松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

カテゴリ: モリヒデ・ヒグラシ編

♪♪♪
部屋中に、ヒグラシのスマホの着信音が鳴り響いた。
「も・・・もしもし・・・お母さん?なに?こんなに朝早く・・・」
上半身を起こして話をするヒグラシの横で、俺は捲れ上がった掛け布団を手繰り寄せた。
「ウソ!マジっ・・・うん、分かった。ちょっとぉ、モリヒデ起きなさいよ!」
せっかく手繰り寄せた掛け布団を、ヒグラシが撥ね退けた。

松舞の朝方は、まだまだ寒いです。
おはようございます、モリヒデです。
―――――――――5月25日(日)―――――――――
「もう、10時回っちょうがね、モリヒデ!」
「うぉっ、マジ?」
俺は慌てて、枕元のスマホを手に取った。

今日は午前中、ご近所にあいさつ回りに行く予定でした。
・・・実は、昨日ヒグラシとの結婚式でした。
これで、自他ともに認める夫婦となりました・・・実感はないんですが。

いや~、結婚式って飲んで騒いでって簡単に考えてたんですが、緊張しちゃって疲れ果てました。
次は結婚式はしないぞ・・・おっと、そんな事言っちゃいけませんよね(笑)
人前式だったし、そんな盛大な式したわけじゃないんですけどね。
呼んだのは、お互いの親戚と極々親しい友人数名、そして夫々の職場から社長と上司と2名づつ位です。

おっと、そんな悠長に考えてる時間はないですね、急いで支度をしなければ。

・・・

「お~い、ヒグラシ~準備できたかぁ?」
「ちょっと待って、ワンピースのチャックがぁ・・・」
「ったく、相変わらずトロいなぁ」
俺は、そう言いながらヒグラシの背中に回りワンピースのチャックを静かに上げた。
「お前・・・腹出て来たな・・・」
ちょっと剥れ顔のヒグラシが振り返った。

「・・・・ちょ、ちょっと何?そのネクタイ・・・ヨレヨレじゃないのよ!」
「あっ、適当にクローゼットから引っ張り出したから・・」
「んもう~、相変わらず私がチェックしないといけないんだから・・・しっかりしてよねパパ」
そう言って微笑むヒグラシを見て、俺も一緒に笑ってた。


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それは、去年のクリスマスイブの前日、天皇誕生日の23日の話、ヒグラシの奴は、雲山で真昼間からクリスマス女子会だった。
お昼前に雲山駅まで送って、夕方また雲山駅に迎えに行くと言う、完全なる奴隷状態。
一旦、松舞に帰るって選択肢も無い訳ではないけど、峠越えをする事を考えると、こっちで時間を潰した方が楽なので、適当に雲山の街をぶらついていた。
こんばんは、お久しぶりですモリヒデこと、森山英生です。
―――――――――3月16日(日)―――――――――
雲山の街は、クリスマス一色でした。
きっと全国的に、クリスマスカラー一色なんでしょうね。

そう言えば、ヒグラシへのクリスマスプレゼント、まだ決めかねていたなぁって思い、雲山で一番大きなショッピングセンターに寄りました。
エントランスの横の、花屋の前で見た事有る親子が。

「確か、あの人は・・・雲山設計の・・・」
そう、以前松舞川で一緒に、バーベキューした木下さんだった。
って事は、抱いてる子供は確か・・・美結ちゃんだったっけ?
いや、バーベキュー時点で、保育所だったから、それはあり得ないなぁ・・・
挨拶しようかどうしようか、少し躊躇していると店内から、これまた見覚えある顔の女性が・・・
奥さんだった。
そして嬉しそうに、花の鉢を抱えた女の子が・・・美結ちゃんだった。
って言う事は、木下さんが抱いてるのは下のお子さん?
二人目が生まれたんですね。

嬉しそうな笑顔で話す、木下さんと奥さんを見ていたら、何だか邪魔しちゃいけない様な気分になって、敢えて挨拶はしなかった。

「幸せそうだったなぁ」
気が付くと、俺はボソッと呟いていた。
バーベキュー大会からでも、気が付いたら3年は経っていた。
周りの人間は、確実に幸せになって行っているのに、俺達は相変わらず子供っぽいよなぁ。
颯太も、実はこっそり結婚資金を貯め始めているらしい、社会人先輩の俺なんて相変わらずのその日暮らしに近い状態だしな。
「そろそろ、俺も年貢の納め時かな?」なんて思い、苦笑いしてしまった。
出会った頃は、あんなに仲の悪かったヒグラシとの生活を、いつの頃からか真剣に描く様になっていたんですよね。

