松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2011年08月

私達3人は、雲の端っこから身を乗り出して、下に広がる世界を眺めていた。
「ねぇ美結ちゃん、もうパパとママ決めた?」
横に座った次郎君が、私に話かけて来ました。
こんにちは、背中に羽の生えてる、美結です。
―――――――――8月15日(月)―――――――――
「ううん、パパは決めたんだけど、ママをどっちにしようか悩んでるの。次郎君は決まったの?」
「うん、ほらあそこのバス停でバスを待ってる男の人と、あっちの坂を必死で自転車漕いでる女の人」
「ふ~ん、どうしてあの人達にしたの?」
次郎君の向こうに座っていた、俊君が話かけてきた。
「えっとね俊君、男の人はバス停まで歩いている時に、何度も木の前で止まってその木を見上げていたの。・・・あれは、きっとカブトムシかクワガタ探しているんだよ。そんなお父さんなら一杯昆虫採集に連れて行ってくれそうでしょ。」
「ママの方は?」
「あのね美結ちゃん、昆虫好きな男の人の奥さんなんだよ。僕の前にお姉ちゃんがいるんだよ。ほら、あの自転車の前のカゴにね、坂の下のケーキ屋さんで買ったケーキが乗ってるんだ。ケーキ好きなママって、何か良くない?」
・・・男の子って、単純ですね(笑)

次郎君が、もう一度下界を眺めながら俊君に話かけた。
「俊君はパパとママ決めたの?」
「えっ? 僕? ううん、僕も悩んでいるんだ。」
「二人とも、そろそろ決めないと誕生の時に間に合わなくなっちゃうよ」
「そう焦らさないでよ、次郎君~」
「だって俊君、人間になっても僕ら3人一緒に居たいもん。」
「そうよね次郎君。人間になっても一緒に遊びたいわよね。」
「でも、焦って適当な相手同士くっつけちゃうと、後々離婚って出来事に見舞われるって、先生が言ってたよ。」
「そうよ俊君。確か3組目のカップルを作る時、俊君が適当に相手を選んじゃうから、結局別れちゃったでしょ。」
「違うよ美結ちゃん。あの女の子は、初恋ランクの女の子だったんだよ。本来卒業試験で使う人間を、間違えて僕らに当てがった先生が悪いんだよ。」
「だめだよ俊君、先生の悪口言うと、神様に聞こえちゃうよ。それこそ、一緒に人間に成れなくなっちゃうよ。」
私達3人は、少し身を小さくして辺りをうかがった。

そうです私達は、天使です。
3人一組でチームを組んで、下界の人達をちゃんと恋人同士に出来るよう修業を積んできました。
そしてこの前、卒業試験に合格したので、晴れて人間として下界に下りる事が決まりました。
人間界に下りるには、自分が選んだ男女を結婚させて、その女の人のお腹の中に宿るしか方法は有りません。
だから、私達は天使となって、完ぺきな恋人同士を作る事を学んでいました。


そんな日々を繰り返しているうちに、いよいよ先生にパパとママを教えてあげる日がやってきました。
先生が私達の話を、神様・・・ううん校長先生に伝えてOKだったら、下界に下りる準備を始めます。

「俊君美結ちゃん、いよいよだね。」
「うん、美結ね、ちゃんと決めたよあのね、弥生ちゃんって女の子。眞子ちゃんって女の子とどっちにしようか、最後まで悩んだんだけどね。」

「うわ~ん、僕、ママは決まったんだけど、パパが決まってないよ。」
「え~っ、俊君。だってもう、先生の所に行く時間だよ」
「だって、だってぇ・・・」
俊君が半べそをきています。
「ねぇ、俊君はどの人で悩んでいるの? 私達も一緒に考えるから教えて。」
「あのねあのね・・・ほら、あそこで車運転している男の人と、あっちでお庭の掃除している男の人」
「う~ん、確かにどっちもイケメンよねぇ」
「ダメだよ美結ちゃん、そう言う理由で選んじゃあ。う~ん、どっちもこれっと言った特徴の無い人だよねぇ」
「うん、でも車乗っている人はおもちゃ屋に勤めてるんだよ。お庭掃除している人は、いつもニコニコしていて優しそうなんだ。」

「ふ~ん」次郎君がもう一度下を覗いてみた。
「あっ俊君、あのお庭の掃除している人・・・大きな犬連れて散歩に出かけたよ」
「えっ?大きな犬?」俊君は実は犬が苦手なんですよね。
「うわ~ん、あんな大きな犬怖いよぉ。やっぱり、おもちゃ屋の人かなぁ・・・」
3人で雲の端っこから顔を突き出して、もう一度下界を眺めてみる。
「ねぇ・・・あの車の人、なんか凄くスピード出してない? あっ、ほら。今、信号無視したよ」
「本当だぁ~」
「あ~どっちの人も、ダメだよ~。もう良いや、あっちで魚釣りしている男の人で良いよぉ」
「ダメだよ俊君、そんな適当に決めたら。結局、離婚しちゃうんだから。」
「だって、僕もみんなと一緒に人間になりたいもん。さぁ、先生の所に出かけようよ、遅れちゃうよ。」
今日を逃すと、また1年天使として過ごさなくちゃあいけないので、遅刻する訳にはいかないんです。


