松舞ラブストーリー

山陰の仮想の町松舞町を舞台にした、様々な恋愛を見守ってやって下さいね

カテゴリ: 本田・楓編

[ヒデ兄、今夜泊らせて下さいよ。明日からブラスバンドのサマーキャンプで、朝6時に松舞高校集合なんです。]
そうヒデ兄にメールを打った。
「おしっ、これでOK」携帯をパタンと閉じて、飲みかけのコーラを一気に飲み干す。
おはようございます、健吾です。
―――――――――8月7日(日)―――――――――
「お~い健吾、起きちょお~かね?」
うちの庭から楓の叫ぶ声が聞こえた。
「あほっ、今何時だと思っちょうや、普通に起きちょうわや。上がって来いや」
窓から身を乗り出し、楓に声をかける。

「おじゃましま~す。おばさ~ん・・・おばさ~ん・・・あれっ?」
「あぁ、お袋なら今日は、雲山に出かけちょうけん、同窓会だと。」
「そげか・・・じゃあこれ、勝手に冷蔵庫に入れちょくね。今朝、お父さんが釣ってきたヤマメ」
「おっ、サンキュ。なぁ、お前サマーキャンプの準備終わったかや?」
「うん、後は着替えや歯磨き詰めぇくらい。健吾は?」
「いや、面倒臭いけんまだ何もしちょらんに。」
「相変わらずね。しゃん事だけん去年みたいにパンツ忘れぇわね。」
「トランクスって言えよトランクスって。パンツってお前・・・」素に女の子にそう言われると意外に照れるものですね。


「あっ、そげそげ。健吾聞いた? お盆の間だけでも、道の駅でバイトしてくれって、細木のおばさんが言っちょうらしいよ。」
「今年もかや。け~、部活や受験勉強で忙しいって、あぁほど言っちょうになぁ」
「う~ん、でも健吾が受験勉強しちょう所見た事ないしなぁ・・・。どげせゲームしかしちょらんでしょ? ちゃんと夏休みの課題進んじょうかね?」
「ゲームが佳境に入って来て面白いけんな、今。まぁ課題なんて最後の一日でチョチョチョっとやっちまえば、ええわや。」
「あいけ~去年もそげ言っちょって、最後には私に泣き付いたがね? ええ加減、成長すぅだわね。そぉ~に、受験す~のは私じゃないけんね」

「受験かぁ・・・ええよなぁ楓は、進路もう決めちょうけん。」
「呆れた。あんたこの時期になってまだ進路迷っちょうかね?」
「う~ん・・・正直言うとそげだな。親は島大進学しろって言っちょうけど、ヒデ兄を見ちょうと就職も悪うないかなって思ってるし、お前や佳奈絵さんみたいに情報処理の専門学校行って、手に職を付けときたいって気もしちょう。」
「うちの専門学校なら、大学落ちてからでも間に合うけん、就職か進学かどっちにするかだよね。」

「そげだよなぁ、この不景気で求人があんま来ちょらんって、進路の先生言っちょったし、かと言って島大受かる自信も無いけんなぁ。受かったとして4年後にはどの道就職先を探さなきゃいけんだろ、何か寄り道しちょうだけって気がすうに。」
「う~ん・・・そげ言われると悩んじゃうわよね。・・・そうだ、昨日芦川先輩達が帰省したんよね、話聞いてみぃだわね?」

「緑川さんにも会える?」
「そっちかよ健吾!!」
「おう、悪いか?」
「私と言う可愛い彼女がお~くせに、他の女に興味を示すなんて!」
「可愛いねぇ・・・」
「何だね、文句有ぁかね?」
「いや・・・その右手をグーにしちょうのが、妙に気になぁが・・・」
「じゃあ、さっきの発言撤回すうだわね」
「はい・・・そげします、撤回します。楓は可愛い彼女です。楓以外の女性には興味を示しません。・・・これで良いか?」
「妙に棒読み~。そうよ、最初からそげ言えば良いのよ。とりあえず、朝葉さんにメールしてみるけんね。あんたは、サマーキャンプの準備しちょうだわね。」


