松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2010年01月

「村田先輩、今日お誕生日ですよね。おめでとうございます」
3時のコーヒーを、給湯室で入れていたら、事務所の女の子に声をかけられた。
「おっ?おお・・・良く知ってたな、友田さん。」
「そりゃあ、ず~っと1月21日誕生日だからって、聞かされてましたからね、村田先輩に。」
「あれ?そうだっけ?・・・(笑)」
「それで、今夜なんですが、何か予定入ってます?村田先輩」
こんばんは、洋介です。
―――――――――1月21日(木)―――――――――
友田さん・・・通称友さんは、去年短大を卒業して、うちの会社に就職した目のクリっとした、中々かわいい女の子です。
「今夜?特に用事は無いけど、どうして?」
「良かったら、駅前に出来た多国籍料理のお店に行きませんか? 折角のお誕生日なんだから、奢りますよ♪」
「マジ?でも、後輩に奢ってもらうのはなぁ・・・」
「その代り、2月の私の誕生日には、もっと良い店に連れて行ってもらいますからね。」
「うう・・・それって、ありがたみ薄いなぁ・・・でもまぁそう言う条件なら、まぁ良いかな。」
「じゃあ村田先輩、今日は残業無しですよ。」
そう言うと、彼女は廊下を歩いていった。

「お待たせ、友さん。いや~帰りがけに部長に捕まっちゃって・・・」
「大丈夫ですよ、それよりお腹空きましたぁ、早く行きましょうよ。」
そう言うと、彼女は僕の腕をつかんだ。
うっ・・・最近の若い子は、中々大胆ですね(^^ゞ
「村田先輩、折角の誕生日なのに、本当に予定無かったんですか?」
「あぁ、コンビニでケーキでも買って食おうかなって、思ってた位かな。ここ数年、誕生日なんてお祝いしてもらってないしな。」
「結構寂しい日常送ってますねぇ。」
「大きなお世話だ。そう言うお前だって、良いのか俺なんかと飲みに出てて、彼氏とかと行かないか普通」
「あ~、村田先輩。それセクハラですよぉ。どおせ私は寂しい一人身ですよ~だ」
「悪りい悪りい。しかし・・・へぇ~、友さん彼氏募集中なんだ。」
「そおですよ、白馬の王子様探してるんですけどね。村田先輩、紹介して下さいよ~。」
「ん~、目の前に良い男が居るじゃん」
「え~っ、私の目の前には、そんな人居ませんよ。変なオヂサンなら、一人居ますけどね(笑)」
「あっ、ひで~な。2月おごってやんないぞ、そんな事言うと。」
「ん~、お互い様ですよね。でも、村田先輩は彼女居ないんですか?」
うっ、居るっちゃあ居るんですが・・・。
「まぁ、居たとしても今夜は私のモノですからね、村田先輩は。」
そ・・・それって・・・どう言う意味に取れば、正解なんだ?
携帯の着メロが鳴った・・・未来予想図Ⅱ・・・日向からのメールだ。
「村田先輩、着メロ鳴ってませんか?」
「あぁ、でもこの着メロは家族からだから、無視して大丈夫。」
「とか言って、彼女からじゃないんですかぁ? だったら、携帯開かせませんよぉ」
こいつ、かわいい顔して、結構小悪魔だな~

「へぇ、結構落ち着いた感じの店だな」
店員に案内された席に着く。
「そうですね、メニューも一杯有りそうですよ。」
そう言いながら、友さんがメニューを僕の目の前に差し出す。
「先ずはビールだな。そっちもビールで良いか?」
「あっ、私、ビール苦手なんですよ。カクテル何が有ります?・・・じゃあ私カシスミルクお願いします。」
暫くして、ドリンクが運ばれてきた。
「それじゃあ村田先輩、ハッピーバースデー」
そう言って、グラスを鳴らす。
「ところで、幾つになられたんですか?」
「んっと、28だな。やばいぜ30代が目の前に迫ってきたな」
「また一つオジサンに近づいた訳ですね。」
「そっちだって、来月には一つオバサンになるんだろ。」
「失礼ですねぇ、私は来月また一つイイ女になるんですよ(笑)」
「なるほどね、じゃあ俺も同じだ。また一つイイ男に為ったって事だな。」
「う~ん、微妙ですねぇそれは・・・」
「・・・まぁいいかぁ・・・、何かつまみ頼もうぜ。」
「え~っと、初めての店ですからねぇ・・・あっこの鶏のから揚げ美味しそう。」
「じゃあ、鶏のから揚げと、このカルパッチョ頼もうか。後は?」
「今日は、私のおごりなんですから、村田先輩の食べたい物頼んで下さいよ。」
「そうかぁ、じゃあお言葉に甘えて・・・お~いおにいさ~ん」

