松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2010年09月

タンスの引き出しの中を、もう一度チェックする。
そして机の上や棚の中を、もう一度見渡す。
「OK、忘れ物は無い様ね。‥‥‥あっ、歯ブラシ歯ブラシ(・o・;)」
慌てて洗面所に向かう。
こんにちは、日向です。
―――――――――9月27日(日)―――――――――
楽しかった東京生活も今日で終わり。
明日からは又、松舞保育園で日向先生として園児と向き合わなければいけません。
子供達と一緒に、園庭を走り回り歌ったり踊ったり‥‥子供の頃夢見た保母さん(今じゃあ保育士って言うんですが)として。
まぁ、それはそれで楽しいんですけどね。

洗面所の白い棚の上に、仲よく洋君と私の歯ブラシが並んでおり、昨日までの私達を象徴しているみたいで、思わず写メを撮っちゃいました。IMG_1082.jpg
何でもない風景ですが、何故か私には、それが特別な事の様に思えます。
今までだって、こうして数日一緒に過ごした日々は、何回か有ったんですけど今回は特別だった様な気がします。
東京生活って以外、大きな違いは無かったんですけどね(^_^;)

‥‥‥朝一緒に起きて、先ずは「おはよう」のキス
私が朝食を準備している間に、洋君が予約洗濯で洗い上がったばかりの洗濯物を干す。
朝食の後、互いに支度をして玄関の前で今度は「いってきます」のキスをした後、一緒に駅に向かう。
夕方、へろへろに為りながらも地元のスーパーでお買い物‥‥‥洋君と一緒に、献立を考えながらのお買い物も大好きですけど、洋君の喜ぶ顔を想像し、あれころ献立を考えながら一人でのお買い物も、それはそれで幸せな気持ちになります。
帰宅したら、早速夕ご飯の準備。
そして洋君が帰って来たら、先ずは「お帰り」のキス
おしゃべりをしながら、一緒に楽しい夕ご飯。
どちらかが洗い物をしている間に、もう片方が洗濯の予約とお風呂の準備。
一緒にお風呂に入り、それからは暫くの間互いの仕事や読書、TVを見たりする。
ひと段落付いたら、ビールでも飲みながら他愛のない会話を楽しむ。
そして一つの布団で眠りにつく
あっ、もちろん「おやすみ」のキス
う~ん一日に何回キスをするんでしょう(笑)

でも、そんな絵空事ばかり考えてちゃあいけませんね、ちゃんと現実を見つめて行かなくっちゃあ。
次に洋君に会えるのは多分お正月。
今年も、松舞に在る洋君の家通称「隠れ家」で年越をするつもりです。
その時まで、頑張らなくっちゃあいけません。

「お~い日向~。そろそろ出掛けないと新幹線に間に合わなくなるぞ~」
その言葉に我に返る。
「うん。今、行くぅ」
仲良く並んだ歯ブラシ達を引き離すのは、何となく忍びなくて結局そのまま置いて行く事にします。
洋君がその事に気が付いた時、「ったく日向の奴、相変わらずおっちょこちょいなんだから」そう苦笑いする顔が目に浮かびます。
そうして洋君が歯ブラシを持って年末に帰ってくる‥‥その為のおまじないですね。(他の女の子を連れ込んだ時の、防衛線って話も有りますが)

「お待たせ、洋君」
「よし、じゃあ忘れ物無いな?鍵するぞ。」
「う‥‥う~ん(笑)  この部屋には一週間お世話になったよね」
「おう、後で家賃の請求書を送るからな(笑) ほら荷物出せよ、持ってやるから。」
洋君が私のトランクをひょいっと持ち上げて、階段を駆け下りる。
「え~っ家賃の話なんて聞いてないよ。」
私も洋君の後を追う様に階段を駆け下りる
「でも本当に、この部屋にも洋君にもお世話になったわね。」
「そうだな、一週間も連続で一緒に過ごすのって、考えてみたら初めてかもな」
「あっ‥‥‥。そう言えば確かに初めてかもね。 楽しかったよ、ありがとう」
そうか、それで特別な気がしているのかも‥‥‥
「俺だった楽しかったぞ。日向の手料理を一杯食べれたしな。」
「いえいえ、どう致しまして」そう言いながら、前方の街並みを見渡す。
「この街ともお別れだね もう少し長い間住んでたら、この街の良い所がもっと分かったのにね」