♪♪♪
ポケットの中の、スマホがメール着信を告げた。

『モリヒデ、ごめん一人急用が出来ちゃって、お開きになっちゃった。3時頃、雲山駅来れる?』
マジかよ、まだプレゼント買ってないのによぉ
焦った俺は、服飾コーナーに向かい、候補の一つだった手袋を手にした。
もう一つの候補だったマフラーは、ちょっぴり予算オーバーだった。
店員さんに、頼み込んでラッピング包装だけは、豪華めにしてもらった。
慣れた手付きでシュルルとリボンをかける店員の仕草を、ボ~ッと眺めながらチョッピリ不甲斐ない自分を悔いてしまった。
こんなんじゃあ、結婚式どころの話じゃないよなぁ。


「ワリイ、遅くなった」
俺は助手席のドアを開けながら、ヒグラシに謝った。
「ううん、こっちこそゴメンね。幸恵がね、憧れの先輩から急に映画の誘いが入っちゃって。」
「ほぉ~、ユキちゃんも遂に腐女子卒業か?」
「幸恵は、別に腐女子じゃないわよ、まぁ結構なアニオタだけどね。それよりさぁ、時間が有る事だしどこか寄り道して帰らない?」
「う~んそうだな・・・でもまぁ、時間が時間だし適当に流すか?」
「そうだね、お任せする。」
お任せが一番面倒なんだよな、まぁ取り敢えず疲れた時帰りやすい様に西にでも向かおう。

「どこ行っちょった?」
「ん~適当にブラブラしちょった・・・そげ言やぁあ雲山設計の木下一家を、イオンで見かけたわ。」
「木下さんって、日向さんの友達の?」
「そうそう美結ちゃん一家。弟が生まれちょったわ。」
「ふ~ん、挨拶した?」
「えんや、ほがほがしちょったら、おらん様になったわ。」
「そげか。んでどぎゃん感じだった?」
「どぎゃんて、何がや?」
「幸せそうだったかね?」
「おう、木下さん子供抱いてニコニコしちょったずぇ。奥さんも美結ちゃんと楽しそうに手繋いどったし」
「そげかそげか。」

ふっと俺は、目の前の点滅信号を右折した。
「か、松崎行く道じゃないかいね?」
「あげだず、松崎海岸行ってみっか。」
「寒ないだあか?」
「そげに前通だけだけん。寒かったら、俺のコート着いだわや。」
「あんたのコート、汗臭いがね」
「まぁ、好きにす~だわや。」

次のT字路を右に曲がれば、松崎海岸です。
「うわ~やっぱり寒いわねぇ」
ハア~ァっと、手に息を吹きかけるヒグラシ。
「あっ、そげだわ」俺は、手袋を買っていたのを思い出し、車のトランクに隠しておいたプレゼントを取り出す。
「ほい、これ、クリスマスプレゼント。開けてみ~だわ。」
「あっ、ありがとうモリヒデ。ゴメン、私、明日渡すつもりだったけん、家に置いちょうわ。」
「俺も明日渡すつもりだったけど、『今でしょ』的なプレゼントだけん。」

ラッピングのリボンを解き、中を覗き込んだヒグラシが顔を上げ、ニッコリ微笑んだ。
「か、確かに『今でしょ』だわな。明日貰っちょったら、嬉しさ半減だったがね」
嬉しそうに手袋をはめ、空にかざして小躍りするヒグラシ。

その姿が、何だか凄く愛おしくって
「なあヒグラシ、こおから毎年クリスマスに手袋買ってや~けん、皺くちゃの手になっても、皺くちゃの手袋買ってや~けん、受け取ってごすかや?」
思わず、ず~っと言えんかった一言を口にしていた。