「お前達3人かぁ。ここに来たという事は、下界での宿命先を見つけたって事だな」
「はい先生。僕は、」「俊君ずるい、美結が先だってぇ」「2人とも、順番は守ろうよ、リーダーの僕が最初だよぉ」
「うるさい! お前ら3人は相変わらずだな。そんなんで、下界でちゃんと生活出来るのか?」
次郎君が一歩前に出た
「はい、大丈夫です先生。僕達3人、下界でも仲良く過ごすって約束しました。」

「よし、じゃあ先ずは次郎からだ。お前はどの人間達に決めたんだ?」
「僕は、松舞出身現在地元松舞でサラリーマンをしている島信也と、その奥さんの島昭子の間の子供として降界します。」
・・・次は私の番です。
「ふむ。しかと聞き受けた。あそこには、もう子供が居るから大丈夫だろう、堅実的な選択だな。次、美結は?」

「はい、私は、加田出身現在松舞高校3年の木下幸一と、松舞出身同じく松舞高校3年の長瀬弥生の間の子供として降界します。」
「むっ・・・高校生同士か、少し状況が厳しいな。校長に確認してみるが、了承されるか分からないぞ」
「そんなぁ・・・了承されない場合はどうなるんですか先生?」
「すぐ、次の相手を見つけなければならないな。見つからなかった場合は来年に持ち越しだ。」
「え~折角、美結頑張ったのに」
「まぁ結果次第だな。最後、俊。」
「はい、僕は・・・」

折角頑張って選んだのに、ダメかもしれないなんて最悪です。
自分達の雲に戻って、落ち込んで座り込んでしまいました。
「美結ちゃん、大丈夫だって。」
「そうだよ。僕だって適当に決めたパパだけど、先生には褒められたんだからさ。」
「うん、俊君、次郎君ありがとう。」
「ねぇ、3人が下界でもちゃんと分かる様に、何か目印付けておかない?」
「あっそうだね次郎君。何にしようか? みんなお尻にホクロ付けておく?」
「次郎君と俊君は男の子同士だから良いけど、美結はみんなにお尻なんか見せるの恥ずかしいよ。」
「そうかぁ、じゃあ腕にホクロ付ける?」
「そうだね、僕と次郎君は右で、美結ちゃんは左でどう?」
「それなら、OKだよ。」

「お前らの宿命先の結果が出たぞ」
後ろで、先生の声がしました。
「先生、どうでした?」
「うむ、次郎と純は問題無く了承された。」
「良かったぁ~。んで先生、美結ちゃんは?」
「むっ、残念だが了承されなかった。高校生って事は問題なかったんだが、死神の断命者リストに長瀬弥生の名前が有ったんだ。例え美結が宿命したとして、ちゃんと生まれるかどうか不確実なんだそうだ。」
「そんなぁ、それでも良い。美結は弥生ちゃんの子供になるって決めたんだから。」
「そうはいかんのだよ美結。天界としても、お前らを宿命させるからには、ちゃんと誕生してもらわないと、いけないんだ。」
「先生、死神のリストから外す事は出来ないんですか?」
「俊よ、そうなんだ。同じ神とは言え、私達の校長と死神は、反対の立場の神だからな。お互い、干渉する事は出来ないんだ。」
「高校生で、問題無いんだったら、もう一人のママなら大丈夫なんじゃないですか先生?」
「うむ、それは問題無いと思うが、父親が同じ場合は申請の変更に少し時間がかかるんだ。下界の時間にして2~3年は、誕生が遅くなると思うぞ。」

「それじゃあ、俊君や次郎君と、お友達になれないよ先生。ひどいよ先生ぃ」
私は、突然の悲しみに襲われ、逃げる様に走り出した。
「美結ちゃん!」次郎君が後を追いかけてきた。
「美結ちゃん次郎君、そっちは危ないよ。降界の階段が有るよ。」
「美結、次郎、ダメだそっちに行っては! もう、次郎と俊の為に階段の入り口が開いているんだぞ。」

突然、私の足元の雲が無くなり、真っ青な空が足元に見えた。
「うわぁぁあ~」
「美結ちゃん」「美結!」
気が付くと、私は青空の中に居た。
背中に力を込めたけど、白い羽は動かない。
どんどん、地上に落下していく。
背中の羽が、縮んで行くのを感じた。
最後に見た景色は、遠くに海が見える森に覆われた街並みだったと思う。
そして、耳なりの様に先生の声が聞こえた。
「美結、お前は校長の決断で、急遽長瀬弥生に宿命する事になった。同時に塚田眞子の娘になる手続きも取った。天界として出来るだけ、弥生が長生き出来る様に死神と掛け合ってみるが、正直言って、そう何十年も延命させる事は出来ない。だから、自分の力で出来るだけ頑張るんだ。これで、お前は私の声が聞こえなくなるが、いつでもお前の事を見守っているからな。」



・・・・・・はっ!

