松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

カテゴリ: 本田・楓編

毎日、雨、雨、雨・・・気分が滅入ってしましますよね。
仕方ないんですけどね、梅雨なんだから・・・
もちろん、今日も雨です・・・
こんにちは、健吾です。
―――――――――7月6日(日)―――――――――
車のハンドルに体を預け、忙しなく動くワイパーを見つめる。
・・・今まで、お袋の軽を借りて乗り回していましたが、今年のボーナスを頭金に新車を買いました。
「ローンなんか組んでどけすーかね!」って楓は怒ってますが、他人のする事にいちいち口をはさんで貰いたく無いですよね。
だいたい、車が来て一番喜んでいるのはアイツなんですから。
俺の車を何だと思って居るんでしょう!

不意に、窓ガラスをノックされる。

「ゴメン健吾待たせちょって。お母さんが序でに千華屋さん寄ってごせって。今、用意しちょうけん、もうちょっと待っちょって。」

・・・この親子いや、ヒデ兄を含めたこの一家は、俺の事を何と思ってるんだよ!

暫くして、おばさんが風呂敷包みを持って現れた。
「ゴメンね健吾君、私が松舞に下りるつもりだったんだけど、楓が序だからって言うもんだけん」
「あっ、いえ全然大丈夫ですよ、おばさん」

・・・やっぱり、楓の仕業か
悔しい事に、楓のおばさんの前では幼稚園の頃の俺の様に、良い子で居てしまうんだよな。

「じゃあこれ、ガソリンとお昼ご飯代、あんま遅にならんうちに帰えだよ、じゃあ気を付けて行って来うだわ。」
そう言いながら、おばさんは俺に茶封筒を渡してくれた
・・・そう言う事なら、話は別ですよおばさん、何時でも僕をお使い下さい♪

一度松舞に下りてから、雲山のリサイクルショップに着きました(千華屋さんで楓もお小遣い貰ったみたいですが・・・)
僕は、中古のゲームソフト、楓は古着やアクセが目当てです。

ゲームコーナーに向かう途中、ベビー服が目に留まりました。
・・・そう言えば、英兄の所11月予定だったなぁ

「何か有った、健吾?」
楓が後ろを振り返った。
「いや、佳奈絵さんの出産予定11月だったがなって思っちょった。因みに出産祝いって、何贈ればいいかや?」
「そうねぇ、ベビー服とかが無難じゃないの・・・あんたはセンス無いから私が一緒に選んであげえけんね。」
「お前のセンスもイマイチ怪しく無いか?」

そう言いながら、披露宴でのヒデ兄の醜態を思い出していた。
「ちょっと健吾、何ニヤニヤしちょうかね。」
「いや、披露宴でのヒデ兄のあわてぶりを、思い出しちょった」
「あぁ、あれは意外だったがぁ」
「楓は、知っちょたかや?」
「いんや、当日の控室で聞いたに。んで、緑川さんとお兄ちゃんには黙っちょて、驚かすかって事になったに。」
「そら、間違いなくおべるわな。」


堅苦しいスピーチも一段落して、各々楽しくお喋りをしている時の事だった。
突然、式場の照明がうす暗くなり、ヒデ兄にスポットライトが当たった。

「え~ご来場の皆様、今日の良き日にもう一つおめでたい出来事がございます。」
そう、颯太さんがアナウンスすると、来場者がザワザワ騒ぎ始めた。
続いて緑川さんが「え~新婦の佳奈絵さんですが、現在妊娠4か月で11月にはお母さんになられます。つまり、新郎英生君は11月にパパとなります」って、嬉しそうにアナウンスした。
一瞬場内が静まり返ったが、誰からともなく拍手が起こり程なくそれが歓声に変わった。

「えぇっ? ヒグラシマジ?」慌ててビールを溢しそうになりながら、ヒデ兄は佳奈絵さんの方に振り向いた。
はにかみながら小さく頷く佳奈絵さんが、年上とは言え妙に可愛らしかった。
「えっとえっと、役場に申請に行って、病院予約して・・・あっ、社長家族手当の申請お願いします」
「森山ぁ落ち着け、そんな事じゃあ立派な父親に為れないぞ」そう言う社長さんに場内には笑い声が溢れた。


