松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2010年05月

それは、昨日の夜の事
「ただいまぁ~」
いつもの様に、幸一が仕事から帰ってきた。
「とうしゃん、おかえり~」そう言いながら、美結ちゃんが玄関に駆けって行く。
「美結、ただいま。」
「だめでしょ美結ちゃん、『お帰り~』じゃなくて、ちゃんと『お帰りなさい』って言わなきゃ」そう言いながら、私も玄関に幸一を出迎える。
「お帰りなさい、幸一さん」そう言いながら、幸一からお弁当の入ったカバンを受け取る。
「ただいま、真子。なぁ、明日って何か予定有るか?って言うか、予定はキャンセルしろよ‥‥‥じゃ~ん、松舞葡萄園レストランの招待券もらったんだ」
こんにちは、木下真子です
―――――――――5月29日(土)―――――――――
松舞葡萄園‥‥それは、出雲大社の近くの島根ワイナリー程、有名では無いけれど、美味しいワインを作っている小さな葡萄園です。
そこのレストランも、ワインに負けず劣らず美味しいって評判なんですよ。
ただ夕方までしか、お店が開いていないから、もっぱらランチメニューしか無いんですが。
でもでも、ランチメニューとは言え2000円ちょっとするんで、貧乏な我が家には、なかなか手の出せるランチじゃないんですよね。
そんなレストランのチケットが手に入るなんて、何てラッキーなんでしょう。
何でも、取り引き先の社長さんが、「今月末まで有効な招待チケットなんだけど、自分は出張で行けないから」って、譲って下さったらしいんです。
しかも、お土産付きなんだそうで、益々もって嬉しい話ですよね。

13時に予約入れてあるって事で、うちを出たのは12時過ぎでした。
「美結、今日行く葡萄園にはロバがいるんだって。初めてだよなロバを見るのって。分かるかロバ?」
「うん、しってるよ。おみずのなかにいて、おおきなおくちのどうぶつでしょ」
「美結、それはカバだって(笑) ロバはね、ほら『ブレーメンの音楽隊』で、ニワトリやネコを背中に乗せて、ヒヒ~ンって鳴く‥‥‥あれ?ヒヒ~ン?馬?」
「んもう~、幸一さんったら(笑)。ロバさんはね、え~っと‥‥そうねぇ‥‥あれ?‥‥なんの童話に出てたっけ?」
「なんだ、おとうしゃんも、おかあしゃんも、しらないんだ。」
「まっまぁ、見に行けば分かるって美結。でも見た感じは、馬に似てるんだぞ」
「わかった、わかった、おとうしゃん。むきになって、おとなげないわよ」
相変わらずオシャマな美結ちゃんに、思わず笑ってしまいました。
空は曇り空ですが、気分は爽快です。やっぱり幸一と結婚して良かったって思う一瞬です。

葡萄園は小高い丘の斜面に広がっていて、その丘のてっぺんが、ワイナリーとレストランです。
13時まで少し時間が有るから、少し周りを散策する事にしました。
ワイナリーの周りには、パン工房やお豆腐屋、野菜市場も有るんですよ、帰りには、パンやお野菜も買って帰ろうかなぁ♪
美結ちゃんが何かを見付けたみたいで、テケテケと一目散に走り始めました。
「美結ちゃん、走ったら危ないわよ」私も後を追っかけます。
「まこしゃん、おうまさんだ~」
「ん? 美結ちゃん、これがロバさんよ。確かにお馬さんに似てるわよね。」
「ふ~ん、このこがロバさんなのね。こんにちは、ロバさん」
何事も無いかの様に、ロバは黙々と足元の雑草をついばんでいます。
「美結ちゃんと一緒で、ロバさんもお昼ご飯の時間なのよ、きっと。ほら、この葉っぱあげてごらん、ロバさん食べるかもしれないわよ。」そう言いながら、足元に生えている雑草を美結ちゃんに手渡した。
「はい、ロバさん。このはっぱ、おいしいわよ たべてごらん」そう言いながら美結ちゃんがロバの目の前に雑草を突き出した。
ロバは、モソモソとその雑草を食べ始めた。
美結ちゃんはそれを嬉しそうに眺めていた。
「まこしゃん、ほらぁロバさんが、おいしいっていってるよぉ」
「あっ美結ちゃん、そろそろ草を離さないと」
そう言った次の瞬間、ロバが美結ちゃんの手をぺロッと舐めた。
予想外の行動に美結ちゃんは、びっくりして泣き出した。
「ロバさんが、なめた~。みゆのてをなめたぁ」
そう言いながら私に泣き付く、美結ちゃん
「美味しかったんだよ、あの葉っぱが。『ありがとう』って、ロバさんは言いたかったんだよ、だから大丈夫だよ美結ちゃん」
「どうした美結、びっくりしたか? ロバだって美結が泣き出すからビックリしただろうで。さて、そろそろ1時になるからレストランに行こうか。」そう言って幸一が美結ちゃんを抱き上げる。
美結ちゃんには悪いけど、「貴重な体験が出来て良かったね」って思います。

