松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2010年08月

「なぁ楓~、この英文何て訳せば良いんだぁ」
「え~っ、私、今この古文の問題で忙しいから、自分で考えてよね~」
「マジかよ・・・仕方ない、この問題は後回しだな・・・次の問題は・・・」
夏休み最後の日曜日だと言うのに(まぁ、私たち学生は、日曜日も月曜日も関係有りませんけどね)、家に閉じ籠って健吾と二人、宿題を片付けてます。
こんにちは、楓です。
―――――――――8月29日(日)―――――――――
佳奈絵さんに、「早めに夏休みの宿題、片づけておきなさいよ」って言われてたのに、部活やバイトで結局ズルズルと、今日の日になってしまいました。
やっぱり、先輩の話はちゃんと聞いておくべきですね(^^ゞ
忠告を受けていた手前、佳奈絵さんにヘルプをお願いする訳にもいかず、増してやお兄ちゃんは、頼りになるどころか足を引っ張りそうですから、当てには出来ませんし・・・

私は未だ、苦手な古文を片付ければ終わりなんですが、健吾の方は英語に数学も残っているみたいです。
健吾も私と一緒で、部活にバイト三昧でしたからね・・・今年の夏は、中学校時代でも無かった程の時間を一緒に過ごしました♪
うちの縁側での花火大会に始まって、野球部の応援、松舞川でのバーベキュー大会、夏季合宿、海水浴、松舞花火大会、松舞盆祭り等々
どれも、一つ一つ大切な思い出になりました。

「おい楓、何を思い出し笑いしてんだよ・・・気持ち悪いぞ(笑)」
「悪かったわね、気持ち悪くって・・・。ねぇ、日向さんの彼氏さんの事、覚えてる?」
「あぁ、確か洋介さんだったけ? 何、お前タイプなの?」
「馬鹿、そう言うんじゃなくて・・・日向さん凄く幸せそうな顔してたなって思ってさ。」
「そう言えば、確かにな・・・俺的には、日向さんに彼氏が居たのは、ショックだったけどな。」
「へぇ・・・あんた、日向さんみたいなほんわか系がタイプなんだ。」
「何だよ、悪いかよ!」
「目の前に、素敵な女の子が居るって言うのにねぇ・・・」
「素敵ねぇ・・・?」
「何よ、何か不満でも有るの?」

「無いって無いって(^^ゞ  そう言えば、野球部の応援も遠足気分で楽しかったよなぁ。」
「そうね、益野市まで応援に行くなんて、予想もしなかったけどね。今年の野球部少しは強くなったね。」
そうです、例年と違って松舞高校野球部は1回戦を突破しちゃったんです。
2回戦は、島根県の西の端、益野市での試合でした。
途中のトイレ休憩は、海辺のパーキングでした。
これから野球の応援って事忘れて、みんなで波間で遊んだりしてました。
「しかし、あれ、2回戦も勝ってたら、夏合宿と被ってたよな、きっと」
「そうね、でも疲れたわよ、応援遠征から帰って1日空けたら合宿だったからね。」
「しかし、あのペンション良かったよなぁ。日向さんたちとのバーベキューも美味しかったけど、ペンションの料理も美味しかったよな。」
「うん、おしゃれで美味しかったよね。いつか、また行きたいね。」
「それは、二人でか?ブラバンでか?」
「馬鹿、ブラバンでに決まっているでしょ・・・誰が健吾と二人っきりでなんか・・・」
馬鹿・・・本当に馬鹿で、鈍感なんだから、健吾の奴って
「だよな・・・ 初日の晩さぁ、みんなでやった花火覚えてる?」
「覚えてる覚えてる、青木先輩と沢田先輩、ラブラブだったよね。」
「あの二人には、上手く行ってもらわないとな・・・お互いに・・・」
「そうね・・・私はもう大丈夫だよ。健吾は?」
「俺だって、大丈夫さ。それに俺はふられたんじゃなくて、ふった方だしな」
「そうよね、本当ろくでもない奴よね、学校中のマドンナをふっちゃうんだから(笑)」
「お前なぁ・・・」
「あっ、ひょっとして本当は後悔してるんじゃないの?」
「馬鹿、俺はお前を選んだ事、後悔してないぞ」

