松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2009年07月

「う~ん、ご主人様ぁ」
ひざ枕している僕の上で、詩音が寝返りを打った。
そっと、彼女の柔らかい髪を撫でてみる。
こんばんわ、隆文です。
―――――――――7月25日(土)―――――――――
あの、春の思い出から、もう2年以上経つんですね。
つい、この間の事の様です。
今、僕の膝の上には、詩音って彼女が居るんですが、それ自体、高校時代から考えたら、信じられない話です。
中学高校時代、自分に彼女なんて出来るんだろうか、一生女の子と付き合う事なんてないんじゃないだろうか、って考えて独り落ち込んでいた時期は、一体何だったんでしょう?
それでなくても、周りからは気持ち悪がられていたから、自分に自身が持てず、イジイジとしていたんです。
暗い、キモい、カッコ悪いの3K状態でしたから、女の子どころか同性の友人すら、出来なかった。
でも、今こうして、僕の膝の上には詩音が居る。
悪友も沢山出来た。
恋人とは言わないが、結構クラスメイトの女の子をお茶に誘ったり、一緒に飲んだりはしている。
高校時代と何が違うんだろう?
改めて不思議に思った。
東京に上京して、徐々に自分に自信を持って、明るくなっているのは気がついていた。
ただ、それは新しい生活環境のお影だと思っていた。
しかし、そうではないみたいだ。
一体、なんなのだろう?

詩音が目を覚ました。
「申し訳ございません、ご主人様。私ったら、つい気持ち良くって眠ってしまいましたぁ」
「うん、寝顔もナカナカ可愛かったよ、詩音。」
「やだ、見てたんですかぁ。あっ、私重くありませんでしたぁ?」
「いや、全然大丈夫だったよ。しかし、詩音はいっつも明るいなぁ」
「そうですかぁ? でも、私、中学の頃から、オタクな女でしたから、結構暗かったんですよ。」
「今からじゃあ、想像も付かないなぁ(笑) じゃあどうして、そんなに明るくなれたんだ?」
「えっとぉ、それはですねぇ」
詩音は、何かためらっていたが、ゆっくりと話し始めた。
「さっきも言った様に、中学の頃から暗くて、男子に嫌われている存在だったんですよ、私。寄って来る男子が居たとしても、それはやはり同じ様なオタクの男子だったんですぅ。
そんな中、一回だけ普通の男子に告白された事があったんです。
結局その子は、親の都合で引っ越しちゃったんですけどね。
その男の子に、こんなオタクな私のどこが好き?って聞いたら、彼、何て言ったと思いますぅ?
『オタクな所も含めて、全てが大好きだ』って言ってくれたんですよ。
その時思いましたね、自分は間違ってなかったって。
自分らしい自分、飾らない自分なんて魅力無いって思っていたんですけど、そのままの自分を好きになってくれる人が居るんだなって。
そう思ったら、急に自信が沸いてきて、無理しなくていい飾らない楽なスタイルで生きれば良いんだって、分かったんですぅ。」
「ふ~ん、そんなもんなんだ」
「はい、ご主人様。あっ、今お茶入れますね♪」

詩音が、流しに立った後、タバコに火を点けながら
さっきの詩音の言葉を思い返してみる。
山瀬さんも、同じ様な事を言っていたな・・・
よく、考えてみたら、俺も全く一緒じゃないか?
山瀬さんが、僕の事を好きだと分かったから、自分に自信が持てる様になったんじゃないか?
そうだ、卒業してから東京に来るまで、日が短かったから、気が付かなかったけど。
そうだ、山瀬さんがさっちゃんが、「笑える様になったのは、私を好きになってくれた人が居たからだよ。こんな私でも、人を好きになって、その人が私の事を、好きで居てくれる・・・恋愛が出来る事が分かったから。」って言ったのも、結局同じ事だよな。
さっちゃんが、自信を僕から貰った様に、僕もさっちゃんから、自信を貰った。
きっと卒業式の日、さっちゃんが「第2ボタンをくれ」って、言わなかったら僕は自分に自信が持てないまま、ダラダラと東京で過ごしていたかもしれない。
切ない思い出では有るが、僕にとって、すごく大切な思い出なんだ。
改めて、さっちゃんに会いたくなった。
まぁ実際には彼女は、人妻だから叶う筈の無い事なんだろうけど。
でも、もしもう一度会う事が有ったとして、今の明るい自分を見たら、彼女はどう思ってくれるのかな?
そんな事はどうだって良い、ただ一言「俺の事、好きになってくれてありがとう」って、言いたい。

詩音が、氷のカラカラという心地好い音を響かせながら、お茶を運んできた。
「はい、ご主人様ぁ、ご主人様の大好きなミントティーですぅ。私のは、アイスロイヤルミルクティーですぅ」
ストローを口にしながら、ちらっと詩音を見る。
僕の視線に詩音も気付いた。
「味、変でしたぁ? ご主人様ぁ?」
「えっ? いや、すごく美味しいよ詩音。」
僕は、ストローを口から離ししゃべり続けた。
「詩音・・・俺の事、好きになってくれてありがとう」
こんな恥ずかしいセリフを、ちゃんと言える様になったのも、さっちゃんのお影だよな。
もう、高校時代みたいに後悔はしたくない。
「ほぇ? 何ですか急に? ご主人様なんか変ですぅ。
でも、こちらこそありがとうございます。
こんな私を好きでいてくれて、感謝感謝ですぅ」
また、ゴロニャンっと、僕の膝の上に寝転がってきた詩音に、僕は優しくキスをした。


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「じゃあ、いつまでも元気でね、村下君」
改札を抜けた彼女は、振り返りそう言いながら、笑顔で手を振った。
「お前、ずいぶん強いんだな」、負け惜しみの様なセリフしか、僕は言えなかった。
「ううん、それはね」彼女はゆっくりと口を開いた。
・・・こんばんわ、御主人28号様こと、村下隆文です。

―――――――――7月25日(土)―――――――――
彼女いない歴20年の僕ですが、たった一度だけ女の子と付き合った事があります。
正確に言うと、付き合う前に終わった恋なんですけどね。

