱいさいてたよ~」
美結が駆け寄って来て、真子に摘んできた花を渡す。
「わぁ~、美結ちゃん一杯摘んできたね。それじゃあお花さんは、このコップに入れて、ほらテーブルの上に飾りましょ。さぁ、お昼ごはんにするわよ、皆もう一度手を洗って。」
「いただきま~す」
美結が大きなサンドイッチに頬張り付く。
「ほらほら、美結ちゃん、下からきゅうりさんが、こんにちはしてるよ。ちゃんと掴んで食べなきゃ」
「うん、この生ハム美味しい。やっぱ、俺の言った通り、こっちにして正解だろ」
「うん、確かに・・・木下君もたまには、いい事言うね。」
「たまかよ~」
「はいはい、ふたりともけんかせずに、ちゃんとごはんたべなさい・・・」
わいわい三人の幸せな昼食が続いた。

食後のコーヒーを真子と飲んでいると、美結が女の子を連れてきた。
「あれ?美結ちゃん、お友達?」
「うん、あのね、ゆうちゃん・・・ゆうちゃん、ほらあっちにいっぱいきいろいおはながさいてたよ」
優ちゃんの手を引き、美結がトコトコかけて行く。
「優ちゃんなら、たあさんの娘さんだよ。昔っからキャンプの度に、遊んでんだよあの二人」
「そっかあ・・・美結ちゃん友達居なくて退屈かと思ったけど、大丈夫みたいだね。」
美結達は、目の届く範囲で花を摘んでいるから、少し放っておいても大丈夫みたいです。
「じゃあ、俺は、燻製の準備するわ。」
「あっ、何か手伝おうか? 大体、幸一は料理苦手でしょ(笑)」
うっ・・・痛い所を突いてくる。
この前読んだ、How to本によると、思ったより簡単に出来るみたいなんだが、折角だから真子に手伝ってもらおうかな♪
「じゃあ、先ずは・・・ササミをパックから取り出して、表面の水気を取ってくれる?」
真子は手際よく、ササミの筋を引き抜き、ペーパータオルで水気を拭き取っていく。
うん、やっぱり真子は素敵な奥さんになってくれそうだ。
「本当はちゃんとした燻製器とか、欲しいんだけどな・・・」そう言いながら、僕は、中華なべと金属ボールを取り出した。
「何?それで燻製作れるの?」
「あぁ・・・」実は僕もイマイチ不安では有るんだけど。
中華なべの底に、スモークチップ(要は木屑です)と粗目を敷いて、金網を被せる。金網に先程のササミに塩を振った物、かまぼこ、チーズを乗せる。そして、金属ボールで蓋をすれば、即席の燻製器の完成です。
少し弱めの中火にかけて、後はひたすら完成を待つだけです。
僕は、二本目のビールを取り出し、プルタブを引いた。
視線の向こうには、美結と優ちゃんが楽しそうに、花飾りを作ってます。
「キノサン、なに作ってるんの?」
たあさん夫婦が尋ねてきました。
「ん?今、初めての燻製作り」
クーラーからビールを取り出し、たあさんに渡す。
「キノサン、聞いたわよ、彼女連れて来てんだって! ちゃんと紹介しなさいよ」明るくて姉御肌のたあさんの奥さん由美さんが、話しかけてくる。
「ったく、いつの間に、彼女なんて作ったのよ・・・いっつも仕事で残業残業って、書き込みしてるくせに・・・」
そこに、真子が洗い物から帰ってきた。
「あっ、真子・・・こちら、たあさんの奥さんの由美さん。由美さん、こっちが連れの真子」
「初めまして」お互いに挨拶を交わす。
「真子さん、お酒飲める?美味しいワイン持ってきたのよ。良かったら一緒に飲まない?」
そう言うと、由美さんは真子を連れて自分たちのテントサイトへと消えていった。
「なかなか、若くて美人の彼女じゃん・・・もう、プロポーズしたの?」
「えっ・・・まっまあ・・・」ゴールデンウィークの公園での出来事をプロポーズと呼んで良いのかは、少し疑問だが・・・
「お~、やるねぇ・・・。じゃあ、うちらのサークルで披露宴キャンプを企画しなくちゃね。」
「いや・・・まだ、具体的にいつ結婚するなんて考えてないっすよ。」
「でも、美結ちゃんの事考えたら、少しでも早い方が良いんじゃない? まぁ、美結ちゃんが嫌がってるんなら少し時間を置いた方が良いかも知れないけどね。」
もちろん、美結は拒んでいない、むしろもう真子の事をお母さんとして、認識している様だ。
僕は・・・実は少し迷っている。「真子との結婚」をじゃなくて、弥生が二人の結婚を許してくれるかどうかって事ばっかり、考えている。
きっと、赤の他人と結婚するなら、そこまで気にしなかったのかも知れないが、弥生の親友だった真子が相手だから、どうなんだろうって考えてしまう。
「いや、美結はもう真子の事をお母さんみたいに思ってますよ。産まれてからずっと、そばに居ましたから」
「そっか、以前話していた美結ちゃんの面倒を見てくれている、女性が彼女なんだ・・・。彼女なら美結ちゃんのいいお母さんになれそうだね。」
そこに、ワインとグラスを抱えて、真子と由美さんが帰ってくる。
「洋介、まだ、フランスパンにチーズ残ってたよね。」
キッチンコーナーから、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
美結や優ちゃんも、帰って来ておやつをおねだりしている。
「やれやれ・・・いっぺんに騒がしくなったな・・・これだから女は・・・」
たあさんは、ディレクターチェアから腰を浮かし立ち上がった。
「キノサン、又新しいテント買ったんだ、見に来る?」
そう言って、僕を手招きした。
たあさんのテントサイトに向かう途中、たあさんが静かに話し始めた。
「実は俺も再婚なんだ。優は俺の連れ子でさ・・・まぁうちは死別じゃなくて、喧嘩別れしたんだけど」
えっ、そうなんだ・・・それは知らなかった。
「俺さ、再婚する時、随分と悩んだよ。由美がちゃんと優の事を可愛がってくれるかは、もちろんだけど、別れた嫁さんが、俺の再婚を認めてくれるかどうか、優を引き取るって言い出すんじゃないかって。」
テントサイトに着くと、たあさんはバーナーに火を入れ、お湯を沸かし始めた。
「コーヒーでいい?」たあさんは、コーヒーミルを取り出し、コーヒー豆を挽き始めた。
「でもな、結局、別れた嫁さんは、優を引き取らなかった。街中で、優が由美と楽しそうに歩いているのを見たらしいんだ。優がすごく楽しそうな顔をしていて、由美も優しく微笑んでいるのを見たら、この人なら任せて安心だって思ったんだって。」
コッフェルにドリッパーをセットして、たあさんは静かにお湯を注ぎ始めた。
「天国にいる奥さんだって、ちゃんと美結ちゃんと真子さんの事見ていると思うよ。そして、この人ならって、認めていると思う。それは、地上にいる俺達から見ても同じ見解だから。彼女なら、美結ちゃんやキノサンを幸せにしてくるって、思えるもん。あの美結ちゃんの笑顔見てたら誰だって反対はしないさ。」
たあさんが、淹れたてのコーヒーを俺に手渡してくれた。
たあさんが淹れたコーヒーは、少しほろ苦くてとっても優しい味がした。