気が付くと私は、健吾にキスをしていた。
甘える様に健吾に寄りかかり、上目遣いで健吾を見つめる。
私の髪を、指に巻きつけ弄びながら健吾が、話しかけてくる。
「いつか、二人っきりであのペンション行こうな」
「うん、絶対行こうね。あそこの朝食も良かったわよね、テラスに出て鳥の声を聞きながら、モーニングを食べるの。」
「ありゃ、おしゃれだったよな。あんなおしゃれな朝食なんて初めて食べたぞ。うちの庭でやったら、鳥のさえずりじゃなくて、コケコッコ―って聞こえて来そうだし・・・偶に牛の鳴き声も聞こえたりしてな(笑)」
「う~ん、確かにね~。でも産みたての新鮮な卵と、搾りたて生乳が飲み放題よ」
「あっ・・・それは有りかもな」クスッと健吾が笑った。
「あっ、今、『馬鹿な事考えって』って笑ったんでしょ」
「あっ、自覚は有るんだ」そう言いながら、私のほっぺにキスをした。
・・・上手く誤魔化された様な・・・

私の首筋やうなじを舐める様に健吾が眺めていた
「海水浴の時の日焼け・・・だいぶん薄くなったな。」
「ちょッちょっと、いやらしい目で見ないでよね。」
「アホか。誰がお前に欲情なんかするか。」
「ふ~ん、じゃあ誰だったら欲情するのかなぁ、健吾君は?」
「馬鹿・・・」そう言いながら、健吾は私のうなじに唇を這わし始めた。
「ちょっとぉ・・・何考えてるのよぉ・・・駄目だってぇ」
「水着姿の楓も、中々色っぽかったぞ。」
「それは分かったから・・・くすぐったいって・・・」
「水着の跡が消えたかどうか、見せてもらおうかな・・・」健吾が私のTシャツの裾に手をかけた。
・・・私は覚悟を決めた。

突然、健吾の携帯にメールが届いた。
反応的に私達は、離れた。
携帯を開いた健吾が、メールをチェックする。
「ヒデ兄からだ・・・ひょっとして監視されてんのかなぁ」
「ったく、折角良い雰囲気だったのに・・・(-_-;)」自分の言ったセリフに、一人赤面してしまった。
「今から、差し入れ持って大森に上がって来るってさ、ヒデ兄」
「・・・・・何か、勉強する気失せちゃったね。」
「あぁ、確かにな。」
お互い見つめ合い、思わず顔を反らしてしまった。
まさか、あんな展開になろうとは思ってもいなかった。
去年のクリスマス・・・青木先輩と二人っきりで過ごした夜も、結局私が女の子の日になっちゃって、何も無かったから、私ってツクヅクそっちに縁の無い女なんでしょうね・・・