「いや~すっかり御馳走になっちゃったな、友田さんに。」
「いえいえ、こっちこそ楽しかったですよ、村田先輩。良かったらこの先のショットバーに行きませんか?」
「俺はいいけど・・・友さんお酒弱いんだろ、大丈夫か?明日だって普通に仕事だぞ」
「私が酔い潰れたら、介抱してくれないんですか?村田先輩・・・」
「えっ?それって・・・それって・・・」
♪♪♪
突然、携帯が鳴りだした。
「もしもし、日向~?」
洋君です。
私ったら、洋君からのメールの返信がないから、又色々と妄想してたみたいですね。
「洋君、遅いよ連絡が。」
「悪い悪い。商談が長引いちゃって、残業だったんだよ。」
「ほんとに、残業? 会社の女の子と呑みに行ってたんじゃないの?」
「何だよそれ、俺にそんな暇が有ると思う? 事務所に帰ったら、もう全員帰宅した後で、寒い事務所で書類作ってたんだからな、こっちは。」
「ごめん洋君。連絡が無いから、心配になっちゃったんだ。本当にごめん」
「ったくぅ。俺の女は、日向だけだかんな。」
その言葉に涙が溢れそうになる・・・
「うん、ありがとう・・・そうだ、遅くなったけど、お誕生日おめでとう。」
「うん、ありがとう。また一つオジサンになってしまったけどな。」
「違うよ洋君、ひとつイイ男になったんだって。」
携帯の向こうで、プ~ッって吹き出すのが聞こえた。
「イイ男かぁ・・・日向ぐらいだよ、そう言ってくれるのは。」
「あら、私以外にも言ってもらいたいのかな?」
「いや、日向だけで十分だよ、俺は。ありがとうな。じゃあ電車来たから、とりあえず電話切るわ。」
「うん、気をつけてね。お疲れさま」

ふ~っ。
またまた、私の悪い癖が暴走しちゃったみたいですね。
洋君の事信用していない訳じゃないんですよ、彼の行動や周りの様子を聞く限り、浮気とかは本当にしてないみたいですから。
でも、偶に不安になっちゃいます。
本当にこのまま洋君の事を待っていて大丈夫なのかって。
遠距離恋愛の試練ですよね。
でも、これを乗り越えたら普通のカップル以上の幸せが掴めるような気がします。
だから、幸せを掴むその日まで、私は頑張りますよ。
って、誰に宣誓してるんでしょうね、私は(^^ゞ
さて・・・洋君が電車に乗ったって事は、1時間位は連絡が取れませんから、その間にお風呂でも入ってきます。
その後、思いっきり電話越しに、甘えてみようかな。
洋君が困ってしまう位に♪


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「さて、掃除機もかけたし、洗濯物も干し終わった。食糧の買い出しにでも出掛けっかな」
今日は、平日。先週末の休日出勤の代休を取りました。
ベランダから見えるビル群の向こう側には、鮮やかな青空が広がっていて、近くの幼稚園からは、子供達のはしゃぐ声が聞こえます。
こんにちは、洋介です。
―――――――――1月14日(木)―――――――――
愛用の折畳自転車にまたがり、力いっぱいペダルを踏み込んだ。
乾いた冷たい風が、頬をなでる。
「休みを取って、正解だったなぁ~。」
風は冷たいですが、ポカポカ陽気で結構気持ち良いです。
陽気に誘われて、ちょっと寄り道してみようかな~
「あれっ? こんな路地に公園有ったっけ?」
「この商店街って、まだ奥にこんなに店屋が有ったんだ。」
こんな小さな発見が、この街をより一層楽しくさせます。
いつもは、スーパーでまとめて買ってしまうんですが、たまには各店を回るのもいい物ですね。
パン屋から良い香りが漂ってきた。
焼きたてのパンの香りって、誘られますよね。
店頭を覗くと、焼きたてのフランスパンが目に入った。
「そう言えば手前の酒屋で、ワインの安売りしてたなぁ・・・」
いつか喫茶店の漫画で見た、ワインとフランスパンで休日を過ごすシーンを思い出した。
一瞬さっきの公園で、ワインを傾けながらフランスパンをかじる光景を思い浮かべたが、考えてみたらワインオープナーやワイングラスが無かった。
今度、日向が遊びに来た時の楽しみに取って置こう。
あいつの事だから、地面に敷くシートや食器類も沢山準備するんだろうなぁ。
もし、東京じゃなくて松舞だったら、今度の週末辺りに早速やってるんだろうなぁ
まぁ、松舞が雪に埋もれている可能性も高いけど。