あんな慌てたヒデ兄を見たのは、初めてだったなぁ。
父親になるって、いまいちピンっと来ないんだけど、嬉しいけど大変な事なんでしょうね。

ぼんやりと、俺が赤ん坊を抱き上げてる姿を想像してみた。
想像した風景には、少し心配そうな笑顔の楓が居た。


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「ちょっとぉ健吾、起きなさいよ」
「ん~、何だよ楓ぇ 今日は学校休みだろ。休みの日まで、勝手に俺の部屋入って来るなってばよぉ」
「何を寝ぼけてるのよ健吾 ほらもう5時時半だよ」
「ナニぃ5時半? ・・・いつもより1時間早いじゃないかよ」
「だからぁ、今日はオープンキャンパスに行くんでしょ」
あ~もう・・・今から、こんな調子じゃあ専門学校入学後が思いやられますね
あっ、おはようございます、楓です。
―――――――――11月5日(土)―――――――――
「ダァーッ、何でもっと早く起こさなかったんだよ楓」
必死に健吾がペダルを漕いでいます
「私はちゃんと起こしたわよぉ そんな事より、転ばんでよ健吾」そう言いながら、健吾の身体に腕を巻き直す。
「大体、楓が重たいんだよ」
「時間無いから、俺の自転車の後ろに乗れって言ったのは、あんたでしょ」
私を後ろに乗せ、健吾の自転車は坂道を爽快に降りていきます。
「朝晩、ずいぶん寒くなったわよね」そう言いながら、私は健吾の背中に身体をピッタリくっつけた。
少し汗ばんでますが、心地好い暖かさが私の身体に伝わってくる。
「おっ・・・おぅ。何たって11月だからな。一年なんてあっという間だな楓」
そう言われて、一年前の事を考えてみた。
確か、高文連に向けてブラバンの練習が大詰めだったと思う。
私達にしてみたら、部長副部長として初めてのステージだった。
タクトを振る健吾の動きがぎこちなくて、リズムが取れなかった事を思い出した。
「ん?どうかしたか楓?」
「ううん。一年って本当に早いね健吾。あっ!ネエ向こうに見えるライトって列車じゃない?」
「あっマジだ!楓、飛ばすぞ」
「うん」そう言いながら、私は健吾により一層しがみついた。


「ふぅ~・・・何とか間に合ったな楓」
「本当・・・列車のライトが見えた時には、絶対に間に合わないって思ったわよ。」
何とか列車にも間に合って、今専門学校の前に立っています。
「うわぁ、校舎キレイだね」
「そうだな。あっ、あそこが受付みたいだぞ。」
受付を済ませ、先ず向かった先は、学食です。
考えてみたら、健吾は朝ごはん食べてないんですよね(;^_^A
受付で貰ったパンフレットをパラパラめくりながら、パンを飲み込んだ健吾が話し掛けてきた
「楓は、何学科希望なんだ?」
「私?私は佳奈絵さんと同じビジネス科に行こうと思ってるの。健吾は、やっぱりプログラム科かクリエイティブ科?」
「そうだな、パソコンメインの学科に行きたいね、俺的には。」
「あんたには、それが向いてるわよね」
「しかし毎朝五時半起きは辛いなぁ」
「あんたが遅くまで起きてるからよ。この際、早寝早起きの生活スタイルに改めたら?」
「そりゃ無理! だって、そんな事したらファイナルファンタジー出来ないじゃんか」
「ったく、健吾と言いお兄ちゃんと言い、どこまで子供なのよぉ。佳奈絵さんがぼやきたくなる気持ちが解るわぁ」
「そう言うなって、女には解らない男のロマンスなんだよ。それに、プログラム科なんて入った日には、趣味と実益兼ねるんだから仕方ないだろ」
「まぁ確かにそれはそうなんだけど・・・確かに早起きは辛いわよね。私なんか、毎朝あんたを起こさなきゃいけないんだから、余計大変よ。あぁ、佳奈絵さんのアパートに住めればねぇ」

「どうせなら、雲山で一緒に住まないか楓」
「ちょっと真顔で何をふざけた事言ってるのよぉ健吾」
アイスティーのストローから口を離し顔を上げた。
「いや、半分マジなんだけどな」
その真剣な眼差しに、私の心は揺れ動いた。
確かに、健吾と一緒に生活するのには憧れていたけれど、まさかこんな近々にそんな話が持ち上がるだなんて考えても居ませんでした。
それに、いくら幼馴染みであっても、一緒に暮らしてみなきゃ分かんない事って有ると思うんですよね。
それがプラスの結果なら良いんですが、もしマイナスのベクトルだったとしたら・・・考えただけで胸が締め付けられてきます。