「いただきま~す」
3人で手を合わせて合掌する。
先ずはオードブル‥‥鯛のアラカルトだそうです。
「すげ~。なぁ真子。俺、オードブルが有る料理なんて初めてだぞ。」
「ちょっと、恥ずかしいからそんな大声で喋らないでよね」
「そうだよ、とうしゃん。みゆも、はずかしいよ」
「お~、スマンスマン。どうだ美結、お子様ランチは」
「わたしだけ、おこさまあつかいなんだもんな、しつれいしちゃうわよ」
「いや、美結。お前はどこから見たって、お子様だって(笑) ほら、お前のご飯にしか、旗が付いてないだろ」
「いいなぁ、美結ちゃん、お母さんもその旗欲しいなぁ~」
「だめ、このはたは、みゆのだもん。」
「じゃあ、やっぱり美結ちゃんはお子様ランチで良かったじゃない。」
「うん」
「ほら、美結見てごらん、お父さんだって美結と一緒で飲んでるのは、ブドウジュースだぞ。良いなあお母さんは、ワイン飲めて」
「だって、おとうしゃんは、うんてんしゅでしょ。おさけのんだら、けいさつのおじさんにつかまっちゃうよ」
「そうだよね、美結ちゃん。だからお母さんがお父さんの代わりに飲んでるんだよね。」
「うん、でも、おかあしゃんも、のみすぎたらダメだよ」
「はい、分かりました。これで終わりにしますね(笑)」
メインディシュは、子牛のハッシュ ド ビーフ♪
赤ワインをベースにトロトロに煮込まれたお肉が、口の中でとろけます。
残ったソースをご飯にかけて食べたい衝動に駆られてのは、私だけじゃないと思う。
デザートは、葡萄のムース。
う~ん、葡萄をお腹一杯堪能致しました。

「ご馳走様でした。すごく美味しかったですよ」そう言いながらレジでサービスチケットを差し出す。
「ありがとうございます、是非ともまたお越し下さいね」そう言いながら、ウエイトレスさんがお土産の自家製チーズとワインのセットを、渡して下さいました。
そして美結ちゃんの方を向き「お嬢ちゃん、お名前は?」と、尋ねてきました。
「みゆ、きのしたみゆ‥です」
「あのね美結ちゃん、『さっきは驚かしてごめんなさい』って、ロバさんがこれを持って来たわよ」そう言うと、美結ちゃんに小さな紙袋を渡した。
「ありがとう、おねえちゃん」
「ううん、お礼ならロバさんに言ってあげてね」
「あら、申し訳ございません、気を使わせてしまって」幸一と私は頭を下げた。
「いえいえ、うちのシェフがたまたま見かけたもんで。こちらこそ、申し訳ございませんでした。」
こんな小さな心遣いが嬉しいですよね。
「良かったな美結。ロバさんにもお礼を言いに行こうか。」
「うん、いくぅ」
幸一と美結ちゃんは、先に表に出ていきました。
私は、折角ですから、レストランに併設されたショップコーナーを覗いて見る事に。
以前から探していたハーブソルトを見付け、ついつい衝動買いしちゃいました。
美味しそうなワインが並んでますが、お土産にもらったばっかりですから、今回は諦めておきます。

外に出てみると、幸一と美結ちゃんが、ロバの広場から手を振ってます。
「おかあしゃん、ロバさんにおれいいったよ。ロバさんが、ウンウンっていってたぁ」
「そう、良かったわね美結ちゃん」
「うん、ねぇおかあしゃん。むこうでパンをうってるって。いってみよ~」
「はいはい、そんなに手を引っ張らないで美結ちゃん。どんなパンが有るかな?美結ちゃんの好きなパンも売ってるかな?」
「うん、あるといいなぁ。」
「真子、向こうの豆腐も美味しそうだったぞ。ワインに冷奴って合うんかなぁ?」
美結ちゃんを真ん中に3人で手を繋いで歩く・・・・・
レストランのお土産より、幸一や美結ちゃんと過ごすこの瞬間が一番のプレゼントだった気がするのは、私だけですか?