僕は渋々、押入れからエナメルを取り出し、準備を始めた。
サマーキャンプの準備って言ったって、着替えと洗面用具、筆記用具ぐらいなんですよね・・・あっ、DSとかPSPとか遊び道具を忘れちゃいけませんよね(^_^;)

「どげだ?進んじょうかね?」
「緑川さん、何だって?」
「午前中は店番だけど、お昼からは空いてるってさ。芦川先輩も、来るんだって♪」
「何だや楓だって、颯太さん来うって分かったら、やけに嬉しそうじゃんか」
「ふふ~んだ。どげした?嫉妬しちょうかね?」
「アホか、颯太さんは、お前みたいなガキはNO眼中に決まっちょうがや」
「え~っ、そげに幼稚園の時、将来颯太さんのお嫁さんになあって、約束しちょう仲だけんね、芦川先輩とは。」
「うわっ、マジかよ楓」
うっ、正直ちょっぴり動揺してしまいました。


「さぁ、そうと決まったらさっさとサマーキャンプの準備して松舞に下りよう健吾。」
「おう、後は着替え入れたら終わぁけんな」
「パンツどこよ、入れといてあげぇ~けん。」
「いや、だけんトランクスって言うだわや楓ぇ(^_^;)」

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(小夜曲)sérénade編【完結】
楓・青木先輩編【完結】
本田・沢田編【完結】
2009年収穫祭編【完結】


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本格的な夏の到来ですね♪
今日はヒデ兄達と松ケ浜に海水浴に来ています♪
いや~夏の砂浜は解放的ですね、こんにちは健吾です
―――――――――7月16日(土)―――――――――
「ちょっと健吾、何こっち見てんのよ・・・あっ、お兄ちゃんまで。ったくう、うちの男子はぁ本当にスケベなんだからぁ。ねぇ、そう思いません佳奈絵さん?」
あっ、やばい・・・水着に着替えてきた、楓と佳奈絵さんがこっちを睨んでます。

「アホかお前ら。お前らのペタンコな胸見たって、何も嬉しくないわ。俺らが見てんのは、波打ち際のおね~ちゃん達だって。なぁ健吾」
うわっ、そんな本当の事言わなくってもヒデ兄(^_^;)
「ふ~ん、モリヒデに健吾君はあっちの女子の方が、興味有るんだって楓ちゃん・・・」
ほら~、佳奈絵さんが睨んでますよ、ヒデ兄・・・(>_<)
「へぇ~健吾もそうなんだ。別に良いわよ、お昼ごはんおごってもらうから。た~っぷりと、ナイスバディを堪能してても。」
「いや俺はヒデ兄と違って、ちゃんと楓の事、見てたんだぞ」
「どっちにしても、スケベな事には変わり無いじゃん健吾」
うっ、どっちに転んでも立場が悪いですね(^_^;)
とりあえず、海へと退避します・・・



ひと泳ぎして、ちょっと休憩中っす
しかし暑いっすね、ビーチパラソルを突き抜けて太陽が、僕らを焦がしています。
「こんなに梅雨明けが早いのは珍しいですよね、佳奈絵さん」
「そうねぇ例年なら、梅雨明け宣言の後に大雨が降るのにね健吾君」
「やっぱ、異常気象なんかね? 本当なら今年以外が異常気象って気もするがな。健吾、もう一本ビール取ってくれや」
「ちょっと、モリヒデ飲み過ぎだよ。」
「良いじゃんか、帰りの運転はヒグラシなんだし」
「そりゃそうだけど、あんた知ってる?酔った状態での海水浴が一番危険なんだからね」
「あっ、俺も聞いた事ありますよ、それ。ほい、ヒデ兄ラスト1本」
「そう言いながらもビールを渡す?健吾!」
楓が、ケラケラと笑ってます。