あれは、松舞高校の卒業式の日。
同じ、美術部で三年間クラスメイトだった山瀬さんに、制服の第2ボタンをくれって言われた。
同じ部活で、結構話す事も多かったし、何かと接する機会の多かった彼女に、僕は恋心を抱いていた。
彼女は、小柄だけどスタイル良くて中々の美人だ。
絶対に彼氏が居ると思っていた。
性格が暗くて、小心者、スタイルも顔も良くない僕の事なんか、選択肢に入る訳無いと思っていた。
でも、実は彼女も引っ込み自庵で、他の男子と付き合うどころか、しゃべった事もないらしい。
そんな事なら、思い切って告白しておけば良かったって、どれだけ後悔した事か。
彼女は大阪の大学に進学が決まっていたし、僕は
東京へ行く事が決まっていた。
今更、進学先を変える事なんて出来ないし、かと言って遠距離恋愛が続く保証も無い。
ただ一回だけ、一日だけ一緒に過ごしたい、彼女はそう言って泣き付いてきた。

そして、明日僕は東京に旅立つと言う日に、僕らは一日だけの彼氏彼女になった。
朝、松舞駅に現れた彼女は、いつもの見慣れた制服姿と違い、ニットのボレロに春らしいパステルカラーのチェックのスカートと、言うかわいらしい格好だった。
僕だって精いっぱいお洒落して行きましたよ。
生まれて初めてネクタイ結んだのも、この日でした。
デートコースは、中国山地の山間に有る小さな遊園地。
小さいながらも、観覧車に子供だましなジェットコースターも有るんですよ。
まだ、免許取立の僕に、山間部の道は無謀かもしれないけど、母親から借りた車で彼女とドライブに出かけた。
「ねぇ松下君、本当に運転大丈夫なんでしょうねぇ?」
「あっ山瀬さん、俺の事信用してないな」
「そりゃ、勿論でしょう」笑いながら彼女は言う。
そして、こう提案した。
「折角恋人同士なんだから、さん付けじゃなくて、名前で呼んでよ。」
「えっ?う~ん、分かった。山瀬さんは幸子だから、さっちゃんだね。俺は隆文だから・・・」
「たっくんで、いいかな?」
たっくんかぁ、何だか照れ臭いなぁ。
お互いに、「さっちゃん」「たっくん」と、相手の名前を呼んでみる
「・・・なんだか、照れ臭いね」
「ああ」
話題が途切れた。

「そう言えば、あの遊園地って、一年生の時に遠足で行ったよな!」
とっさに、予め準備しておいた話題の数々から、一つ目を、思い出ししゃべった。
「そうだよね。そう言えば覚えてる、あの時、沢田ちゃんと長田君にせがまれて、四人で観覧車に乗ったの。あの二人は、あれ以来ず~っと付き合ってるよね。」
「そんな事有ったなぁ」
もちろん、あの日の事は忘れる訳有りません。
さっちゃんと、気軽に喋れるきっかけになった日ですからね。
4人で、一緒に行動して一緒にお弁当広げて、沢山おしゃべりして、沢山笑って。
彼女って良いもんだなって、初めて思いました。
きっと、それは相手が、さっちゃんだったからで、他の女の子だったらそんな事思わなかったかもしれない。
だって、観覧車に乗った時、僕の横に座ったさっちゃんの笑顔に、胸がキュンって締め付けられて、心から可愛いって、もっと見ていたいって思ったんだよね。
「ねぇ、気が付いてた? 私、あの時以来、ず~っと村下君、ううん、たっくんの事が好きだったんだから」
えっ!? マジ?
じゃあ、二年以上も、お互い惹かれ合いながら、言い出せずにいたって事!
あ~、何回も告白する機会は有ったのに、言い出さなかったんだろう。
こんな事なら、振られるの覚悟で、告白しておけば・・・
「実は、俺も、あの遠足以来、お前の事が好きだったんだ。 お互い、もう少し勇気が有ればな」
「そうね。でもだから今日、こうやって二年間思い続けた人と、一緒に過ごせるんだから、それはそれで幸せよ、私」
う~ん、そんな物なんかね~?
「そりゃあ、二年間切ない日々の連続だったわよ。だからこそ、今日は思いっきり楽しまなきゃあ。 ほら、そんな暗い顔のたっくんなんて見たくないわよ。」
そう言って、さっちゃんは窓の外の景色に視線を逸らした。
泣いているのか? 今は、そっとしておいた方が良いのかな?

まだ、肌寒い春休み前、しかも平日とくれば、山間の小さな遊園地に、遊びに来る客なんて居る訳もなく、殆ど貸切状態です。
小さなジェットコースターにバイキング、コーヒーカップ、空中ブランコと、立て続けに乗りました。
「ねぇ、今度はメリーゴーランド乗ろうよ~」はしゃぐ、さっちゃんは今まで以上に可愛くて。
今、彼女の笑顔は、僕だけの物。そう思うと、余計に切なくなってきた。
ダメですよね、今日と言う日はもう来ないんだから、今の一瞬一瞬を楽しまなきゃ、本当に後悔だけが残っちゃいますよね。
「よ~し、メリーゴーランド行こうかぁ」そう言いながら差し出した手に、彼女はそっと頷き手を握ってきた。
お昼は、これぞデートの王道、彼女の手作りお弁当です。
「料理は得意じゃないから、笑わないでね。」
そう言うさっちゃんが、いじらしかった。
得意じゃないと言う割には、彩り良くまとまっていて、味も結構俺好みのお弁当だった。
「御馳走様~。あ~美味しかった。」
「男子がどの位の量食べるか分からなかったから、少なくなかった?」
「いや、お腹一杯だよ。しかし、さっちゃんの手料理が食べれるなんて、卒業式迎えるまで思っても見なかったな」
「私だって、たっくんの為に、お弁当作るなんて考えても見なかったわよ(笑)」
芝生が敷き詰められた広場に、二人座って、色々な話をした。
お互いの夢の話、高校時代の思い出、家族の話、お互いの進学先の学校の事、新しい住まいの話
それは、きっと一緒に過ごせなかった二年間を、取り戻すかの様だった。

「やっぱり、まだ肌寒いね」彼女は、そう言いながらニットのボレロを羽織り直した。
「もう三時かぁ。そろそろ、帰ろうか?」
彼女は少し寂しそうな顔をしながら、「そうね、松舞に着くのが遅くなっちゃうよね。」って、呟いた。
「よし、じゃあ最後に思い出の観覧車に乗ろうか」今の僕にしてやれる事は、それしか無かった。
「うん」そう言いながら、僕に腕を絡めてきた。