松舞ラブストーリーアーカイブ
 
ショート・ショート編
モリヒデ・ヒグラシ編
颯太・朝葉編
洋介・日向編
幸一・真子・美結編
御主人様28号・詩音編
比呂十・美咲編
優ママ編
本田・楓編
ある高校生の夏休み編【完結】
(小夜曲)sérénade編【完結】
楓・青木先輩編【完結】
本田・沢田編【完結】
2009年収穫祭編【完結】


blogram投票ボタン

「さぁ~いらっしゃい、いらっしゃい~」
「よぉ、健吾頑張っちょうかぁ?」
「あったりまえだろ~。売り上げが無きゃあ、バイト代ごされんけんな。楓もちゃんと売っちょうか?」
「うん、ちゃんと売っちょうよ。じゃあ頑張あだわね、うちの看板息子(笑)」
みなさん、おはようございます、健吾です。
―――――――――5月2日(日)―――――――――
事の起こりは、大森の町はずれの国道に、「道の駅」が出来た事でした。
集落の婦人会・・・要は、おばちゃん連中が、道の駅に地域の特産物の特売コーナーを出す事になったんです。
もちろん、うちの母親や森山のおばさんも、参加しています。
昨日5月1日は、ゴールデンウィーク5連休の初日・・・天気も良かったから、相当の人出だったそうです。
そして、ヘトヘトになって帰って来た母親が開口一番、「ちょっこぉ健吾、あんたは、どげせ家でテレビゲームやっちょうだけだが・・・明日から、特売コーナーてごすうだわ! 売り上げが有ったら、ちゃんとアルバイト代やぁけんって、会長さんが言っちょちゃあけん。」
「え~、マジ~・・・なして俺が?父ちゃん達がてごすりゃええがね~」
「しゃん事出来んわね、父ちゃん達は田植えで忙しいけんね。あんたは田植えのてごも、しちょらんがね。
だけん頼んだよ、楓ちゃんと2人で頑張ぇだわ」
「え~、楓も一緒かね! 益々やりたないなぁ・・・」
適当に売り場をブラブラして、怠けて様かと思ってましたが、楓が一緒なら逐一チェックされてそうです。


売り場の準備が有るとかで、朝は6時半に叩き起こされました。
森山のおばさんの車に同乗する為に、楓んちに向かう。
「おはよう~、健吾。私は売り子すうけん、あんたは力仕事頼んだけんね。」
「だらず、楓も力仕事すうだわや!」
「なして、か弱い私が荷物運びせな、いけんけね~」
「こらこら、二人とも朝から喧嘩せんでも、え~がね。」
振り返ると、佳奈絵さんが立っていた。
「あっ、佳奈絵さんおはようございます♪ 佳奈絵さんも、特売コーナーに駆り出されました?」
「おはよ、健吾君。ううん、私は特売コーナーじゃなくて、田植えのてごだにぃ」
「じゃあ、ヒデ兄も田植えなんだ・・・」
「そげそげ、うちら二人は、田植えすうけん・・・だけん特売コーナーは任せたけんね。」
・・・・・う~ん、佳奈絵さんは、農家のお嫁さんコースを、まっしぐらに走ってますね(^_^;)