今日の楓は、ピンクのビキニです。
明らかに胸はパッドで誇張されてますが、やっぱり男としてはドキッとしちゃいますね。
「ねぇ健吾、オイル背中に塗ってくれる?」そう言いながら、楓がすり寄ってくる。
いくら幼馴染みとはいえ、こんな間近で素肌を見せられた日には、興奮しない訳がありませんよね。
このシチュエーションなら、ちょっと位胸に触れても大丈夫かな? 背中が終わったら、次は足とかもやってやんなきゃいけないよな。太ももや内腿とか、触っちゃえるやん♪
等と、イケナイ妄想が暴走しています・・・妄想暴走ってなんか、韻を踏んでますね(笑)

「健吾君、変な所触っちゃだめだよ」
佳奈絵さんの一言に、見透かされているようでドキッとした。
「健吾、俺の妹に手出ししたらただじゃおかないぞ。せめて100円位は貰わないとな」ヒデ兄が追い打ちを駆けてます。
「ちょっと健吾、止めてよね・・・って言うか、私の価値って100円なんお兄ちゃん?」
「おう、税込みでな」
「うわ~、ダ○ソーより安いんだ私」
「じゃあ、私はいくらなのモリヒデ?」
「ヒグラシなら、熨斗付けて差し上げるかな」
「あっ、ひど~いお兄ちゃん。ちょっと健吾、あんた受け取っちゃダメだかんね・・・健吾?・・・どうしたの、お腹でも痛いの?」

みんながこっちを注目しています。
わっ、見るなよな。
こっちは、股間の暴走を抑えるのに必死なんだから~(^_^;)





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「お~い、楓ぇ はやこと苗運んでごせやぁ」
「んもう~、お兄ちゃん人使いが荒いよ~」
「ちょっとぉ、そこの男子二人! コーラばっか飲んでないで、少しは苗を運ぶの手伝いなさいよぉ・・・か弱い女の子達が、汗水たらして運んでんだからさぁ」
「そげに俺と健吾は、この後苗を植えないけんけん、力を温存しとかないけんわや。なぁ健吾」
「いや、ヒデ兄は田植え機運転するだけでしょ、畦際は俺が手植えするんだからさ。」

今年もゴールデンウィーク恒例の、大田植え大会の季節がやって来ました。
こんにちは、楓です。
―――――――――5月1日(日)―――――――――
今年は震災の影響(遅くなりましたが、震災で亡くなられた方の御冥福をお祈りいたします。)で、ゴールデンウィークの客足は多くないだろうって話になって、道の駅ショップのアルバイトはしなくてよくなりました。
って言っても、代わりに田植えの手伝いをしなきゃいけないんですよね・・・昨日は健吾の家の田植えを手伝って、今日はうちの田んぼの田植えです。
どの道働かなきゃいけないんなら、アルバイトしていた方がお財布の中身が増えて良いんですけどね。

「OKモリヒデ、苗運び終わったわよ。あ~疲れたぁ・・・ねぇ楓ちゃん、今度は私達が休憩しようか」
「そうですね、佳奈絵さん♪ じゃあ健吾にお兄ちゃん、後は頼んだね」

お疲れ楓、そう言いながら健吾が飲みかけのコーラを私に手渡した。
「ありがとう健吾、頑張ってね」
・・・どうせなら、飲みかけじゃなくて未開封のコーラを手渡して貰いたいんですけどね(笑)

ちょっぴり温くなったコーラを一気に飲み干す。
「あ~、五臓六腑に染み渡るわぁ・・・」
今のセリフ親父臭いって、佳奈絵さんが笑ってます。
うっ、お父さんの口癖がうつってしまったんでしょうか・・・

