松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

カテゴリ: 幸一・真子・美結編

打ち合わせで東京出張に行ってました。
結婚前は美結の事が心配で、営業さんに任せていたんですが、今は真子が居てくれるから安心です。

「ちょっと、幸一! これは、どう言う事なのよ」
美結と風呂から上がって、美結の身体を拭いている時に、真子がヒステリックに叫んできた。
真子の手には、花柄のハンカチが握りしめられていた。
「あっ、それは・・・」
「あ~お父さん、最低~」
くっ、男女比1:2のわが家ですが、喋りだすと男女比が1:8位になるんですよねわが家は・・・
こんばんわ、幸一です。
―――――――――11月28日(月)―――――――――
「昨日、客先で先方の事務員さんに借りたんだ。」
「何で借りる必要が有るのよ」
「応接室でコーヒーこぼしてしまって、ハンカチがカバンの中だったんだ。アタフタしてたら、事務員さんがハンカチ貸してくれたんだよ。そのまま返す訳にいかないから、こっちから新しいハンカチを送るんだ。」
「うそうそうそ、絶対うそに決まってるわよ。東京出張なんて言って、実は他の女の子と旅行行ってたんじゃないの?」
はあ? 何でいきなり不倫旅行に話が飛躍するんだよ!
「馬鹿、そんな訳ないだろ。ちゃんと仕事の打ち合わせだったんだぞ。」
「だって、出掛ける時すごく嬉しそうだったじゃない。ネクタイじゃなくて普段着だったし。」
「そりゃ、休日移動だからネクタイなんて息苦しいだけだろ。」
「私は、そんな話信じないから。もうこのカイ君無し~」
「はぁ?なんだそりゃ美結」

プッって真子が吹き出した。
「お父さんが白い犬になっちゃたわよ、美結ちゃん。それを言うなら『甲斐性なし』だって。お父さんの言う事、本当の事だとお母さんは思うわよ。ゴメン幸ちゃん、ついカァ~っとなっちゃって。」
「って言うか、真子に問い詰められるんなら、まだ分かるが、何で実の娘に問い詰められなきゃいけないんだよ?」
「だって、お母さんを悲しませたくないもん。お母さんを不幸にしたら美結、お父さんの事許さないからね。」
「美結ちゃん、お母さんは十分幸せよ。こんなにお母さんの事を心配してくれる美結ちゃんが居るんだからね。さぁほら、仲直りのデザート食べようか。今夜は美結ちゃんの大好きなイチゴのショートケーキよ。」
「イチゴのケーキ?」美結が、目をキラキラと輝かせています。
・・・取りあえず、美結の機嫌が治ったみたいです。


「お疲れ様でしたね、幸一」
美結を寝かしつけてキッチンに降りてきた真子が、俺の目の前にビールを置いた。
「おうサンキュー。ったく、美結に言い詰められるとは思いもしなかったな。」
「確かにね。私の言いたかった事、全部美結ちゃんに言われちゃったから、逆に私は冷めてしまったわよ。」
「ある意味、美結に感謝だな。」
「そうだよ幸一」
「なぁ、代わりのハンカチ買ってくるの頼めるかな? 俺が選ぶより女性目線で選んだ方が良いだろ。」
「うん分かった。お礼の手紙添えなきゃね。『うちの亭主に手を出さないで』って、書き添えて良い?」
「良い訳ないだろ・・・あっ、実は俺の事本当は疑ってんだろ。」
「ふふ~ん、内緒内緒」
そう言いながら僕の鼻を突っつく真子に、俺は苦笑いするしかなかった。


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「ねえ、ひなちゃん。小原と最近デートしてないみたいだけど、何か有った?」
私は、ソフトクリームを舐めながら、ひなちゃんに話し掛けた。
あれは、高校三年の秋、そろそろソフトクリームを寒く感じる10月初めだったと思う。
こんばんは、あえて旧姓を名乗りますが塚田真子です。
―――――――――10月29日(土)―――――――――
「ヒドイんだよぉ小原ったら、夏休みはあんなに一緒に過ごしたのに、二学期入ったら急に『大学受験に集中したい』なんて言い出すんだよ、信じられないよね。」
「あ~小原って、真面目過ぎる感じだもんね。」
「だから私も、女短受験に集中する事にしたの」
「そっか、ひなちゃんは島根女短希望だったもんね。私は、とりあえず就職決まったから安心だわ」
「真子は、逆に男の心配しなさいよぉ。あんたは、全然恋愛経験無いんだからさぁ」
「ほっといてよ、ひなちゃん」
「どうなの、最近は気になる男子とか居ないの?」
「う~ん正直、居るっちゃあ居るんだけど、向こうは大学進学組だからなぁ」
「えっ?誰、誰?」
「笑わないで聞いてよね。うちのクラスの木下なんだけど」

「え~っ、木下ぁ?」
「だから笑わないでって言ったでしょ、ひなちゃん!」
「ゴメンゴメン。余りにも予想外の男子だったから」
「やっぱり、ひなちゃんもそう思う? でもね、何か惹かれちゃう物が有るんだよね。あっ弥生が来た・・・お~い、弥生~こっちこっち」

「ゴメン、遅くなって。進路の細木に捕まってさぁ」
「何?また進路の事?」
「うん、奨学金制度使って島大に行けって、うるさいのよ」
「確かに、弥生はずっと学年トップの優等生だもんね。生徒会副会長だし、素行もバッチリだからね。ねっ、真子」
「確かに、これぞ女学生の見本って感じよね。」
「何よぉ二人とも。そんなにヨイショしたって奢らないからね・・・ねぇ、それより何話していたの、盛り上がっていたみたいだけど」
「うん、あのね遂に真子が男に目覚めたんだって。」
「ちょっとひなちゃん、それじゃあまるで私がレズみたいに聞こえるじゃん。今まで、心ときめく様な男子が居なかっただけよ。」
「心ときめくねぇ・・・あいつに?」
「何よ二人とも私だけ蚊帳の外? 誰?誰なのよぉ こら、真子教えなさい。あぁもう、ひなちゃんもニヤニヤしてないで、話しなさいよぉ」