お互い無言の時間が流れていく
窓の外、田んぼを挟んだ向こう側の県道を、1台の軽トラックが走って行った。隣の集落の木村のおじさんの軽トラだった。
「ねぇ、木村のおじさんが、また野菜一杯積んで、道の駅に向かってるよ。」
健吾も窓の外を覗き込む「本当だ、今日もお客さん多いんだろうな。」
そうなんです、道の駅の農産物直売所のバイトは、宿題を理由に休ませてもらったんです。
「今日、バイトしてたら、大変だったろうな・・・」
「そうね、夏休み最後の日曜日なんだし。あそこのバイトも大変だったわよね。」
「そうだよな、朝早くからだもんな。・・・そう言えば、バイト代が入ったらお前は何に使うんだ?」
「んッ?未だ、具体的には考えてないなぁ・・・貯金しちゃうかも。手元に有ると、気が付いたら無くなってそうな気がするし」
「確かにな、気が付いたら無くなってんだよな。俺も取りあえずは貯金しようかなぁ・・・」
「ねぇ、二人でどこか旅行にでも行かない?健吾」
「旅行かぁ・・・良いかもな・・・海外は無理だろうけど、どこかおしゃれな街に行きたいなぁ」
「佳奈絵さんがね、倉敷とか尾道が良かったって、言ってたわよ。何だかんだ言って、お兄ちゃんと色々出掛けているみたいだし」
「尾道かぁ・・・坂の町だよな、良いねぇ。確か映画の舞台にもなったよな。」
「じゃあ決定だね健吾、いつ行くいつ行く」
「おいおい、お前も唐突だなぁ。まてまてネットで色々調べてみなきゃ。もうスグ、ヒデ兄来ちゃうし今夜、俺の部屋来るか?」
「うん、行く行く。でも、変な事しないでよ」
「う~ん、さっきの続きやっちゃうかもな・・・」
「馬鹿・・・本当、男子ってスケベなんだから」
「仕方ないだろ、性なんだからサガ・・・・・嫌だったか、さっき?」
不意に健吾が真顔になる。
「・・・そんな事無いよ健吾。でも旅行に行くまではお預けね♪」
そう言いながら、もう一度キスをする。

「お~い、楓~健吾~」不意に玄関からお兄ちゃんの声が聞こえた。
・・・・・本当に間の悪い・・・(笑)
「楓ちゃ~ん、ケーキ買って来たわよ。一息入れたら~」
佳奈絵さんに、バレバレ何ですね(^_^;)
Tシャツの乱れを直してから、玄関に向かう。
「ありがとうございます、佳奈絵さん。」「ヒデ兄、ゴチになります」
「どう?ちゃんと宿題進んでる?」
「ううっ、佳奈絵さん助けて下さいよぉ・・・英語で分かんない和訳が有るんです。」
健吾の奴・・・甘えちゃって・・・(怒)
「はいはい、後で教えてあげるから。取りあえずケーキ食べよ♪」
「おい健吾、俺には頼らないのかよぉ~」
「はい、ヒデ兄」健吾がきっぱり答えた。
「そりゃそうだよね~」その間合いの良さに、私と佳奈絵さんは大笑いした。
「でも、健吾君に楓ちゃん。あれ程、早め早めに宿題やらなきゃって、言っておいたのにね・・・まぁ、学生の夏休みなんて、そんなもんだよね。その、集大成がこいつだからね」
「おぉ、お褒め頂き光栄です。」
「いや、モリヒデ、誰も褒めてないって(笑) ほら、モリヒデ台所からお皿とコップ持って来なさいよ。楓ちゃんと健吾君は、机の上をさっと片付けてね。そうそう・・・花火安売りしてたから、買って来ちゃったぁ、今夜みんなで花火しない?」
今夜は健吾と旅行の打ち合わせするつもりだったんだけどなぁ・・・
でも、それはまだ先でも良いですよね。
過ぎゆく夏を、思いっきり満喫しなきゃ、悔いが残っちゃいそうです。
「やります、やります、やりますぅ~。ねぇ健吾♪」
「そうっすね、花火大会やっちゃいましょうか♪」
「じゃあ、二人はケーキ食べたら夕ご飯まで、もうひと踏ん張り、勉強頑張ってね♪」
うっ・・・佳奈絵さん・・・仕切るのが上手いんだからぁ・・・(^^ゞ




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「ひどいよ、もう最低、信じられない。」
彼女は、そう言いながら、アパートのドアも閉めずに、外に飛び出して行った。
こんな酷い喧嘩をしたのは、初めてだった。
俺は、虫の居所が収まらないし、どうしたらいいのか分からず、部屋の隅にうずくまっていた。
それは盆前の土曜日の話だった。
それ以来、彼女と連絡が取れません。
こんばんわ、颯太です。
―――――――――8月20日(金)―――――――――
なぜ、あんなに仲が良かったのに喧嘩したかって?
それは、些細な事だったと思う、思い出せない位小さな事。
今、それを思い出そうとしても、しんどいだけですから、それ以上は語りたくないですね。