そろそろ腹も空いてきましたし、どこかでお昼ご飯でも食べましょうかね。
駅前通りまで自転車を走らせる。
「さて、何食べようかな?」
久しぶりに握りでも食べたいところですが、給料前故回転寿司ですら無理みたいです。
ファーストフードも、食べ飽きた感が有りますしね。
学生街なら、ガッツリ食べれる定食屋が有るんですが、この街は学生街じゃないですからねぇ~
駅前の蕎麦屋も、昨夜行きましたし・・・
ふっと、今までは気にも留めなかった喫茶店が、眼に入った。
「まぁ、ここでいいかぁ」
案の定、ごく普通の喫茶店だった。
水とおしぼりを持って来たウェイトレスに、Aランチを注文する。
「そう言えば、雲山に向かう途中の喫茶店、まだあんのかな~?」
良く、日向と雲山に行く途中に、立ち寄った喫茶店だ。
気さくなママさんが作ってくれる、モーニングセットの厚切りトーストが、二人のお気に入りだった。
日向にまた食べに行こうなって言ったまま、2年位経っている。
・・・黙々と、Aランチを食べる。旨くない・・・料理が不味いんじゃない。日向が一緒じゃないから旨くないんだよな。
分かってる分かってる、そんな事。

レジで支払いを済ませ、店を出る。
「・・・・・とりあえず、買い物して帰るか。」
日向の事を思い出したら、少し落ち込んできた。
別に日向が悪い訳じゃないんだけどね
ふっと、空を見上げる。
鮮やかな青空が、西の空に広がっていた。


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・・・皆さんに報告です。
今日、成人式参加して来ました。
もちろん、優も一緒です。
子連れの参加ってどうかな~って、思ってましたが、会社の先輩に相談したら、自分の成人式の時にも何組か子連れが居たって言ってましたから、少し安心しました。
託児所も有りましたが、無理を言って優も一緒に参列させてもらいました。
優も大切な式典って事が分かっていたのでしょうか、お気に入りの縫いぐるみをだっこして、良い子にしてました。
母親になるって、大人の証拠だと思ってましたが、母親になってから大人の儀式を、迎えるとは夢にも思ってませんでした。
一生に一度の儀式ですが、優と参加出来た事に、感謝しています。
一生に一度の儀式だからこそ、一生の宝で有る、優と参加したかったんです。
これからも、シングルマザーだからって、弊害も沢山有るでしょうが、負けずに頑張っていきます・・・
「はい、更新っと」
こんばんは、優ママです。
―――――――――1月11日(月)―――――――――
そうです、今日無事に成人式が終わりました。
晴れ着を着る時間が有りませんでしたから、晴れ着では参加出来ませんでしたが、優とお揃いのドレスをばっちり
着て参加しましたよ。
その後、予約しておいた写真館に、成人式の記念写真を撮りに行きました・・・優も一緒に写ったから、成人式記念と言うより、家族の記念写真になってましたが。
その後、うちの社長、つまり叔父さん宅に御挨拶に伺いました。
さすがにそれだけ連れ回すと、優はやんちゃを言い始めましたけどね。
♪♪♪
あっ、早速レスの書き込みみたいです。
新三さんからです。
「成人式ですか。俺は10年以上前でした。
その時もクラスメイトの女の子が結婚していて、お腹に子供が居るって言ってたなぁ。」
「う~ん、妊婦さんかぁ・・・やっぱり晴れ着じゃ参加出来ないんでしょうね。」
続いてまきんこさんです。
「クラスメイトの中に、既に結婚している子居ましたよ。
子供は未だだったんですが、フラワーコーディネーターの御主人が手作りされた、霞草のコサージュを嬉しそうに付けてたのを覚えてます。」
「うわ~、それって素敵ですね。私もそんな旦那さん欲しいなぁ(^^ゞ」
あっ、新しい閲覧者さんです。
何々・・・げんごろうさんかぁ、男性みたいですね。
「僕も今日成人式でした。
とは言っても、煙草も吸ってるし酒も飲んでるから、今更成人って何?って感じですが。
もうお子さんがいらっしゃるんですね、凄いなぁ。
僕なんかまだまだ親のスネをかじっているのに。
これからも、ちょくちょく寄らせてもらいますね」
「親のスネかぁ・・・もし、優を授かってなかったら、私も親のスネをかじって大学生してたんでしょうね・・・おっと今の発言は、優に対して失礼でしたね。編集してカットして下さい(笑)」
送信っと・・・