「な~んてな、驚いたか楓? 安心しろ、誰が好き好んでお前なんかと同棲するんだよ。それに、そんな話がヒデ兄の耳に入ってみろ、俺が半殺しどころか完全に息の根を止められてしまうだろうが。」
「・・・そうよね、お兄ちゃんなら殺した上に、耕運機で畑の中に肥料として混ぜ込んじゃう位しそうよね。って言うか、何で好き好んでなのよ。私だって健吾みたいなオタクとは一緒に暮らしたくないわよ。」
そうは言ったけれど、私は分かっています。
真剣に、困った顔をしている私に、気が付いた健吾が気を利かせて話をはぐらかせてくれた事。

「さぁ健吾、そろそろ説明会が始まる時間よ。」
「おう、行くかぁ楓」
そう言って立ち上がった健吾の左手を、私は握りしめた。
「いつか・・・一緒に暮らしたいね」静かに呟いた私の手をギュッと健吾が握りしめた。



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「よぉし、全員無事に帰って来れたな。んじゃあ、お疲れさん。明日から16日までは盆休みだからな、間違えて部活に来るなよな」
「そんなアホはお前だけだ、本田」
部員全員からドッと笑いが起こった。
今、無事に松舞駅に到着しました、こんばんわ健吾です。
―――――――――8月10日(水)―――――――――
今朝は、朝食前のメニューをこなし朝食を食ったら全体練習でした。
やっぱり全員で演奏するのは楽しいですね♪

そうそう、門脇と大村さんですが、無事にお互いの気持ちを確かめる事が出来たみたいです。
楓や小村、飯塚の下手な演技のお蔭で、一時はどうなる事かと思いましたが、僕等の思惑通りに事が運びました。
ついでに言うと、飯塚の話では、小村の奴は結局神田さんに告白出来ずに終わってしまったそうですwww


♪♪♪
それは、門脇と口喧嘩をした直後でした。
間が良いと言うか悪いと言うか、楓からメールが送られてきました。
[健吾ぉ。あっちゃんが、相当落ち込んでるよぉ。昨日の夜、門脇と進路の話で言い合いになったんだって。このままじゃ、後味悪いから何か作戦を計画しようよ]
・・・向こうは向こうで、昨夜の話になっていたみたいですね。
僕等は、ミーティングと称して楓と裏庭で落ち会った。

「大村も落ち込んでいたんか、門脇も相当落ち込んでたぞ。」
「そうなんだ・・・ねぇ健吾、やっぱりうちらで何とかしようよ」
「結局は本人達の問題だ、俺等で解決出来る問題じゃないだろ」
「確かにそれはそうなんだけど・・・。もし私が健吾を好きだって事知らなかったら、健吾は今頃ヤキモキしてんじゃないの?」
「あぁ多分そうだろな。その気持ちは痛い程わかるさ。でも、俺等じゃどうしようもないだろう。」
「そんな事無いって。ここは『愛の使者、楓様』の復活ね」
「・・・お前、愛の使者って言ったって、俺と沢田先輩の時、失敗しなかったっけ?」
「あれは、健吾が浮気心を出したのが、失敗の原因なんだからね。・・・まぁ、私的には大歓迎だったけど」
「・・・そうだったな。」僕と楓はクスクス笑った。

「あれ? 部長副部長、愛引きですか? やばいっすよ、こんな昼間っから」
振り返ると、小村と飯塚が立っていた。
「馬鹿、俺等はまだ何もしてないぞ。」
「ちょっと健吾、『まだ』ってどう言う意味よ。」
「そうっすよ、本田さん。何かするつもりだったんですか?」
「うるさい、お前ら・・・そうだ、飯塚に小村。お前らの演技力を買って、頼みが有るんだ」
「いや俺達、演技なんてした事無いっすから・・・」
「つべこべ言うな。そうだなぁ・・・どっちかが誰か女子に告白しろ」
「いや・・・突然告白しろって言われても、無理っすから部長」
「・・・小村、お前やれよ。お前、神田さんとお近づきになりたいって言ってたろ。」
「よし、じゃあ決定だ」
「ちょ、ちょっと待って下さい部長。いきなり言われても、心の準備って物が・・・そもそも、何で急にそんな話が出るんです?」
「それはだなぁ・・・」