「いや、別にず~っとこの街で暮らしても良いんだぞ」
ふっと真面目な顔で、私を見つめる。
「‥‥‥何それ?ひょっとしてプロポーズ?」
「馬鹿! んな訳無いだろ 例え話だよ例え話。」
「ふ~ん例え話ね‥‥何の例えなんだか(笑)」
「だから‥‥‥その‥‥なんだ‥‥‥ほら、あれだ‥‥‥」
しどろもどろになる洋君がかわいいです。
「うんうん分かった分かった、例え話なんだよね例え話。残念、ちょっぴり期待しちゃって損しちゃった」
「えっ? 今、何て言った日向?」
「だから‥‥‥ううん、何でもないって。 さて切符買うのも今日が最後だね、東京駅までだよね170円だよね」
「あぁ」
はっきり言わない洋君に少し苛立ちを感じます。
でも、洋君が言い出すタイミングを図っているのは分かってから、仕方の無い事だとは思います。
それに今、東京に残ってくれと言われても、園の事が気になって正直素直に「うん」とは言えないんですけどね
何もかも投げ出して洋君の腕の中に飛び込めたら一番幸せなのかも知れませんが、そんな勇気の無い自分に苛立っているのかも知れません。

上りのホームに洋君と並んで立っている。
そろそろ電車来るかなって思い、下り方向に目をやる。
そこには、まっすぐ前を見つめる洋君の横顔が。
こうやって毎朝、洋君の横顔を見ながら電車を待っていた。
それも、これで当分はお預けです、そう思うと少し切なくなってきた。

「ん?どうした日向。なんか忘れもんか?」
「えっ?違う違うゴメンね。洋君の横顔、当分見れないんだなって思ってさ」
「なんだよ、気持ち悪い 俺の顔なんて擦り減ったりするもんじゃないから」
「そりゃそうだけど」
「また見れるだろ俺の顔は。まぁ次会った時もう少し小皺と白髪が増えてるかもしれないけどな。」
そっけない返事を聞いて少し寂しくなる。
「ねぇ洋君は寂しくないの?」
「そりゃもちろん切ないさ。でも、俺が切ない位なんだから、日向はもっと切ないんだろうと思う。でもそれは日向の選んだ道だ。その選択で間違い無いのは分かっているから、俺が弱音を吐いたら折角の日向の決意に水を差してしまう様でさ。」
「洋君‥‥‥」
私の思いを洋君は理解してくれている、そう思うと嬉しかった。
でも同時に切なかった。
「安心しろ日向。俺は俺の考えを貫いて、お前と一緒になるつもりだ。だからもう少しだけ待ってくれ、何回もズルズルと引き延ばしているけど、必ずお前を迎えに行くからな‥‥‥おっ電車が来たぞ、日向。」
「うん、待ってるよ洋君。ず~っとず~っと待ってるから、洋君が迎えに来てくれるのを」
入って来た電車の音で、私の言葉はかき消されたかもしれない。
でも、優しく私を見つめ小さく頷く洋君がそこに居た。


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「んじゃあ日向、忘れもん無いか? ちゃんとシートベルトしろよ~」
「OK大丈夫、洋君こそ睡眠不足で運転大丈夫?」
「毎度の事だ(笑)。それに会社までだから大丈夫だって」
今日は、東京で大学生している妹の朝葉とその彼氏の颯太君と会う事になってます。
でもその前に、昨夜洋君は会社の車で帰って来ているので車を置きに、洋君の会社に向かう所です。
おはようございます、日向です。
―――――――――9月26日(土)―――――――――
洋君の会社を訪れるのは、初めてなんですよね。休日だから誰も居ないけど、ちょっぴり緊張してます。P1020870.jpg
「えっ?何?ここってゴーストタウン?」
って、思わず叫んじゃう位にウィークエンドのオフィス街は、車が走っておらず人通りも有りませんでした。
「やっぱ、オフィス街は週休二日の所が多いからな。」
「ふ~ん、そんなもんなんだ。」
「ほら、あそこのコンビニの所がうちの会社が入っているビル、あそこの9階なんだ。」
少し小ぢんまりとした‥‥‥とは言え、松舞ではお目にかかれない十数階建てのオフィスビルでした。
「へえ~意外と素敵なビルね。」
「そうかぁ? それであの信号を曲がった所に駐車場が有るんだ。」


