松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

2011年11月

打ち合わせで東京出張に行ってました。
結婚前は美結の事が心配で、営業さんに任せていたんですが、今は真子が居てくれるから安心です。

「ちょっと、幸一! これは、どう言う事なのよ」
美結と風呂から上がって、美結の身体を拭いている時に、真子がヒステリックに叫んできた。
真子の手には、花柄のハンカチが握りしめられていた。
「あっ、それは・・・」
「あ~お父さん、最低~」
くっ、男女比1:2のわが家ですが、喋りだすと男女比が1:8位になるんですよねわが家は・・・
こんばんわ、幸一です。
―――――――――11月28日(月)―――――――――
「昨日、客先で先方の事務員さんに借りたんだ。」
「何で借りる必要が有るのよ」
「応接室でコーヒーこぼしてしまって、ハンカチがカバンの中だったんだ。アタフタしてたら、事務員さんがハンカチ貸してくれたんだよ。そのまま返す訳にいかないから、こっちから新しいハンカチを送るんだ。」
「うそうそうそ、絶対うそに決まってるわよ。東京出張なんて言って、実は他の女の子と旅行行ってたんじゃないの?」
はあ? 何でいきなり不倫旅行に話が飛躍するんだよ!
「馬鹿、そんな訳ないだろ。ちゃんと仕事の打ち合わせだったんだぞ。」
「だって、出掛ける時すごく嬉しそうだったじゃない。ネクタイじゃなくて普段着だったし。」
「そりゃ、休日移動だからネクタイなんて息苦しいだけだろ。」
「私は、そんな話信じないから。もうこのカイ君無し~」
「はぁ?なんだそりゃ美結」

プッって真子が吹き出した。
「お父さんが白い犬になっちゃたわよ、美結ちゃん。それを言うなら『甲斐性なし』だって。お父さんの言う事、本当の事だとお母さんは思うわよ。ゴメン幸ちゃん、ついカァ~っとなっちゃって。」
「って言うか、真子に問い詰められるんなら、まだ分かるが、何で実の娘に問い詰められなきゃいけないんだよ?」
「だって、お母さんを悲しませたくないもん。お母さんを不幸にしたら美結、お父さんの事許さないからね。」
「美結ちゃん、お母さんは十分幸せよ。こんなにお母さんの事を心配してくれる美結ちゃんが居るんだからね。さぁほら、仲直りのデザート食べようか。今夜は美結ちゃんの大好きなイチゴのショートケーキよ。」
「イチゴのケーキ?」美結が、目をキラキラと輝かせています。
・・・取りあえず、美結の機嫌が治ったみたいです。


「お疲れ様でしたね、幸一」
美結を寝かしつけてキッチンに降りてきた真子が、俺の目の前にビールを置いた。
「おうサンキュー。ったく、美結に言い詰められるとは思いもしなかったな。」
「確かにね。私の言いたかった事、全部美結ちゃんに言われちゃったから、逆に私は冷めてしまったわよ。」
「ある意味、美結に感謝だな。」
「そうだよ幸一」
「なぁ、代わりのハンカチ買ってくるの頼めるかな? 俺が選ぶより女性目線で選んだ方が良いだろ。」
「うん分かった。お礼の手紙添えなきゃね。『うちの亭主に手を出さないで』って、書き添えて良い?」
「良い訳ないだろ・・・あっ、実は俺の事本当は疑ってんだろ。」
「ふふ~ん、内緒内緒」
そう言いながら僕の鼻を突っつく真子に、俺は苦笑いするしかなかった。


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(小夜曲)sérénade編【完結】
楓・青木先輩編【完結】
本田・沢田編【完結】
2009年収穫祭編【完結】