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始発の電車は、緑の田んぼの中を、静かに走り抜けます。
車窓から眺める景色は、一面が緑色でした。
こんばんわ、お騒がせ人間モリヒデの妹、森山楓です。
―――――――――5月17日(日)―――――――――
それは、ゴールデンウィークが終わった7日の放課後の話・・・
「森山さん、これ・・・」青木先輩が手渡してくれたのは、一枚のMDでした。
「アルメニアンダンス以外にも、色々入ってるから・・・」
あっ、青木先輩、田植えの日にした約束覚えていてくれたんですね。
「ありがとうございます、早速今夜聞いてみますね。この間はすいませんでした、お陰でずいぶん早く田植えが終わりました。」
「いや~楽しかったよ。でも、モリヒデさんと金田先輩が付き合ってるなんて知らなかったなぁ。あの二人、音楽室でいっつも喧嘩しちょったけん。んで、フルートのパート長だった緑川先輩が、いっつも仲裁に入っていたんよ・・・」
あちゃ~(*ノω<*) 、うちのお兄ちゃんは他の部活まで顔出して、何してんのよ・・・
「あっ、ところで森山さん、来週の日曜日って何か予定有る?」
「えっ、来週の日曜日ですか? 特に何も予定入ってないですけど・・・」
「あのね、遠いけど濱野市の高校の定演が有るんだ。演奏曲の中に、アルメニアンが有ったから、良かったら聞きに行かない?」
「濱野市ですか・・・一日で行って帰れるんですか?」濱野市は、山陰の西の端の方に在って、松舞からでは結構遠いんですよね・・・
「う~ん、始発に乗って行けば、演奏開始時間には間に合うはずだよ。濱野高校って去年全国大会に出場してるから、レベルはそこそこ高いよ。」
「そうなんですか?・・・じゃあ、行きます行きます・・・」
やった、青木先輩とお出掛けです♪
ちょっと、もったいぶった言い方しちゃいましたけど、内心は「もう即OK、演奏会なんて間に合わなくたっていい」状態だったんですけどね(笑)