「じゃあ健吾君、次はこの高菜の箱と、人参の箱を売り場にもそんでごすかね。そ~が終わったら、売り場に有る空箱を後ろに下げて潰してごすだわ。あいけぇ楓もぼ~っとしちょらんで、しゃんしゃんてごすうだわね。」
うげ~、たかが婦人会の特売コーナーと嘗めてましたが、これがどうして・・・結構な重労働です。
楓の奴も、ヒ~ヒ~言いながら、売り場に野菜を並べてます。
「ちょっとぉ、健吾に楓ちゃん~。細木のオバサンに付いて行って、お花を運ぶんてごしてあげ~だわ。」
「んお?分かったけん・・・ほら、楓行くぞ・・・」
「あいけぇ、ちょっと待ってごす?もうチョイで、この野菜並べ終わぁけん・・・」
「けぇ、お前はホンにとろいけんなぁ・・・。どこ、貸してみ~だわや。」
「悪かったわね、とろくて・・・」
俺は、ちゃちゃちゃと野菜を並べてから、楓の手を引いて細木のおばさんの後を追った。
「ちょ・・・ちょっと、しゃんに走らんでよ~。ってか、あんた!さり気無く何、私の手握っちょうかね~」
「はぁ・・・うぉ、すまんすまん・・・」
でも、楓は手を振りほどこうとはせず、むしろギュッと握りしめてきた(^^ゞ
細木のおばさんの軽トラの荷台には、沢山の切り花が積んであり、凄くカラフルだった。
「じゃあ、楓ちゃんに健吾君、この切り花のバケツ、売り場までもそんでごすだわ。全部もそんだら、二人でラッピングしてごすかね?」
「え~、細木のおばさん、私、花のラッピングとかした事ないんよ」
「あ~、大丈夫大丈夫、また後で教えてあげ~けんね。じゃあ、こけんやにもそぶだわね。」
「・・・へぇ、細木さんちって、きゃん花とかも作っちょちゃあかね。なぁ楓、ラッピングって花束みたいな奴作うだ?」
「うん、多分ね・・・。農業科の生徒なら得意かもしれんけど、うちらは普通科だけんねぇ・・・。健吾がラッピングなんてしたら、花びらが全部無くならせんだあか?」
「あのなぁ、楓・・・俺って、しゃんに不器用かぁ?」
「うん、かなりね(笑) ほら、しゃんしゃん運んでしまあか。そげしゃあ、ちょっこは休めぇかもしれんし。」
「あげだな・・・さすがに疲れぇな、荷物運びは。」
「あげあげ、もう喉カラカラだけんね、私も」
俺と楓は、ごそごそと切花の入ったバケツを、売り場に運んだ。


「えかね、よお見ちょうだよ・・・こげして下の方の葉っぱをハサミで切ってから、何本か纏めてこのビニールで包むだわ。・・・そげそげ楓ちゃん、えしこに出来ちょうがね♪ ・・・あいけぇ、健吾君しゃん事すうと、花まで痛んでしま~けんね、こげして優しく切ってや~だわ。」
う~ん、たかが花のラッピングと思ってましたが、意外に難しいもんですね。
楓の方は・・・器用に花を纏めてラッピングしています。
楽しそうに花をラッピングする楓の横顔に、つい見とれてしまいました。
「何?健吾・・・何か、私のラッピングに文句でも有~かね?」
「おっ?・・・いや、別に・・・」
やばいやばい、楓と眼が合ってしましました。
「やっぱ、お前も女の子だな・・・中々巧いじゃんか」
「当たり前でしょ、こう見えても私、結構器用だけんね♪」
そう言いながら、照れ笑いをする楓が、一層可愛いと思った。
今まで、楓の事を女の子として意識した事は、正直余り無いけど、花束を抱える楓は、普通の可愛い女の子だった。
それは、きっと楓が花束を抱えているからだけではなく、俺が楓の事を「好き」って意識しているからだろう。
中学の時とは少し違う。
遊びじゃない・・・本気で楓の事を愛おしく思う。
花束を抱える楓の事を、いつまでも見守っていられたら・・・心からそう思えた。
「け~、健吾!ほがほがしちょう場合じゃないわねぇ。もうスグ開店だけん、早や事その花束を並べぇだわね。」
「追う、悪りい悪りい・・・」
いつもならカツンと来る楓の小言も、これからは少しは素直に聞けそうな気がした。
そう、俺の大好きな楓の一言なら・・・


松舞ラブストーリーアーカイブ
 
ショート・ショート編
モリヒデ・ヒグラシ編
颯太・朝葉編
洋介・日向編
幸一・真子・美結編
御主人様28号・詩音編
比呂十・美咲編
優ママ編
本田・楓編
ある高校生の夏休み編【完結】
(小夜曲)sérénade編【完結】
楓・青木先輩編【完結】
本田・沢田編【完結】
2009年収穫祭編【完結】


blogram投票ボタン

↑このページのトップヘ