少し高くなった道路の際に佳奈絵さんと腰を下ろす。
「あ~、この辺は気持ちいい風吹いてるわね、楓ちゃん」
「そうですね。今日も結構暑いですね、この間まで寒くて仕方なかったんですけど。」
「そうよねぇ。うちの事務所、たまに冷房入れてるよ、もう。」
「早っ。そう言えば仕事の方、少しは慣れました?」
「う~んボチボチかな。結構お局さんがキツイのよね。楓ちゃんの方はどうなの? 進路決まった?」

うっ・・・今、触れてもらいたくない話題です。
正直、進学したい気持ちが強いんですが、お兄ちゃんや佳奈絵さんを見ていると、就職も悪くないかなって気がします。
「まだ、悩んでいるんですよ佳奈絵さん。」
「そっかぁ・・・健吾君の方はどうなのよ?」
「あいつは島大狙いみたいです。それなら、生活費の心配いらないからって。」
「じゃあ、松舞から通うんだ、結構大変だよ・・・大学と言えば、この前青木君から近況報告のメールが来たわよ。」
「あっ、どうですって?」
「うん、大学にも慣れて、ゴールデンウィークからアルバイトも始めるって。沢田さんも、元気だってさ」

青木先輩も沢田先輩も、第一志望だった神戸大学に合格し、春から関西に住んでおられます。
恋人同士が同じ進路って羨ましいですよね。
「そっか二人とも元気なんですね。でも良いですよね、恋人同士同じ大学って。」
「確かにね、あの二人結構お似合いだったもんね。私は、もしモリヒデと同じ大学だったら考えるわよ、きっと。」
「あ・・・確かに分かります、それ」
「なんてね。きっとモリヒデと一緒の大学通っていたとしても、楽しく過ごしていたと思うわよ。」
「無理しなくて良いですよ、佳奈絵さん(笑)」

「え~無理なんかしてないって楓ちゃん。そりゃ確かに頭に来る事も多いけど、今の生活を見る限り、きっとちゃんとやっていける気がするもん」
ちょっと真剣な顔で話す佳奈絵さんが、すごく大人に見えてしまった。
私も健吾との事、そう言う風に言える時が来るのかな?
ちらっと健吾の方に目をやる。
JAのタオルを頭に巻いて、黙々と稲を植えている。
その姿が、幼い頃見たお父さんの姿にそっくりで、思わず遠い記憶が蘇ってくる。

大学在学中にお祖父ちゃんが亡くなったって事で、中退して家業の農業を継いだって、いつか酔っぱらって話していた。
本当は、東京で出版関係の仕事に就きたかったらしい。
こっちに戻ってきて、農業を始めようにもさっぱり訳が分からず、結構苦労したそうです。
見かねた総代さんが、実の娘を手伝いに行かせて・・・それが私のお母さん。
プロポーズしたのが、農作業中って言うからどこかの歌の歌詞みたいですよね。
でもお母さんは、色々文句を言いながらもお父さんを心から頼りにしているのが、良く分かる。
もし、この先健吾と結婚なんて事になったとして、我が家みたいな家庭を築ければって言うのが、私の希望でしょうか。



「さて・・・そろそろ、お昼ごはんの準備しに帰ろうか、楓ちゃん」佳奈絵さんが、ジャージに付いた草を払いなが立ち上がった。
「そうですね。ねぇ健吾、私達お昼ご飯の準備に帰るからねぇ」
黙々と稲を植えていた健吾が、汗を手で拭いながら手を上げる。
「ちょっと健吾。そんな手で顔拭いたら・・・」
「あ~ぁ健吾君、泥んこ遊びしてる子供みたいな顔だよ」佳奈絵さんが指をさして笑っています。

「もう健吾ったら」
そう言いながら、タオルを手に畦を駆けて行く。
「ほら健吾、そんな泥だらけの手で顔拭ったら、その汚い顔が余計汚れるでしょ」
「汚くて悪かったな、ほら貸せよタオル」
「ダメだって、あんたの顔拭く前にタオルが泥だらけになっちゃうでしょ。ほら、顔出しなさい!」
健吾がシブシブ顔を前に突き出した。
「じっと、しちょうだよ」
そう言いながら、健吾のほっぺやおでこを丁寧に拭いた。