♪♪♪
あっ、またレスです。
今度は誰かな~?
きみちゃんですね。
「優ママ、成人式おめでとう。これで正真正銘の大人ですね。でも優ママは他の女の子より、もう一段大人なんだよね。それはきっと誇りに思っていい事だと思うよ。母子家庭ってまだまだ苦労も多いからお互い頑張ろうね。」
うん、やっぱり同じシングルマザーらしいコメントですね。
「ありがとうございます、先輩(笑)。お互い頑張りましょうね」
次は・・・ごんさんです。
「優ママさん、こんばんは。
今日、偶々サイクリング中に、式典会場のさいたまスーパーアリーナの前を、通りましたよ。
晴れ着やドレスを着た女性が一杯居ましたね。
その中に優ママさんも居たんですね。
僕は、時間の都合で成人式って参加してないんですよ。
どんな感じの式典なんですか?」
「成人式ですか?
市長の話や、宣誓文とか読んでましたよ。学校の全校朝礼みたいでした。
へぇ~ごんさんって、サイクリングするんだ。興味有るけど、優が居るからね~
あっ、又優に対して失礼な発言しちゃいましたね。これまたカットでお願い致します。」
うん、マジでサイクリングには興味有るんですよ。
今、ecoがトレンドじゃないですか、街中を颯爽と走る女性を見ると、憧れちゃいますね。
あ~もうこんな時間ですね。
そろそろ寝なきゃ・・・
それでは明日からまた優ママは頑張りますね。


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「じゃあね、お兄ちゃん。3日間、色々ありがとう。」
「おう、じゃあ気をつけて雲山に帰ろよ、一恵。」
妹は、大きなトランクケースをゴロゴロと引っ張りながらゲートに向かう。
ゲートの手前で振り返り、俺に大きく手を降る。
俺も大きく手を降り返す。
また、しばらくの間お別れです。
こんにちは洋介です。
―――――――――1月11日(月)―――――――――
この週末、雲山の実家から、妹の一恵が遊びに来ました。
一恵は、8歳年下の高校生です。
一昨日は、渋谷昨日は新宿、今日は今日で、お台場や秋葉原に付き合わされました。
う~ん、俺でも躊躇する様な金額の洋服や、グッズをポンポンと買ってました。
何でも、冬休みに必死にコンビニでバイトして貯めたんだそうです。
ひょっとしたら、社会人の兄より金を持っているんじゃないかぁ?

空港のゲートに消えて行く、妹が見えなくなるまで目で追う。
一緒に住んでいる頃は、うっとうしい存在でしたが、8年も別れて暮らしていると、そんな妹でも愛しく思えます。
さて、ここでボ~ッとしてても、どうしようも無いですから、アパートに向かいますかね。
歩き始めると、喫煙ルームが目に入った。
とりあえず一服しようか。
喫煙ルームに入り、ジャケットのポケットに手を入れる。
あれっ!? 何だこの紙切れは?
ポケットから取り出してみる。
丁寧に折り畳まれてたピンク色の紙を開いてみる。