今朝は、大森駅に5時半に集合でした。
うちの両親に勘ぐられたくないから、前の晩に佳奈恵さんにメールして、アリバイ工作をお願いしちゃいました。(最近、うちの近所にも携帯のアンテナが建って、うちも圏外で無くなりましたよ。)
佳奈恵さんから、メールで「頑張って」って届きました・・・何を頑張れって言うんでしょう・・・
青木先輩は少し遅れてやってきました。う~ん、シーンズに白のワイシャツ、ピンクのネクタイが、おしゃれです♪。
私だって、昨日の夜、雑誌を見ながら、精一杯かわいくコーディネイトして来ましたよ。
「ごめん、遅くなった」そう言って手を上げる青木先輩に朝日が当たって眩しいです、クラクラしちゃいます(笑)
「おはようございます、大丈夫ですよ、私もさっき来た所ですから」・・・さっきと言っても一時間前ですが・・・
休日の始発の電車は、さすがにお客さんもまばらで、四人掛けの席に、向かい合って座りました。
本当は隣に座りたいけど、こんなガラガラの状況じゃあ、そんな事出来ませんよね・・・残念。
「ところで、どうやって濱野市に行くんですか?」
携帯をゴソゴソとポケットから取り出して、青木先輩は説明してくれました。
「ん~っと、このまま松舞は通り過ぎて、ここで山陰本線の下りに乗り換えて、そこから2時間位かな・・・」
すご~い、ちゃんと携帯で調べていたんですね。本当、頼もしい人みたいです。
ブラスバンドの話、好きなアーチストの話、嫌いな先生の話なんかしてたら、あっという間に濱野市に到着しました。
「思ったより、早く着いちゃいましたね・・・」
「だな・・・。開場は1時からだし、駅から会場までは歩いて10分だし・・・先にお昼ご飯食べようか。え~っと、何か食べたい物有る?」
「えっと・・・青木先輩にお任せしますよ。」
「う~ん、俺も特にこれって食べたいもん、ないんだよなぁ・・・。う~ん、どうしよう・・・、この町初めてだしなぁ・・・」
青木先輩、少し困っています・・・。
「あっ・・・、先輩あそこに喫茶店有りますよ。喫茶店なら、色んなメニュー有りますよね、きっと・・・」
青木先輩、少しホッとした顔をして「んじゃあ、あそこにしようか」って歩き出しました・・・
「あっ・・・待って下さいよ~」 なんか、不機嫌っぽくなっちゃいました、青木先輩。
喫茶店で、青木先輩はピラフセット、私はナポリタンを注文。
「あっ、美味しい、このピラフ・・・」
良かった機嫌直ったみたいです。
「一口、食べてみる?」えっ、きゃ~間接キスです~。
「あっ、確かに美味しい~♪ 先輩、ナポリタンも食べてみます?」
フォークに絡めて、青木先輩の目の前に差し出すと、一瞬躊躇してましたが、パクって食べてくれました♪
喫茶店を出て、演奏会の会場になってる、市民会館に移動します。
会場は、他の高校のブラスバンド部員でごった返しています。
席に着き、プログラムを見ていると、先輩がありゃって叫びました。
「アルメニアンダンスが、演目から無くなってる・・・」
どれどれって、演目に目を通すと・・・確かに無くなっている・・・
「本当ですね・・・あっでもでも、ちゃんと青木先輩にもらったMDで、ちゃんと曲も雰囲気分かりましたから、大丈夫ですよ。それに、代わりの曲は、エルザの大聖堂への行進曲じゃないですか。私、この曲大好きなんですぅ」・・・精一杯フォローしてみる。
「折角、楽しみにしてたんだろうに、ゴメン。チェック不足で・・・」
うっ・・・青木先輩何か落ち込んでます。
「だから、全然平気ですってぇ。一番聞きたいのは、青木先輩の吹くアルメニアンですから」
うっ・・・焦って本音を言ってしまった(^^ゞ
「えっ」って、先輩が聞き返した瞬間、ブザーが鳴り会場の照明が落とされました。
うう・・・つい本音が出てしまった・・・でも、どうしたんだろ青木先輩。
急に不機嫌になったり、落ち込んでみたり・・・
何か、私期限を損ねる事しちゃったかな・・・
そんな事ばっかり考えていたから、演奏に聞き入る余裕なんか無くて、気がついたら演目の半分が終わり、休憩時間になりました。
「森山さん?・・・森山さん、大丈夫・・・?」
「あっ、スイマセン。全然大丈夫ですよ」
「怒ってる?」
「えっ?何でですか?」
「いや・・・お昼ごはん食べる場所のチェックしてなかったり、演目のチェックしてなかったり、失敗してばかりだから・・・ゴメンね。全然楽しくないだろ?」
そんな事ないですって・・・
よく聞いてみると、青木先輩女の子とデートって初めてだったそうです。
「私だって、男の子とのデート、初めてなんです。今、すっごく楽しいですから。」
そうですよね・・・デート慣れしてる人でしたら、逆に付き合う事考えちゃいますよね。
後半の演目が始まった。
後半の一曲目は・・・静かな木管のメロディーから始まりました。
エルザの大聖堂への行進曲です。
チラって、青木先輩の方を見る。
ひざの上の先輩の手に、自分の手をそっと乗せてみる。
少し戸惑いながら、握り返してくる先輩。
静かなメロディーから、だんだんと雄大かつ優しいメロディーに変わっていきます、それはまるで先輩に対する想いの様に。