どうやら彼女‥‥朝ちゃんは、松舞に帰ったみたいです。
俺はと言うと、部活やバイトって適当に理由を付けて、東京に残る事にしました。
松舞に帰っても、同じアパートにモリヒデや金田が住んでいる訳で、色々と世話を焼かれるのも何となく癪ですからね。
今にして思えば、あの二人に仲介を頼むって手も有ったんですよね。

窓の外を眺めると、土砂ぶりの雨は小康状態になってますが、遠くで雷が鳴っているのが聞こえます。
窓を開けて空を眺めると、今の気持ちと同じで、どんよりとした雲が鈍く街の明かりに照らされています。

「そう言えば、朝ちゃんのアパートのベランダに置いてあるハーブ達、大丈夫だったかな?」
ふっと、そんな事を考えた。
合鍵は有るから、入ろうと思えば入れるんですが、喧嘩の真っ最中ですから、こっちから負けを認める様で、入りたいとも思いません。

そんな事を考えていたら、また怒りが沸々と蘇って来た。
朝ちゃんが他の男と会っていた‥‥‥
お昼から夕方にかけての話だから、多分疾しい事では、無いと思う。
でも会っていたのは事実だし、何度もメールで会話もしていた。
そんな朝ちゃんを、見て尋常で居られるほど、俺は人間が出来ていない。
「そんなに私の事が信用出来ないの?」って、彼女は聞いてきた。
本当に朝ちゃんの言う様に、相談に乗っていたのだけかもしれない。
困っている人を放っておけない性格、それだから彼女の事を好きなんだよな。
でも、俺には、他の女の子との接点を嫌う癖に、朝ちゃんは他の男と接点を持っている。
その不公平さが、我侭さが許せなかったのも事実だ。

今までの出来事をあれこれと思い出してみる。
楽しかった事、嫌だった事、その一つ一つがどれも、大切な思い出であり、例え小さな思い出でも、複雑に絡み合ってやはり捨て切れない大切な思い出だったりしている。
「やっぱり、ハーブ仕舞いに行こうかな‥‥でもやっぱりなぁ‥‥」
俺の心は、揺れ動いていた。
また降り出しそうな曇り空と一緒で、心もザワザワ揺れている。


そんな事を、ウダウダと考えているうちに、壁にすがって居眠りしていたようです、気がつくと空がうっすらと白くなり始めていた。
新聞配達の自転車が、カチャカチャと音を立てながら、窓の下を走り抜けて行く。
「このまま、ぼ~っとしてても時間の無駄か‥‥」
俺は、Tシャツとランニングパンツに着替え、軽くストレッチをした。
外に出てみると、いつの間にか雲が薄くなっていた。
澄んだ空気を味わう様に、深く深呼吸をする。
一歩づつゆっくりと歩き始める。
意識している訳ではないが、足は朝ちゃんのアパートが有る三軒茶屋へと向かっていた。

歩道には所々、水たまりが残っている。
そのうち、消えて無くなる水たまり、それは俺の心のわだかまりと、同じ様に思えてきた。
そのうち、消えて無くなる些細な出来事だったんだよ、きっと。
道の真ん中に出来た、大きな水たまりを飛び越えた瞬間、俺の気持ちは曇りが取れた。
「何も無かった顔をして、会いに行こう。」
俺は、走り出した。
朝ちゃんと色々な話がしたかった。
何でも無いここ数日の些細な事とか、とにかく何でもいい、彼女の声が聞きたかった。
もちろん、アパートに朝ちゃんが居る保証は無いんですが、行かないと気が済まなかったんです。



‥‥‥やはり、アパートに未だ戻って来てませんでした、朝ちゃんは。
ハーブの事も気になりましたが、合鍵を持っているとは言え、勝手に女性の部屋に入るのはちょっと気が引けましたから、今回はあきらめました。
とりあえず、自分の思うがままに行動した、それだけで満足です。
「んじゃあ、コンビニで朝飯でも買って帰るか」
俺は来た道を、走り出した。