お兄ちゃんへ・・・
どうやら一恵からの手紙みたいです。
お兄ちゃんへ、3日間ありがとう。
お蔭で欲しかった洋服が一杯買えたよ。
お兄ちゃん、部屋を意外に綺麗にしてたから、びっくりしたわ。
雲山に居る時なんか、正直言ってお兄ちゃんの部屋に入りたくなかったもんね(笑)
私も高校卒業したら、大阪か東京の大学に進みたいなぁ、雲山より絶対に楽しそうだもんね。
お父さんもお母さんも、元気ですよ。
ただお母さんは最近膝が痛むみたいで、絶えず膝をさすっています。
お兄ちゃん、いつ位に山陰に帰れるの?
私はお兄ちゃん居なくても平気だけど(実はちょっぴり寂しい)お父さんやお母さんはすごく寂しそうですよ。
たまには、電話してあげてよ、声聴くだけでも喜ぶと思うから。
それじゃあ、元気でね。彼女さんにもヨロシク~
P.S.お小遣いありがとう~。来月もヨロシク~

読み終えて、タバコに火を点ける。
さっきまでの、一恵の騒々しさが幸せに思えてきた。
今はポツンと独りだった。
ふっと、寂しくなり日向の声が聴きたくなった。
「一恵ちゃんの代わりかね~」って、日向は怒るかもしれないが、仕方が無い。
先週、あんなに沢山過ごしたのに、やはり声が聴けないと、寂しいもんだ。
煙草を吸い終え、携帯を手にする。
3コール程鳴った後、日向につながった。
「もしもし、洋君?」
「今、電話大丈夫か?」
「うん、大丈夫。今日は、朝から店番しちょるけど、お客さん来らんのんよ。一恵ちゃん。一緒じゃないん?」
「一恵、さっき飛行機に乗ったとこだよ。」
「そげか、お疲れ様。どう?喜んじょったかね?」
「あぁ、ず~っと興奮しっぱなしだったぞ。」
「若い子には、刺激が沢山有るモンね。んで、どげした?急に電話なんかごいて」
「いや、別に用事は無いんだけどな。日向の声が聴きたくなって」
「どげした事だ?ホンに何も無いかね?大丈夫?」
「あぁ大丈夫だって。あんな妹でも、やっぱ離れる時は寂しいもんだな。」
「何よ、洋君ってシスコンだっけ?」
「だらず、しゃん訳無いがや~。あ~けっ、切るぞ」
「ははは、ゴメンゴメン。電話ありがとう。私だって洋君の声聞きたかったけんね。ねぇ・・・今日ね、自家製キムチの漬け方を教わりに、お父さんとお母さん出掛けちょるに。まいのが出来上がったら、東京に送ぅけんね。」
「おっ、キムチかぁ・・・。知っちょうか?日本のキムチは植物成分で発酵させるのに対し、本場韓国は、オキアミやイカなんかの動物性成分で発酵させるから、味の深みが違うって。
動物性成分は腐り易いから、大蒜や生姜を刻んで入れて保存性を高めてるんだって。」
「へぇ~、知らんかったわ。洋君って料理下手なのに、ウンチクは詳しいがぁ」
「わっ、悪かったな料理下手で。そんな料理を正月、美味い美味いって食っちょったのは、誰だや。」
「へへっ。名演技でしょ。」
「あのなぁ、日向・・・」
「美味しいキムチ持って、遊びに行くけん、待っちょうだわね。キムチ鍋に豚キムチ炒め作っちゃあけんね。」
「おっ、豚キムチ炒めかぁ♪ キムチ鍋も美味しいよな・・・やべ~腹減ってきた。」
「あれっ?お昼未だなん?」
「えんや、一恵とバーガーシティで食った。あそこのハンバーガーのボリュームには、びびっちょたわ。」
「あのハンバーガー? ありゃ普通食えんよ~(笑)」
「そげか? あっモノレールが来たわ。んじゃあ、切るぞ。店番頑張れよ、看板娘。電話付き合ってくれてありがとな」
「うん、こっちこそ。また、夜にでも電話すうけんね。」
俺は、入ってきたモノレールに飛び乗る。
不思議ですね、日向の声を聞いただけで、こんなに元気になるなんて。
どんなビタミン剤より、効きそうです。
・・・使用上の注意を良く読んでおかないと、大変な事になる時もありますが・・・(笑)