「良かったですね、濱野高校の演奏。うちもあれ位のレベルだったら、良いんですけどね。」
「だよな~」少し、赤い顔して横を向く先輩。
結構、ウブなんですね(笑)
楽しかったデートも、2/3が終わり、大森に向かって帰らなきゃいけない時間です。
私達以外にも電車で聴きに来ていた人達が多かったのか、駅への道は結構人がいます。
逸れそうな私に気付き、先輩がそっと手を差し出してきました。
先輩の目を見詰め、そっと頷く私。
帰りの電車も意外と空いていましたが、今度はちゃっかり先輩の隣に座りましたよ。
二人で、海に沈む夕日を眺めていたら・・・眠気が・・・
実は、洋服選びに時間がかかり過ぎて、殆ど徹夜状態だったんです(^^ゞ
うつらうつらする私に気づいて、先輩はそっと肩を抱いてくれました・・・幸せかも・・・


大森駅に降り立った二人。
確かに、詰めが甘いのかもしれないけど、マニュアル通りのデートより、全然楽しかったです。
先輩と、一緒にいれるならどんなデートでも楽しいです。
自転車にまたがり振り替える。
「青木先輩・・・また、演奏会連れて行って下さいね。」
そう言いながら、先輩の顔を見上げると、先輩はすごく嬉しそうに微笑んでいた。
「絶対、絶対ですよ~」
「あぁ、絶対誘うからな。今度はちゃんとリサーチしておくからな~」
お互い手を振りながら、ペダルを力強く漕ぎ出した。
まだ、少し冷たい大森の空気が、すごく心地良く感じた。

 


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今日は、朝から体がしんどくて、寝込んでいます。
折角の休みだというのに・・・窓から差し込む太陽の光が恨めしかったです。
こんばんは、塚田真子です。
―――――――――5月17日(日)―――――――――
今日は、木下君も会社が休みって事で、美結ちゃんが来てないのは、救いでした。
こう言う時って、つくづく一人ぼっちなのを痛感致します。
お腹痛いし、体が熱っぽくて、何にもする気が起きないんですよね。
食事を作る元気も無くって、昨日コンビニで買った、ヨーグルトとスポーツドリンクしか、口にしていません。
買い物に出る気にもならないし・・・
家族が居たら、何かと世話を焼いてくれるし、買出しにだって行ってくれるでしょうし・・・
今は、布団に包まって、ダラダラと寝てるしか、出来ない状態です。
気が付くと、こんな時間です。
う~ん、お腹が空いているせいか、隣の部屋の食事の香りが、すごく気になってきます。
鰹だしのいい香りが、この部屋にまで届いてきます・・・って言うか、こんなに香ってくるって、だしを利かせすぎじゃないのかな・・・
今度はトントンとまな板の上で、何かを刻む音が聞こえてきた・・・
う~ん、一体どんな力で刻んでんでしょう?こんなに聞こえてくるなんて。
そう思いながら、体を横にして布団を被ろうとしたら、視界の隅に黒い物が目に入った・・・