個人のプライバシーを、ばらして良いものか悩んでしまった。
「あっ?ひょっとして門脇先輩じゃないっすか? 大村先輩も少し暗かったし」
「ちょっと飯塚君、中々勘が鋭いわね」
うわっ楓の奴、いきなりばらしてしまいやがった(-_-;)
「勘なんてモンじゃないですよ。誰がどう見たって、門脇先輩は大村先輩の事を過剰に意識しているし、大村先輩だって門脇先輩に一途でしょ。俺、入部した時から気が付いてましたよ。」
「あっ、それは俺も何となく気が付いてた。遂に、告白タイムが来たんですか?」
「いや・・・来たと言うか、来させると言うか・・・」
「あぁ・・・分かった。触発させる為に、小村に告発させようと・・・」
「ちょっと待て、俺がコクる事決定なんか?」

「そう言う訳だから、小村君、一肌脱いでよ。もちろん、小村君の方もバックアップするからさぁ」
「森山先輩、ノリノリっすねぇ。えぇぇマジっすかぁ」
「・・・まぁそう言う事だ小村。あんまりツベコベ言うと、部長命令にするぞ」
「うわっ、それってズルイっすよ。どの道、従わなきゃいけないんじゃないっすかぁ本田先輩。」
「じゃあ、早速シナリオを考えましょうか、先輩♪」
「飯塚まで、賛同してるし・・・マジ?考えられないんすけど」
・・・と、まぁ2人に(強制的に)協力して貰いました。
一応、「愛の使者、楓様」の功績って事で良いんでしょうかね。



大森駅で列車を下りて、楓と二人小さな街並の中を歩く。
「結果的に良かったんだよね、あっちゃんと門脇をくっ付けちゃって?」
「先々の事は、あいつらに決めさせれば良いさぁ。きっとその頃は、俺達も卒業や進学でドタバタしてるだろうし。」
「そうよね・・・他人事じゃ無くなってるわよね。はぁ・・・」
「・・・・・なぁ楓、俺、雲山の情報処理に通う事にするよ。」
「えっ?何? あれだけ、都会都会って騒いでいたくせに。」
「まぁな・・・。でも、やっぱり山陰で生きるわ。今回、大山に行ってみて何となくだけど、俺は田舎の方が性に合っているって分かった気がする。それに何より、離れたくない人達が一杯居るからな」
ふ~んって言いながら楓が、僕の腕に手を回した。
「離れたくない人って、誰なのよ?」ニヤニヤしながら、僕の顔を覗き込んだ。
「ん~。・・・・・・お前以外の誰か。」
「あ~やっぱりね・・・そんな気はしてたわぁ。ねぇ喉渇いたから、あの自販機でポカリ奢ってよね。」
「嘘嘘嘘・・・嘘です~」

しばらく無口のまま僕らは歩き続けた。
・・・
「なぁ楓、今夜も花火しないか? 今夜は、二人で線香花火を一杯やろっ」
「う~ん、どうしようかなぁ・・・」
「来年も再来年も・・・毎年毎年、線香花火に火を点そうな、楓」
「どんだけ線香花火が好きなんよ健吾は」クスッと笑う楓が、妙に印象的だった。



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サマーキャンプ二日目です。
今朝も、六時半のラジオ体操に始まって軽いランニングの後、朝食を取って午前中は体力作りでした。
・・・楓のSっぷりが怖いです(>_<)
こんばんは、健吾です(o^-')b
―――――――――8月9日(火)―――――――――
今夜は夕ごはんの後、花火大会が控えてます。
皆には黙ってますが門脇の奴、昨日は消灯時間過ぎた0時前に部屋に帰って来ました。
そんな時間まで、大村と何をしていたのでしょう?
夕食前の自由時間に、門脇に問い質してみました。

「おい門脇、黙っててやるから、昨日の夜の結果を教えろよ」
「結果も何も、大村と世間話してたさぁ」
「嘘つけぇ~世間話で、そんなに何時間も盛り上がるかよぉ。ぶっちゃけ、大村とエッチしてたろ~」
「馬鹿! エッチどころかキスもしてないわ」
「うわぁ~、嘘っぽ~い」
「マジだって。世間話してたんだけど、最後の方はお互いムキになって言い合ってたさ」
「おいおい。ムキになって言い合うって、一体何を話してたんだよ」
「ん~・・・ 大村は進学組なんだよな、俺は就職組。大村は、大阪か東京に出たいらしい。それ聞いた瞬間、俺、冷めてしまってさ」
「冷めるって、大村への思いが?」
「あぁ、そうだ。だから放って置いてくれよ。」