「あんら、け~。どこの新婚さんかと思ったら、健吾君と楓ちゃんかね。」
道路の方から声がしたので振り返ると、そこには荷台に野菜や切花を沢山積んだ細木さんちの軽トラが止まっていた。
「細木のおばさん、やめてごすだわね、新婚さんだなんて」
そう言いながら健吾は、飛ぶように離れた。
「えわねえわね、今更隠さんでも。あんたらが仲が得ぇのは、みんな知っちょうけん。」

・・・そうか新婚さんかぁ。
こんな感じだったら、健吾ともやっていけるかも。
爽やかな五月の風が頬をひとつ撫で、草いきれが、どこか懐かしく感じられた。



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「鶏肉買った。牛肉買った。ブロッコリーと、ロールケーキも買った。生クリームにドレッシングもOK‥‥‥あっ、粒コショウも買っておかなくっちゃ‥‥ってサンモールに、そんな材料置いてあったかなぁ?」
う~っ、ちょっと買い過ぎたかも‥‥こんな事になると分かってたら、昨日お母さんに車で連れて来てもらったのに。
大きなビニール袋を二つも抱え、列車に乗り込む女子高生なんて、他にはいないですよね普通(^_^;)
「暑ぅ~」
鶏肉や牛肉の詰まったビニール袋に、頭を埋めながら電車に揺られる‥‥‥あ~っ、ひんやりして気持ちが良いです♪
こんにちわ、楓です。
―――――――――12月24日(金)―――――――――
今日は、2学期の終業式でした。
終業のチャイムと同時に教室を駆け出し、サンモールに向かいました。
今年最後のブラバンも、今日ばっかりはフケちゃいます。
何たって、私はこれからクリスマスパーティーの料理作りで、大変なんですから。

‥‥‥事の発端は、今朝の通学列車の中で健吾が言った、何気ないひと言でした。
「なぁ楓、ヒデ兄は佳奈絵さんの手料理で、クリスマスパーティーなんだろ? いいなぁ~佳奈絵さんの手料理‥‥‥旨いんだろうなぁ~」
「‥‥‥ちょっとぉ、手料理手料理ってうるさいわねぇ。私だって、それ位作れるわよぉ。その為に毎朝、早起きしてお弁当作ってるんだから」‥‥‥冷凍食品が多いけどね。
正直言うと、健吾がうらやましがる様な手料理を作る、佳奈絵さんに嫉妬していたんですけどね。
もちろん佳奈絵さんの事が嫌いな訳じゃないんですよ、佳奈絵さんは明るくて優しいし料理も上手で、正直言ってお兄ちゃんの彼女にしておくのはもったいない、私が彼女にしたい位です‥‥‥そう言う趣味は有りませんが (^_^;)ゞ
私もそう言う女性になりたい、健吾が自慢したくなる様な女の子になりたい。
そんな気持ちを、健吾が逆なでしてしまったんですよね。
だから今回は佳奈絵さんの手を借りず、一人でクリスマス料理を作ります‥‥‥作ると言うより、チャレンジって言うんでしょうよね、この場合。
とりあえず、料理が得意な日向さんにメールして、色々とメニューや作り方を教わりました。
絶対に健吾が驚く様な料理を作るんだから!