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神戸の街にも秋が訪れ始め、街路樹が紅葉し始めました。
この街にたどり着いて7ヶ月、毎日あくせく働き何とか生きている。
今日もキツイ仕事が終わり、電車に揺られながら、ぼ~っと薄暗い窓の外を眺めています。
こんばんわ、洋介です。
―――――――――11月22日(火)―――――――――
先日、俺達のブログ「僕と彼女の日々」で、日向が書いていた朝から電車の中で抱き合っている高校生カップルですが、今朝、俺も遭遇しました。
まぁ、俺が見たのは肩を抱いて寄り添っているカップルでしたけど。
そんな光景を回想していたら、ふっと俺の高校時代を思い出しました。
“そう言えば、俺も高校時代同じ事してたんだなぁ”ってね・・・


中学高校とバスケット部に所属していました。
ポジションはポイントゲッター・・・今じゃ考えられない事ですが。
そこそこ強かったんですよ俺達のチーム、森山君の会社の先輩の小村さんとは、ライバルで毎回優勝を争ってました。
でも高校2年の秋、3年生が卒部してやっとで俺達が主力メンバーとして活躍できる様になった頃、俺は交通事故に遭い右足を骨折した。
1年は、バスケ復帰も難しく、俺の選手生命も終わりました。
尖っていた俺に、小学校からの友人武藤が声をかけて来た。
「洋介、お前暇なんだろ、ブラスバンド手伝えよ。うちのブラバン、木管が弱いんだよな。・・・んッ?何だ、お前まさかクラリネットの運指を忘れたなんて言うんじゃないだろうな?」
その言葉に、カチンときた俺は、二つ返事でOKを出した。
元々、小学校の時はブラスバンド部に所属していてクラリネット吹いていたんですよ、俺。
だから今でも、クラシックやジャズが好きなんです。

ブラスバンドには、まだ松葉杖が取れない俺を、何かと助けてくれる後輩が居ました。
同じクラリネットパートの二之瀬有子ちゃんです。
楽譜や楽器を運んでくれたり、俺が徒歩通学だったので家まで学生カバンを積んでくれたり。
一緒はただの後輩として接していましたが、いつの間にか俺の妹みたいな存在となり、気が付いた時には彼女の事を好きになっていました。
それまでバスケ一筋で、女の子と付き合った事なかった俺としては、ガラにもなくセンチメンタルな気持ちの日々が続きました。
・・・そうそう、冬休みに裏の小学校のブラスバンド部員を招待して合同演奏会&クリスマス会を開いたんです。
最後に、全員で記念撮影しようって話になり、全員で集まったんですよね。
その時、立ち位置を俺と二之瀬は譲り合っていました。
「先輩、前に出て下さいよぉ」「お前こそ、背が低いんだから前に行けよ」って感じでね。
それを見ていた武藤が「おいおい、お前ら付き合ってんかよぉ」って、横やりを入れてきたんですよね。
今考えてみたら、あの時から二之瀬の事を意識し始めたんだと思う。

告白は俺の方から。
いつまでも進展しない俺達の関係に痺れを切らしたのか、武藤がガセネタを俺に吹き込んできたんです。
「おい、大芦のクラスの奴が二之瀬ちゃんに告白するって言ってたぞ。どうすんだよ洋介」って
彼女の気持ちに薄々は気が付いていたんですが、俺は今まで告白なんてした事無いから(正確には、小学校2年生位まで周りの女の子に、「好きだ」って言いまくってたんですが)、ず~っと躊躇していたんですよね。
でもやっぱり彼女を失いたくない思いから、俺の気持ちを彼女に伝える事にしました。
今の奴らには笑われるだろうけど、手紙・・・そうラブレターでの告白でした。
書いた文面なんて覚えて無いけど、返事の文章は、今でもちゃんと覚えていますよ。
「とっても、嬉しいです」そう一言だけ書いて有りました。
彼女も、初めて告白されて返事に困ったんでしょうね、きっと。