少しむくれながら、「皺くちゃの手袋は要らんわね。何だね、そ~はプロポーズのつも~かね?」って、ヒグラシが微笑んだ。
「うん」小さく頷く俺に、姿勢を正すヒグラシ。
「やっと、言ってごいたね。待ちょったけんね、その言葉。きっと、初めてここであんたと手を繋いだときから・・・」
急に俺は照れ臭くなり、フリースのポケットに手を突っ込み、黒くうねる波を見つめた。
「私の返事は、当の昔に決まっちょたけんね。・・・毎年、手袋貰っちゃあけん、幸せにしてごしないや」
ヒグラシは右手の手袋を外し、俺の目の前に突き出した。
「ど~せ、あんたの事だけん、指輪なんか準備しちょらんでしょ?」
うっ、確かに図星だった。
「このラッピングのリボン、指に結んでモリヒデ」
上目使いではにかむヒグラシに、ちょっぴりドキドキしながら、俺はぎこちなくヒグラシの左手の薬指にリボンを結び付けた。

「ありがとう、大切にするけんね」
そう言いながら、ポケットに手を入れ俺の手を強く握った。
「・・・しかし貰っちゃあけんって、相変わらずヒグラシらしい上から目線だな。」俺は、そう言いながら、ヒグラシの手を強く握り返した。

「ちょっとぉモリヒデぇ、何ニヤニヤしちょうかね」
風呂上り、ハンドクリームを塗っているヒグラシを見ていたら、ふっとプロポーズした時の事を思い出していた俺だった。

ちょっとモリヒデ、いつまで寝てるのよ遅刻するわよ」
「うおぉ~」ガバっとモリヒデは起き上がり、目覚まし時計を確認する。
「朝ごはん出来ちょ~よ」そう言いながら、モリヒデのほっぺにキスをする。
そんな、いつもと同じ朝のひと時
・・・・・あっ、一つだけ今までと違う事が有りました。
おはようございます、皆さんお久しぶりですカナカナこと、佳奈絵です
―――――――――3月7日(金)―――――――――
今までと違う事それは、苗字が金田から森山に変わりました(^^ゞ
ほら、2014年入ったのに何かの拍子に2013年って書く事有りませんか?
それ位、ごく自然な流れで、私とモリヒデは結婚しました。

と、言っても披露宴とか結婚式はこれからで、戸籍上の夫婦となっただけなんですが。
序に言うと、住まいは相変わらず203号室・・・つまり、私の実家の隣の部屋のままです。
味噌汁の冷めない距離と言うか、煮え滾ったままの距離です。

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「おいヒグラシ、なに思い出し笑いしちょ~や、先に飯食うけんな」
「あっ、ゴメンゴメン」
二人でテーブルに向かい合い、「いただきます」っと合唱する。
今まで、何百回と繰り返して来た事ですが、夫婦と思うと何か特別な気がしますね。

「今夜、小村先輩と竹下と飲み会だけん、ちょっと遅くな~わ。」
「あんたと竹下君は大丈夫でも、小村さんは飲んでて大丈夫なの?もうすぐ錦織先生、臨月でしょう!」
「だから、1、2杯飲むだけだけん。」
「じゃあちゃんと、代行で帰って来~だよ」
「おう・・・だけん代行代恵んでごす?」
「えっ?もうお小遣い残っちょらんかね! また、ゲーム買ったでしょ!」
「・・・あっやべえ、きゃん時間だがや、俺、先に出~けん、洗いモンは帰ってからす~けんな」
そう言いながら、ばたばたと荷物をバッグに詰め込むモリヒデ。
「ちょっと、今週の日曜日は開けといてよね、会場との打ち合わせが有~けんね!」
「分かちょうわや。んじゃあ、行ってく~けんな」そう言いながら、口をモリヒデが突き出した。
・・・やれやれって思いながらも、私はいつもの朝と同じようにモリヒデの肩に手を回した。

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毎日、ジメジメした日が続きますね。
また今年も、蝉が鳴く暑い季節がやってきました。
朝ちゃんが東京行ってから、カナカナって呼ばれる機会がめっきり減りました。
まぁ、相変わらずヒグラシって呼ぶアホが居るんですが・・・
こんばんわ、佳奈絵です。
―――――――――7月4日(月)―――――――――
先々週の日曜日は、そんなアホの素敵な先輩比呂十さんと美咲さんの結婚式でした。
私も、モリヒデのお目付役として、披露宴に行って来ました。

元々、美人でスタイルのいい美咲さんですが、ウェディングドレスをまとった姿は、同性の私でも見とれてしまう位綺麗でした。

私もいつかは・・・
う~ん、新郎がモリヒデしか浮かんで来ないのが、ちょっと悔しいです。
結婚式と言うより、初お笑いライブに近い光景を想像してしまいます(=_=;)


♪♪♪
ん? モリヒデからメールです・・・隣に住んでるんだから、うちに来るとか窓越しに声をかけるとかでも良いんじゃないの?