車を止めて、歩いて駅へと向かう。
「ここの立ち食い蕎麦屋、安くて旨いんだぜ。それから向こうの定食屋、ボリュームが凄いんだ」
そう、説明(自慢‥‥?)しながら歩く洋君を見ていると、何だかんだ言ってこの街が好きなんじゃないかと思えてしまう。

そんな話を聞きながら10分程で駅に着きました。
「ここからだと渋谷まで、230円だな。」
「うん、分かった。切符買って来るね。」
この一週間で学んだ事、それは‥‥suicaって本当に便利なカードなんですね、まあ山陰に導入されるのはまだまだず~っと先の話なんでしょうけど。
「お待たせ、ようく‥‥」
洋君の後ろ姿に話掛けながら気が付いた、洋君は誰かと話をして言いました
「あれ?村田さんお知り合いですか? あっ!ひょっとして噂の彼女さんです?」
「ばっ、馬鹿、飯野。噂って何だよ~噂って」
飯野‥‥あぁ、確か一緒に大阪から東京に転勤になった、洋君の後輩さんですね
「初めまして、飯野さんですね緑川日向って言います。いっつも洋君がお世話になっております。」
「あっ、すいません遅くなりました、僕、村田さんの後輩の飯野和彦って言います。お噂はかねがね聞いておりますよ」
「だから。飯野、余計な事言うな」
「どんな噂ですか飯野さん?」
「『俺の彼女は、美人で性格も良い』とか、『料理が上手い』とか‥‥‥噂って言うより、ノロケ話ですね確実に(笑)」
その話を聞いて思わず赤面してしまった。
「あっ、じゃあ僕、会社に行って忘れ物取ってから、秋葉に遊びに行きますんで、お先に失礼致しますね。緑川さん、フツツカな先輩ですが、捨てないでやって下さいね(笑)」
「イエイエ、こちらこそ出来の悪い先輩でしょうが、我慢してやって下さいね(笑)」
「あのなぁ、お前ら~。俺をネタにするなよな~」

さすがにウィークエンドの山手線は、少し空いてますね。
「彼が飯野君なんだ。素直で真面目な感じの人だね。」
吊皮に掴まりながら、洋君に話掛ける。
「そうだな、少し押しが弱いのが珠に傷なんだけどな。でも社内外の評価は高いぞ、奴は。」
「そっか‥‥洋君の社内外の評価はどうなの?」
「それを本人に聞くかぁ普通‥‥‥でも実際どうなんだろうな?。中小企業だから第一線で働けてるけど、大企業だったら間違い無く窓際か肩叩き待ちだろうな。」
「そんな事無いって、洋君はあれだけ頑張っているんだから。」
「頑張っても頑張っても報われない事だってあるさ、そりゃ。社会なんてそんな物だって‥‥‥」
洋君らしからぬ後ろ向きな発言に、思わず返す言葉を失った。
気丈に明るく振舞っているけど、やっぱり洋君だって色々な悩みを抱えているんですね。私じゃ解決出来ないかもしれないけど、少しでも洋君の支えにならなきゃいけませんよね。