確かに僕も、楓と自分の夢に挟まれて悩んでいます。
だから門脇が言う事も分からなくは無いんですが、だからと言って人を好きになるって別の話じゃないんでしょうか?
そう考えたら、少し腹が立ってきた。
「門脇が、その程度の思いで大村の事を好きだって言ってるとは、思わなかった。それだったら、俺はこれ以上何も言わないぞ。」
ムッとした顔で門脇が反論してきた。
「馬鹿野郎、俺の思いが幸せ一杯のお前に分かるか? 俺だって、お前らみたいに青春してたいさ。でも恋愛すらした事無い奴が、いきなり遠距離恋愛なんて出来ると思うか? そんな自信、俺には無いんだよ」
門脇はうつむきながら、握りしめた拳を見つめていた。

「・・・悪い門脇、俺が言い過ぎた。でもな、まだ半年も有るんだぞ、半年の間にお互いを信じれる様になれば、良いんじゃないんかな? それに今コクっておかなければ、後々後悔するんじゃないか? 俺達3年はどの道9月で引退だ、そうなったら大村と接する機会すら減ってしまうんだぞ。」
「分かってるさ分かってるけど、今更もうどうしようも無いじゃないかよ。」
門脇の声は少し震えていた。
♪♪♪
間合いの悪い事に、僕の携帯が鳴った。
門脇は、「悪い、先シャワー浴びるわ」そう言いながらベッドルームを出て行った。
釈然としない気持ちのまま、俺は携帯を手に取った。


花火大会は8時から、始めました。
花火と言えば、ヒデ兄と佳奈絵さんのエピソードを思い出しますね。
僕等も、去年一緒に花火をした事で絆が一層深まった気がします。
花火って、不思議な魔力が有ると思いませんか?
そんな事はさておき、部長と副部長である僕等は、花火大会の前のあいさつ担当です。

「さて、苦しかったサマーキャンプも、明日で終わりです。」
「ちょっと、健・・・本田部長、何で『苦しかった』なのよ、『楽しかった』でしょ普通」

「だって、率直な意見だから・・・まぁ、とにかく御疲れ様でした。今夜は花火で盛り上がって、明日もう一日頑張りましょう。」
「さぁ部長のクソ真面目なあいさつはこれ位にして、取りあえずジュースで乾杯ねみんな。1年生~コップとジュース配ってね。」

「おしっ、じゃあサマーキャンプお疲れ様でした、乾杯~」

「じゃあ、さっそく花火始めるぞ。でかい打ち上げもあるからな、みんな楽しみにしとけよ。お~い門脇、そっちの花火セット取ってくれや。」
僕は、門脇に声をかける。
その横では、神田さんが大村さんに話しかけていた。
「大村先輩。先輩はどんな花火が好きですか?」
「ん~っとねカンちゃん、噴き出し花火とか綺麗だけど、やっぱり〆の線香花火かな。」
「良いですよね、〆の線香花火。」
僕はその話を聞きながらもう一度、僕らの去年の夏の事を思い出した。
楓も同じだったみたいで、お互い目を合わせニヤニヤと笑ってしまった。

気が付くと、神田さんが小村のTシャツの裾を引っ張ってる。
「ねぇ小村ぁ、私達にも何か花火を頂戴よ。」
「おうっ、じゃあこの手持ち花火やるわぁ。はい、大村先輩。こっちは神田の分」
「ちょっと、何で私はピストルの形のお子ちゃま花火なのよ。」
ほっぺたをプクッと膨らませた神田さんを見て、楓が仲裁に入った。
「まぁまぁ二人とも、喧嘩しないで。」
「だって森山先輩、これ、ヒドくないっすか?」
「まだ、沢山花火有るからね。ほら、あっちゃんも取りに行こ♪ 健吾ぉ、綺麗な花火頂戴よぉ。」
楓と大村は座り込んで手持ち花火を物色しています。
「おう楓今日は、いつも出来なかった打ち上げ花火を思う存分出来るぞ。」
「本田先輩!『いっつも』って、そんなに二人で花火してるんっすか? 熱いっすね、違和感無く名前で呼び合ってるし(笑)」
「馬鹿、飯塚。俺がしたいんじゃなくて、森山や森山の兄さんが、誘ってくるんだぞ。」
「そんな苦しい言い訳しなくたって、いいじゃんか本田」
「っるせぇなぁ、門脇もぉ。お前は、少し離れてさっさと打ち上げ花火の準備して来いよ。あっ楓、水入れたバケツ持って行ってやれよ。」
「あんたは相変わらず、人遣いが荒いわね。うわっ重いこれ、あっちゃん半分持ってよ。」
ブツブツ言いながら楓と大村さんがバケツを運び始めた。
「おい森山。お前達どんだけ打ち上げ花火を買い込んだんだよ。部費の殆どつぎ込んだんじゃないだろうな?」
「えっ、折角花火やるんだから、これ位は準備しておかないと盛り上がんないだろ。お~い、小村、飯塚。門脇手伝って、打ち上げ運んでやってくれや。」
「うぃっす、部長。」