‥‥‥「おっ、すげぇじゃん。これ全部楓が作ったんか?」
健吾が嬉しそうにテーブルの上を見渡す。私がその横で、自慢げに料理の説明をする。
コーラで乾杯した後、健吾は思いっきりローストチキンにかぶりつく。
「おっ、旨い‥‥‥こっちのローストビーフもつまんでいいか、楓?」
「うん、ローストビーフはこっちの特製ソース付けてね」
私の返事を聞くか聞かないかのうちに、健吾はローストビーフをムシャムシャと食べ始める。
「健吾、ちゃんと噛んで食べなさいよ。あ~っこらこらぁ、お肉ばっかりじゃなくて野菜もちゃんと食べなきゃあ!」
「お~このサラダ、緑に赤に白でまさしくクリスマスって感じだな。」

夕ご飯の後、TVを見てひと休憩したら今度はデザートです。
「お~っ、すげぇ。これも手作り? 店で買って来たんじゃないだろな?」
「正真証明、私の手作りだって。ロールケーキにデコレーションしただけだから簡単なんだよ。来年は一緒に作ろうね健吾」
「おぅ、任せとけ。じゃあロウソク点して電灯消すぞ」

ロウソクの明かりに照らされた健吾を見つめる。
健吾も私を見つめてる
そっと目をつむると健吾が優しく唇を‥‥‥
おっとイケナイ方向に暴走しちゃうところでした((+_+))


気分転換に、日向さんが仕事の合間に送ってくれたレシピメールを、読み直してみる‥‥‥何事もイメージトレーニングが大事ですからね♪
「ローストチキンは、鶏もも肉をたれに漬けてから焼き上げる‥‥鶏もも肉‥‥鶏もも肉‥‥?!」
買い物袋の中をもう一度ガサゴソとチェックする。
「‥‥‥!! あっ、やっぱり私、値段が安いからって鶏むね肉買ってる(>_<)

まぁ同じ鶏肉だから、大きな影響は無いと思いますが‥‥
「サラダは、ブロッコリーと赤いパプリカを‥‥‥」
パプリカが売り切れだったんですよね、だからパプリカは抜きで作ります。
う~っ、だんだんちゃんと作れるか不安になって来ました。
でも、健吾には今夜二人でクリスマスパーティーやるって、宣言しちゃいましたから、今更ドタキャンは出来ないし。


家に帰ってみると、両親の置き手紙が玄関に有りました。
「婦人会が道の駅で販売する、お正月飾りの製作に出かけてくるから、夕ご飯は自分で作ってね。その後、忘年会も有るから帰りは遅くなります。
追伸 本田のおばさんが『健吾君の夕ご飯もお願いします』だそうです。任せたわよ

‥‥‥って、手伝ってもらう事が出来ないじゃん、ちょっぴり助け船を期待していたのに。

「仕方ないな‥‥‥さてと何から作ろうかなぁ。やっぱり一番簡単なサラダからかなぁ‥‥‥それとも手のかかるローストチキンかなぁ?」
メニューが多すぎて、作る前から混乱しちゃってます。
「‥‥‥そうよ、ローストチキンは漬け込まなくっちゃあいけないんだから、先ずはローストチキンよね」
携帯を開きメールを読み直す。
「え~っと、ローストチキンのたれは、しょうゆが大さじ3に、お酒が大さじ2‥‥‥そう言えばお父さんのお酒残っていたかなぁ?」
ゴソゴソと収納棚をチェックしてみる。
‥‥‥有った有りました。
特選純米大吟醸って書いて有るから、いいお酒なのかも知れませんが‥‥‥まぁ可愛い娘の窮地を救うって事で、許してくれるでしょう。

「んで30分、寝かすのね‥‥‥じゃあその間に、ケーキを作って冷蔵庫にしまっておこうかな」
ちらっと時計を見るともう2時半です、そろそろペースを上げなくっちゃあ間に合わなくなっちゃいますね。