私は少し照れながら小声で、「木下君」って呟いた。
その瞬間、少し弥生の表情が曇ったのに、日向が気がついた。
「・・・ねっ弥生、ちょっと有り得ないでしょ あれ?どうした弥生?」
「ううん何でもない。そっかぁ、木下君かぁ・・・でも、あいつは優しいし良い奴だよ。」
「あれ?弥生ぃ 木下の肩持つの? だって木下って、どう見たってアニメオタクだし、ロリコンっぽくない?」

「でも良い人なんだって」
突然、弥生が立ちあがって声を荒げた。
何かを察したひなちゃんが、弥生をなだめた。
「ゴメンね、ひなちゃん真子ちゃん。」少し落ち着いた弥生が、ボソッと呟いた。
私は一末の不安を抱えつつ、弥生に聞いてみた。
「ねぇ、ひょっとして弥生が好きな男子って・・・木下君?」
静かに弥生はうなづいた。

あちゃぁ、最悪の展開ですね。まさかして、親友と同じ男子を好きになるなんて。
「あのね・・・」弥生が静かに口を開いた。
「私って、両親を今年の冬に亡くしてるでしょ。木下君も去年、事故で家族全員亡くなってんだ。だから、私の両親が亡くなった事知った木下君が、何かと気を使って話かけてくれるんだよね。同じ痛みを味わっているんだから、色々分かるんでしょうね。実は、今年の初盆は精霊流しに付き合ってくれたんだよ。」
・・・そんな、話は初耳だった。
木下君と弥生って、実はお互いを信じて頼りにしていたんですね。

「でも・・・最終的な決定権は木下君に有るんだから、あいつがどう判断するか分かるまでは、真子は友達だけどライバルだからね。」
「そんな・・・私は別に・・・」私は、少し諦めた様に呟いた。
「なによ真子、今からそんな弱気でどうするの? 選ぶのは木下なんだし、ひょっとしたら二人ともフラレちゃう可能性だって有るんだから」
「そうなったら木下の奴、皆で釣るし上げなきゃね」少し安心したのか、ひなちゃんがクスクス笑っています。


・・・それから、3カ月経った1月の終わり。学生生活最後の試験が終わって、自由登校が始まろうとしていた頃だったと思う。
学校を休んだ弥生に、夕方私とひなちゃんは、サンモールに呼び出された。

「ゴメンね、真子、ひなちゃん。突然呼び出して。」
「そんな事より弥生、風邪は大丈夫なの?」
「うん、学校には風邪で病院行って来ますって連絡したけど、実は産婦人科行って来たんだ。」
「どうしたの? 生理不順?」そう言ったひなちゃんは、多分気付いてないんだろうけど、私は何となく不安な気持ちになった。
「実はね、もう4カ月生理が無いんだ私」
「えっ?それって、ひょっとして?」私の予感はどうやら当たってしまった様だ。
「妊娠3カ月目だって・・・」
「うそぉ~、弥生。おめでたなの?」
「ちょっと、ひなちゃん! 声が大きいって。んで弥生、相手ってもちろん・・・」
「ゴメン真子、木下君の赤ちゃんなんだ」

前々から覚悟していたが、やっぱりショックだった。
でも、下を向いたまま黙っている弥生を見ているのは、もっと辛かった。
私の中では、秋にサンモールで弥生と木下君の事を知った時から、きっと気持ちは決まっていたのだと思う。
「私の事なんてどうでも良いからさぁ弥生。それでどうするのこれから?」
「どうすれば良いのかなぁ、私達・・・」弥生の声が少し震えている。
「取りあえず、木下は何て言ってるの?」少し冷静さを取り戻したひなちゃんが、弥生の肩に手をかけながら聞いてきた。
「実は未だ結果を話してないんだ。生理が無い事と、今日産婦人科に行ってくる事は、知ってるけどね。この後、木下君にも会うつもり」
「そうかぁ。んで肝心の弥生の気持ちはどうなの?」
「うん、エコー写真を見たら、小さいけど人の格好してるのよね。それを見たら絶対生まなきゃって思ったんだ。」
「だったら、話は決まってるじゃん弥生。」
「でも、子育て出来るか、凄く不安なんだ。それに産むんだったら、木下君と結婚しなきゃならないのよ。彼とちゃんと暮らして行けるか不安だし、彼って大学進学でしょ。収入も無いのに、生活出来ないじゃん」
「そんなん、木下も大学進学なんて言ってる場合じゃないんじゃない? そうだよね真子」
「でも木下君の夢の邪魔はしたくないもん。」弥生は、俯いて静かに泣き出した。
「それを確認する為に木下君にこれからあうんでしょ弥生。もし弥生が一人ででも産むって言うんなら、私は全面的に応援するから。ひなちゃんだって、保育の道に進むんだし、頼りになると思うよ」
「もちろんよ弥生。そうなったら、三人で赤ちゃん育てよ」
弥生は、俯いたまま何度も頷いていた。


それから、木下君との待ち合わせの時間まで三人で今後の事を色々と話し合った。
サンモールを出て自転車小屋に向かって歩いている時、弥生が私のブレザーの袖を引っ張った。
「ゴメンね真子。大好きな木下君を奪っちゃって」
その言葉に、抑えていた感情が一気に噴き出した。
大丈夫だから、私は大丈夫だから。弥生は、木下君と幸せになって暖かい家庭を作んなよ。木下君の事は、諦めるから。もう秋の時点で弥生には敵わないって分かってたから。だから、あんたは絶対に幸せになりなさいよ弥生」そう言いながら、私は弥生に泣き付いていた。
「真子・・・」弥生も一緒に泣き出した。
傍らで見守っていたひなちゃんも加わって、3人で抱き合いながら大きな声で泣いた。