色々楽しかった思い出が有ります。
一緒に映画見に行きましたし、列車に乗って日帰り旅行だってしました。
その時だったかな、初めて彼女の肩を抱いたのは。
それこそ、人目も憚らず列車の中でした。
夏には、一緒に水郷際にも出掛けました。あの時の二之瀬の浴衣姿は未だに鮮明に覚えています。
ファーストキスも、その先も、彼女と体験しました。
あの日のエピソードだけは、俺の心の中にそっとしまっておきますね。
そんな甘酸っぱい思い出一杯の俺達でしたが、別れが静かに俺達の足元を掬って行きました。

・・・・・・
その日の出来事が、走馬灯の様に俺の頭を過って行った。


改札を抜け、いつもの商店街を歩く。
すっかり暗くなった景色の中、店の明かりだけがこうこうと点いています。
はしゃぎながら歩く高校生達とすれ違った。
あの頃の俺達と何も変わらない、無邪気な笑顔で歩いている彼らの姿に、俺と二之瀬を重ね合わせ、俺はまたふっとブラスバンドの日々を思い出していた。


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「あっ、久しぶりにローズヒップ買っちゃおうかな~」
そう言いながら私は、棚にあるローズヒップのティーパックを手に取った。
「うわ! なんっすか、これ? すっぱくて超マズイんですけど。」
純君が、そう言って以来私はローズヒップを飲まなくなっていた。
・・・なんで、純君の事を思い出すのよカヲル!
あんな最低な子供の事なんか早く忘れなさいよ
・・・こんにちは、カヲルです。
―――――――――11月14日(月)―――――――――
久しぶりに、一人で週末を過ごしました。
純君と、喧嘩して別れちゃったんです。
何度か純君から電話が有ったりメールも来てたりしましたが、着拒しましたから、もう連絡が入る事もありません。

こうして独りになってみると、凄く楽な事に気が付きました。
もう肩肘張って生きていかなくて良いんです。
大好きなローズヒップティーを誰にも遠慮する事なく、飲めるんですから。
実際昨日の朝は、純君の苦手な甘~いカフェオレを飲みながら、匂いが苦手って言うシナモントーストで朝食を食べてやりましたし、お昼ご飯は少し横着してカップラーメンで済ませちゃいました。
一緒に居ると、気にしてしまって出来ない事が沢山有るんですが、今の私にはそんな気遣いなんて必要無い、自由奔放に羽ばたけるんです。

今日は、溜まった有給を消化する為に休みを取っています。
朝から良い天気でしたので、お布団を干して買い物に出掛けました。
「あっ、このウェア可愛い。純君に着せたら似合うかも」
・・・う~いかんいかん、彼の事は忘れなくっちゃ。
でも思考の全てが、純君基準だったり、純君が居る事前提だったりするんですよね。

気分転換に、最近出来た喫茶店に入ってみる。
落ち着いた雰囲気の店内には、静かにジャズが流れています。
なかなか良い雰囲気です、今度は純君と来た・・・い・・・
悔しいけど、純君の事が頭から離れません。
「今度会ったら、何って文句を言ってやろう」なんて考えてる時点でアウトですよね、きっと・・・

喧嘩の理由は、純君の浮気・・・純君が他の女と会っているのを目撃してしまいました。
しかも、私の務めている病院の玄関先でですよ!
普通、考えられます?そう言うのって
本人は、「先輩の彼女」って言うけれど、そんな安っぽい嘘には騙されませんよ、私は。
でも、騙されていた方が気が楽だったかなって思ってる自分もいます。

運ばれてきたロイヤルミルクティーに、砂糖をかき混ぜながらボ~ッと考えていた。
隣の席に、「あ~疲れたぁ」って言いながらOLが腰かけた。
私の存在に気付き、軽く会釈をした彼女と目が合った。
・・・あっ、この前純君が連れていた女の子だ。
何て、タイミングが悪いんでしょう。
ここは、ロイヤルミルクティーをさっさと飲んで店を出た方が良さそうですね。