「‥‥‥そんな事より日向、朝葉ちゃんの彼氏ってどんな感じなんだ?」
少しうつむく私を気遣ってか、洋君が別の話題を振ってきた。
「えっ?‥‥‥う~ん、颯太君はスポーツマンタイプかな、ほら陸上部員だし。でもちょっぴり繊細って言うかナヨナヨってした所も有るわね。」
「くぅ~、仲々辛口な評価だな。」
「でもイイ子だよ。朝葉達も付き合い始めて丸四年なんだよね、ほら洋君が初めて映画に誘ってくれた日、あの日が朝葉と颯太君の初デートの日なんだよね。もし洋君が映画に誘ってくれてなかったら、私もデートに付き合わされる所だったんだから(笑)」
「そっかあの映画かぁ‥‥懐かしいなぁ。また今度DVD借りてきて見てみようか、日向」
「そうだね、もう一度あの映画見てみたいな♪ でも今夜を逃したら当分見れないよね?」
「うっ、確かにそうだなぁ」
「だから早く私を‥‥‥」
思わず言葉に詰まってしまった‥‥‥「迎えに来て」っと言い出せなかった。
それは、恥ずかしいって言うのも有ったけど、そのセリフが洋君の足枷になるのが怖かったから。
折角東京で頑張ってる洋君の重荷にはなりたくない、洋君には思うがまま自由に羽ばたいていてもらいたい。
「『私を』なんだよぉ、一体?」
「ごめん、何でもないよ。DVDは今度のお正月の楽しみに取っておこうね、洋君♪」
「あぁ‥‥そうだな、そうしようか。」
少し考え込んでから、洋君がこう続けた。
「でもいつまでもこんな遠距離生活じゃあ、お前も辛いよな日向。」
「大丈夫だよ洋君、こうして洋君と過ごせる日々が少しは有るんだから。独りぼっちや無いんだから」
「無理すんなよ日向。お前の思うがままを口にして良いんだぞ。」
‥‥私の言いたかった事に感付いているみたいですね。
「早く迎えに来て」小さく呟いてみる
私の手を握り、小さく頷く洋君。
「もうすぐ迎えに行くから、その時まで日向のままで待っていろよ」
そう耳元で囁かれた。私も小さく頷く。
「さて、そろそろ渋谷に着くぞ日向。」「うん♪」
そう言いながら、より一層お互いの手を握りしめ有った。



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♪♪♪
はいはい、洋君からメールです。
今日はいつもより、ちょっぴり遅めだけど、きっと帰るコールですね。
携帯を開きメールをチェックしてみる。
‥‥‥「ゴメン日向、急な仕事が入った。今日は遅くなりそうです、先に夕ご飯食べておいて。俺はこっちで適当に済ませて帰るから。もし夕ご飯出来上がってたら、明日の朝食べるから冷蔵庫に入れておいて。お風呂も先に入って良いからな。
P.S.愛してる
う~ん、ここまで洋君が定時に帰れていたのに残念です。
まぁ、仕事だから仕方無いですよね。これが合コンだったりしたら、玄関のチェーンロックをして洋君を締め出すところですが(笑)
こんばんわ、日向です
―――――――――9月25日(金)―――――――――
夕ご飯は作り始めたばかりだから、刻み始めた食材はそのままラップして明日の朝ご飯にしちゃいます♪
今夜の夕ご飯は、簡単にレトルトカレーで済ませましょう。
そして余ったご飯は冷凍庫行きですね。
昨日買った新品のお鍋に、お水を入れてコンロにかける。
お湯が沸く間に、洗濯物・・・は洋君の洗濯物が有るから後にして・・・軽く台所を片づけて燃やせるごみを出す準備でもしておこうかな。
‥‥‥結局、こうやって私が家事をする事が多くなりそうですね。
でもでも、自分の為だけじゃなく誰か‥‥洋君の為にやる家事だったら全然苦じゃないです、逆に何だか幸せな気分です。
鍋から立ち上る湯気を眺めながら、ぼんやりとそんなそんな事を考えています。



・・・・。
・・・・。
よし、今日のレポートも完成♪
これで週末はレポートに追われる事無く過ごせます♪
棚の上の時計に目をやると、22時半を回ってます・・・
「洋君遅いなぁ・・・取りあえず先にシャワーでも浴びようか・・・」
遠距離恋愛真最中の時なら全然寂しくは無かったんですが、これだけ一緒の生活が続くと寂しくなる物から不思議ですね。
こんなに洋君のメールが待ち遠しいのは久しぶりな気がします。
ひょっとして私って身勝手な女なんでしょうか?