翌日、弥生は普通に登校してきた。
昼休み、図書館の裏に私達は集まって、木下君の出した・・・2人の出した結論を聞いた。
木下君は大学進学を諦め、親戚を頼って就職するって言ったらしい。
「夢、諦めても良いの?」って」聞いた弥生に木下君は、俺の最終的な夢は弥生と生まれて来る子供と3人で幸せに暮らす事だって言ったらしい。
意外に木下君って男らしかったんですね。
弥生の方も、決まっていた就職を断り、取りあえずアルバイトで様子を見る事にするみたいだ。
放課後に、担任の遠藤先生に報告するって言っていたけど、きっと職員室では大騒ぎになるんだろうなぁ・・・
そう思いながら空を見上げると、そこには私の気持ちと同じ様な、雲一つ無い秋色の青空が広がっていた。
私の心の中には、もう木下君に対する思いなんて、一つ残らず消えていた。

・・・そう思っていたのは、私の勘違いだったみたいですね。
今、私の横には、その木下君が居て、私に寄りかかりながら居眠りをしています。
「ママ、重くない?」美結ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「んっ? ありがとう美結ちゃん。ママは大丈夫だから。美結ちゃんもママの膝でお昼寝する?」そう言いながら私は、正座している自分の足を伸ばして、ふとももをポンポンと軽く叩いた。
「うん♪」
美結ちゃんが嬉しそうに、私の足の上に頭を乗せてきた。
「ねぇママ、美結が生まれた時の事、知ってる?」
「うん、もちろん。パパと一緒に病院に居たからね。」
「じゃあ、お話してママ」
「そうねぇ、あれは・・・」そう言いながら私は、窓から差し込む暖かな日差し、そしてその向こうの秋晴れの青空を見つめていた。


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「ただいまぁ」
「あっ、パパだ。お帰りなさい~」
美結がパタパタとスリッパを鳴らし駆け寄ってきた。
小学生になって、周りの子供に刺激されたのか、また僕達の事をパパママと呼ぶ様になりました。
パパって響きに馴れてないから、少し照れ臭いんですよね。
こんばんわ、木下幸一です。
―――――――――9月10日(土)―――――――――
「あのね、今日の夕ごはんは、かわいいごはんだよぉ」
・・・可愛いご飯!? 何だ、それは?
まさかして、タコさんウィンナー山盛りってんじゃあ無いんだろうなぁ?

「あっ、お帰りなさい幸ちゃん」
「ただいま眞子。何だい可愛いご飯って?」
「あぁ、今日は雲山市役所に書類届けて直帰だったんで、帰りに雲山のスーパーに寄ったら珍しいパスタを見つけたのよ。」そう言いながら、鍋の蓋を開けた。

「あっ!? リボン型」Image043a.jpg「ねっ、可愛いでしょ。ファルファッレってパスタなんだよ。さぁ、早く着替えてきたら?」
「おっ・・・おう、分かった。」
俺には、忘れようにも忘れる事の出来ない、見覚えの有るパスタだった。
それは、まだ美結が弥生のお腹の中に居る頃の話だ。




「ただいまぁ」
「あっ、幸一お帰り。」
弥生が僕に抱き付きキスをしてきた。
・・・
「とうとうお腹がつかえる様になってきたな。どうだった検診の結果は」
「うん、順調に育ってるって。今日はね、検診の後、雲山に出掛けて日向と合流したんだよ」
「妊婦が遠出して大丈夫かよ?」
「遠出って、雲山までだってぇ平気平気、日向が一緒だしね。雲山のねベビーショップに行ってみたかったんだ。」
「そうかそろそろ、出産準備始めなきゃいけないんだ」
「ボチボチとね。その後ついでに、雲山のスーパー寄ってみたんよ。松舞じゃあ買えない食材有るからね。」
「妊婦が大荷物ってやばいだろ、これからは俺が休みの日にしろよな」
「うん、ありがとう。それでね、可愛いパスタ売ってたから、買って帰っちゃった」
「可愛いって・・・?」
「それは、夕ご飯の時のお楽しみ。取りあえずシャワーでも浴びなさいよ、汗臭いわよ。そんなんじゃあ生まれてくる子供に、嫌われちゃうから」
「おう、悪い悪い」
俺は、小さなクローゼットから、ジャージを取り出し洗面所に向かった。

「あ~、さっぱりしたぁ。ビールビールっと」
「もう、うちらまだ未青年なんだからね。」
「はいはい・・・んあぁ~、仕事後のビールは最高だね」
「親父臭いんだから、幸一は。はい、これが今夜の夕ご飯♪」
「おっリボンの形してる。」
「でしょでしょ、ファルファッレって言うんだって。奮発してトマトピューレまで買ってきたんだから。なかなか、本格的なパスタでしょ。」
「うん、それなりに旨いぞ、これ。」
「『それなりに』って、どう言う意味よぉ。そんな事言う子は、夕ご飯抜きにするわよ。」
「わ~、ごめんなさい。世界で一番美味しいです。」
「そりゃそうよ、私が作ったんだから」そう言いながら、弥生がクスクス笑った。
それに釣られて、僕も笑顔になった。