僕らだけの為に、動いている様な観覧車だった。
「見て~、向こうの山は、まだ雪で真っ白よ。そりゃあ、寒い訳よね」
無理にでも、はしゃごうとする彼女が、切なかった。

遊園地を後にして、松舞へと向かう。
行きと違って、お互い口数も少なめだった。
山の麓に近づき、周りの景色が新緑から、街並みへと変わり始めた頃、さっちゃんが呟いた。
「帰りたくない・・・今夜は一緒に居て。たっくんに抱きしめていて、もらいたい・・・」
思わず、聞き返しそうになった。でも、聞き返したら女の子に、恥をかかせちゃうよな。
「わ・・・分かった。」言葉少なに僕は答えた。
「後悔しないか?」って、野暮な事を聞きかけたが、止めておいた。
きっと、僕以上に決心が必要な事を、彼女は決断したんだから。
しっとり落ち着いたファッションホテルを選んで、僕らはチェックインした。
彼女の白い身体が、揺れている。その夜、僕は彼女の清純な身体を白く汚した。
18年間守り続けた純真が、赤い血となって流れていた。
そして僕らは、朝まで何回も愛し合い、抱き合って互いの鼓動を感じた。

松舞駅は、白い霧に包まれ、僕らを静かに包み込んでいた。
「楽しかったよ、たっくん。」
彼女は笑顔で、僕にそう呟いた。
「俺もだよ」
「いよいよ、お別れね。」そう言ってうつむく彼女。
僕は、彼女の方に向き直して、真顔で言った。
「好きです、さっちゃんの事がずっと大好きでした。そしてこれからも、ずっと好きです、だからこのまま、つ・・・」
不意に、僕の口が彼女の柔らかい唇で塞がれた。
一度唇を離し、互いを見つめ合った。
そして、彼女を抱きしめ、もう一度キスをした。
白い空気が、一層濃くなり僕らを隠す様に包み込んだ。
「それ以上言わないで、余計に辛くなるから」
彼女が呟いた。
そう言うと、彼女は改札へと歩き出した。僕は言いたい一言が言い出せずにいた。
代わりに出た言葉は、「お前はそれで良いのかよ」だった。
一瞬、歩みを止めた彼女だったが、意を決した様に又改札へと歩き始めた。

「じゃあ、いつまでも元気でね、村下君」
改札を抜けた彼女は、振り返りそう言いながら、笑顔で手を振った。
「お前、ずいぶん強いんだな」、負け惜しみの様なセリフしか、僕は言えなかった。
「ううん、それはね」彼女はゆっくりと口を開いた。
「笑える様になったのは、私を好きになってくれた人が居たからだよ。こんな私でも、人を好きになって、その人が私の事を、好きで居てくれる・・・恋愛が出来る事が分かったから。昨日の事は一生忘れないよ。初めて、男の子と一緒に居て楽しいって思った、大切な日だから。素敵な思い出は、素敵な思い出のまま、心の中にしまっておきたいの。遠距離恋愛になって、辛い別れで汚したくないの。だから、わがまま言ってゴメン。」
そう言うと、彼女は駈け出し、白い霧に消えた。
「ほんと、わがままだよ、さっちゃんは・・・」頬を伝う涙をやさしく霧が隠していった。

風のうわさで、彼女が大学を中退し結婚したと聞いた。
目をつむり、思い出の中の彼女に「幸せかい?」って、聞いてみる。
あの日と同じ笑顔で「うん、ありがとう」って、呟く彼女が瞼の裏側に浮かんだ。


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「ほい、送信っと・・・」
お客様への、返信メールを打ち終えて、一服する為に喫煙室へ向かう。
「そうだ、タバコ切らしてたんだっけ」
エントランスへと、俺は歩みを変える。
自動ドアが開いたとたん、ムッとした空気が俺の周りを包み込む。
「あ~、夏がやって来たんだなぁ」
そう呟きながら、夜空を見上げる。
こんばんわ、洋介です。
―――――――――7月24日(金)―――――――――
折角の週末だと言うのに、クレーム処理の為今日も残業です。
去年の夏は、まだ楽しかったよなぁ。
もう、松舞には居なかったけど、大阪だったから週末毎に松舞に帰ったり、日向が大阪に遊びに来たり。
でも、今年の夏は、俺が東京に転勤になっちゃたから、会えるのはお盆くらい。いや、お盆に帰省出来るかすら、微妙です。
「今年は、日向の水着姿が、見れないなぁ」ふっと、呟いてみる。少しぽっちゃりしてるけど、ナカナカ水着姿も可愛いんですよ♪
たばこ屋の灰皿の前で、買いたてのタバコの封を開けて火をつける。
ゆっくりと紫煙を吸い込む。
額から汗がにじみ出て、頬を伝う。
「しっかし、暑いなぁ~」梅雨が明けたとは言え、空気はジメッとしていて、不快に絡み付く。
「あ~、松舞に帰りてぇ」愚痴っても、なんの解決にもならないのに、つい口走ってしまった。
もし、今の会社に勤めず、松舞に住んでいたら、今、この瞬間、俺は何をしているのだろう?
やはり、他の会社で残業しているのだろうか?
それとも、日向と楽しくおしゃべりでもしているのだろうか?
日向の部屋で?いや、それはあり得ないよな。
じゃあ、俺の狭いアパートでか?
いや、案外ドライブ中の車の中?
ホテルで、互いの温もりを確かめ有っているかもな?
いや、ひょっとしたら、俺と日向は結婚しているかもしれない。
考えたくは、二人別れて、別々の道を歩んでいるかもしれない。

長くなったタバコの灰が、ポトリと落ちた。
たばこ屋の前の歩行者信号が、青の点滅から赤に変わる。
目の前を残業帰りのカップルが、手を繋ぎながら、楽しそうに通り過ぎる。
意味もなく、ニヤッと笑ってみる。
同じ様に手を繋いで歩く俺達を思いながら。
くだらないジョークで日向が笑う。
その笑顔を見て、俺も笑顔になる。
そんな事をただ繰り返しながら、どこまでも歩いて行く。
目的地なんて無くたっていい。
いや、無い方がいい、永遠に日向と手を繋いで歩いて行けるから。
けたたましいクラクションの音で、我に帰る。
気が付くと、タバコはフィルターの所まで、燃え尽きていた。
古いタバコを灰皿に捨て、新しいタバコに火をつける。