向こうがチラチラと、私を気にしています。
・・・何よ、もう純君とは別れたんだから、煮るなり焼くなり、あんたの好きにすれば良いのよ!
「あっ、あの~ ひょっとして竹下純さんの彼女さんじゃ有りませんか?」
だから、あいつとは別れたんだって
「そうですよ・・・正確には、『彼女だった』って言うべきかな。ところで貴方は?」
これ見よがしに、「純と別れて」っとか「私の彼ですから」とか言うつもりなの?
「あっ、スイマセン。私、金田佳奈絵って言います。先日は竹下さんにモリヒデ・・・森山君が大変お世話になりました。」
「はぁ?」
「お蔭様で、今日から職場に復帰しています。」
「ちょ、ちょっと待って。話が見えないんだけど。」
「あっ竹下さんから、お話聞いておられませんか? 森山君って竹下さんの職場の先輩なんですが、先日雲山の現場で感電事故に遭って、救急車でそちらの病院に搬送されたんです。」
「そうなんですか?」
「森山君の携帯使って、竹下さんが連絡くれた時には、私の方がパニックになってしまって・・・竹下さんって、しっかりしておられますね、そんな私に落ち着いて対応してくれましたから。」
「じゃあ、うちの病院に二人で現れたのって?」
「あぁ、きっと病院の玄関まで出迎えてくれた時だと思います。・・・あのぉ大きなお世話かも知れませんが、さっき『彼女だった』って言っておられましたけど・・・」
「あぁ、それはそのぉ」思わず返答に困ってしまった。
話を逸らす為に一つの疑問を投げかけてみた。

「そんな事より、よく私が純君の知り合いだって分かりましたね。」
「あっ、はい。森山君が治療を受けている間中、待合室で竹下さんが窓口の方を見ながら、そちらの話をしておられましたから。彼なりに私の気を落ち着かせようとしてくれていたんでしょうね、素敵な彼氏さんですね。」
「ははっ・・・ありがとうございます。余計な事言ってませんしたか、純君は?」

全然知らなかった、そんな真実が有っただなんて。
考えてみたら私の一方的な思い込みでしたね。
彼の言い分に耳を貸そうともせず、一人悲劇のヒロインを気取っていた様な気がします。

彼女に挨拶をして店を出た。
早速、携帯を手に取り純君にメールを打った。
何事も無かったかの様に、いつもと同じ始まりのメールだった
“お~い少年、元気にしてるか?”

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「ちょっとぉ健吾、起きなさいよ」
「ん~、何だよ楓ぇ 今日は学校休みだろ。休みの日まで、勝手に俺の部屋入って来るなってばよぉ」
「何を寝ぼけてるのよ健吾 ほらもう5時時半だよ」
「ナニぃ5時半? ・・・いつもより1時間早いじゃないかよ」
「だからぁ、今日はオープンキャンパスに行くんでしょ」
あ~もう・・・今から、こんな調子じゃあ専門学校入学後が思いやられますね
あっ、おはようございます、楓です。
―――――――――11月5日(土)―――――――――
「ダァーッ、何でもっと早く起こさなかったんだよ楓」
必死に健吾がペダルを漕いでいます
「私はちゃんと起こしたわよぉ そんな事より、転ばんでよ健吾」そう言いながら、健吾の身体に腕を巻き直す。
「大体、楓が重たいんだよ」
「時間無いから、俺の自転車の後ろに乗れって言ったのは、あんたでしょ」
私を後ろに乗せ、健吾の自転車は坂道を爽快に降りていきます。
「朝晩、ずいぶん寒くなったわよね」そう言いながら、私は健吾の背中に身体をピッタリくっつけた。
少し汗ばんでますが、心地好い暖かさが私の身体に伝わってくる。
「おっ・・・おぅ。何たって11月だからな。一年なんてあっという間だな楓」
そう言われて、一年前の事を考えてみた。
確か、高文連に向けてブラバンの練習が大詰めだったと思う。
私達にしてみたら、部長副部長として初めてのステージだった。
タクトを振る健吾の動きがぎこちなくて、リズムが取れなかった事を思い出した。
「ん?どうかしたか楓?」
「ううん。一年って本当に早いね健吾。あっ!ネエ向こうに見えるライトって列車じゃない?」
「あっマジだ!楓、飛ばすぞ」
「うん」そう言いながら、私は健吾により一層しがみついた。