「ねぇこの料理、子供が見たらどんなリアクション取るのかなぁ」
「う~ん、男か女かによって違うかもな。女の子なら、『可愛い』とか言ってはしゃぐんだろうけど、男の子だったらノーリアクションだったりするかもな。」
「うわぁ~、ノーリアクションって意外と辛いわねぇ。確かに女の子だったら、はしゃぐんでしょうね。あ~女の子が欲しいなあ」
「う~ん、俺はやっぱり男の方が良いなぁ。女の子って絶対大きくなったら、『お父さん、気持ち悪い』とか、言いそうじゃんか。ママゴトとかお人形遊びとか面倒臭いし。男の子だったら、キャッチボールしたりゲームで盛り上がったりと楽しめそうだしな。」
「娘に気持ち悪がられない父親に為れば良いじゃないのよ、幸一。私は、やっぱり女の子よね。一緒に料理したり恋バナで盛り上がったり。そうだ女の子だとして、どんな名前にしたいの幸一は?」
「ん~、そう言えばまだ考えていないなぁ。幸一の幸を取って、『さち』とか、『ゆき』なんてのは、どうだ?」
「響きは可愛いかもしれないけど、安直よね。」
「じゃあ弥生はどうなんだよ?」
「そうね、『何とか美』って昔憧れてたなぁ」
「由美とか、清美とか?」
「そうそう。朝美とか、里美とか可愛くない?」
「朝美は朝生まれなきゃ意味が無いだろうなぁ。そう言えば、昔、鈴木結女ってアーチスト居たよなぁ。結女って響き可愛いって思ってたなぁ。」
「結女かぁ、確かに可愛いかもね。」
「でも、ジャケ写を見て愕然としたけどな。『結う』に『美しい』で、結美(ゆみ)なんでどうだ?」
「それだったら、文法的には美結よね。あ~、『みゆ』って響き、可愛くない?」
「おっ、確かに可愛いな。じゃあ、女の子なら第一候補は美結だな。男の子だったら、何にする?」

そんな話で、夕食後も盛り上がっていたと思う。
今も、もちろん幸せだ。
でも、弥生との生活も、金は無くても、夢や希望に満ちあふれた楽しい生活だったと思う。

「パパ、きがえ終わった? ねぇ、早くかわいいご飯食べたいよぉ」
「おうっ、今、行くからな美結」
・・・弥生、お前の望んだ通り、女の子で良かったな。
やっぱり美結は、リボンのパスタを見て、「可愛い」ってはしゃいでいるぞ。そこからでも、分かるかぁ?




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「お世話になりました」そう言いながら玄関の扉を開ける。
しばらくして美結ちゃんが、ランドセルを背負って駆け寄ってきた。
「真子ちゃん、お帰りなさい」
「はい♪美結ちゃん、ただいま」
今年から、美結ちゃんは小学生です。舌足らずだった発音も、随分と治りました(笑)
・・・子供の成長って早いですね、こんばんわ真子です。
―――――――――6月10日(金)―――――――――
本家の叔母さんに、子守りのお礼を言って玄関を閉める。
授業が終わったら学童保育、そして夕方本家のお孫さん美夏子ちゃんと一緒に下校して、そのまま本家に預かっていただいてます。


「美結ちゃん、今日もお弁当ちゃんと全部食べたかな?」
「うん、今日のお弁当のピカ○ュー、可愛かったよ」
「本当? じゃあ、明日は誰にしようかなぁ♪」
「美結ね、ミッ○ーマウスが良いなぁ」
・・・それって、基本白と黒ですね、楽出来るかも。
キャラ弁作りも随分と慣れてきました。
調子に乗って、幸一の弁当までキャラ弁する事も有ります(本人は会社の女の子に笑われたっと怒ってます)


わが家の玄関を開け、「ただいま」って二人で声をそろえて言う。
そんな、小さな事にも幸せを感じてしまう、そんな自分嫌いじゃ有りません。

リビングに行こうとする美結ちゃんに、声をかける。
「美結ちゃん、お母さんにただいま言ったかな?」
玄関横の部屋の電灯を点け、仏壇の前に美結ちゃんを坐らせ、その後ろから抱え込むように私が坐る。
美結ちゃんが鐘を鳴らし、何やら拝んでいます。
(弥生。今日も一日、美結を見守ってくれてありがとう。)
私も手を合わせて、そう心の中で呟く。


キッチンに続くリビングには、美結ちゃんの学習机が置いて有ります。
2階の美結ちゃんの部屋に置くのが、筋なのかも知れませんが、出来るだけ皆で一緒に過ごす時間を増やしたいと考えた結果、2階の美結ちゃんの部屋は遊び場兼寝室で、勉強はリビングっと言う事に決まりました。

「じゃあ先ずはお弁当箱ちょうだい。それと、今日は何かプリントもらってきた?」
「え~っとね、3枚有るよ」ランドセルを覗き込み、ごそごそとプリント入れを取り出しています。
「ふ~ん授業参観かぁ。そう言えば保育園の時に、お父さん、美結ちゃんがお遊戯している所、見に来た事有ったっけ?」
「ん~っとね、一度だけ有ったかな。保育所の後、サンモールでご飯食べたよ」
「・・・そうか、土曜日に確かあったわね。『今度、美結ちゃんが勉強している所を見に行て』って学校からお手紙来ているけど、お父さんと真子ちゃんと、どっちが行った方が良いかな?」
「う~ん両方~♪」
「それはちょっと困ったなぁ(^_^;)」
「じゃあ、真子ちゃん。真子ちゃんの方が、恥ずかしくないから」
「そうかぁ、お父さんに見られるの恥ずかしいかぁ」
「違うよ~ 『あれが美結ちゃんのお父さん?』って、みんなが聞くから、恥ずかしい」
・・・微妙な理由ですね。
気持ちは分かるけど、ここは言っておかなければいけませんね。
「あ~っ、そんな事言ったら、お父さん泣いちゃうよ美結ちゃん」
「うん分かったぁ。もう言わない。」
そうそう、子供は素直が一番!
「だって、お父さんの泣いた顔、変だもん。」
・・・負けました