ふ~っ。
今、こうしていられるのも、今の会社に就職して、大阪東京と転勤して来たからだよな。
もし、転勤を蹴っていたら、翌日、自動車事故で死んでいたかもしれない。
そう考えたら、少なくとも今時点までは、現状に感謝しなくちゃいけないかな
なんて、哲学的な事を考えたりもする。
今この時点、日向は間違いなく俺の物なんだから。
そして、一分でも一秒でも長く俺の物でいて欲しい。
昔の唄じゃないけど、「お前のお影で、いい人生だったと俺が言うから、必ず言うから」
そう言う風に死ねたら、それが一番理想かなって思う。

また、信号が青の点滅から赤に変わった。
あの信号が青に変わったら、また歩み始めよう。
日向に「お前のお影で、いい人生だったと」言える、その日に向かって。
深くタバコを吸ってみる。
頼りなく揺らめく紫煙が、湿った空気に溶けていった。



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秋葉原は今日も、朝から人が多くて、人息れにむかえりそう。
う~、朝から、暑いです。。・゚・(ノД`)
上からは太陽、下からはアスファルトの副射熱・・・全身コンガリ焼き上がっちゃいます。
僕の出身地、松舞町とは異質の暑さです。
初めまして、村下隆文って言います。
都内の専門学校に通う20歳です。彼女居ない歴20年です。
―――――――――7月20日(月)―――――――――
 秋葉原
(・_・)エッ、なぜ、朝から秋葉原に居るかって?
そうそう「オタク」だから・・・
違~う(゚Д゚)凸
デートですよデート。(^◇^)v
何で秋葉原かって?
うん、話せば長くなるんですが・・・

名前は、紫苑って言うネットフレンドなんです。紫苑はもちろんハンネです(ちなみに僕のハンネは賛否両論有るんでしょうが「御主人28号様」です・・・)
つまり、今日はオフデートなんですよ♪(ただのオフ会じゃないの?って、言われそうですが、紫苑ちゃん自らオフデートって、書いていたから間違いなくデートです!)
ん?出会い系?
ちっ違いますよ~、普通にアーティストのBBSで、仲良くなったんですぅ(・へ・)フンッ
紫苑ちゃんの、パソコンが調子悪いって書いてあったから、色々と解決方法を教えてあげたんです。
本当は禁止なんですが、そのうち直にメールでやり取りする様になって、意気投合しちゃって、今回パソコンを新調したいってメールが来たから、「んじゃあアキバに買いに行こうか」って話になって・・・
やっぱり、デートじゃないじゃんって・・・( ̄□ ̄;)!!
そう言えばそうですねOh my god!/( ̄口 ̄;)\
ん~でも、紫苑ちゃん自体がデートだって言ってるし・・・
大体、考えてみたら向こうは高校生だって言ってたけど、年齢サバ読んでるかも知れないし・・・
いや・・・それ以前にネカマだったり・・・
いたずらだったりして・・・ρ(..、) ヾ(^-^;)

ちょぴり、ブルーな気分とワクワク感と入り混じった気分で、待ち合わせ場所のANIMATEの前に立っていました。
もうすぐ待ち合わせの12時です・・・
しかし、さすがアキバですね~色々な種族が入り乱れてます・・・一般ピーポーやオタク系などの人間に混じって、スーパーサイヤ人や猫とのハーフの人達や・・・(笑)
メイドさんも、沢山居ますね・・・必死にチラシを配ってます。
一人のメイドさんが電気街口の方から歩いて来て、僕の前に立ち止まりました。
あ~こら、折角のデート?なんだから、邪魔しないでくれよ。メイドカフェなんか行ってる場合じゃないんだよ~
「御主人28号様さんですか?」
あ~、だからこんな街中でそのハンネを言うなぁ~、もう少しまともなハンネにしておけば・・・!
∑(゚ω゚ノ)ノ えっ?えぇ~? なんで僕のハンネを知ってんだ、このメイドさん?
「やっぱりそうですね、初めまして紫苑です」
改めて、彼女の方をじっと見つめる・・・
ゴスロリファッション?・・・いやどう見てもメイド服です・・・
「あっ、はい・・・御主人様28号です・・・」
ひょ、ひょっとして、新手のキャッチに引っ掛かってしまったかぁ(´A`)=3
「えへぇ、ビックリしちゃいました?この格好・・・、この格好で山手線乗るのって、結構度胸いったんですよ~」
あ~そんなアニメ声で訴えられたら、僕の潜在意識の中のオタク魂に火が点いちゃうじゃないですか。
「あっ・・・コスプレお嫌いですか?」
「いっいや・・・全然・・・ただちょっとビックリしただけ・・・」
「すっスイマセ~ン、御主人28号様~」深々と頭を下げる紫苑ちゃん。
う~ん、僕のハンネがシチュエーションにぴったりハマってます(笑)
「そんな、謝る事無いって・・・ そうだ、お昼もう食べちゃった?」
「えっ?まだですぅ~御主人28号さまぁ~」
・・・・・
まっまぁ、いっかぁ~