シャワーを浴びて髪を乾かし、ひと息ついて時計を見ると0時前です。
確か最終が0時5分に駅を出るはずです、ひょっとして終電にも間に合わないんでしょうか?
時計の針を意味もなく見つめています、そんな事したって洋君が帰ってくる訳じゃないんですけどね。
刻々と針は時を刻んでいき、1時を回りました。

♪♪♪
来ました、洋君からのメールです。IMG_0707.jpg
「やっと終わった。今から社用車で帰ります。もし眠かったら先に寝てて良いからな‥‥‥って、もう寝てたりして(^~^;ゞ」
いえいえ寝てないですよ、ちゃ~んと洋君の帰りを待ってますからね。
「遅くまでお疲れ様でした。気を付けて帰って来て下さいね。」
そう短くメールを打つ。
電車で帰ってくるなら駅まで出迎えようと考えてましたけど、車なら待ち様がないですね。
とりあえず、洋君のお風呂の準備をしてビールの準備でもしておこうかな~

やっぱり洋君が帰って来ると分かると、俄然やる気になっちゃいますね(笑)
結婚したら、こんな生活が当たり前になっちゃうかも知れません。
でも、洋君の笑顔が毎晩見れるのならそれも良いかなって思える様になってきました。
もちろん、早い時間に帰って来てくれた方が寂しくなくて、嬉しいんですが。
寂しくっても、数時間の話なので今までの苦労に比べたら‥‥そう今までの‥‥‥でも考えてみたらこの生活は日曜日で終わりなんですね、月曜日からは又独りぼっちの寂しい夜がやって来るんですね。
でも、それは覚悟の上での今回の上京です! 洋君が帰って来たら思いっきり甘えてやるんだから。
あの扉が開いたら、「おかえりなさい」って言いながら思いっきり、洋君に抱き付いちゃいます(笑)
嫌がられようとも、絶対にそうしてやるんだから♪
‥‥‥ほら、ガチャガチャって鍵を探す音が聞こえてきましたよ~♪


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「へぇ~、なかなか良い雰囲気のお店ね」
中庭には木が植えてあり、木材を多用した落ち着いた感じの喫茶店で、都内で有る事を思わず忘れてしまいそうです。洋君がお気に入りなのも分かる気がします
「だろう。ここのベルギーワッフルが旨いんだよ」
今朝は、そんな洋君お気に入りの喫茶店でモーニングを食べる事にしました。
おはようございます、日向です。
―――――――――9月24日(木)―――――――――SH3G0019.jpg
その喫茶店は洋君のアパートから15分ほど歩かなきゃいけないんですが、折角の機会ですから散歩がてらに出掛ける事にしました。
レポートや書類関係は昨夜のうちに二人とも済ませましたから、今日は一日のんびりと過ごせそうです♪
「今日は一日、何やって過ごそうか? 日向は結局東京観光ってやって無いよな?」
・・・以前もお話ししたと思いますが、私は人いきれに弱いので人が多い所と言うのは基本的に苦手なんですよね。
「ん~っ、特に行ってみたい所は無いんだけどなぁ。それに土曜日は朝葉や颯太君と遊びに行くんだし。それより、いつも電車から見える河川敷の公園をお散歩したいかな♪」
「荒川の河川敷かぁ?そっかぁ・・・じゃあ、今日は健康的にウォーキングだな。」
「ゴメンね、洋君。折角誘ってくれたのにね。」
「別に良いんだって、一人で過ごして居たとしても特に出掛ける用事も無いから、適当に店をブラブラする位だからな。」
「それなら良いんだけど・・・ねぇ、いつもどんなお店をブラブラするの?」
「そうだな~・・・時間が有ったらアキバでパソコンショップ覗いたり家電屋巡りとかかな。後は本屋行ったりリサイクルショップ物色したり、雑貨屋で小物を見たり・・・そうだ、河川敷に行く途中にお気に入りの雑貨屋が有るんだ、特に欲しいものは無いけど顔出してみるか?」
「うん、行くいくぅ。行って見たい~」
特に何が欲しいって言う訳じゃないんですけどね・・・強いて言うと洋君と共通の話題が欲しいんですよね。
四日間一緒に過ごしてみて、色々と私の知らない洋君が少しづつ見えて来ました、それは決して嫌な事ではなく新鮮で愛おしく思える部分なんですけどね。