コンビニで牛乳とサンドイッチを買う。
自動ドアが開いた瞬間、ムッとした空気が俺の身体を包み込む。
「こりゃ、朝から暑くなりそうだな。」見上げると、抜ける様な青空が広がっていた。
アパート近くの公園を抜ける時、セミの鳴き声が聞こえてきた。
ふっと、ヒグラシこと金田の事を思い出す。
「モリヒデの奴も、金田とこんな事を繰り返しているんだろうな」
そう考えると、たまに喧嘩するのも悪くないかなっと思えてきた。
俺はベンチに座り、サンドイッチを頬張りながら、頭上の樹をしげしげと眺めた。
「あっ、こいつはミンミン鳴いているから、アブラゼミだよな・・・(笑)」
そんな、つまらないネタでも、朝ちゃんはククッっと笑ってくれる。
そんな笑顔をふっと思い出したら、凄く寂しく思えてきた。
俺が素直になっていれば、いや・・・見栄を張らずに松舞に帰っていれば・・・
いつもの休日みたいに、青く晴れた公園で、手作りのサンドイッチを頬張りながらお喋りしていたい
会いたいな・・・会いたいよ・・・朝ちゃん
そんな事を呟いている自分に、ハッと気が付き恥ずかしくなってしまう。
「誰も聴いてなかったっと」そう言いながら、公園を見渡す。
下北沢の街は既に動き始めており、通勤途中のサラリーマンが俺の事など気にもせず、せわしなく歩いています。
そんな人ごみの中、重そうにトランクケースを転がす女性が目に止まる

「?! 朝ちゃん?」
その女性は、公園の入り口を抜け、こっちに向かって歩いてくる。
しばらく眺めていると、俺の存在に気が付き、足を止めた。
やっぱり、朝ちゃんだ。
彼女はゆっくりと俺に向かって歩き始める。
そして、俺の目の前で立ち止まった
「よお、おはよう。今朝も朝から暑いな」
「そっ‥‥そうね。何してるの、こんな所で?」
「‥‥‥三軒茶屋まで、ランニングした帰りさ。セミが鳴いててさ、ちょっと休憩してたんだ」俺は頭上の樹をもう一度見上げる。
相変わらずミンミンと鳴き続けていた
「アブラゼミだよね?颯太君 」
「そうだな、ヒグラシじゃないぞ、こいつは」
プッって、朝ちゃんが吹き出した。
「分かるわよ、私だってそれ位。ヒグラシは松舞に居るって言いたいんでしょ。カナカナに随分と説教されて来ました。」
「やっぱ、松舞に帰ってたんだ。」
「そうだよ、でも颯太君の居ない松舞はつまんなかったよ。花火大会だって、行ってないんだから・・・あのね・・・ごめんね颯太君・・・」
「俺こそごめん・・・朝ちゃんの事信じてるから。そんな事より、花火見てないんだ・・・確か今夜、二子玉川の花火大会だったはずだよ、見に行こうか」
「うん、行く行くぅ・・・でもその前に荷物を置いてこなきゃ。」
「花火は夜なんだから、まだ時間は一杯有るって。それに、二子玉なら三軒茶屋にどのみち出なきゃいけないし。」
「そうよね・・・まだ朝よね」クスッと朝ちゃんが笑う。
何日振りかに見るその笑顔に、俺も笑顔になる。
「取りあえず、俺、シャワー浴びて着替えるから、俺のアパートに来いよ。ほら、荷物持ってやるって」
「ありがとう、颯太君」
俺と朝ちゃんは、干からびた水溜りを、一つ飛び越えて歩き出した。