いっつもなら、その辺りのラーメン屋で、済ます所なんですが、今回は何て言ったって、デートですから。少しは、オシャレなお店で食事したいですよね。
もう一度言いますけど、デートですから~ぁ
ネットであれこれ調べた結果、移動距離とお財布の中身と相談して、秋葉原UBXの中の、コース料理のお店に行きました。
「うわぁ~、結構オシャレなお店ですねぇ。いっつも、秋葉原行くと、ケンタかラーメンばっかりですから・・・」
うっ・・・、ラーメン屋でも全然OKだったって事かぁ・・・
「へぇ~紫苑ちゃん、アキバとか来るんだ。」
「はい、友達とちょくちょく来てますよ」
友達?・・・
「あっ、もちろん女友達ですよ。男子の知り合いなんて居ないですからぁ」
「そっそうか・・・。でも、女の子同士でアキバ行っても、遊ぶ所少ないしょ?」
「う~ん・・・そうですよね・・・いっつも何してるんでしょう私達・・・てへっ」
ペロッて舌を出す紫苑ちゃんが、妙に可愛くって、思わず見惚れてしまいました。
「やだ~、御主人28号さま~。そんなに見つめないで下さいよぉ」
この店でその名前は~
さすがに秋葉原とは言え、周りとの温度差を感じます。
「そう言えば、未だ本名言って無かったよね。俺、村下隆文。」
彼女は少し困った顔をしたけど、「私の本名は、秘密ですぅ~」
「あっ、ずるくねぇ(笑) まぁ、良いけどね。みんなからは、よく村さんって呼ばれてる。」
「え~、折角御主人28号様って、抵抗なく言える様になったのに~」
う~ん( ̄~ ̄;) 困った・・・
「でも、御主人28号様が、そう呼べっておっしゃるなら、そうするですぅ」
・・・そんなうるうるした瞳で見つめないでくれ~マジでやばいよ俺・・・
「ところで紫苑ちゃん、今回、どんなパソコンに買い換えたいの?」
「え~っとぉ、紫苑はですねぇ・・・う~ん・・・パソコンの事よく分かんないですからぁ。とりあえず、iPODに繋げれて、外でもネット出来るんなら、それで十分ですぅ」
「う~ん、それなら、持ち運びやすいネットブックが良いかな。あっ、オンラインゲームとかするの?」
「はい、すごく大好きですぅ。メイプルストーリーやテイルスウェイバー結構ハマりましたね」
「テイルスは、僕もハマったなぁ 案外、一緒にパーティー組んでたかもね。」
「あはっ・・・それは有りうりますね ねぇ今度一緒にパーティー組んでみましょうね」
「そうだね・・・その時は又連絡するよ・・・あっ、で、話戻るけど、オンラインゲームとかするなら、スペックが良い方がいいよねぁ・・・予算は如何ほど?」
「一応、3万円持ってきました、後、コンビニか銀行行けば、2万は下ろせますぅ」
う~ん、最高5万かぁ・・・ちょっと予算的には厳しいかな・・・
「ネットブックだと、結構CPUに負担かかっちゃいますよね・・・。きっと外でまでオンラインゲームする事無いですから。家にはもう一台、デスクトップパソコンが有りますし・・・」
えっ?なんだ他にもパソコン有るんだ・・・結構リッチだなぁ(・_・;)
「じゃあ、ネットブック路線で決定だね」
「はいぃ~そうしますぅ~」

「あ~、美味しかったですぅ~、ピザとパスタのコース料理って、初めてぇ。でも本当に御馳走になって良かったんですかぁ?」
「んっ? いいよいいよ。」
「じゃあ、今度は紫苑がデザート御馳走するですぅ。その前にパソコン見に行くですぅ」
紫苑ちゃんは僕の腕を掴んで、グイっと引っ張った。
参ったなぁ・・・いきなり積極的なんだから・・・
「あのぅ~村下さん、お店を出た事ですし、また、御主人様って呼んでもいいですぅ?」
いや・・・それは、ちょっと・・・あ~、そんなに瞳をうるうるさせながら、見ないでくれよ~
あ~、もういいやぁ、こうなったらトコトン今日のデートを楽しむぞ。
「いいよ、紫苑ちゃん」
「わ~い、紫苑ギガント幸せだお。ありがとうございます、御主人28号さまぁ」
「いや、28号は要らないから(笑)」
「はい、御主人様」
そして、僕達は中央通りの一本裏側に有るパソコンショップが集まった通りへと、歩きだした。
歩きながら、オンラインゲームや、そこから派生してアニメや漫画の話題に・・・
僕も、そっちの少しオタクっぽい話題、嫌いじゃないから結構話が弾んじゃってます。
もし、もっと早く紫苑ちゃんと知り合っていたら、成人式を迎える迄、まともに女の子と話出来ないなんて事は、無かったんだろうなぁ
・・・そう言えば、いつ治ったんだろう?女の子の前で緊張する癖。
そうか、治ったと言うよりは、紫苑ちゃんがこんな明るい(明る過ぎ?って言うか脳○気?)性格だから、普通に喋れてるんだろうな。
「御主人さまぁ~、どうにかしましたあぁ?」
「えっ、ごめんごめん・・・しかし、紫苑ちゃんって、ほんと明るい女の子だね。」
「やだ~、御主人さまぁ~、紫苑そんな事言われたら照れちゃいますぅ」
萌え~・・・う~ん、この甘えたアニメ声は、癖になりそうだ・・・

ひと通りショップを回り終わった頃には、午後3時を回ってました。
「御主人さまぁ~、紫苑疲れたですぅ~どっかで休憩したいですぅ」
そうだよな、ひと通りショップ回って目星を付けたし・・・休憩しながら作戦会議でもしようかな・・・
「ゴメンゴメン、気が付かなくって、どっかで冷たいジュースでも飲もうか?」
「なら、イイお店を紫苑知ってますぅ・・・そこのクレープがギザウマス」
そう言うと、紫苑ちゃんは、僕の手を握って歩き出した。
せっ積極的だなぁ(^^ゞ
「ここですぅ、御主人さまぁ・・・あっ、お店の中では『御主人さま』は禁止ですよね♪」
僕は、コーラとチョコクレープ、紫苑ちゃんはオレンジジュースにフルーツクレープを頼んだ。
「あっ、紫苑ちゃんのお勧めの店だけあって、確かに美味しいや。」
「でしょ~、ここのクレープは、仲間内でも有名なんですよぉ」
仲間内?なんの仲間内だぁ(゜_。)?
「それで、よさそうなネットブック有りましたぁ?」
「あ、ああ・・・最初の方に行った、ソフマップの中古デジタル・モバイル専門店が、一番品揃えも多くて、もしイーモバイルも一緒に買うんだったら、すごく安くなるよ。あっ、でも紫苑ちゃんは未成年だから、親の承諾書とか居るかぁ」
「・・・多分・・・いや、絶対大丈夫だと思います・・・」
「そう? じゃあ、これ飲んだら行こうか」
「はいなのですぅ~」