「ふぅ~・・・何とか間に合ったな楓」
「本当・・・列車のライトが見えた時には、絶対に間に合わないって思ったわよ。」
何とか列車にも間に合って、今専門学校の前に立っています。
「うわぁ、校舎キレイだね」
「そうだな。あっ、あそこが受付みたいだぞ。」
受付を済ませ、先ず向かった先は、学食です。
考えてみたら、健吾は朝ごはん食べてないんですよね(;^_^A
受付で貰ったパンフレットをパラパラめくりながら、パンを飲み込んだ健吾が話し掛けてきた
「楓は、何学科希望なんだ?」
「私?私は佳奈絵さんと同じビジネス科に行こうと思ってるの。健吾は、やっぱりプログラム科かクリエイティブ科?」
「そうだな、パソコンメインの学科に行きたいね、俺的には。」
「あんたには、それが向いてるわよね」
「しかし毎朝五時半起きは辛いなぁ」
「あんたが遅くまで起きてるからよ。この際、早寝早起きの生活スタイルに改めたら?」
「そりゃ無理! だって、そんな事したらファイナルファンタジー出来ないじゃんか」
「ったく、健吾と言いお兄ちゃんと言い、どこまで子供なのよぉ。佳奈絵さんがぼやきたくなる気持ちが解るわぁ」
「そう言うなって、女には解らない男のロマンスなんだよ。それに、プログラム科なんて入った日には、趣味と実益兼ねるんだから仕方ないだろ」
「まぁ確かにそれはそうなんだけど・・・確かに早起きは辛いわよね。私なんか、毎朝あんたを起こさなきゃいけないんだから、余計大変よ。あぁ、佳奈絵さんのアパートに住めればねぇ」

「どうせなら、雲山で一緒に住まないか楓」
「ちょっと真顔で何をふざけた事言ってるのよぉ健吾」
アイスティーのストローから口を離し顔を上げた。
「いや、半分マジなんだけどな」
その真剣な眼差しに、私の心は揺れ動いた。
確かに、健吾と一緒に生活するのには憧れていたけれど、まさかこんな近々にそんな話が持ち上がるだなんて考えても居ませんでした。
それに、いくら幼馴染みであっても、一緒に暮らしてみなきゃ分かんない事って有ると思うんですよね。
それがプラスの結果なら良いんですが、もしマイナスのベクトルだったとしたら・・・考えただけで胸が締め付けられてきます。


「な~んてな、驚いたか楓? 安心しろ、誰が好き好んでお前なんかと同棲するんだよ。それに、そんな話がヒデ兄の耳に入ってみろ、俺が半殺しどころか完全に息の根を止められてしまうだろうが。」
「・・・そうよね、お兄ちゃんなら殺した上に、耕運機で畑の中に肥料として混ぜ込んじゃう位しそうよね。って言うか、何で好き好んでなのよ。私だって健吾みたいなオタクとは一緒に暮らしたくないわよ。」
そうは言ったけれど、私は分かっています。
真剣に、困った顔をしている私に、気が付いた健吾が気を利かせて話をはぐらかせてくれた事。

「さぁ健吾、そろそろ説明会が始まる時間よ。」
「おう、行くかぁ楓」
そう言って立ち上がった健吾の左手を、私は握りしめた。
「いつか・・・一緒に暮らしたいね」静かに呟いた私の手をギュッと健吾が握りしめた。



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