「美味しかったね洋君。さすが洋君がお勧めするだけ有ってワッフルもコーヒーも美味しかったわぁ♪」
喫茶店を出て、そう言いながら洋君の腕に抱きついてみる。
「だろう♪ 中庭の向こうは荒川だから空が開けてて気持ちが良いんだよな・・・強いて言うなら、車や船の音が無ければもっと良いんだけどな・・・流石に都内じゃそこまでは望めないしな」
「そうね・・・松舞だったら、うるさい位に鳥の声とか聞こえて来そうな感じだったわよね。」
「あぁ、鳥どころかニワトリや牛の鳴き声とかも聞こえてるかもな。」
「ひど~い、松舞はそんなに田舎じゃないわよ・・・まぁ確かに少し車で走ればそんな感じだけどね(笑)」
「だろう(笑)」
お互いニンマリと笑う。
「そう言えば洋君、雲山に向かう途中の喫茶店がリニューアルしてたよ。」
「あっ、あのよくモーニング食べた店? 確かおしゃべり好きなママさんだったよなぁ」
「そうそう・・・懐かしい~また行きたいね」
「そうだな、早く松舞に帰りたいなぁ・・・」

「松舞に帰りたい」・・・何気ない洋君の一言でしたけど、私にはそれなりに意味が有りました。
東京での生活をエンジョイしている様に見えたんですが、やっぱり松舞での生活を望んでいるんですね。
そのセリフを聞いて少し安心しました。
洋君と一生寄り添いあって生きて行きたいけど、東京と言う街はやっぱり私には合いそうも有りません。
馴れの問題とかではなく、何と言うか肌が合わないと言うか空気や水が合わないって感じです。
東京の時間軸は明らかに松舞と違っていて、私はその時間軸が早過ぎるんですよね。

「どうした日向?」心配そうに洋君が覗き込んで来る‥‥‥
「ゴメンゴメン。そうね、早く松舞に帰って来てもらいたいよぉ」
「やっぱり東京の空気には馴染めないか?」
「えっ? うっ、うん。ゴメンね洋君」
「謝る事は無いさ。俺だって完全には東京に馴染めてないからな」
「そうかな~? 凄くエンジョイしている様に見えるけどなぁ」
「そう言う風に見えるだけさ。心底楽しんでいる訳じゃないぞ。俺はやっぱり田舎の方が好きだな、気が休まるんだよな~。それにこの街には日向が居ないしな。日向が一緒なら松舞じゃなくても、別の静かな街でも構わないんだけどな。」
「じゃあ二人で知らない街に住んでみる?」ちょっと意地悪な質問を、洋君にぶつけてみた。
「日向が本気でそう思うなら、俺は覚悟は出来ているぞ。」
真剣なまなざしで、そう呟く洋君に私はどう返事をして良いのか悩んでしまった。
洋君と暮らす事に躊躇しているのではなく、松舞をそして東京を離れる事に躊躇してしまった。
全てを捨てて、洋君の元に駆け出せる勇気が、私には持てなかった。
そんな私の思いを感じ取ったのか、洋君が「な~んてな。覚悟出来ているなんて格好良い事言ったけど、やっぱり会社を退職して知らない土地で一から生活するって無謀な話なんだよな。あくまで理想だよ理想。やっぱり松舞でのんびり暮らす方が楽だよな」って、私の頭をポンポンと叩いた。
そんな洋君の優しさに、小さく頷く事しか出来ない自分を情け無く思えた。


突然洋君が立ち止まる
「日向ここだよ、ここ。久しく来てなかったから何か目新しい雑貨有るかな~」洋君は私の手を引っ張り、どんどん店内に入って行く。DSCN1672.jpg