「御主人さまのお蔭で、ギザやっすく可愛い色のネットブック買えましたぁ」
紫苑ちゃんは、ピンクのネットブックを1円で購入する事が出来て御機嫌です。
ただ、不思議なのは、僕が他のPCをチェックしている間に、ちょちょちょっと、パソコンを購入した事です。
クレープ屋でも確認したけど、本当に親の承認とか大丈夫だったのかなぁ?
「それじゃあ、御主人さまぁ、今日は本当にありがとうございましたぁ。紫音は門限が有るから、もう帰りますぅ また、デートに誘って下さいねぇ~」
そう言いながら、紫苑ちゃんはメイド服のスカートを翻しながら、雑踏の中に消えていった。
う~ん、本当紫苑ちゃんはギザカワユス♪
でも、本当に次のデートなんて有るんだろうか? ちょっと、不思議ちゃんだけど、絶対彼氏が居てもおかしくないよな・・・
♪♪♪
!?メールです、ひょっとして紫苑ちゃんから?
・・・・・・残念、同じクラスの友人小倉からでした・・・
何何・・・「合コンメンバーに欠員が出たから、来ないかって? 今日6時に御茶ノ水駅前に集合。料金は前払いで徴収済みだから、要らないぞ」かぁ・・・
そう言えば、あいつ等今夜アニメ系専門学校の女子達と、合コンするって言っていたなぁ
うん、なんか、紫苑ちゃんに勇気をもらっちゃいました。参加してみようかぁ。
「了解、直ぐに向かう」そう短く返信メールを打つと、僕は中央線に飛び乗った。

御茶ノ水に着いたのは、ちょうど6時でした。
雑踏の中に、友人達を見つけ軽く手を挙げる。
あっちも僕に気付いて、手を振り上げている。
「いよ、村さん、女子高生とのデートはうまくいったか?・・・うまくいってんなら、今、こんな所に居ないかぁ」
ははは・・・って笑われた。
いや、小倉よ、笑っている場合じゃないし・・・
「ところでなぁ、今日の合コン相手だけど、他のクラスの奴に聞いた話だと、あの専門学校の女子は、オタクが多いらしい・・・そう所謂、腐女子の集まりらしい。」
「マジ? ひょっとしてそれで、ドタキャンが出たの?」
小倉は、コックリ頷いた。他のメンバーも、少し冴えない顔をしている。
「なぁ・・・あの子たちじゃねぇか?」メンバーの一人が、交差点の向こうを指差した。
すわっ・・・セーラー服着た女の子や、訳の分かんないコスチューム身に纏った女の子の集団が、歩いてくるぞ・・・Σ(゜ロ゜ノ)ノ ヒィィィィ!
その中に、見覚えのある洋服を見つけた・・・
紫苑ちゃんと同じ、ゴスロリチックなメイド服だ。
えっ!?紫苑ちゃん?
向こうも、こっちに気付いてずごく焦っている・・・やっぱり紫苑ちゃんだ。
「こんばんわ、村下さん・・・てへっ」
いや・・・てへって え~っ/( ̄口 ̄;)\
「あれっ?、何、知り合いなの?」他の女の子が、紫苑ちゃんに声をかけた・・・
「うん、ちょっとね」
「何だ、村さん、女子高生とデートしてる場合じゃないじゃん、こんな可愛い子と知り合いなんて」
いや・・・その女子高生が目の前に立ってんだけど・・・
「まぁ、立ち話も何ですからぁ~」そう言って、小倉が合コンメンバーを、飲み屋に案内した。

一頻り、騒いだ後、紫苑ちゃんが僕の横に座って来た。
「へへっ、驚いたでしょ、村下君・・・ごめんね、騙す様な事になっちゃって。実はね、うちの高校生になる妹が、勝手に私の名前を捩って、BBSに書き込んでたのよ。私の本名は、福富紫苑・・・紫に苑じゃなくて、詩に音で、詩音。パソコンの調子が悪いのは、本当よ。妹のパソコンなんだけどね。」
「いつ、妹と入れ替わったんだよ?」
「ん~っとね、パソコンの調子が悪くなってからかな。うちの妹はパソコンが実は苦手で、村下君との書き込みが続く内に、どんどん専門用語が飛び出す様になっちゃって、私が代わりに打ち込んでたのよ。だから、村下君が知ってる紫苑の殆どは、私の話なの。本当は今日その事をちゃんと伝えたかったんだけど、村下君はひょっとしたら、23歳の詩音じゃなくて、高校生の紫苑が好きなんじゃないかって、思ったら言いだせなくなっちゃって・・・だって、今日1日すごく楽しかったから・・・」
ふんふんって、聞いていた・・・23歳かぁ
「23!・・・俺より年上じゃん。紫苑ちゃんじゃなくて詩音さんじゃんかΣ(・ω・ノ)ノ!w」
「本当にゴメン・・・年上はストライクゾーンじゃない?」
う~ん・・・紫苑ちゃんじゃなかったら、悩む所だけど、紫苑ちゃんいや、詩音さんなら、全然OKだ。
「そんな事ないっすよ、詩音さん」
僕は、彼女の眼を真っ直ぐに見詰め、喋り続けた。
「俺、今日1日すごく楽しかったです。女子高生とか全然関係ないですよ、紫苑ちゃん・・・いや詩音さんと、もっと過ごして居たかったです。今度は詩音さんとして、デートしたいです。」
「えっ?」
うわ~、酔いに任せて、言っちゃったよ~・・・どうしよう・・・振られちゃうんかな?
詩音さんは、少し照れ臭そうに、首を縦に振ってくれた。
盗み聞きしていたのか、周りの連中が、俄かに騒ぎ始めた。
「お~カップル誕生~」「やったね、村さん」「恋愛氷河期抜けたね」口々に好きな事を叫んで囃したてる。
改めて、みんなで乾杯になった。
小倉がすりすりと、寄って来た。
「いや~、しかし、村さんがメイドマニアとは知らんかったなぁ・・・」
あっ、そう言えば、今日1日一緒に居たから、すっかり気にならなくなっていたわぁ( ̄○ ̄;)
小倉が詩音さんに話しかけている・・・
「詩音ちゃんって、メイド服似合いますねぇ~」
「えっ?何?気安く詩音ちゃんって、話しかけないでくれる? 詩音ちゃんって、呼んで良いのは御主人様だけなんですからね。ねぇ~御主人さまぁ」
そう言いながら、僕に体を摺り寄せて来た。
すわっ∑(゚ω゚ノ)ノ キュ!!! 詩音さんすっかり出来上がっちゃってます。
しかも、ツンデレ系になっちゃってます。(´A`;)ゞ
「う~ん、御主人さまぁ~」
甘えてくる詩音さんは、昼間よりもっとギザカワ・・・いや、ギガントカワユス
でも、僕の彼女は腐女子なんだぁ~/( ̄口 ̄;)\