隣の部屋に人影が・・・
向こうがこっちを振り向く。
「あっ、悪りぃ・・・起こしちまったか?」
そういう人影は、木下君でした。
「お前、鍵開けっ放しだったぞ・・・」
えっ?美結ちゃんは?
「木下君・・・美結ちゃんは?まさか、一人アパートでお留守番じゃないよね?」
「ん?美結なら、日向んちに頼んできた。」
そっか、ひなちゃんなら、美結ちゃんの担任の先生だし、何より美結ちゃんが産まれた時から、関わってるから安心だよね。
「ところで、台所で何してんのよ?」
「えっ?お前が寝込んでるって、日向に聞いたから、うどんでも作ってやろうかと・・・日向も来たがってたけど、美結の事も在るし、風邪やインフルエンザだったら、保育園の先生としてまずいだろ。」
そっか・・・私、一人じゃなかったんだよね。
「もう少しで出来るから、お前は寝とけよ」そう言うと、木下君は台所に戻っていった。
横になったまま、木下君の後姿を眺めてみる。
ちょっぴり、猫背の背中が忙しなく動いて葱を刻んでいる。
軽快で心地よい音とは、言いがたいが、ず~っと聞いていたい気がする。すっごく幸せな音に聞こえる。
大好きな人が、私の為だけに作ってくれる素敵な料理の音を。
振り返った木下君と目が合う・・・
「なんだ?腹でも痛いのか?」
「ううん」
「ほら、出来たぞ・・・俺特製きつねうどんだ。」
うっ・・・そのどんぶり一杯のうどんを私に食べろと・・・健康な状態でも絶対に無理です。
「ちょっと・・・木下~、いくらなんでも作り過ぎ・・・それじゃあ、食べ過ぎで寝込んじゃうよ(笑)」
「あっ、やっぱり・・・食料の買出しなんてあんまりしないから、量がわかんなくて・・・しかも、全部封を開けちゃったから、使ってしまわないともったいないだろ。」
「ちゃんと味見した?砂糖と塩間違えてないよね?」
「当たり前だろ、ちゃんと味見したさ。ただ、甘い・・・塩っぱいって、何回も味の調節したから、汁が溢れそうになってしまったけどな・・・」
男の料理って奴ですか・・・
恐る恐る小さなお椀に取り分けられたうどんの汁をすすってみる。
ブラックコーヒーみたいなだしの色ですが、何とか食べれそうです(笑)
「どうだ?うまいか?うまいだろ!何とか言えよ」
って、喋ってたら食べれないんですけど・・・
いかにも病人食って位、煮込まれてフニャフニャになったうどんでしたが、木下君が苦労して私の為に作ってくれたと思うと、嬉しくって・・・思わず涙が・・・
「どうした・・・不味いか?」
「違うよ、熱かっただけ」
「無理すんなよ。やっぱ隠し味にソース入れたのがいけなかった?」
えっ! うどんにソースは入れないんですが、普通・・・そう言えば少しフルーティーかつスパイシーな香りが・・・するような・・・。
「ソースなんて入れないよ、普通。病人を苦しめてどうするの」クスって笑ったら、木下君もすまなそうな顔をしながら笑った。
「でも、それなりに美味しいよ、このきつねうどん・・・きつね・・・きつねうどんって油揚げ入ってるよね・・・。普通・・・これって天かすじゃない?たぬきうどんの間違いじゃあ・・・」
二人でもう一度大笑いをした。

「あっ・・・」お腹の辺りに流れる物を感じ、私はトイレに立った。
「おい、大丈夫か? 塚田?やっぱり腹壊した?」
「えっ?大丈夫だから、心配しないで」
トイレに駆け込むと・・・やっぱり「女の子の日」でした。
生理痛だったみたいです。