「うっ・・・さて、真子ちゃんが夕ご飯作ってる間に、宿題やってしまうのよ」
「うん、さっきまで美夏子ちゃんと、お勉強していたから、もう少しで終わるぅ」
「そっか、じゃあ楽勝だね。真子ちゃんも頑張って夕ご飯の支度しなきゃ」
「美結、お勉強が終わったら、料理手伝うぅ」

「・・・真子ちゃん、レタスちぎるのこれでOK?」
「あら、上手に出来たわね、ありがとう美結ちゃん」
考えていた以上に、細かくちぎってありましたけどね(^_^;)
「じゃあ次は、お茶碗の準備お願いしま~す」
「は~い♪」
「そうだ。お父さんはお仕事で遅くなるから、先に夕ご飯食べておいてって、メールが来たよ。」
「残業とか言いながら、どこかで合コンしてないわよね」
あんたは本当に小1なの?って突っ込みたくなる位、美結ちゃんの突っ込みがレベルアップしています。
「ちがうよ美結ちゃん。お父さんは、ちゃ~んとお仕事してるって(多分だけど)」
「じゃあ、このお父さんの分のコロッケ、冷蔵庫に入れておくぅ」
「そうね、お願いします♪」

「いただきます」「いただきま~す」
手を合わせ、二人で合唱する。
結婚前から、同じ事をしてきたはずだけど、今の「いただきます」は、あの頃の「いただきます」とは少し違う、そんな気がしてなりません。
世話をしてくれる真子ちゃんから、もう一人のお母さん真子ちゃんになっている訳ですから。

美結ちゃんとお風呂に入り、2階の寝室で一緒に横になって、色々なお話を話して聞かせている。
美結ちゃんは、みぃちゃんとラビ君の冒険話が大好きです。
即興話だから、支離滅裂なストーリーなんですけどね(笑)

弟3話の途中で、美結ちゃんは眠りにつきました。
そっとベッドを抜け出し、1階に下りる。
時計は10時を回ってます。
携帯をチェックしてみたけど、幸一からの連絡は入っていませんでした。

パソコンを立ち上げ、こっちのメールもチェックする。
・・・日向ちゃんから、メールが来ていました。
メールボタンをクリックした時、庭に車が止まる気配がしたので、玄関に出てみる。
程なくして、「ただいま~」って元気に玄関を開ける音が。

「幸ちゃん、お帰りなさい」そう、言いながら幸ちゃんの首に抱きつく。
「毎度の事だけど、やっぱり一瞬焦るよな」そう言いながら、幸ちゃんは唇を寄せてくる。
(んっ?)
「ちょっと幸ちゃん、お酒臭~い」
「あぁ、接待に付き合わされてな。だから、列車に乗って駅からはタクシーで帰ってきた。」
・・・「呑み」という点では、美結ちゃんの直感が当たってる?
「そっか。・・・まさかして合コンじゃないわよね?」
「ごっ合コンって。・・・・・・・・・あのなぁ~。」
・・・妙な間が有りましたが、深く追及するのは布団の中でにしましょう(^-^)

「じゃあ、夕ご飯はどうする? 今夜はコロッケよ」
「あ~明日の朝食べるわ。それよりコーヒーでもいれてもらえるかなぁ」
「うん。じゃあその間に着替えておいてね。美結ちゃん寝てるから、静かに階段上ってね」
「おう、分かった」


「美結のやつ、布団跳ね退けて寝てたぞ。あの寝相の悪さは俺似だな(笑)」
「そうね(笑) あっ、ねぇ。ちゃんとお布団掛けてあげた?」
「もちろん。この時期、夜は暑いけど、明け方はまだ寒いもんなぁ」
「そうよぉ、今朝だって幸ちゃん、布団を一人占めしてたんだからね。もう少しで風邪ひくところだったわよ」
「そうか。悪い悪い」
「コーヒー入ってるわよ。あっ、その前にお弁当出しておいてね。」
「おう、ごちそうさまでした。」

・・・そう言えば、美結ちゃんもお弁当箱出してなかったわね
美結ちゃんの手堤かばんから、お弁当袋を取り出す。
袋を開けると、お弁当箱の上にお手紙が乗っていた
「?」
そこには、小さな文字で[ごちそうさまでした。いつもお弁当ありがとう]って書かれていた。
・・・美結ちゃんなりに、気を使ってくれているんですね。
明日は休みなんだし、一緒にケーキでも焼きましょうか♪

コーヒーカップを持って、パソコンの前に座った幸ちゃんが、話かけてきた。
「真子~ 緑川から届いてるぞ~」
「あぁ、うん。幸ちゃんが帰って来たから、まだ読んでないんだ」
美結ちゃんの手紙を仕舞い、幸ちゃんの横に座る。
「え~っと、なになに?」

[真子ちゃん、こんばんわ。 美結ちゃん元気? ついでに木下君も元気かな? こっちは、神戸の生活に少しは慣れてきましたよ。 洋一は、まだ就職が決まらず専業主夫状態です。 就職早く決めてもらいたいのは山々ですが、家事全体の心配をしなくて良い生活も、中々捨て難い気もします。愚痴はこれ位にして、最近ブログ始めました。タイトルは「僕と彼女の日々」(^_^;) 知らない間にブログ始めてたから、タイトルに関して私はノータッチですよ。まぁ、管理人は洋君だし。アドレスはhttp://bokukano.doorblog.jp/です。本当はツイッターやFace bookとかもやってみたいんですが、それは次の段階にしようと思います。まぁ、暇な時にでも覗いて見てね。それと、本当に暇だったら皆で神戸に遊びに来て下さいね。ではでは、またメールします。日向より]