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「え~っと・・・後、買い忘れた材料は、無いわよね・・・」
真新しい黄色いフライパンに、黄色い柄のフライ返しまで、新調しちゃいました。
エコバッグの中からは、ニョキっとフランスパンとセロリが顔を覗かせてます。
おはようございます、朝葉です。
―――――――――7月18日(土)―――――――――
今日から、3連休ですね。
そして、東京も梅雨明けしました♪
いよいよ夏本番です♪
ちょっぴり、早くバイト代が入ったから(私は、バーガーショップ、颯太君はコンビニでバイトしています)、夏バテ気味の颯太君に、スタミナの付くご飯を作ってあげる事になりました。
「朝ちゃん重いだろ、エコバッグは俺が持つよ。」そう言うと、ひょいっと私の手から、エコバッグを颯太君は、取り上げた。
「あ、ありがとう」そう言いながら、私は自由になった右手を、颯太君の左手に絡ませてみた。
少し、照れくさそうに微笑む颯太君を見る。
う~ん、幸せです♪

彼の部屋は、2階の南角の部屋。
窓から、沢山の光が降り注ぐ明るい部屋です。
小さなベランダには、二人で買ったハーブの寄せ植えが、風になびいて・・・ギョッ!Σ(・oノ)ノ
ちょ、ちょっとぉ~萎れてんじゃないの~
う~ん、ここの所の陽気でスィートバジルに、イタリアンパセリに、ミントも、全部勢いを無くしちゃってます。(」゜ロ゜)」ナント
颯太君は、農業科出身だから、しっかり管理しているものと思っていたんですが、甘かったみたいです。ヾ(≧へ≦)〃
せめてもの供養に、今日はサラダに混ぜて美味しく頂いちゃいましょう(笑)

さて、冷たいレモネードで一息ついたら、さっそく料理の準備開始です。
颯太君も、私の努力の甲斐(笑)有って、少しずつ料理を覚え始めたんですよ。
今日だって、助手としてしっかり働いてもらいます♪
「颯太君、先ずは野菜とハーブ洗ってくれる?」
ホイホイって言いながら、流しに野菜を運んで、優しく洗う颯太君。私はその横で、ランプ肉の塊を下ごしらえします。
「颯太君、野菜は一口大にちぎってね。・・・う~ん、一体どんな大きな口開けて食べれって言うのよ~(笑)」
「こんな口」そう言いながら颯太君は、口を大きく開けてみせる。
思わず、二人で顔を見合わせて大笑いしちゃいました。
「あのね颯太君、こう言う塊のお肉は、表面を強火で焼いて、肉汁を中に閉じ込めてから、弱火でじっくり焼き上げるんだよ」
振り返ると、彼は冷蔵庫からビールを取り出して、飲み始めてました。( ̄ー ̄;ゞ ヒヤリ
「あっコラ、未青年が朝からビール飲んでるのよ~」
「だって、俺、喉がカラカラなんだぜ」そう言いながら飲みかけの缶ビールを私の目の前に差し出す。
「まぁ、確かにね」そう言いながら缶ビールを受け取り、私も少し口にする。
う~ん、冷たくて美味しいですぅ
そうだ、萎れたミントは、アイスミントティーにしようかな。
ティーポットに沢山のミントと砂糖を入れて、そこに熱湯を注ぐ。
後は、冷ましてからガラスのポットに移して冷蔵庫で冷やすだけ。

さて、ローストビーフを焼いている間に、副菜を作ります。
今日は、パスタの3種盛り合わせです。
ただ単に、何パスタを作るか、悩んじゃってしまい考えるのが面倒になったから、3種類作るんですけどね
バジリコパスタと、たらこパスタ、そして颯太君が大好きなペペロンチーノです。
たっぷりのお湯に、塩を少し入れパスタを茹で上げます。
「じゃあ颯太君、タラコをパックから出して、薄皮ごと刻んじゃってくれる?それが終わったら、大葉を刻んで、ニンニクも1片皮を剥いて・・・うん、そうそう潰してからみじん切りね」
颯太君も、ずいぶん手順を覚えたみたいです♪

あ~しかし暑い・・・
もし今一人だったり、かなかなと一緒だったら、きっとスカートの裾を持ち上げてパタパタ風を送っているかもしれません、一寸はしたないですけど・・・
なんて、考えているうちに、キッチンタイマーが茹で上がりを知らせてくれました。
茹で上がったパスタを丁寧にトングですくい上げて、1/3程残してボールに移したら、手早くバターを落として馴染ませます。「颯太君、じゃあボールの中のパスタを半分に分けて、半分はタラコを混ぜて、お皿に盛りつけてから大葉を散らしてぇ。もう半分には、棚に有るバジリコを振ってよく混ぜて、飾り付けに萎れちゃったスィートバジルを盛り付けちゃって♪」
颯太君が、2つのパスタを仕上げる間に、私はペペロンチーノを作らなくっちゃ。(^^ゞ
フライパンに、エキストラバージンオリーブオイルを入れて、刻んだ鷹の爪とニンニクを入れて、弱火で温めていきます。
オリーブオイルに十分にニンニクの香りが行き渡ったらニンニクと鷹の爪を一度取り出して、残りのパスタを入れて軽く炒めます。
それをお皿に盛り付け、フライパンから上げておいた鷹の爪をふりかけ、さらに油でカリカリになるまで揚げたニンニクのスライスを乗せれば、ペペロンチーノの完成です。
そろそろ、ローストビーフも、いい感じに焼けてきました。
ローストビーフをフライパンから取り出し、まな板の上で少し冷まします。
すぐに切っちゃうと、切り口から肉汁が染み出て、ジューシーじゃなくなりますし、見た目もホラー映画みたいですからね。Σ(゜ロ゜ノ)ノ ヒィィィィ!
フライパンに残った肉汁に水を少し加え、火に掛けバターを落として、小麦粉を加えてとろみを付けます。
隠し味に少し醤油を落として、ワサビを加えて、ひと煮立ちさせれば、和風わさびソースの完成です♪
そうそう、デザートを忘れてました。w(°0°)w オォー
冷蔵庫を覗くと、昨日作ったカルボナーラパスタの残りの材料の生クリームと、先週チョコっと里帰りした友達のお土産のカステラが・・・
う~ん、シンプルにカステラに生クリームを添えようかなぁ?
「朝ちゃん、この前言っていた、チョコケーキ作ってよ~」
最近気が付いたんですが、颯太君って結構甘い物が大好きなんですよね。
「ん~、食べたい?」
うんうんって、大きく頷く颯太君が、妙に可愛くって思わず「分かった」って言いながら、ほっぺにチュッてキスしちゃいました。(●´ω`●)ゞテレ