トイレを出ると、木下君が心配そうに近付いて来た。
「マジで大丈夫か?」
「大丈夫だから、私。心配しないで」さすがに生理痛だったとは、言えません。
「熱いうどん食べたら、楽になったみたい・・・ありがとう、木下君」
美結ちゃんの居ない二人っきりのチャンスって滅多にないですから、もう少し木下君に甘えちゃおうかな。
私は、彼の肩に腕を回し、そっとキスをした。
彼は私の髪を撫でながら、腰に手を回してきた。
う~んゴメンネ。女の子の日だから、今日はキスだけで勘弁してね・・・


「ひなたせんせ・・・ひなたせんせい、みてみて~ほら、ライオンさんかいたよ。」
「あっ、美結ちゃんゴメンゴメン・・・どれどれ~わぁ上手に描けたね~ライオンさん」
「うん、これがおとうさんライオンで、こっちがまこちゃんライオン、これがみゆライオンだよ・・・それで・・・」

いけないいけない、今は美結ちゃんのお守りに集中しなきゃ。
勝手に、空想に浸っている場合じゃない。
朝、真子から寝込んでるってメール来た時は、びっくりしたけど、よく話を聞いてみたら、真子は結構生理不順で重いみたいだし、多分生理前かなって話になったんだよね。
でも、今頃二人水入らずで過ごしているのかな?
私も、洋介にしっかり看病してもらいたいなぁ。
今週末、大阪に遊びに行こうかな・・・
「ひなたせんせ~、ちゃんと、みゆのはなしきいてるぅ?」
あ~はいはい(^^ゞ




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曇り空で、今にも雨が降り出しそうで、少し憂鬱な気分です。
憂鬱なのは、空のせいだけじゃないんです。
今日は、お兄ちゃんが帰って来て、お父さんやお母さんと田植えなんです。
毎年、ゴールデンウィークは、田植えに追われてます。
折角、花の女子高生になったって言うのに、田植えで泥んこになるのは、どうなんでしょう・・・
あっ、初めまして、私、森山楓・・・松舞高校普通科一年生です。
―――――――――5月5日(火)―――――――――
前庭で、軽トラックに稲の苗を積んでいると、庭先に一台の車が止まりました。
あ~、あれね、お兄ちゃんが買った車って。
結構、可愛い車じゃん。
あれ?助手席に誰か乗ってる~
今年は、颯太さん東京行ったから、手伝いが一人減るって言ってたけど・・・
うん?女の人?
えっ?マジ?うちのお兄ちゃんが?
「お~楓、やってっか~?」
「こ・・・こんにちは・・・初めまして、金田佳奈恵って言います。あっ、楓さんですね?」
「こっ・・・こんにちは・・・」
思わず、上から下までジロジロ見ちゃいました。
ふ~ん、うちのお兄ちゃんにしては、中々可愛い女の子を選んだみたいね。
って言うか、この佳奈恵さんの趣味を疑いたくなっちゃいます、うちのオタク兄貴に惚れるなんて(笑)
「あら~あらあら・・・」
台所で朝ごはんの片付けをしていたお母さんが、玄関から現れた。
「あっ・・・初めまして・・・金田佳奈恵です。 あっ、これ、お茶の時に皆さんと食べようと思って持って来たんです。うちのおじいちゃんが作った田舎饅頭です。」
「あらら、これは又ご丁寧に・・・ありがとう。あら、千華屋さんじゃない。何、千華屋さんのお嬢さん?、でもあそこは、まだ子供が小さかったわよね。・・・・・・あぁそう、姪さんなのね・・・」
納屋の方から、お父さんも顔を出して来た。
「お~、ヒデ~。中々のベッピンさんを連れて来たなぁ~」
も~っ、お父さんったら・・・佳奈恵さん下を向いて、赤くなってるじゃない。
「いや・・・全然ベッピンじゃないって・・・。こいつも、松舞高校で少し農業実習やってっから、少しでも役立つかと思って、連れて来たんだ。」
「すいません、突然押しかけちゃって・・・モリヒデ・・・いや英生君が、手伝いに来てくれって言うもんだから・・・足手まといにならない様に、がんばりますから、宜しくお願い致します。」
ふ~ん、結構、礼儀正しい感じね、佳奈恵さんって・・・
「じゃあ早速手伝ってもらおうかね・・・あっ、荷物はほら、こっちの部屋に置いておいて」
お母さん、何か嬉しそうです・・・
「ヒグラシ、この苗の入ったトレーを、トラックまで運んでや。」
うん、何か、一気に我が家が活気付きました。
彼女、ヨタヨタしながらも必死にトレーを運んでます。
「はい、楓さんこれで最後です。」
「ヒグラシ~、次はこの道具を積むから、運んでくれ~」
こらこら、お兄ちゃん、彼女をそんなに扱き使って~
「あっ、佳奈恵さん私が、半分持つから。ゴメンね、うちのお兄ちゃん人使い荒くって」
「えっ、大丈夫ですよ・・・もう慣れてますから」
慣れてますからって・・・一体何年付き合ってんのよ・・・
「佳奈恵さんって、お幾つなんですか?」
「えっ?モリヒデ・・・いや英生君と同級生ですよ。」
「へ~、お兄ちゃんの事、モリヒデって呼んでんですね。同級生って事は、高校時代から付き合ってんですか?」
「いや・・・あの~付き合っているって言うか・・・なんて言うか~。同じクラスでしたし、今、うちの隣の部屋に住んでるし・・・」
あ~赤くなった・・・結構佳奈恵さんって、カワイイ~。
って言うか、隣の部屋に住んでるって、ほんとラブラブじゃん。