夢かぁ・・・
不思議な夢だったわね。洋介さんがツイッタ―にあんな記事を紹介するから、つい夢に出てきちゃったじゃないのよ。

私は、隣の部屋で寝ている美結ちゃんの様子を見に行った。
美結ちゃんは、スヤスヤと寝息を立てていた。
さっきの夢がもう一度頭の中を駆け巡った。
「弥生が授かり婚だったのは、美結ちゃんのオッチョコチョイのせいだったのね。」
跳ね退けていたタオルケットをちゃんと掛け直す。
「ありがとう美結ちゃん。私を選んでくれて。」
そう言いながら頬っぺにキスをすると、美結ちゃんが優しく微笑んだ様な気がした。


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「よぉし、全員無事に帰って来れたな。んじゃあ、お疲れさん。明日から16日までは盆休みだからな、間違えて部活に来るなよな」
「そんなアホはお前だけだ、本田」
部員全員からドッと笑いが起こった。
今、無事に松舞駅に到着しました、こんばんわ健吾です。
―――――――――8月10日(水)―――――――――
今朝は、朝食前のメニューをこなし朝食を食ったら全体練習でした。
やっぱり全員で演奏するのは楽しいですね♪

そうそう、門脇と大村さんですが、無事にお互いの気持ちを確かめる事が出来たみたいです。
楓や小村、飯塚の下手な演技のお蔭で、一時はどうなる事かと思いましたが、僕等の思惑通りに事が運びました。
ついでに言うと、飯塚の話では、小村の奴は結局神田さんに告白出来ずに終わってしまったそうですwww


♪♪♪
それは、門脇と口喧嘩をした直後でした。
間が良いと言うか悪いと言うか、楓からメールが送られてきました。
[健吾ぉ。あっちゃんが、相当落ち込んでるよぉ。昨日の夜、門脇と進路の話で言い合いになったんだって。このままじゃ、後味悪いから何か作戦を計画しようよ]
・・・向こうは向こうで、昨夜の話になっていたみたいですね。
僕等は、ミーティングと称して楓と裏庭で落ち会った。

「大村も落ち込んでいたんか、門脇も相当落ち込んでたぞ。」
「そうなんだ・・・ねぇ健吾、やっぱりうちらで何とかしようよ」
「結局は本人達の問題だ、俺等で解決出来る問題じゃないだろ」
「確かにそれはそうなんだけど・・・。もし私が健吾を好きだって事知らなかったら、健吾は今頃ヤキモキしてんじゃないの?」
「あぁ多分そうだろな。その気持ちは痛い程わかるさ。でも、俺等じゃどうしようもないだろう。」
「そんな事無いって。ここは『愛の使者、楓様』の復活ね」
「・・・お前、愛の使者って言ったって、俺と沢田先輩の時、失敗しなかったっけ?」
「あれは、健吾が浮気心を出したのが、失敗の原因なんだからね。・・・まぁ、私的には大歓迎だったけど」
「・・・そうだったな。」僕と楓はクスクス笑った。

「あれ? 部長副部長、愛引きですか? やばいっすよ、こんな昼間っから」
振り返ると、小村と飯塚が立っていた。
「馬鹿、俺等はまだ何もしてないぞ。」
「ちょっと健吾、『まだ』ってどう言う意味よ。」
「そうっすよ、本田さん。何かするつもりだったんですか?」
「うるさい、お前ら・・・そうだ、飯塚に小村。お前らの演技力を買って、頼みが有るんだ」
「いや俺達、演技なんてした事無いっすから・・・」
「つべこべ言うな。そうだなぁ・・・どっちかが誰か女子に告白しろ」
「いや・・・突然告白しろって言われても、無理っすから部長」
「・・・小村、お前やれよ。お前、神田さんとお近づきになりたいって言ってたろ。」
「よし、じゃあ決定だ」
「ちょ、ちょっと待って下さい部長。いきなり言われても、心の準備って物が・・・そもそも、何で急にそんな話が出るんです?」
「それはだなぁ・・・」

個人のプライバシーを、ばらして良いものか悩んでしまった。
「あっ?ひょっとして門脇先輩じゃないっすか? 大村先輩も少し暗かったし」
「ちょっと飯塚君、中々勘が鋭いわね」
うわっ楓の奴、いきなりばらしてしまいやがった(-_-;)
「勘なんてモンじゃないですよ。誰がどう見たって、門脇先輩は大村先輩の事を過剰に意識しているし、大村先輩だって門脇先輩に一途でしょ。俺、入部した時から気が付いてましたよ。」
「あっ、それは俺も何となく気が付いてた。遂に、告白タイムが来たんですか?」
「いや・・・来たと言うか、来させると言うか・・・」
「あぁ・・・分かった。触発させる為に、小村に告発させようと・・・」
「ちょっと待て、俺がコクる事決定なんか?」