「痛いって、そんなに引っ張ったら・・・」
「おっ、悪りい悪りい。どう、この店?中々の品揃えだろ♪」
そう言われて店舗を見渡してみる・・・店内には所狭しとカラフルな雑貨が並べられている。
「見て。このミトン・・・可愛い♪ あっ、こっちの調味料入れもオシャレ~」
確かに私好みの雑貨が沢山並んでました。
「このソーサーなら、この前買ったマグカップに色が合うんじゃない?」
「えっ?俺的にはこっちの皿の方が合うと思うけどなぁ?」
「う~ん・・・確かにどっちも捨て難いわよね」
「それよりさぁ、こっちのトング、柄の所だけじゃなくて先っぽも黄色でお洒落じゃない?」
「本当だ、やだ~欲しくなっちゃうよ~」
・・・いつの間にか、いつもの私に戻ってますね。小さな洋君の心遣いに感謝感謝です。


「なぁ日向ぁ・・・こんなに買い込んじゃってどうするんだよぉ」
「だって欲しい雑貨が一杯有ったんだもん♪」
洋君は雑貨がたくさん入った紙袋を重そうに抱え直す。
二人、手を繋ぎながら荒川の河川敷公園を散歩する。
適当なベンチを見付け、途中のベーカリーで買ったサンドイッチをテーブル一杯に広げます。
「あっ、美味しいよ洋君、このカツサンド♪」
「こっちの玉子サンドも、なかなかイケるぞ」

温かな日差しがポカポカと降り注いで、気持ちいいです。
東京にもこんな環境が有るんですね。意外でした・・・むしろ松舞川の河川敷公園でランチするより、この街が他人に無関心な分、落ち着ける様な気がします。
「なあ日向、さっきの知らない街で生活する話だけど、気にしなくて良いからな。変な事言ってゴメンな」
「ううん・・・。こっちこそ、思っても無い話だったから、返答できずにゴメンね。もし洋君がそうしたいって言うんなら、私は洋君に付いて行くからね。今直ぐは無理だけども、3月の卒園式の後だったら、動き易いからね。」
「ありがとうな、具体的にいついつなんて考えは無いから、心配しなくて良いぞ。さて・・・ぼちぼちアパートに帰るか?」
「そうだね。ねぇ行きと違った道通って帰らない?」
「少し大周りになるけど良いか?」
「私は良いけど、洋君荷物重くない?」
「大丈夫だと思う。・・・・・大体、こんな大荷物、公園の行き掛けに買うのが間違いだよな。普通帰り道に買うよな普通(笑)」
「そっそれもそうね(^_^;)・・・ゴメンね洋君」
「まぁ・・・良いけどな。日向に笑顔が戻って来たからさ。」そう言いながら、洋君は左手を差し出す。
差し出された手を握り返し、私達はアパートに向かって歩き始めた。


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♪♪♪
電灯を灯した洋君の部屋に、携帯の着メロが鳴り響きます。
「はいはい、待ってね洋君♪、今着替えてるから・・・」
ちょうど私が、洋君のアパートに着いたところでした。
急いで着替えて、携帯を開く。
「今から帰るわ。アパートに着くのは6時半過ぎかな。何か買って帰る物有るかい?」
こんばんは、日向です。
―――――――――9月23日(水)―――――――――
「お疲れ様。お買い物済ませてあるから大丈夫だよ」そう打ち込んで送信ボタンを押す。
6時半かぁ・・・夕ご飯作ってたら丁度いい時間ですね。
明日は休みだし、今夜はゆっくり過ごして明日レポート書くか、今夜頑張って明日ゆっくり過ごすか悩むところですが、それは洋君の明日の予定に合わせるとします。
冷蔵庫から、鶏肉や付け合わせの野菜達を取り出し、準備を始める。そうそう、さっきスーパーで買い足した材料を冷蔵庫にしまっておかなくちゃいけませんね今夜のメニューは、鶏もも肉のピカタに温野菜のサラダです♪