早速、ブログに飛んでみた。
「へぇ~これ、日向と村田さんのブログ? いいなぁ、俺たちも始める?」
「いやぁ~、それは勘弁だよ幸ちゃん。松舞じゃあ、すぐに誰なのかばれそうだし、ネタ切れで更新しなくなるのがオチじゃない?」
「まぁ、確かにそうなのかもしれないなぁ・・・」

・・・ふぅ~適当に話をごまかせましたね。
実は、パソコンだと洋君にばれちゃうから、携帯ブログを立ち上げてます。
もちろん、洋君や知り合いには内緒です。
唯一知っているのは、美結ちゃんのみ・・・って言うか、美結ちゃんも私が手伝って記事を書いてます。
これは、二人だけの女同士の小さな秘密です♪


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「や~ん、まこしゃん、にょろにょろむしだぁ」
「えっ? あら本当、大きいミミズさんだね。でも、ミミズさんは怖くないのよ、土を柔らかくしてくれたり、ウンチはお花さん達のご飯になるのよ。」
「でも、にょろにょろして、きもちわるいよぉ」
「それはね、美結ちゃんが、スコップでミミズさんのおうちを掘っちゃったから、ビックリしてるのよ。ほら、こうやって周りの土と一緒に、スコップで掬って‥‥こっちの畑の隅っこに移してっと‥‥はい、ミミズさんのお引っ越し終わりましたっと」
あっ、おはようございます。今日も一日蒸し暑そうです。
朝から美結ちゃんと大騒ぎの真子です。
―――――――――7月10日(土)―――――――――
さっきまで、美結ちゃんと土いじりを楽しんでました。
かねてより考えていた、ハーブガーデンをついに、うちの庭に作る事にしたんです。

とりあえず、一通りの作業が終わりましたので、一旦休憩する事に。
「じゃあ美結ちゃん、手を洗おうね」
美結ちゃんが庭の水道で手を洗いながら、2階を見上げる。
「おとうしゃん、まだねてるのかなぁ?」
「そうね、お仕事でお疲れだから、もう少し寝かせてあげようね」
「うん」
「じゃあ、先に朝ご飯食べちゃおうか。今朝はホットケーキにしようかなぁ」
「みゆね、3まいたべたい~」
「え~、そんなに食べれるの?美結ちゃん」
「うん、だいじょうぶぅ」
やれやれ、少し大きさを小さくして、焼こうかな(・。・;)ゞ。
「じゃあ、美結ちゃんもホットケーキ作るの手伝ってね。」
「は~い、おかあしゃん。」

幸一が起きてきたのは、10時ちょっと前でした。
「おはよ~美結、真子。いや~、久し振りにゆっくり寝たわぁ」
「おとうしゃん、おはよう~」
「あっ、お父さんおはよう。ゴメンね、先に朝ご飯食べちゃったからね。今、準備するね」
「あっ、俺、コーヒーだけでいいよ。それより、今日は嘉本先輩のハーブショップ行くんだろ。午前中には出掛けようや」
「うん、ありがとう。でも幸ちゃん、運転大丈夫?お疲れなら、私達だけで行って来るわよ」
「あぁ、大丈夫だって。休みだからってダラダラ過ごしてたら、勿体ないじゃんか。さぁ美結、お父さんがコーヒー飲んだらお出掛けするぞ」
「うん、わかったぁ ねぇ、みぃちゃんも、つれていっていい?」
「おう、いいぞ。ハンカチとティッシュも忘れるなよ」
「うん」って言いながら美結ちゃんは、トコトコと2階に上がっていった。
「じゃあ、私も準備するね」
「おう、俺もコーヒー飲んだら準備するわ」
‥‥私達の為に、色々家族サービスをしてくれる幸一に感謝です。
実は最近、また残業が多くなったんですよね。

開け放ったサンルーフ越しに、太陽を一杯浴びた木々の緑が、飛び込んで来ます。
「いい天気になったな、絶好のドライブ日和じゃん」
「そうね。梅雨入りしたのが、嘘みたいよね。」
美結ちゃんは、うさぎのぬいぐるみの、みいちゃんを抱きながら楽しそうにおしゃべりしています。
「ほら、みいちゃん、みてごらん、あっちのおやまのうえに、くもがのってるでしょ。きっと、あそこのおやまは、あめがふってるよ。ねぇ、とうしゃん。」
「あぁ、そうだな美結、あっちのお山は、きっと大雨だぞぉ、早くお買い物してハーブを植えておかなくっちゃな。美結は、どんな花を植えたい?」
「う~ん、みゆは、しろいおはなが、たくさん、さくのが、いいなぁ」
「白いお花かぁ‥‥そうすると、ミントかスイートバジルかな? お母さんはね、ローズマリーや、オレガノも欲しいなぁ」
「おいおい、真子。そんなに植えるほど、広くないだろう、うちの花壇は」
「大丈夫よ、今朝美結ちゃんと、ハーブガーデン用に花壇を広げたから。」
「それで、朝から騒がしかったんだな。じゃあ、俺も何かハーブを育てようかな?」
「幸一はどんなハーブ育てたいの?」
「やっぱ、ハーブティーより、食べる系のハーブが良いなぁ。ジャガイモに合うフェンネルかディルとか、セージを使ったひき肉料理とかやってみたいな」
「育てて楽しむんじゃなくて、食べて楽しむんだ(笑)」
でもでも、1年半前までタヌキうどんにソースで隠し味を付ける様な、料理音痴だった幸一が、私も知らない様なメニューを作れる様になったんですから、男の凝り性には頭が下がる思いです。