「そう言う訳だから、小村君、一肌脱いでよ。もちろん、小村君の方もバックアップするからさぁ」
「森山先輩、ノリノリっすねぇ。えぇぇマジっすかぁ」
「・・・まぁそう言う事だ小村。あんまりツベコベ言うと、部長命令にするぞ」
「うわっ、それってズルイっすよ。どの道、従わなきゃいけないんじゃないっすかぁ本田先輩。」
「じゃあ、早速シナリオを考えましょうか、先輩♪」
「飯塚まで、賛同してるし・・・マジ?考えられないんすけど」
・・・と、まぁ2人に(強制的に)協力して貰いました。
一応、「愛の使者、楓様」の功績って事で良いんでしょうかね。



大森駅で列車を下りて、楓と二人小さな街並の中を歩く。
「結果的に良かったんだよね、あっちゃんと門脇をくっ付けちゃって?」
「先々の事は、あいつらに決めさせれば良いさぁ。きっとその頃は、俺達も卒業や進学でドタバタしてるだろうし。」
「そうよね・・・他人事じゃ無くなってるわよね。はぁ・・・」
「・・・・・なぁ楓、俺、雲山の情報処理に通う事にするよ。」
「えっ?何? あれだけ、都会都会って騒いでいたくせに。」
「まぁな・・・。でも、やっぱり山陰で生きるわ。今回、大山に行ってみて何となくだけど、俺は田舎の方が性に合っているって分かった気がする。それに何より、離れたくない人達が一杯居るからな」
ふ~んって言いながら楓が、僕の腕に手を回した。
「離れたくない人って、誰なのよ?」ニヤニヤしながら、僕の顔を覗き込んだ。
「ん~。・・・・・・お前以外の誰か。」
「あ~やっぱりね・・・そんな気はしてたわぁ。ねぇ喉渇いたから、あの自販機でポカリ奢ってよね。」
「嘘嘘嘘・・・嘘です~」

しばらく無口のまま僕らは歩き続けた。
・・・
「なぁ楓、今夜も花火しないか? 今夜は、二人で線香花火を一杯やろっ」
「う~ん、どうしようかなぁ・・・」
「来年も再来年も・・・毎年毎年、線香花火に火を点そうな、楓」
「どんだけ線香花火が好きなんよ健吾は」クスッと笑う楓が、妙に印象的だった。



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サマーキャンプ二日目です。
今朝も、六時半のラジオ体操に始まって軽いランニングの後、朝食を取って午前中は体力作りでした。
・・・楓のSっぷりが怖いです(>_<)
こんばんは、健吾です(o^-')b
―――――――――8月9日(火)―――――――――
今夜は夕ごはんの後、花火大会が控えてます。
皆には黙ってますが門脇の奴、昨日は消灯時間過ぎた0時前に部屋に帰って来ました。
そんな時間まで、大村と何をしていたのでしょう?
夕食前の自由時間に、門脇に問い質してみました。

「おい門脇、黙っててやるから、昨日の夜の結果を教えろよ」
「結果も何も、大村と世間話してたさぁ」
「嘘つけぇ~世間話で、そんなに何時間も盛り上がるかよぉ。ぶっちゃけ、大村とエッチしてたろ~」
「馬鹿! エッチどころかキスもしてないわ」
「うわぁ~、嘘っぽ~い」
「マジだって。世間話してたんだけど、最後の方はお互いムキになって言い合ってたさ」
「おいおい。ムキになって言い合うって、一体何を話してたんだよ」
「ん~・・・ 大村は進学組なんだよな、俺は就職組。大村は、大阪か東京に出たいらしい。それ聞いた瞬間、俺、冷めてしまってさ」
「冷めるって、大村への思いが?」
「あぁ、そうだ。だから放って置いてくれよ。」

確かに僕も、楓と自分の夢に挟まれて悩んでいます。
だから門脇が言う事も分からなくは無いんですが、だからと言って人を好きになるって別の話じゃないんでしょうか?
そう考えたら、少し腹が立ってきた。
「門脇が、その程度の思いで大村の事を好きだって言ってるとは、思わなかった。それだったら、俺はこれ以上何も言わないぞ。」
ムッとした顔で門脇が反論してきた。
「馬鹿野郎、俺の思いが幸せ一杯のお前に分かるか? 俺だって、お前らみたいに青春してたいさ。でも恋愛すらした事無い奴が、いきなり遠距離恋愛なんて出来ると思うか? そんな自信、俺には無いんだよ」
門脇はうつむきながら、握りしめた拳を見つめていた。