「小村ぁ実はお前、神田さんの事好きなんだろう?」
打ち上げ花火を運びながら、飯塚が小村に話かけた。
「なんだよ飯塚、唐突に何聞くんだよ?」
「えっ? マジ、そうなん小村?」
「そうっすよ本田部長。小村の奴、いっつも神田さんの尻ばっかり追いかけてるんですから。」
「馬鹿、飯塚。俺がいつ神田の尻追いかけたんだよ。」
「この前なんか、神田さんが使ったトランペットのマウスピースが欲しいって、言ってましたからね。」
「ちょっとぉ、小村君。キモいから、それだけは止めておきなさいよ。」
「うわ~、森山先輩まで本気にしないで下さいよぉ」
「門脇ぃ、お前同じトランペットだろ。何とかしてやれよ」
「本田部長、何て事言うんですか、門脇先輩違いますからね、俺マウスピースなんか要らないですからね」
「そうだな小村、唇が触れたマウスピースより、直接その唇が欲しいよな。」
「そうだよ飯塚! やっぱり生の唇の方が・・・って、何て事言わすんだよお前は。」
「ちょっとぉあっちゃん聞いた? 今、小村君さりげなく好きだって事認めたわよね。」
「そうだね楓、確かに認めたわよね。」
クスクスと大村が笑った。
「あ~もう、大村先輩だけは僕の味方だと思っていたのにぃ」

「んで、正直な所どうなんだよ小村?」
「んもう部長もしつこいっすねぇ そうですよ神田さんって、可愛いし優しくて面白い子だから、興味有りますよ。でも、そんなハードルが高い相手、告るだけ無駄じゃないですか」
「あ~もう、だから男子ってダメだよね。私は、カンちゃんも小村君の事、まんざらじゃないと思うけどな。」
「えっ?そうっすかねぇ森山先輩?」
「まぁ、ダメ元で告ってみろよ小村。」
「そのダメ元って、なんだよ飯塚。お前、実は俺が振られるのを楽しみにしてないか?」
「おう、勿論。この夏一番の楽しい思い出になるじゃんか」
「うわぁ~お前って最悪な奴だなぁ。」
「そうか? ・・・でも、マジで告るんなら今夜しかないぞ。花火でムードも盛り上がってるし、これ以上のタイミングは無いんじゃないか?」
「そうだよなぁ、テンションが上がってる今なら、ノリでOKって事も有るよな。」
「ちょっと小村君、ノリでOKなんて、随分と弱気じゃない。大丈夫だって、内心は小村君もカンちゃんの気持ち気がついているんでしょ?」
「森山先輩もそう思います? でも、俺の勘違いだったら格好悪いし、神田さんが引いちゃうんじゃないかと思って。」
「そんなことないよねぇ、あっちゃん。カンちゃんは誰が見ても、小村君の事意識してるわよねぇ」
「そうよ小村君、女の子は待ってるもんなんだから、ほら花火を置いてカンちゃんの所に行ってきなさいよ。」
「う~、でもマジで自信無いですよ、俺」
「男らしくないぞ小村君。どうせ後悔するなら、YESかNOかはっきりした方がスッキリするでしょ。ほら早く行った行った。」
「あ~もう~。んじゃあ俺、玉砕して来ます。」
小村は、花火を置いて駆け出した。
「んじゃあ部長、俺は偵察行ってきます。」
飯塚も後を追う様に駆け出した。

「偵察って・・・ロマンの欠片も無いんだから、飯塚君は(^_^;) そう言えば飯塚君の話は出なかったけど、彼はどうなんよ?どの子が好きなの?」
楓が、バケツを置いて聞いてきた。
「んっ? あいつは、クラスに彼女が居るらしいぞ。」
「えっ?マジ? あのヲタクの飯塚君に?」
「・・・楓、お前さりげなくヒドイ事言ってないかぁ」
「だって飯塚君に彼女だよ、あの飯塚君に。ちょっと私、根掘り葉掘り聞いてくるから、あっちゃんはここで待っててね。」
今度は、楓が駆け出した。