雲山の郊外に有るハーブショップに着いたのは、お昼前でした。
実はこのお店には、高校時代の先輩が勤めているんです。
「わぁ~、まこしゃん、いっぱい、おはながさいてる~」
「そうだね、美結ちゃん。でも、ここのお花は摘んじゃあダメだよ。これは全部お花屋さんのお花なんだから、お金払ってからでないと、持って帰れないからね」
「うん、わかった。みいちゃんも、きをつけるのよ。ねぇねぇ、まこしゃん、このしろいおはなは、なんてなまえの、おはな?」
いや、ぬいぐるみのみいちゃんは、花を摘んだりしないと思うけどな(笑)
「んっと、このお花は、ミントだよ。ほらこうやって優しく葉っぱを撫でてから、指の匂いを嗅いでごらん」
「あっ、す~っとするぅ。ほら、みいちゃんもにおってごらん。」
「でしょう♪ この葉っぱから採った汁が、お菓子やジュースに使われてるんのよ」
「え~っおかし♪ みゆ、このおはなほしい~」
「ふふっ、美結ちゃんもお父さんと一緒だね。そうね、ミントは多めに買っておいた方が良いかもね。あっちにも白いお花が有るわよ。」
「はっぱさんを、なでなでして‥‥‥くさ~い。まこしゃん、このおはなは、くさいよぉ」
「ん~っ、スィートバジルね、美結ちゃんにはちょっと臭いかも。でも、美結ちゃん、この前バジリコパスタ食べたでしょ。その葉っぱを刻んで乾燥させた物なのよ」
「他にも、ペーストにしてパスタジェノベーゼにしたり、ピザに乗せてマルガリータにしたりするよ。トマトと相性が良いんだから、バジルは‥‥‥」
その声に振り返ると、高校の先輩、嘉本さんが幸一と立っていた。
「あっ、嘉本先輩お久しぶりです、お元気でした? ほら美結ちゃん、オジサンに挨拶は?」
「こんにちは‥‥」そう言いながら、美結ちゃんは私の背後に隠れた。
普段は人みしりなんて、しない子なんですけどね。やっぱりジャニーズ系の様な彼のルックスの良さに、びっくりしちゃったんでしょうかね(笑)
「おいおい、お母さん! オジサンはないだろう、オジサンは~。お嬢ちゃん、こんにちは、お名前は?」
「み‥‥みゆ‥‥です。このうさぎさんは、みいちゃんです。」
「そっか、美結ちゃんに、みいちゃんですか。美結ちゃんは、レモンの香りとかも好きかなぁ?」
「ほら、美結ちゃん。いつまでも隠れてないで、ちゃんと前に出て喋りなさい。」私は、美結ちゃんを前へ抱き動かした。
「れ‥‥レモン、だいすきぃ」
「そっかそっか、こっちの葉っぱ触ってごらん。ほら」
「あっ、レモンのかおりがするぅ。ほらみいちゃんも、におってごらん。たべちゃあだめだよ」
「だろう、これはレモンバームって言って、これも白っぽい花が咲くんだよ。そうだ、あっちのお姉ちゃんの所に行ってごらん、おやつが貰えるよ。お~い、神田さ~ん、この子にハイビスカスのゼリーと、ローズヒップヨーグルトドリンク出してあげて」
ぬいぐるみを抱いたまま、美結ちゃんは、店の店員さんに連れられて、店内に入って行きました。
「しっかり母親してんだな、木下さん。」
「ええ、弥生の分まで、頑張んなくっちゃいけませんからね。」
「そうか‥もう5年位経つのかな?。しかし、ビックリしたぞ。木下と塚田さんが結婚するなんてさ。」
「私だって、ビックリしてますよ(笑) んで、嘉本先輩はどうなんです?彼女出来ました?」
「いや、毎日忙しくってさ、それに客商売だろ、人と休みが合わないんだよな。」
「そうですよね、土日なんて言ったら、稼ぎ時ですんね。まだ、人並みの休みが取れる私達って幸せなのかもね、ねぇ幸一。」
「そうだよな真子。そう言えば嘉本先輩は、雲山にアパート借りたんだってさ」
「そうなんだよ、閉店後に手入れとかしてたら、松舞に着くのが0時回る事も多いからな。」
「そっか、ハーブショップなんて、おしゃれで素敵な職場ってイメージ有るけど、内情はそうじゃないんですね」
「そうそう、そんなもんだって、仕事なんてさ。松舞高校で馬鹿やってた頃が一番楽しかったな」そう言いながら、少し照れ臭そうに、嘉本先輩が笑う。
「なぁ真子、それで買うハーブの目星は付けたんか?」
「あっ、ゴメンゴメン美結ちゃんの相手してたから」
「美結ちゃんの相手はうちの神田さんが、ちゃんとしてるからさ、二人でゆっくり品定めしなよ。俺はちょっと事務所に下がって来るからさ」
「あぁ、ありがとうございます、嘉本先輩」
嘉本先輩なりの気遣いなんでしょうね、きっと。