「・・・悪い門脇、俺が言い過ぎた。でもな、まだ半年も有るんだぞ、半年の間にお互いを信じれる様になれば、良いんじゃないんかな? それに今コクっておかなければ、後々後悔するんじゃないか? 俺達3年はどの道9月で引退だ、そうなったら大村と接する機会すら減ってしまうんだぞ。」
「分かってるさ分かってるけど、今更もうどうしようも無いじゃないかよ。」
門脇の声は少し震えていた。
♪♪♪
間合いの悪い事に、僕の携帯が鳴った。
門脇は、「悪い、先シャワー浴びるわ」そう言いながらベッドルームを出て行った。
釈然としない気持ちのまま、俺は携帯を手に取った。


花火大会は8時から、始めました。
花火と言えば、ヒデ兄と佳奈絵さんのエピソードを思い出しますね。
僕等も、去年一緒に花火をした事で絆が一層深まった気がします。
花火って、不思議な魔力が有ると思いませんか?
そんな事はさておき、部長と副部長である僕等は、花火大会の前のあいさつ担当です。

「さて、苦しかったサマーキャンプも、明日で終わりです。」
「ちょっと、健・・・本田部長、何で『苦しかった』なのよ、『楽しかった』でしょ普通」

「だって、率直な意見だから・・・まぁ、とにかく御疲れ様でした。今夜は花火で盛り上がって、明日もう一日頑張りましょう。」
「さぁ部長のクソ真面目なあいさつはこれ位にして、取りあえずジュースで乾杯ねみんな。1年生~コップとジュース配ってね。」

「おしっ、じゃあサマーキャンプお疲れ様でした、乾杯~」

「じゃあ、さっそく花火始めるぞ。でかい打ち上げもあるからな、みんな楽しみにしとけよ。お~い門脇、そっちの花火セット取ってくれや。」
僕は、門脇に声をかける。
その横では、神田さんが大村さんに話しかけていた。
「大村先輩。先輩はどんな花火が好きですか?」
「ん~っとねカンちゃん、噴き出し花火とか綺麗だけど、やっぱり〆の線香花火かな。」
「良いですよね、〆の線香花火。」
僕はその話を聞きながらもう一度、僕らの去年の夏の事を思い出した。
楓も同じだったみたいで、お互い目を合わせニヤニヤと笑ってしまった。

気が付くと、神田さんが小村のTシャツの裾を引っ張ってる。
「ねぇ小村ぁ、私達にも何か花火を頂戴よ。」
「おうっ、じゃあこの手持ち花火やるわぁ。はい、大村先輩。こっちは神田の分」
「ちょっと、何で私はピストルの形のお子ちゃま花火なのよ。」
ほっぺたをプクッと膨らませた神田さんを見て、楓が仲裁に入った。
「まぁまぁ二人とも、喧嘩しないで。」
「だって森山先輩、これ、ヒドくないっすか?」
「まだ、沢山花火有るからね。ほら、あっちゃんも取りに行こ♪ 健吾ぉ、綺麗な花火頂戴よぉ。」
楓と大村は座り込んで手持ち花火を物色しています。
「おう楓今日は、いつも出来なかった打ち上げ花火を思う存分出来るぞ。」
「本田先輩!『いっつも』って、そんなに二人で花火してるんっすか? 熱いっすね、違和感無く名前で呼び合ってるし(笑)」
「馬鹿、飯塚。俺がしたいんじゃなくて、森山や森山の兄さんが、誘ってくるんだぞ。」
「そんな苦しい言い訳しなくたって、いいじゃんか本田」
「っるせぇなぁ、門脇もぉ。お前は、少し離れてさっさと打ち上げ花火の準備して来いよ。あっ楓、水入れたバケツ持って行ってやれよ。」
「あんたは相変わらず、人遣いが荒いわね。うわっ重いこれ、あっちゃん半分持ってよ。」
ブツブツ言いながら楓と大村さんがバケツを運び始めた。
「おい森山。お前達どんだけ打ち上げ花火を買い込んだんだよ。部費の殆どつぎ込んだんじゃないだろうな?」
「えっ、折角花火やるんだから、これ位は準備しておかないと盛り上がんないだろ。お~い、小村、飯塚。門脇手伝って、打ち上げ運んでやってくれや。」
「うぃっす、部長。」

「小村ぁ実はお前、神田さんの事好きなんだろう?」
打ち上げ花火を運びながら、飯塚が小村に話かけた。
「なんだよ飯塚、唐突に何聞くんだよ?」
「えっ? マジ、そうなん小村?」
「そうっすよ本田部長。小村の奴、いっつも神田さんの尻ばっかり追いかけてるんですから。」
「馬鹿、飯塚。俺がいつ神田の尻追いかけたんだよ。」
「この前なんか、神田さんが使ったトランペットのマウスピースが欲しいって、言ってましたからね。」
「ちょっとぉ、小村君。キモいから、それだけは止めておきなさいよ。」
「うわ~、森山先輩まで本気にしないで下さいよぉ」
「門脇ぃ、お前同じトランペットだろ。何とかしてやれよ」
「本田部長、何て事言うんですか、門脇先輩違いますからね、俺マウスピースなんか要らないですからね」
「そうだな小村、唇が触れたマウスピースより、直接その唇が欲しいよな。」
「そうだよ飯塚! やっぱり生の唇の方が・・・って、何て事言わすんだよお前は。」
「ちょっとぉあっちゃん聞いた? 今、小村君さりげなく好きだって事認めたわよね。」
「そうだね楓、確かに認めたわよね。」
クスクスと大村が笑った。
「あ~もう、大村先輩だけは僕の味方だと思っていたのにぃ」