[小村先輩の結婚式のフォトムービー作った。出来上がりチェックしてくれ]
相変わらずの命令口調ですね(^_^;)
冷蔵庫から、差し入れのガリガリ君を二つ取り出し、モリヒデの部屋に行った。

「おうヒグラシ、中々の出来栄えだぞ♪」そう言いながら、モリヒデは焼き上がったばかりのDVD-Rをプレーヤーにセットした。

♪♪♪
「あっ、このBGM、新郎新婦の入場の時の曲だ。」
「音源探すの苦労したんよ、これ」
比呂十さんのにやけた写真、美咲さんのご両親がハンカチでまぶたを押さえるシーン、ケーキカットにブーケトス・・・受け取ったのは、私・・・
ではなくて、美咲さんの友人でした。
まぁ、こんだけの写真撮ったわねって呆れちゃう位、沢山の写真が流れていった。
聞いて見ると、一日で2GBのSDカード3枚使ったって言うから、そりゃ完成までに時間がかかりますよね。

ラストは、キスシーンです。
改めて他人のキスシーンをマジマジと見るって、照れ臭いものですね。
美咲さん、少し照れ臭そうですが、幸せ一杯の笑みを浮かべてます。
「いいなぁ、幸せそうで・・・」ボソッと呟いた私

「何だよヒグラシ、お前は今、幸せじゃないんだ」
「ゴメンゴメン、そう言う意味じゃなくて・・・・・・あっ、あんたのガリガリ君当りだった?」
「いや、ハズレだった。ヒグラシの方は?」
「私もハズレだったわ・・・・・・このDVD、あんたにしては、中々の出来じゃない。これなら、小村夫妻も喜ぶわよ、きっと」
ふ~、何とかごまかせましたね(^_^;)
言葉のあやなんだから、さりげなく突っ込まないで欲しいですね。

「小村夫妻かぁ・・・あんまり、ピンっと来ないなぁ」
「そりゃ、あんたは当事者じゃないから、ピンっと来ないんじゃない?」
「う~ん。 なぁ結局のところ、結婚って何なんだろうな?」
「何それ? 結婚は結婚じゃない。ひつつ屋根の下、苦楽を共にするって言うか、何て言うか・・・」
「なぁ今更だけど、俺達って殆ど夫婦みたいじゃないか?」

改めて、そう言われると、恥ずかしくなってしまいます。
「何を馬鹿な事、言ってんのよ。モリヒデとなんか夫婦にならないわよ」
「おう、俺だってごめんだぜ・・・って、いつもなら言うところだけど、やっぱ幸せそうな小村先輩の顔見てると、ちょっと結婚って物も良いかなって思えて来るんだよな。」

・・・こんなに素直なモリヒデも珍しいですね(^_^;)
「何よ、今日はいやに素直じゃんモリヒデ 確かに、美咲さんの幸せそうな顔見ると、良いなあって思っちゃうわね。そう言えば日向さんと洋介さんは、結婚まだなのかね?」
「う~ん、どうなんだろ? 二人とも、神戸で新しい仕事始めたばっかりだし、まだまだなんじゃないか? そう言えば、小村先輩が言ってたけど、日向さん達ブログ始めたみたいだぞ。」
「へぇ~日向さんと洋介さんのブログ? ちょっと面白そうね、それ。 しかし、夫婦の事聞くなら、一番結婚歴の長い木下さん達に聞くのが一番なのかな?」
「う~ん、でもほら、あそこは新婚初日から、あの可愛い女の子が居る訳だろ?」
「あぁ美結ちゃんね、確かにそれを言い出すと、特殊は特殊よね。雄一おじさん達に聞くのは、危険だしね」
あっ、私達、何を真剣に悩んでいるのでしょう。