精神的にも身体も疲れているはずなのに、不思議と休日と同じ様に身体が動くんですよね。
きっと今の環境を目一杯満喫しようとしているからなんでしょうね。
でも、これが毎日ってなるとどうなんだろう?
洋君の事だから、「炊事洗濯家事全般は女がする物」なんて、男尊女卑な考えは持ってないとは思うんだけど、やっぱり職場環境的に私が先に帰って家事をする事が多いと思います。
やってやれない事は無いとは思いますが、きっちりこなせるか不安と言えば不安です。
今更ながら真子に、感心してしまいます。
仕事で疲れて帰ってきて、美結ちゃんの相手をしながら食事を作り洗濯をしてお風呂掃除をしてお風呂の準備をする・・・木下君がもし残業だったりしたら、それを一人でこなす訳ですからね。
う~ん、私に出来るんでしょうか?
今まで深く考えなかった事が、ちょっぴりリアルに感じられる様になって、考えてしまいます。
・・・これって所謂マリッジブルー???
未だ、結婚するって正式に決まった訳じゃないのに可笑しいですね
(^^ゞ
でもでも、正直結婚したらどんな生活を送るんでしょう?
夢と現実のギャップに愕然としちゃいそうで、なんだか怖いです。

ふっと、結婚に向けて準備を進めている美咲先生を思い出し、改めて感心してしまいました。
未だ公表はしていないんですが、比呂十さんと美咲先生は来年の結婚に向けて、少しずつ準備を進めているそうです。
私の方は、この3人の中では一番早く彼が出来た割には、環境が整わず結局一番最後にゴールインって状態に陥っています。
‥‥‥だからと言って、洋君を責める気は全く無いんですけどね。


そんな事を考えながら料理をしていると、洋君が「ただいま~」って言いながら、玄関を開けて帰ってきました。
「お帰り、洋君・・・お腹空いたでしょ?今準備してるからね」
「おう。いい香りだな日向、俺も直ぐ着替えて手伝うからな」
「えっ?いいよ洋君。洋君疲れてるでしょ?」
「疲れてるのは日向も一緒だろ?」
「そりゃそうだけど‥‥‥」
確かに仕事を一日やってきたと言う点では、同じなんですよね。
でも私は座学だから、眠気と戦う事以外は全然楽なんですよね。
だからやっぱり大変なのは洋君の方で、そんな洋君にはゆっくりしていてもらいたい。

「お待たせ。何を手伝えば良い?」
「やっぱりいいよぉ、洋君の方が疲れているだろうから、ゆっくりしててよ」
「『ゆっくりしててよ』って言われてもなぁ‥‥‥日向がせっせと働いているのに俺だけのほほんとしているのは、申し訳なくて逆に精神的に落ち着かないからな」
「‥‥‥そっか、そんな物なの?」
「そうだって。それに女だからとか仕事が楽だったからとか、気負う事は無いんだぞ。むしろ給料面で言ったら日向の方が稼いでるんだし(笑)」
うっ、私の心を読まれてますね。
「まぁ、俺が作る料理より日向の料理の方が、何十倍も旨いのは間違い無いけどな。疲れた日は外食しちゃっても良いし、コンビニ弁当だって全然OKなんだからさ。もし毎日交代で食事の準備するとしたら俺が当番の日の4分の3は、そうなっちゃうだろうなぁ(笑)。あと洗濯物だって極端な話週末にまとめてやっちゃったって全然問題ないと思うぞ。家事に費やす時間を減らしてその分日向と一緒に過ごしたいしな。」
思っても無かった返答に、ちょっぴり泣きそうになる。
「どちらかが大変な思いをする生活なんて長続きしないと思う。お互いイーブンな関係で良いんじゃないか?それで問題が生じた時に初めて考えれば、それで大丈夫だと思うけどな。」
・・・結局、私が気負いし過ぎていたんですね、男尊女卑を意識していたのは私の方かもしれません。
何も考えていない様な態度だけど洋君は洋君で将来の事を少しは考えていたんですね。

「OK、惣菜とか食卓に運び終わったぞ。後はお茶と取り皿位かな?」IMG_1118.jpg
「うん、ありがとう。こっちももう出来上がるからね。ご飯よそってもらっても良い?」
「おう、任せとけ」
こうやって二人で料理するのがやっぱり楽しいですね。
「日向、お前ご飯これ位でいいかぁ?」
そう言って目の前に差し出されたご飯茶わんには絵に描いた様な・・・例えるなら「まんが日本昔話」に出て来そうな山盛りにご飯がよそわれていた。
「・・・・・無理!そんなに食べられないって(笑)」
「あっ、やっぱり~(笑)」
二人で大笑いした・・・そんな生活がいつまでも続けば、それで良いと思いながら。


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