「んで、正直な所どうなんだよ小村?」
「んもう部長もしつこいっすねぇ そうですよ神田さんって、可愛いし優しくて面白い子だから、興味有りますよ。でも、そんなハードルが高い相手、告るだけ無駄じゃないですか」
「あ~もう、だから男子ってダメだよね。私は、カンちゃんも小村君の事、まんざらじゃないと思うけどな。」
「えっ?そうっすかねぇ森山先輩?」
「まぁ、ダメ元で告ってみろよ小村。」
「そのダメ元って、なんだよ飯塚。お前、実は俺が振られるのを楽しみにしてないか?」
「おう、勿論。この夏一番の楽しい思い出になるじゃんか」
「うわぁ~お前って最悪な奴だなぁ。」
「そうか? ・・・でも、マジで告るんなら今夜しかないぞ。花火でムードも盛り上がってるし、これ以上のタイミングは無いんじゃないか?」
「そうだよなぁ、テンションが上がってる今なら、ノリでOKって事も有るよな。」
「ちょっと小村君、ノリでOKなんて、随分と弱気じゃない。大丈夫だって、内心は小村君もカンちゃんの気持ち気がついているんでしょ?」
「森山先輩もそう思います? でも、俺の勘違いだったら格好悪いし、神田さんが引いちゃうんじゃないかと思って。」
「そんなことないよねぇ、あっちゃん。カンちゃんは誰が見ても、小村君の事意識してるわよねぇ」
「そうよ小村君、女の子は待ってるもんなんだから、ほら花火を置いてカンちゃんの所に行ってきなさいよ。」
「う~、でもマジで自信無いですよ、俺」
「男らしくないぞ小村君。どうせ後悔するなら、YESかNOかはっきりした方がスッキリするでしょ。ほら早く行った行った。」
「あ~もう~。んじゃあ俺、玉砕して来ます。」
小村は、花火を置いて駆け出した。
「んじゃあ部長、俺は偵察行ってきます。」
飯塚も後を追う様に駆け出した。

「偵察って・・・ロマンの欠片も無いんだから、飯塚君は(^_^;) そう言えば飯塚君の話は出なかったけど、彼はどうなんよ?どの子が好きなの?」
楓が、バケツを置いて聞いてきた。
「んっ? あいつは、クラスに彼女が居るらしいぞ。」
「えっ?マジ? あのヲタクの飯塚君に?」
「・・・楓、お前さりげなくヒドイ事言ってないかぁ」
「だって飯塚君に彼女だよ、あの飯塚君に。ちょっと私、根掘り葉掘り聞いてくるから、あっちゃんはここで待っててね。」
今度は、楓が駆け出した。

「・・・ったくぅ、しょうのない奴等だなぁ。どれ、俺は向こうの様子見てくっから、お前ら2人ここで打ち上げの合図を待ってろよな。待ってる間、退屈だろうから、これやるよ」
そう言って、僕は隠しておいた線香花火の束を取り出した。
「良いかお前等2人は、この線香花火を終わらせるまで、戻ってこなくていいからな。分かったか?」
「何だよ本田、それって。」
「おう、松舞には『一緒に線香花火をすると、2人は結ばれる』って、伝説が有るらしいからな。頑張れよ」
そう言うと、俺も走り出した。
そうこれ以上2人の邪魔をしない様に・・・



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「ちょっと~健吾、起きなさいよぉ」
佳奈絵さんに借りた合鍵で、お兄ちゃんのアパートの玄関を開ける。
「うわっ、汗臭ぁ」ムンムンとした臭いが部屋中に漂っています。
おはようございます、楓です
―――――――――8月8日(月)―――――――――
今日から、2泊3日でブラバンのサマーキャンプなんです。
サマーキャンプって響きはお洒落なんですが、実情は体力作りとパート練習で2日間が終わっちゃうんですよね。

「ちょっと健吾、もう5時回っちょうよ。早こと着替えて歯磨くだわね、佳奈絵さんが朝ご飯作ってごいちょうけんね。」
「う~ん、後5分したら起きるけん。」
「ダメダメ。部長自ら遅刻してどげす~かね。あ~もう、だからお兄ちゃん、健吾に夜更かしさせんでよって、言っといたのにぃ」
「んぁ・・・ヒグラシ・・・あと、10分寝かせてよぉ。なっ、一生のお願いだからぁ」
・・・佳奈絵さんと勘違いしてますね、しかも普段は亭主関白な態度なクセに甘えた声なんか出しちゃって(笑)
お兄ちゃんの見てはいけない一面を、見てしまった気がします(^_^;)