「何を真剣に話してるんだろうね、私達(^_^;)」
「ん? たっ確かにな しかも、周りの人間に聞いたって、何も解決しないだろうにな。結局、俺とヒグラシの意識次第なんだろうな」
「・・・そうだよね。正直、まだ早いかなって思う。ほら、朝ちゃん達なんか、まだ学生って歳だし。私も社会人1年目だしね。もう少し社会を経験してから、結婚したいわね」

「それって、相手は誰なんよ?」モリヒデが悪戯っぽく笑っています。
しまった、素に語り過ぎました(^_^;)
「ん~っ、きっとモリヒデ以外の誰か」そう言いながら、そっとモリヒデの右手の上に私の手を置いた。
「じゃあ、せいぜい嫌われない様に、頑張んなきゃな俺も」
そう言いながら、モリヒデは私の頭を引き寄せた



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「ちょっとぉモリヒデ、いつまで待たすつもり?」
あいつにしては珍しく、待ち合わせ時間に遅刻です。
まぁ待ち合わせって言っても、同じアパートなんですけどね。
今日は梅雨も中休みみたいで、気持ちいい青空が広がってます。 こんにちは、カナカナです。
―――――――――6月5日(日)―――――――――
「おう、悪い悪い。なかなかネクタイがビシッと決まんなくてさ」
「うわっ、何?そのネクタイの結び目。もう、子供じゃないんだから、ネクタイ位結べる様になりなさいよ」
「んな事言ったって、今までネクタイ絞める機会無かったじゃんか。仕事だって作業服で出勤だし」
「んもう、言い訳ばっかりなんだから。」私は、モリヒデの首にぶら下がっている不格好なネクタイを解き、結び直し始める。

あ~、こんな事なら「イメージ掴む為に、やっぱりネクタイで出掛けなきゃ」なんて言わなければよかった。
今日は、雲山の紳士服屋に買い物に出掛ける約束なんです。
先月の先輩の葬儀で、礼服の必要性を痛感したみたいです。
今月末には小村さんの結婚式が有るし、お盆には成人式だって有ります。・・・松舞は田舎なので、学生が帰省している夏休みに成人式が有るんですよ(^_^;)

「ほら、これでOKよ」
「おほっ、本当だ・・・んっ? 何だ健太、ニヤニヤして・・・何か用か?」
「いや・・・別にぃ」
「ハイハイあんた達、思春期の男の子が居るんだから、昼間から堂々と玄関先で、いちゃつかないでよね。」
「いや、お母さん。私は別にモリヒデと、いちゃついてる訳じゃなくて、こいつがネクタイ一つ結べないから、直してただけだかんね」
「そうですよ小母さん。なんでヒグラシ何かと、いちゃつかないといけないんですか!」
「あら?森山君は、うちの佳奈絵じゃ役不足だって言うの?」
「えっ?いや・・・あの~その~」見る見るモリヒデの顔が真っ赤になっていきます。
「ほらほら玄関で突っ立ってないで、さっさと行きなさい。ちゃんと安全運転で行くのよ、二人とも」お母さん、そう言いながらクスクス笑ってます。


階段を下り、駐車場に向かう。
車の前に立ち、考え事をしているモリヒデ。
その姿を何気なく見つめる。
モノトーンのワイシャツに、チノパン。
確かに、モリヒデが滅多にする事の無いファッションですね・・・微妙にFOGで髪も決めちゃってますし(笑)

振り返ったモリヒデに、不覚にもドキッとしてしまった。
だって、風になびくネクタイが、大人っぽくて男っぽくって(男なんですけどネ)
さっきのネクタイを絞めているシーンを思いだした。
あ~やって、毎朝モリヒデを送り出すんだろうか私?
ほっぺたがほてっているのが自分でも分かる位、赤くなってきました。

「んっ? どうしたヒグラシ?」
「べっ別に・・・ それより、どうしたのモリヒデ? 早く出掛けよ」
「いや、それが・・・車のキー忘れて来ちゃったわ」
そう言いながら階段を駆け上がるモリヒデ

・・・そうよね~ これがモリヒデの本当の姿だよね(=_=;)
でも、そんなモリヒデも大す・・・ううん、何でもない、何でもないです・・・何でもないですってぇ(^_^;)



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