「・・・ったくぅ、しょうのない奴等だなぁ。どれ、俺は向こうの様子見てくっから、お前ら2人ここで打ち上げの合図を待ってろよな。待ってる間、退屈だろうから、これやるよ」
そう言って、僕は隠しておいた線香花火の束を取り出した。
「良いかお前等2人は、この線香花火を終わらせるまで、戻ってこなくていいからな。分かったか?」
「何だよ本田、それって。」
「おう、松舞には『一緒に線香花火をすると、2人は結ばれる』って、伝説が有るらしいからな。頑張れよ」
そう言うと、俺も走り出した。
そうこれ以上2人の邪魔をしない様に・・・



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「ちょっと~健吾、起きなさいよぉ」
佳奈絵さんに借りた合鍵で、お兄ちゃんのアパートの玄関を開ける。
「うわっ、汗臭ぁ」ムンムンとした臭いが部屋中に漂っています。
おはようございます、楓です
―――――――――8月8日(月)―――――――――
今日から、2泊3日でブラバンのサマーキャンプなんです。
サマーキャンプって響きはお洒落なんですが、実情は体力作りとパート練習で2日間が終わっちゃうんですよね。

「ちょっと健吾、もう5時回っちょうよ。早こと着替えて歯磨くだわね、佳奈絵さんが朝ご飯作ってごいちょうけんね。」
「う~ん、後5分したら起きるけん。」
「ダメダメ。部長自ら遅刻してどげす~かね。あ~もう、だからお兄ちゃん、健吾に夜更かしさせんでよって、言っといたのにぃ」
「んぁ・・・ヒグラシ・・・あと、10分寝かせてよぉ。なっ、一生のお願いだからぁ」
・・・佳奈絵さんと勘違いしてますね、しかも普段は亭主関白な態度なクセに甘えた声なんか出しちゃって(笑)
お兄ちゃんの見てはいけない一面を、見てしまった気がします(^_^;)


歩いて駅に向かうつもりでしたが、結局は佳奈絵さんに車で駅まで送ってもらって、何とか集合時間に間に合いました。
「うぉっしっ、みんな遅刻せずに揃ったな」
なんて部長らしい事言ってますけど、一番危なかったのはあんただかんね健吾(笑)
これから、列車を乗り継いで大山のペンションに向かいます。
今年のサマーキャンプは、副部長の私が企画運営していますから、サマーキャンプ会場も毎度お馴染みの沢井市では無く、隣県鳥取県の大山にしてみました♪


「ちょっとぉ楓ぇ、私のポテチ半分以上食べたわねぇ」
「ゴメンゴメンあっちゃん。代わりに私のプリッツあげるから、許してぇ」
「あっ森山先輩、そのプリッツ夏季限定のレア物じゃないですかぁ。私にも一本下さいよぉ」
「うん良いよぉ。その代わり神田さんのクッキー1枚頂戴ね。」
部活の合宿なんて、遊びみたいな物ですよね。
先輩後輩なんて関係無く、女子は盛り上がってます。
「うぉ~い飯塚、お前ちゃんとDS持ってきたか? おっ?3Dに買い替えたん?」
「そうっすよ本田先輩。やっと買えたんっすよ」
「俺の物は俺の物。飯塚の物も俺の物だったよな。」
「何をジャ○アンみたいな事言ってんすか。それより、PSPとモンハン持って来ました?」
「おう、持って来たぞちゃんと。」
・・・話の内容が小学生並みですが、一応男子も盛り上がっているみたいですね(^_^;)


「じゃあ、男子は西側の棟の部屋番号1から6番ね。女子は、こっちの東棟よ。じゃあ健・・・本田、10時に玄関で集合ね。」
「おう、分かった。お~い男子、俺について来いよ。」

そして10時、玄関前に部員全員が集合しました。
「んじゃあ、先ずはマラソンね。男子5Km女子3Kmよ」
「マジかよ森山ぁ」
「そうよ、本田。ブラバンとは言え体力は大切だからね」
「三年は、もう引退なんだから必要無いだろ~」
「あんたは、受験生なんだしやっぱり体力必要でしょ。これ以上文句を言うと、距離増やすわよ」
「部長~副部長~、痴話喧嘩なら二人っきりの時にやって下さいよぉ」
小村君の一言で、皆がドッと笑った。