歩いて駅に向かうつもりでしたが、結局は佳奈絵さんに車で駅まで送ってもらって、何とか集合時間に間に合いました。
「うぉっしっ、みんな遅刻せずに揃ったな」
なんて部長らしい事言ってますけど、一番危なかったのはあんただかんね健吾(笑)
これから、列車を乗り継いで大山のペンションに向かいます。
今年のサマーキャンプは、副部長の私が企画運営していますから、サマーキャンプ会場も毎度お馴染みの沢井市では無く、隣県鳥取県の大山にしてみました♪


「ちょっとぉ楓ぇ、私のポテチ半分以上食べたわねぇ」
「ゴメンゴメンあっちゃん。代わりに私のプリッツあげるから、許してぇ」
「あっ森山先輩、そのプリッツ夏季限定のレア物じゃないですかぁ。私にも一本下さいよぉ」
「うん良いよぉ。その代わり神田さんのクッキー1枚頂戴ね。」
部活の合宿なんて、遊びみたいな物ですよね。
先輩後輩なんて関係無く、女子は盛り上がってます。
「うぉ~い飯塚、お前ちゃんとDS持ってきたか? おっ?3Dに買い替えたん?」
「そうっすよ本田先輩。やっと買えたんっすよ」
「俺の物は俺の物。飯塚の物も俺の物だったよな。」
「何をジャ○アンみたいな事言ってんすか。それより、PSPとモンハン持って来ました?」
「おう、持って来たぞちゃんと。」
・・・話の内容が小学生並みですが、一応男子も盛り上がっているみたいですね(^_^;)


「じゃあ、男子は西側の棟の部屋番号1から6番ね。女子は、こっちの東棟よ。じゃあ健・・・本田、10時に玄関で集合ね。」
「おう、分かった。お~い男子、俺について来いよ。」

そして10時、玄関前に部員全員が集合しました。
「んじゃあ、先ずはマラソンね。男子5Km女子3Kmよ」
「マジかよ森山ぁ」
「そうよ、本田。ブラバンとは言え体力は大切だからね」
「三年は、もう引退なんだから必要無いだろ~」
「あんたは、受験生なんだしやっぱり体力必要でしょ。これ以上文句を言うと、距離増やすわよ」
「部長~副部長~、痴話喧嘩なら二人っきりの時にやって下さいよぉ」
小村君の一言で、皆がドッと笑った。

「ふ~ん小村君、あんたも距離増やして欲しいのかなぁ?。さぁ男子達、文句を言わずに走り始めなさいよ。」
「しゃあないなぁ、おっしお前ら行くぞ。最下位の奴は今夜の懇親会で一発芸披露だぞ。」
「え~っ、マジっすか部長~。」
男子達はブツブツ言いながらも走り始めた。
「じゃあ、女子も出発しようか」
私が走り出すとみんなが後に付いて走り始めました。


「暑~ぅ。さすがに真夏に5キロはしんどいぞ森山。」
「はいはい、文句言わないの。みんなもお疲れ~、アクエリ冷やしてあるからね。それ飲んでひと休憩したら、次は腕立てと腹筋よ。」
「え~っ」全員から悲鳴に近い声が上がったのは言うまでも無いです。

お昼はみんなで流しそうめんを楽しみ、午後からはペンションのオーナーが営んでおられる近くの牧場の一角を借りて、個人練習です。
3時には、顧問の清水先生がわざわざ車で湯梨浜町まで下りて、買って来て下さった大栄スカイを食べました。

「森山~、腹減った。夕ご飯まだかよぉ」
「何よ本田、今まだ4時半よ。あんたはスイカを人の倍は食べたでしょ、夕ご飯は6時半からなんだからね。それまで我慢しなさいよ。」
「マジかよ・・・んで、夕飯のメニューは何なんだ?」
「男子の為に、バーベキュー準備してもらってるから。」
隣であっちゃんがクスクス笑っています。
「ちょっとあんたら、今の会話って普通に夫婦の会話じゃないのぉ。ったく、見せつけちゃってぇ」
「ちょっと、なんで健吾と夫婦なのよ、あっちゃん。変な事言わないでよぉ」
「そうだぞ大村ぁ。楓と夫婦なんて気持ち悪いじゃないか。」
「はいはい二人とも。お互い名前を呼び捨てが板に付いているる時点で、もうアウトだからね。」
「うっさいなぁ、大村」健吾は、顔を真っ赤にしながらサックスパートの方に走っていった。