くりむぞんより・・・
すいません、スガシカオの最新アルバムFUNKASTiCの中の一曲、「雨上がりの朝に」にインスパイアされて書きました・・・


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「お待たせ、モリヒデ♪」
先に下に降りて、ゴン太の相手をしていた俺の後ろ姿に、ヒグラシが声をかけてきた。
「おせえよ、ヒグラ‥‥シ‥‥」振り返った俺は思わず息を飲んだ
毎年の事ながら、ヒグラシの浴衣姿を見る度にドキッとしてしまいます。
「ゴメンゴメン、一人で帯を締めるのって、結構難しくってね。」
「さぁ、行くぞ。」
「あっ、待って」ヒグラシは俺に駆け寄り、腕を絡めてきた。
何もアパートの前で腕を絡めてこなくても‥‥でも、悪い気はしなかった。
こんばんわ、モリヒデです。
―――――――――8月13日(金)―――――――――
今夜は、松舞が一年で一番盛り上がる、花火大会です。
今年の夏は、颯太の奴も忙しいみたいで、帰省してません。
緑川は帰省していますが、今夜は用事が有るとかで、花火大会に参加はしませんでした。

「考えてみたら、二人っきりで花火を見るのは、初めてだな。」
「そう言えばそうよね、いっつもなら朝ちゃんや颯太君と一緒だもんね。去年は楓ちゃんに青木君も一緒だったわよね。今年は楓ちゃん達は?」
「楓と健吾は、道の駅のアルバイトが忙しいみたいで、バイトが終わってから車で、お袋に送ってもらうらしいぞ」
「そっか、お盆の里帰りで、お客さん多そうだもんね。じゃあ今夜は二人っきりだね♪」
「何だよ、気持ち悪い事言うなよな」
「あら、気持ち悪くてすいませんでした。あっ見て見て、リンゴ飴売ってる~」
「相変わらずだな、ヒグラシは(笑)」
「何よ~、いちいち噛み付くわね」
「ほらよ、おごりだ。おじさん、お金ここに置いとくね」俺は、リンゴ飴をヒグラシに手渡した。
「あっ、ありがとう。珍しいわね、ドケチなモリヒデのおごりだなんて」
「お前も、いちいち噛み付くなぁ(笑)」
「お互い様だったね。うん、甘くて美味しい♪、ほらモリヒデも食べてごらん。」
ヒグラシが目の前に差し出したリンゴ飴にかぶり付く。
甘い飴の香りが、リンゴの香りを一層引き立てています。

夜店荒らしの朝ちゃんが一緒なら、それはそれで楽しいんですけど、たまには誰にも邪魔されずに見る花火大会って言うのも良いものですね♪
「しかし、緑川だけ帰ってくるとは、意外だったな。」
「えっ? うっうん・・・そうよね・・・」
「あっ、ヒグラシ・・・その口振り・・・何か知ってんだろ。まぁ、プライバシーの問題だから、良いんだけどな。それより、どこから見ようか? 松舞大橋の上が一番きれいなんだろうけど、もう人が一杯だろうしな。」
「そうねぇ・・・やっぱり河原に降りようか」
「じゃあ、その前に、ビールやたこ焼き買い込んでおかなきゃな」
「ったく、未成年の飲酒は法律で禁止されてるのよ、成人として見過ごす訳にはいかないわ。(笑)」
「何だよ、こんな時だけ大人面しやがって(笑)」
「だから、ビールは私が買う! あんたは、たこ焼きとソフトドリンク買いなさいよ」
「はいはい・・・」ヒグラシは、缶ビール一本で酔っちゃう位だから、たぶんそんなには呑めないはず。ここは素直におばさんの言う事に従っておきましょうかね。(笑)