「ふ~ん小村君、あんたも距離増やして欲しいのかなぁ?。さぁ男子達、文句を言わずに走り始めなさいよ。」
「しゃあないなぁ、おっしお前ら行くぞ。最下位の奴は今夜の懇親会で一発芸披露だぞ。」
「え~っ、マジっすか部長~。」
男子達はブツブツ言いながらも走り始めた。
「じゃあ、女子も出発しようか」
私が走り出すとみんなが後に付いて走り始めました。


「暑~ぅ。さすがに真夏に5キロはしんどいぞ森山。」
「はいはい、文句言わないの。みんなもお疲れ~、アクエリ冷やしてあるからね。それ飲んでひと休憩したら、次は腕立てと腹筋よ。」
「え~っ」全員から悲鳴に近い声が上がったのは言うまでも無いです。

お昼はみんなで流しそうめんを楽しみ、午後からはペンションのオーナーが営んでおられる近くの牧場の一角を借りて、個人練習です。
3時には、顧問の清水先生がわざわざ車で湯梨浜町まで下りて、買って来て下さった大栄スカイを食べました。

「森山~、腹減った。夕ご飯まだかよぉ」
「何よ本田、今まだ4時半よ。あんたはスイカを人の倍は食べたでしょ、夕ご飯は6時半からなんだからね。それまで我慢しなさいよ。」
「マジかよ・・・んで、夕飯のメニューは何なんだ?」
「男子の為に、バーベキュー準備してもらってるから。」
隣であっちゃんがクスクス笑っています。
「ちょっとあんたら、今の会話って普通に夫婦の会話じゃないのぉ。ったく、見せつけちゃってぇ」
「ちょっと、なんで健吾と夫婦なのよ、あっちゃん。変な事言わないでよぉ」
「そうだぞ大村ぁ。楓と夫婦なんて気持ち悪いじゃないか。」
「はいはい二人とも。お互い名前を呼び捨てが板に付いているる時点で、もうアウトだからね。」
「うっさいなぁ、大村」健吾は、顔を真っ赤にしながらサックスパートの方に走っていった。


「良いわよねぇ楓は。青春真っ盛りって感じで・・・」
「あっちゃんだって、サマーキャンプの間に門脇と仲良くなりたいって言ってたじゃん、どう?少しは近付けた?」
「う~ん、少しだけね。流しそうめんの時、門脇君と一緒にオーナーの手伝いしたからね。」
「そっか、まぁ今夜はバーベキューだし、明日は花火大会やるから、せいぜい頑張ってね。」
毎年サマーキャンプで何組かカップルが出来るんですよね。
青木先輩と沢田先輩もそうだし、部活は違えどお兄ちゃんと佳奈絵さんだって、夏合宿の時に急接近してますからね。


「おい、飯塚ぁ。お前、マラソンで最下位だっただろ。何か一発芸やれよ。そうだ、AKB48のヘビーローテーションを振り付きで歌えよ。お~い誰かスカート代わりのバスタオル貸してやれよ」
「マジっすか本田部長。振り付けは勘弁っすよ。大体あれは、小村が間違ったコースを教えるからですよ。」
「そうか・・・小村が悪いんか。じゃあ連帯責任だ、二人でヘビロテな。」
男子はお酒飲んだ訳でもないのに、はっちゃけてますね(^_^;)
「飯塚君、はい、バスタオル♪ もちろんジャージは脱いで生足で踊ってね」
「やだぁカンちゃん~、それキモいから止めてよぉ」
「そう言いながらキムちゃん、何をデジカメ構えてるのよぉ」
・・・女子も男子と一緒になって騒いでます。
あれ?あっちゃんの姿が見えない?

「・・・ねぇ健吾、あっちゃん見なかった?」
みんなに気が付かれない様な小声で健吾に話かけた。
「ん? あぁ・・・ちょっとな。」
良く見ると、門脇の姿も見えません。
「あっ、ひょっとして門脇君とあっちゃん・・・」
健吾が口に指を当てて「シーッ」と呟いた。
・・・そっか、あっちゃんと門脇って、お互いを意識していたんですね。
その晩、あっちゃんが部屋に戻ってきたのは、0時近くなってからでした。
二人の間に何が有ったかは、聞かない様にしておきましょう(^_^;)


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