チョコケーキと言っても、火を使わない小さな子供でも簡単に作れるケーキなんです。
ネットサーフィンしてて、偶然に見つけました。
先ずは、カステラをおろし金で、粉々に崩します。
そこに、ココアパウダーと生クリームを加え、香り付けのフレーバー・・・バニラエッセンスとかラムエッセンスとか(今回は、颯太君がカクテル用に買っていた、ホワイトラムを惜しげもなくチョイス)を加えて、よく混ぜ合わせます。
しっとりした生地に仕上がれば、後は手で丸めてボール状にするか、焼き型に押し詰めて冷やすだけ。

さて、最後の盛り付けしちゃいますかぁ。
かなり大口の一口大に切った、レタスやキュウリ、セロリにトマト、あと飛び入り参加のイタリアンパセリとスィートバジルを、大きめのお皿に盛り付けます。
仕上げに、おやつのポテトチップを粉々して振りかけます。
ドレッシングは、シーザードレッシングをチョイス♪
ローストビーフは、肉の繊維方向を見極め、繊維を太刀切る様に切ります。
以前作った時は、切る方向を間違えて、いくら噛んでも噛みきれない安いお肉みたいな(まぁ、ランプ肉自体安いんですが)仕上がりになっちゃったんです(T-T )( T-T) ウルウル
薄く切ったら、お皿に盛りつけ白いスフレ皿入れた、わさびソースを添えます。
ふぅ~何とか、お昼に間に合いました(*^-゚)vィェィ♪
「朝ちゃん、今日は何飲む? ワインクーラーかラムベースのダイリキ、キューバリバー辺りが作れるけど・・・後は、ビールベースのジンジャーガフか、レモンシャンティー、コロナビールっぽくライムを絞るのも出来るけど・・・飲み易いのは、ワインクーラーかな~」
ふふ・・・最近颯太君は、カクテル作りにはまっちゃってます。
「そうねぇ~・・・じゃあワインクーラーちょうだい♪」
カクテルと言っても、オレンジジュースとワインを混ぜただけなんですが・・・
颯太君は、冷蔵庫からジンジャーエールとビールを取り出しています・・・ジンジャーガフを作るみたいです。

「それじゃあ、あらためて、乾杯~」
グラスを軽く重ねます・・・
オレンジジュースの酸味と甘み、ワインの香りが調和してとっても美味しいです。
「んじゃあ、早速、ローストビーフ頂きま~す!」
「あっ、颯太君ちゃんと野菜も食べてよね、繊維質もしっかり取らなきゃぁ」
「う~ん、このわさびソース美味しいねぇ・・・ご飯にかけて食べたいくらい・・・」
こらこら、人の話聞いてんの(-“-)
颯太君が、ソースを絡めたローストビーフを、私の口元に運ぶ。
少し照れくさいけど、パクッて頬張ってみる。
あっ、確かに、ワサビの香りと醤油の香り、バターの香りが程良く調和していて、美味しいです。
(正直、自分でもビックリ)
「お~、ペペロンチーノ、唐辛子が利いてるねぇ~。バジリコパスタも美味しいし・・・。そう言えば、このスィートバジルの葉っぱ使ったパスタも有ったよね~?」
ああぁ・・・それは確か・・・ジェノベーゼですね。
「うん、ジェノベーゼ。じゃあ今度作ってみようか? あと、ピザに乗せてピッツアマルガリータなんてのも有るよ。確かこの前ネットサーフィンしてたら、レシピが出てた。」
「あっ、マルガリータって、そう言うピザなんだ。さすが料理に関しては詳しいね~」
「関しては・・・! ひっど~い(笑)」
たらこパスタを頬張りながら、私は拗ねたふりをしてみる。
「あはっ、ゴメンゴメン」
「罰として、洗い物は全部お願いね・・・」
「うっ、マジ?」
と言っても、作りながら洗い物もしてたから、実際テーブルの上に有る食器類位なんですけどね。

・・・・・・さすが男の子です。
テーブルの上に有ったローストビーフにサラダにパスタ、全て無くなっちゃいました。
少し位は夕ご飯のメニューに加えれるかと、思っていたんですが・・・
まぁ、作る方としては、ここまで綺麗に食べてもらえるのは、嬉しい限りなんですが♪
「う~ん、何回洗っても、お皿がヌルヌルした感じが取れないなぁ・・・」
ブツブツ言いながらも、颯太君はちゃんとお皿を洗ってます。
ふふっ・・・
さて、ご褒美のデザートを私は仕上げましょうかね。
四角い焼き型に入れたチョコケーキを冷蔵庫から取り出して、丁寧に型から取り出します。
均等に切り分けて、残りのココアパウダーを振りかけます。
残りの生クリームをホイップして、お皿に添えて、ミントの小さな葉っぱを乗せれば出来上がりです。
ティポットにオレンジペコの茶葉を入れて、お湯を注ぎ蒸らします。
・・・颯太君、洗い物終わったみたいですね。
チョコケーキとティポットを、テーブルにセットして、ゆったりと午後のティータイムです。
颯太君が、生き残った部分のスィートバジルを、小さな鉢に植え替えて、テーブルの上に置きました。
うん、おしゃれな感じですよ♪

オレンジペコの香りに包まれながら、ゆったりした時間が流れます・・・
う~ん、本当、幸せです・・・
一生このままで居れたら最高ですよね。
もちろんテーブルの向こうの笑顔は、颯太君です。
そして傍らには、私たちの子供が、口の周りをココアパウダーで汚しながら、チョコケーキを口一杯に頬張って・・・
ほっぺに付いた生クリームを、ほっぺにキスする様に取ってあげながら・・・
んふっ、考えただけで、幸せです♪
視線を颯太くんに移すと・・・
∑(゚ω゚ノ)ノ
目の前に、口の周りをココアパウダーで汚しながら、チョコケーキを頬張る颯太君が居て・・・
う~ん、ここに子供みたいな男の子が居たわぁ(笑)
生クリームはほっぺに付いてないけど、今日何回目かのキスをほっぺにした・・・。ハーブ




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