お兄ちゃんと、佳奈恵さんは一足先に、田植え機に乗って、うちの田んぼに向かいました。
なんか、変なデートですね。
私は、お父さんと軽トラックに乗り込み、田んぼに向かいます。
「ヒデの奴、いきなり彼女を連れて来うだもんなぁ・・・おべたよな。楓はヒデから話聞いとったんか?」
「全然、聞いとらせんし・・・何か高校の時からの付き合いみたいだわ」
そう言いながら、窓の外に目を移す。
歩道を自転車で走る人影が目に入る。
あっ、青木先輩だ・・・
大森中学のブラスバンドの先輩で、松舞高校でも同じブラスバンドに所属している、ちょっぴり気になる先輩です。
通り過ぎる時、軽くお辞儀をしたけど、気が付いてくれたかな?

田んぼに着くと、早速田植えの準備です。
田植え機の後ろに苗をセットしていきます。
お父さんがなれたハンドル捌きで、苗を植えていきます。
お兄ちゃんと私は、田植え機では植え難い畦の近くに、苗を手で植えていきます。
佳奈恵さんが、手植えする苗を運んで行きます。
三つ目の田んぼの田植えが終わる頃、お母さんがスクーターで、お茶道具とお弁当を運んで来ました。
「佳奈恵ちゃん、疲れたでしょ。さぁさぁ、ちょっとお茶でも飲んで、休憩すぅだわ。ほら、楓、お茶の準備すうだわ。あ~佳奈恵ちゃんは手伝わんでいいけん、座っちょうだわ。」
ううっ、私だって疲れてんですけど、お母さん・・・
佳奈恵さんは、「あっ、大丈夫ですから」って、慣れた手付きで急須にお茶っ葉を入れ、お湯を注いでいます。
う~ん、中々出来る人みたいです、佳奈恵さんは。
湯飲みにお茶を注がれたお茶を、「どうぞ」ってそれぞれに渡すと、今度は持って来たお饅頭を手際よく、器に移して、みんなに勧めています。
なんか、うらやましいなぁ・・・こんな、気の利く女の人って・・・