「良いわよねぇ楓は。青春真っ盛りって感じで・・・」
「あっちゃんだって、サマーキャンプの間に門脇と仲良くなりたいって言ってたじゃん、どう?少しは近付けた?」
「う~ん、少しだけね。流しそうめんの時、門脇君と一緒にオーナーの手伝いしたからね。」
「そっか、まぁ今夜はバーベキューだし、明日は花火大会やるから、せいぜい頑張ってね。」
毎年サマーキャンプで何組かカップルが出来るんですよね。
青木先輩と沢田先輩もそうだし、部活は違えどお兄ちゃんと佳奈絵さんだって、夏合宿の時に急接近してますからね。


「おい、飯塚ぁ。お前、マラソンで最下位だっただろ。何か一発芸やれよ。そうだ、AKB48のヘビーローテーションを振り付きで歌えよ。お~い誰かスカート代わりのバスタオル貸してやれよ」
「マジっすか本田部長。振り付けは勘弁っすよ。大体あれは、小村が間違ったコースを教えるからですよ。」
「そうか・・・小村が悪いんか。じゃあ連帯責任だ、二人でヘビロテな。」
男子はお酒飲んだ訳でもないのに、はっちゃけてますね(^_^;)
「飯塚君、はい、バスタオル♪ もちろんジャージは脱いで生足で踊ってね」
「やだぁカンちゃん~、それキモいから止めてよぉ」
「そう言いながらキムちゃん、何をデジカメ構えてるのよぉ」
・・・女子も男子と一緒になって騒いでます。
あれ?あっちゃんの姿が見えない?

「・・・ねぇ健吾、あっちゃん見なかった?」
みんなに気が付かれない様な小声で健吾に話かけた。
「ん? あぁ・・・ちょっとな。」
良く見ると、門脇の姿も見えません。
「あっ、ひょっとして門脇君とあっちゃん・・・」
健吾が口に指を当てて「シーッ」と呟いた。
・・・そっか、あっちゃんと門脇って、お互いを意識していたんですね。
その晩、あっちゃんが部屋に戻ってきたのは、0時近くなってからでした。
二人の間に何が有ったかは、聞かない様にしておきましょう(^_^;)


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♪♪♪
おっ、朝ちゃんからメールです。
ジョギング後のシャワー、ちょうど浴び終わった所です。
「はいはい・・・何々?」
こんにちは、颯太です
―――――――――8月6日(日)―――――――――
「・・・そうかぁ、楓ちゃん達もう高校卒業かぁ」
人の進路相談より、自分の身の振り方を心配しなきゃいけないんですけどね。
一応、大学卒業後は松舞で就職しようとは考えていますが、就職氷河期ですから来年度どころか今年度の求人情報すら少ない状態なんですよね。


待ち合わせたサンモールの喫茶店に、少し早めに着いた。
奥の窓際席に座り、読みかけだった文庫本を広げた。
ほどなくウェイトレスが来たので、アイスコーヒーを注文。
何気なく窓の外を眺めると、目の前を高校生の集団が通り過ぎていった。
本を一旦閉じて、届いたアイスコーヒーを口にする。
「高校生かぁ・・・」

高3の夏、何をしていたか、あれこれと思い出してみた。
基本的には全国大会に向けて、部活三昧だったけど、部活の後や休みの日は、殆ど朝ちゃんやモリヒデ達と過ごしていた気がする。
あの時、朝ちゃんも志望校を絞るのに悩んでいた。
モリヒデは、ちらほら求人が出始めていたが、中々これっと言った企業が見つからず焦っていて、いつも愚痴っていたんだよな。
金田は、専門学校進学って意思が固まっていたから、落ち付いていたと思う。
俺自身は、全国大会で良い記録を残す事が、大学入学への一番最短距離で有る事が分かっていたから、別の意味で毎日が大変だった。
まぁその分、大学の推薦が通って、一番最初にひと安心出来たんですけどね。

でも、一番先に進路決めたくせに、朝ちゃんと離れ離れになるんではと、内心落ち込んでいました。
まぁ、結果的には最高のシチュエーションで大学生活を送る事が出来たんですけどね。

きっと、健吾も心のどこかで楓ちゃんとの事が引っ掛かっているんでしょうね。
二人には幸せになって貰いたいんですが、その為だけに進路を決めてしまうのも、どうかなって気もします。
もし、朝ちゃんが東京の大学に受かってなかったっとしても、俺は今の大学に通っていた事だろう。
例え遠距離恋愛になったとしても、陸上は続けたかったし、逆に朝ちゃんと別れるなんて考えも無かった。
遠距離恋愛に関して、当時は根拠の無い自信が有ったんだろうと、今、冷静に分析してみて思う。
だから健吾にも楓ちゃんにも、今一番自分がしたい事に向かって進んで行くように言おうと思う。

アイスコーヒーの氷が、カランっと音を立てた。
ふっと我に帰る。
閉じた文庫本を、もう一度手に取る俺の前に、静かに朝ちゃんが微笑んでいた。


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