河原に座り、空を見上げる。
満点の星空とは言い難いが、先ず先ずの天気です。
「ヒグラシ、ビールビール。」
「ダメよ、これは私が飲むんだから。」そう言いながら缶ビールを、プシュッと開けて、ビールを飲むヒグラシ。滅多に見る事のない、可愛い横顔です♪
「あぁ~、汗かいてるから、ビールが旨いわぁ・・・」
「何だよ、そのオヤジ臭いセリフは(笑)」
「いいでしょ、本当に美味しいんだから。でも、美味しいのは最初の一口だけなんだよね・・・捨てるの勿体ないから、モリヒデにあげるわ。その代り、そっちのコーラちょうだい♪」
すっごく、回りくどい事をしている様な気もしますが(^^ゞ  ヒグラシの飲みかけのビールを口にする
「うぉ~確かに旨い。今日も一日ドタバタしたからなぁ」
「ゴメンね、千華屋の配達に付き合わせて」
「いいって事よ、どの道、アパートでダラダラ過ごしていただろうから。」そうなんです、午前中にうちのじいちゃんばあちゃんの墓参りを済ませて、午後は大家さんの手伝いで、田舎饅頭を配達してました。
「明日は、そこまで忙しくないみたいだから、どこか遊びに行かないモリヒデ?」
「そうだな、そう言えば、結局海水浴は一回行っただけだったな・・・でも盆だから、海水浴は無理か。なら山だな・・・どこか自然でも撮影に行くか?」
「そうねぇ・・・大山から蒜山にかけて行ってみない? 植田正治写真美術館ももう一度行ってみたいし」
「いいねぇ、じゃあ明日は早起きして出発だな。」
「うん・・・あっでも、お弁当の材料買ってないわ」
「いいじゃん、たまには外食しようぜ。蒜山にハーブレストランが有るって、颯太が言ってたし」

ドンッ
突然、身体が震えるほどの、轟音が響き渡った。
「あっ、始まったわよ、モリヒデ うわ~大きい」そう言いながら少し首を竦めるヒグラシ
「馬鹿、何、首を竦めてるんだよ。落ち来ないって(笑) うぉ、デカっ」
「あんただって、今、首竦めたでしょ(笑)  キレイねぇ・・・そう言えばカメラ持って来なかったわね、お互い」
「そうだな・・・失敗したな。でもまぁ、その分花火を楽しめるからな。」
「それもそうね、カメラが有ったら今頃、露出かまったり、シャッタースピードの調整したりとか、お互い無言で、カチカチやっているでしょうね(笑) あっ見て!枝垂れ柳みたいで綺麗~」
・・・そうはしゃぐヒグラシの横顔を、こっそりデジカメに収めました・・・俺が、カメラを忘れる訳なんてありませんよぉ(笑)

二人で空を仰ぎ見る。
気が付くと、俺の左肩に、ヒグラシの頭が乗っていた。
折角の二人っきりで見る花火大会だ、ヒグラシの好きな様にさせておこうかな・・・
「なんか、凄く幸せな気分‥‥」
ヒグラシが呟いた。
「あぁ‥‥確かにな」
ヒグラシと見る花火大会は、これで5回目だ
これから先も毎年二人で、この松舞花火大会を見る事だろう。
きっとその年毎にそれぞれ思い出が出来ていくだろう。
でも、今日の花火大会が一番だって気がする。
「ねぇモリヒデぇ、大好きだよ、ず~っとず~っとね。」
すわっ、こんな人混みの中でいきなり何を言い出すんだよ、ヒグラシは(・_・;)
「ねぇ、キスして‥‥‥」
「馬鹿、無理だってこんな人が多いのに」
何だ何だ? 確かにロマンチックな雰囲気では有るが、明らかにヒグラシの様子がおかしい
‥‥‥あっ、ひょっとして一口飲んだビールのせい?
ヒグラシって酒乱になるんだ(・_・;)
「おいヒグラシ、コーラ飲んで、落ち着けよ。なんならタコ焼き食うか?」
「ううん、大丈夫。ちょっと酔っぱらったみたい、私。」
「お前、酒弱いんだな。初めて知ったよ」
「そりゃ、誰かみたいに高校1年の時から、飲んでませんから。真面目に生きてましたからね。」
「くぅ~、キツいな今の一言(笑)」
しかし、まだまだヒグラシの事、知らない事だらけですね。
まぁ、だからこうして一緒に過ごしていて飽きない訳ですよね。