「だから、スィートバジルは、外に近い方の花壇に植えて、その根元にオレガノを植えれば、すっきり収まるんじゃないか?」
「うん、そうなんだけど、オレガノとバジルって、一緒に植えて大丈夫だったか、気になるによ」
「そうか、そう言う問題も有るのか‥‥それぞれを少しづつ離して植えてくか?」
「う~ん、オレガノは低く広がるから、小さなバーレルに植えて吊るすのは、どう?」
そんなおしゃべりをしながら、二人ハーブポッドの前に屈んで、顔を付き合せて、あれこれ悩んでいます。
美結ちゃんには、申し訳無いけど、二人で過ごすこんな何気ない時間って大切ですよね。
ちょっぴり、幸せを感じたりして。
「かわいい、むすめのことを、ほっぽりだして、いつまでラブラブモードに、はいってるのよ? ねぇ、みいちゃん」
背後から聞こえた美結ちゃんの声に、二人ビクンと立ち上がりました。
「すまんすまん、美結。色々とどんな花壇にしようか、悩んでいたんだ」
「ゴメンね美結ちゃん。おやつは美味しかった?」
ふっと見ると、テラスの向こう側で、嘉本先輩と美結ちゃんの相手をしてくれていた店員さんが、クスクス笑ってます。
「いや~、凄くオシャマな女の子だな、美結ちゃんって。うちの神田さんも、質問攻めに遭って、タジタジだったぞ。」
「えっ!そうなの?すいません、うちの美結が失礼な事聞きませんでしたか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ。でも本当、利口で素直なお嬢さんですね。さぁ美結ちゃん、お父さんとお母さんに欲しいハーブを教えてあげなくっちゃぁね」
「うん、おねえちゃん。 あのね、かあしゃん、みゆは、ミントとレモンバーベナがほしいの」
「そうか、美結ちゃんの欲しいハーブは、ちゃんと覚えたわよ。後は、お父さんの欲しいファンネルと、セージ、ローズマリー。お母さんは、オレガノとスィートバジルにタイムにするわ。」
「はい、お買い上げありがとうございます。早速準備致しますので、向こうのテラスで、アイスミントティーでもいかがですか?」
「あっ、ありがとうございます。俺、ちょうど喉が乾いていたんですよ。じゃあ真子、お言葉に甘えようか。」
「そうね、そうしましょ。」

梅雨の合間の貴重な太陽が降り注ぐテラスで、ゆっくり3人でお茶をする。
こんなおしゃれなテラスで、家族でお茶をするのが夢なんですよね。帰ったら、ガーデニング頑張んなくっちゃ。
「でね、みゆはね、ミントでアイスクリームつくりたいの」
「う~ん、それには一杯ミントの葉っぱがいるわよ、美結ちゃん。頑張って育てなくっちゃね。」
「うん、ちゃんと、あさ、おみずあげるからね。」
「このミントティー美味しいな。嘉本先輩にレシピ教わっておこうかな。んで、この後どうする? どこかでお昼食べて帰るか?」
「う~ん、雨が心配だし、まっすぐ帰らない」
「みゆ、ハッピーセットがたべたい~」
「じゃあ、マックでドライブスルーしようか。新発売のチキンバーガー食べてみたいし。バジル風味らしいぞ。」
「へぇ~、それは確かに興味有るわね。」
「よし、マックに寄って帰ろうな。ほら、お姉さんがハーブポッドを持って来てくれたぞ。」
「お待たせ致しました、ありがとうございました。」
「こちらこそ、色々お世話になりました。ほら美結ちゃんもお礼を言いなさい」
「そうそう、はいこれ、美結ちゃんとみいちゃんにお土産よ」そう言うと神田さんがポプリ袋を美結ちゃんに手渡した。
「わぁ、ありがとう、おねえちゃん」
「あらら、すいません。ありがとうございます。」
「それから、これは嘉本チーフからで、ハーブティーとハーブドレッシング、ハーブソルトの詰め合わせです。」
「うぉっ、こんなに沢山‥‥嘉本先輩、すんません、ありがたく頂きます。」
「おう、木下。それで色々奥さんや美結ちゃんに料理作ってやれよ。またいつでも顔出してくれや」
「すいません、嘉本先輩沢山頂戴しちゃって。」
「いやいや、気にすんなって。秋にはアロマオイルも充実させておくから、また遊びに来いよな」
「はい、ありがとうございます。」
そう言いながら、私達は店を出る。

「これが最後のハーブよ、幸ちゃん」そう言いながら、幸一にハーブポッドを手渡す。
車のトランクは、ハーブで一杯になりました。
それぞれが、個性的な香りを放っています。
「沢山買っちゃったね、幸ちゃん。」
「あぁ、でもたまには良いだろう、これ位の贅沢。さぁ美結、ちゃんとシートベルトしたかぁ? マックに行くぞ」
「うん、ちゃんと、シートベルトしたよ。あっ、でも、まって。みぃちゃんが、まだシートベルトしてないからぁ」
「そっかそっか、お父さんがみいちゃんのシートベルトは絞めてやるよ」
笑いながら、美結ちゃんの横にぬいぐるみを座らせ、シートベルトを絞めている。
そんな微笑ましい風景を見ながら、もう一度わが家のハーブガーデンのイメージを思い出してみる。
とある、天気の良い休日の昼下がり。
わが家のハーブガーデンの前には、木製のガーデンテーブルとイスが3つ‥‥いや、みいちゃんのイスも必要だろうから4つかな(笑)
黄色いテーブルクロスの上には、ミントティーとハーブ入りのクッキー。
私と美結ちゃんが、イスに座っておしゃべりをしていると、ハーブガーデンからバジルやフェンネルを手にした、幸一が出てくる。
ガーデンの横にある芝生の上では、バーベキューコンロに載せたダッチオーブンから、白い湯気が立ち上がり、周囲にはローストチキンとローズマリーの香りが漂っている。
幸一がローストチキンをお皿に取り分けている間に、私は一緒にダッチオーブンに放り込んでおいた、ジャガイモを取り出す。
ホクホクに蒸し上がったジャガイモをザックリと割り、バターを落としてフェンネルを散らばせる。
美結ちゃんが、切り分けておいたトマトの周りに、楽しそうにスィートバジルの葉っぱを盛り付ける。
料理が出揃ったところで、松舞葡萄園のワインの栓を開ける。
テーブルブレッドはもちろん、葡萄園のパンコーナーのフランスパン。
3人でワイワイおしゃべりをしながら、幸一の手料理を口にする。
‥‥‥考えただけで、ワクワクして来ました。
帰ったら早速、ハーブを植え替えなきゃね。
しかし、食べる事しか考えてないって、幸一や美結ちゃんを笑いましたけど、結局私も最後には食べる事をイメージしているなんて、二人には内緒ですよ♪



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