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「御主人様~御主人様~、起きて下さい、起きて下さいよぉ~」
詩音に激しく揺さぶられて、僕は目を覚ます。
「ん?詩音どうした?そんなに慌てて・・・痛多々た、頭痛て~」
「申し訳ございません御主人様、私、寝過してしまいました・・・もうお昼ですぅ」
「うん・・・二日酔いだし、今日は祝日だから・・・成人の日だか・・・成人・・・やばっ!」
ガバッと布団から飛び起きる。
「あたたた~」
こんにちは、御主人様28号こと、隆文です。
―――――――――1月11日(月)―――――――――
そうです、実は僕今年成人式なんです。
「とりあえず、冷たい水貰えるかなぁ詩音。それと、今何時?」
「え~っと、え~っと・・・12時15分ですぅ。成人式って受付9時半からでしたよね、御主人様ぁ。まだやってるかなぁ?」
「いや、確か10時から式典で、12時には終わるはず・・・。う~頭がガンガンするぅ」
「はい、冷たいお水ですぅ・・・。うううっ、申し訳ございません、一生に一度の晴れ舞台なのに・・・」
いや、別に壇上で宣誓とかする訳じゃないから・・・
昨夜は、バイト先の先輩のおごりで、詩音も参加しての成人式前祝いを、盛大に行ってもらいました。
ビールに、ワインに、ハイボールに、焼酎・・・チャンポンで飲みましたからね。
確か、お開きになったのは、始発が走り出してからだったかな・・・
しっかし、二日酔いって最悪ですね、気持ちは悪いし頭は締め付ける様にガンガンするし・・・

「どうします・・・御主人様ぁ、二日酔いじゃあ、成人式どころじゃないですよね・・・」
「あぁ、もう成人式は諦めたよ、詩音。それより、レモンか何か無かったっけ?」
「レモンですかぁ? 確か、半分使った残りが、野菜室に有ったと思いますけど。どうします?絞って来ましょうか?」
「うん、頼む・・・しかし、詩音も結構なペースで飲んでたけど、二日酔いじゃないの?」
「えっ?私ですか?全然平気ですぅ。うちの家系って、酒豪が多いみたいなんですよ♪」
酒豪かぁ・・・先が思い遣られる様な気がします・・・
「はい、御主人様ぁ。レモン汁です・・・。飲み易く、蜂蜜でも入れましょうか?」
「いや、このままの方が、効きそうな気がしない?」
「う~、見ているだけで、酸っぱそうですぅ・・・。あっ、濃いブラックコーヒー淹れてますから、もう少し待って下さいね。」
う~、酸っぱい・・・
ぷふぁ~、これ位じゃないと、二日酔いの頭ははっきりしませんからね。
「はい、御主人様、コーヒーです。熱いですからね・・・ふうふうして二日酔いが治る魔法を入れしましょうか?」
「あぁ・・・頼むよ詩音」・・・よく分かりませんが(笑)
「ふぅ~ふぅ~ふぅ~。御主人様の二日酔いが治ります様に・・・マジカルマジカル、えぃッと。はいこれで、二日酔いが治りますよ御主人様♪」
うん・・・なんか余計頭痛くなってきた・・・
「う~、苦いねぇ~。こりゃ効きそうだ・・・」
「良かった~。でも御主人様どうします成人式? スーツ姿の記念写真が撮れないじゃないですかぁ」
「まぁ、写真はいつでも撮れるし・・・そうだ詩音、折角だから二人で正装して記念写真撮ろうか」
「えっ、私とですかぁ?」
「そうだよ。写真館とか、今日は一杯だろうなぁ・・・近所の公園でいいかぁ。そうと決まれば、早速カメラや三脚準備しなくっちゃあ・・・」
「あの~御主人様ぁ、私未だOKしてないんですけどぉ。ッて、私の話聞いてませんね~」

僕は、スーツを着て、詩音を公園に連れ出した。
三脚をセットして、セルフタイマーをセットする。
詩音と並んで何枚か畏まった写真を撮った。
デジカメのモニターを見ながら、詩音が笑う。
「御主人様、畏まっちゃって。千歳飴持ったら七五三みたいですよ~」
その笑顔が、すごく素敵でした。
「よし、続いて詩音の撮影会だぁ」
「えっ?そんなぁ~、聞いてないですよぉ、御主人様ぁ」
その困った表情、早速いただき~♪
「あっ、不意打ち~酷いですぅ。変顏になってません?」
僕は詩音を無視して写真を撮り続ける。
モニターを確認する度、様々な表情を見せる詩音を見ていたら、幸せな気分になってきた。
こんな成人式でも良いかぁ。
帰りにコンビニでプリントアウトして、部屋一杯に飾ろうかな、二人の大切な思い出として。


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