最後の大玉が上がる頃には、ヒグラシの酔いも冷めました。
でも、相変わらず俺の左肩には、ヒグラシの頭が乗っている・・・
俺も、頭を左に傾けてみる・・・ヒグラシの髪からはシャンプーのいい香りがしている。
「今年も終わっちゃったね、花火大会・・・」
「そうだな・・・そろそろ行くか?」
「もう少し、このままでも良い?」
「あぁ、いいぞ。今日のヒグラシは、なんか甘えん坊だな(笑)」
「いけない?」
「いや、たまにはそんなヒグラシも良いかな・・・」
「たまにはって・・・確かにそうかもね。ゴメンね、いつも素直になれなくって」
「分かってるって。そんな所も含めた、全てのヒグラシが俺は・・・なんだ」
周りの目が気になり、一番大事なセリフは、小声になってしまった
「ありがとう、モリヒデ。ねぇ明日も晴れるかなぁ?」
「んッ?そうだな・・・たぶん大丈夫だろう。」俺は辺りをそれとなく見渡す・・・
人気が無くなったのを確認し、そっとヒグラシに唇を寄せる。
・・・・・・・

「ねぇ、そろそろ帰ろうか。明日も早起きしなきゃいけないしね。」
「そうだな、ヒグラシ。」
俺達は立ち上がり、来る時と同じ様に、腕を組み歩き始めた。


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「ただいま~」
誰も居ないキッチンに向かって声をかける。
「居る訳ないよな。『お帰り』って声かけて来るのは、泥棒ぐらいだな。(笑)」
一人暮らし何だから、当たり前ですよね。
こんばんわ、東京で独りぼっちの洋介です。
―――――――――8月6日(土)―――――――――
独りぼっちの生活にも随分と馴れました。
本当は、馴れたくなんてないんですけどね。
Tシャツと単パンに着替え台所に立つ。
さて今日の夕ご飯は‥‥
そう言えば、今日営業途中で寄ったホームセンターで、まな板を買って来たんですよね。
今まで使っていたのは、サイズが小さいし薄いから、使い難かったんですよね。
今回買ったのは、今の台所にぴったりのサイズで、それなりに厚みも有ります。
何よりも、色が黄色なんです。
「だから何だ」って言わないで下さいよ。

あれは確か、今年の正月だったと思う。
日向と通称「隠れ家」と、呼んでいる松舞の俺の家で過ごした時の話だ。
二人で、台所でお節料理を作っている時に、日向が憧れているキッチンの話になった。
「やっぱり、カウンターキッチンよね。ダイニングテーブルに、調節可能な照明、大きめの冷蔵庫。三口のIHクッキングヒーター欲しいわよね。後は、オーブンレンジに電子レンジ。フードプロセッサーも有ると便利よね。便利と言えば、食器洗浄乾燥機も良いなぁ。」
「おいおい、先ず家の大きな奴が必要になるんじゃないか?」
「それもそうよね。でもせめてキッチンのカラー位は統一したいわね。やっぱりキッチンは黄色かな~お鍋からから吊るしたフライ返しに至るまで、黄色でコーディネイトするの。それなら低予算で済むでしょ」


その一言を聞いて以来俺は、100均やホームセンターに寄る度に、調理道具コーナーをチェックしていた。
ボールにスライサー、そして今日のまな板と少しづつ、黄色い調理器具が増えてきた。
それは、自分なりの日向と暮らす時の準備で有ったし、黄色い道具が一つづつ増える度に、日向との生活が近づいている気がして、一人うれしくなっていた。
キッチンから良い匂いの湯気が漂い、その湯気の向こうでは日向が、自慢の腕を振るって、料理を作っている。
そんな事を考えながら、俺はまだ黄色くないフライパンに、刻んだ野菜を放り込む。

黄色のコーディネイトが完成した時が、日向との生活のスタートの様に思えてくる。
それが、ここ東京なのか松舞なのか、又は全く知らない街なのかは、分からない。
ただ、僕が黄色い調理器具をガチャガチャ鳴らしながら、日向と再会する風景を想像し、ふっと笑う。
「洋君、随分買ったわね」って、呆れ顔の日向に少し照れ臭そうに「おうっ」笑う自分がそこに居た。


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