みんなで、土手に座り談笑をしていると、向こうからまた自転車が・・・青木先輩です。
どこかに行った帰りでしょうか・・・?
余り見られたくない光景なんですが・・・(^^ゞ
「あっ・・・青木君だ。お~い青木く~ん」、佳奈恵さんが青木先輩に気づき、手を振ってます。
えっ?何で青木先輩の事を佳奈恵さんが、知ってるんでしょう?
キィって自転車が止まり、青木先輩が会釈をしています。
私は内心、ドキドキしています。
「何だ、佳奈恵さんお友達かい? 良かったら一緒にお茶せんかね?」
あ~、お父さん余計な事を・・・でも、ちょっぴり嬉しかったりして♪
「あれ、森山さん? あっ、ここって森山さんちの田んぼなんだ。」
私に気が付いた、青木先輩が、ゆっくり近付き話しかけて来ました。
「あっ青木先輩、こんにちは。どこかお出掛けですか?」
「いや、友達んちに、バンドスコアを借りに行った帰りなんだ」
そう言いながら、青木先輩は私の隣に腰を下ろした。
うわ、こんな近い距離でお話出来るなんて、夢の様です♪
「あれ?楓ちゃん、青木君と知り合いなんだ。へぇ~楓ちゃんもブラスバンド部なんだ。」
なんでも、佳奈恵さんの友達もブラスバンドでフルートを吹いていて、よく、油絵のモデルとして、音楽室に顔を出していたらしい。んで、青木先輩とも、顔を会わす様になって仲良くなったみたいです。
「おにぎり、多めに作ったから、良かったら一緒に食べんかね?」お母さんがそういって、おにぎりとおかずの入ったタッパーを私達の目の前に置いてった。
「すいません・・・」恐縮している青木先輩に、お兄ちゃんが「青木、遠慮せんでいいけん」って、おにぎりを差し出した。
「モリヒデさん、すいません・・・」
「えっ?お兄ちゃんも、知り合いなの?」
「そりゃ、毎朝電車で顔合わすし、俺もブラスバンドには、写真撮りに行ったからな」
「そ~そ~、モリヒデったら、いっつも女子部員追い掛け回したもんね」
「こらヒグラシ、変な事楓に言うなや~。なぁ、青木そうだろ?」
「いや、当たってんじゃ・・・(笑)」
あ~お兄ちゃん、何やってんのよ~
「そっか、森山さんってモリヒデさんの妹だったんだ・・・モリヒデさんのモリって、森山のモリだったんですね。」
そう笑う笑顔に、胸がキュンッとしちゃいます。
この一瞬を切り取って、アルバムに仕舞っておきたい気分です。

お弁当の空きタッパーを、佳奈恵さんと片付けていると、佳奈恵さんがこっそり聞いてきた。
「ねえ、楓ちゃん。青木君の事、好きなんでしょう?分かるわぁ、中々、明るくて楽しい子だもんね」
「えっ、いや~別に私はぁ・・・」
「隠してもダメだけんね。ちゃ~んと、分かるんだから。青木君なら彼氏としてお勧めだわ。」
頬っぺたが赤くなるのを感じ、私は下を向いた。
「ほ~ら、やっぱりぃ(笑)。頑張ってね、楓ちゃん♪」
「お~いヒグラシィ。青木が午後は田植え手伝うって言ってるから、お前は苗を運んでくれや~」
えっ、そんな、青木先輩までが、うちの田植えを手伝うなんて・・・
「やったね、楓ちゃん。」佳奈恵さんがこっそりピースサインをしてきた。
私は、小さく頷く事しか出来なかった。

「ヨ~イ、スタート・・・」
お兄ちゃんと青木先輩が、田植え競争を始めました。
佳奈恵さんがお兄ちゃんの苗を運んで、私が青木先輩の苗を運ぶ係りです。
「あ~、森山さん。苗はそっち側に置いて~。あと、苗を解しておいてくれると助かるなぁ~」
私も必死に青木先輩の手伝いをします。解した苗を手渡す時、手と手が触れ合ったりして、ドキドキしちゃってます。
「ふぅ~」
気が付くと、最後の田んぼも田植えが終わってました。
「あ~ぁ、四人とも泥んこになっちゃって・・・」お母さんが、困った様な顔でこっちを見ています。
「あんたら、先に家帰って、身体洗いんさいや。青木君も遠慮せんでええけん、シャワーなと浴びて帰え~だわ。」
「おぉ、青木、チャリンコ軽トラの荷台に乗せーだわ。んで、お前と楓は荷台に乗っちょって」
私は青木先輩と、荷台に自転車を乗せ、そのまま座り込んだ。
「あ~、初めての田植えだったけど、楽しかったわ。モリヒデさんにも田植え競争で勝てたし・・・」
照れ臭くて、私は小さく頷くだけだった。
倒した自転車の前かごから、バンドスコアがゴトンと落ちた。
慌てて拾い上げながら、「この曲、前からやってみたかったんだよね。」そう言いながら、先輩がスコアを私に見せてくれた。
「アルメニアンダンスですか・・・これって、早くて難しいですよね。」
「だから、カッコいいんだって・・・楓ちゃんは、クラのThirdだからまだ、少しは楽かもしれんよ。」
「でも、楽譜読むの余り得意じゃないし、この曲まだちゃんと聞いた事ないんですよ~」
「あっ、じゃあ休み明けにMD持って来るよ。」
「えっ、マジですか?ありがとうございます。」
なんか、急に親しくなれて、ラッキーですO(≧∇≦)O イエイ!!




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