クリスマスケーキは、簡単に出来る、ロールケーキをベースにしたブッシュ・ド・ノエルを、教えてもらって正解でしたね。
「ロールケーキに生クリームを塗って行けば良いんだよね。え~っと、生クリームに砂糖、ココアパウダーっと」
カシャカシャと軽快に生クリームを泡立てていく‥‥‥これが結構な重労働なんですよね、来年は健吾にマジで手伝わせようかなあ。
ココア色の生クリームをロールケーキに丁寧に塗って行く。
「‥‥‥フォークで年輪と幹の雰囲気を作るのね」
携帯をにらめっこしながらの作業だからナカナカはかどりません(・_・;)
「続いて白い生クリームで積もった雪の感じを作る‥‥‥あれ?絞り器のノズルって袋の中に入れるんだっけ? 外に付けるんだっけ? まぁ良いかぁ、そこで悩んでいる時間は無いし、適当にやっちゃぇ」
袋に生クリームを入れてノズルを外側に取り付ける。
‥‥‥落ち着いて考えれば簡単な事なんですよね。
ブヂュ~
勢い良く絞った袋から、大量の生クリームと共にノズルが噴き出した。
「ぎゃぁあ」
雪と言うよりは、白いペンキをぶちまけたみたいになっちゃいました。
今更、作り直そうにも材料が有りませんし、まだチキンと牛肉を焼いて特製サラダも作らなきゃいけません。
まぁ、これはこれで良しとしましょう(^_^;)ゞ

時計はもう4時前です。
健吾が来るのは6時だから、あと2時間しか有りません。
「じゃあ、次はローストチキンね。え~っとオーブンを200度にセットして2時間焼く‥‥‥2時間って、ローストビーフを焼く時間無いじゃん。しっかりメールを読んでおけば良かった。仕方ない薄い肉だし、フライパンでひっくり返しながら焼けば何とかなるわよね、きっと」
フライパンを強火で熱し、チキンを放り込む。

「あっ、ケーキを冷蔵庫に入れておかなくっちゃ」
テーブルの上に置きっ放しだったケーキを、まな板からそっと外し紙皿の上にゆっくりと乗せる。
ここで失敗したら、今までの苦労が水の泡ですからね。
「OK OK んで、これを冷蔵庫にっと‥‥‥冷蔵庫に空きスペースが有ったかな?」
そう思い振り返った瞬間、手が紙皿に当たってしまい、勢いでケーキがひっくり返る。
「えっ!?」一瞬何が起きたのか理解できませんでした。
「あ~っ嘘~」急いでケーキを拾い上げる。
折角丁寧に塗った生クリームが、床にべっとりと付いています。
キッチンペーパーで、床に付いた生クリームを拭きながら、思わずため息をついてしまいました。

「何で私って、いつもドジをしちゃうんだろう‥‥‥ん?」
香ばしいっと言うより、ちょっぴり焦げた香りが漂ってきました。
「あっ!」ケーキ落下事件ですっかり頭から飛んで行ってましたけど、ローストチキン焼いている最中でした
急いでコンロからフライパンを外す。
お肉の方は、ちょっぴり焦げていますが何とか大丈夫みたいです。
お肉をひっくり返しもう一度コンロにフライパンをかける。

サラダ用のブロッコリーを切り分けていたら、どんどん悲しくなってきました。
きっと佳奈絵さんなら、卒無く料理をこなすんでしょうね。
私なんか、ケーキはひっくり返すわ、チキンは焦げちゃうわで、まともな料理が一つも出来ていません。
健吾が自慢したくなる様な彼女なんて、私には無理なのかも知れません。

「あっ、チキンが、また焦げちゃう」
危なかったです、二度も焦がしちゃうところでした。
「熱っ」焦ってフライパンの縁に指が触れてしまいました。
つくづく自分の手際の悪さを感じます。
「あ~良かった焦げてない♪ ちょうど良い焼き色だ。」どうやら、やっとで一つまともな料理が出来上がったみたいです。
焼き上がったローストチキンをまな板に乗せてみる。
漬け汁が多かったのか、ベチャベチャになってます。
ひと口大にスライスして味見をしてみると、回りはベチャっとしているのに、中のお肉は水分が飛んじゃってパサパサです。


「何これ?美味しくない‥‥‥」
思わず涙がこぼれてきた。
頑張ってきた事が無駄になってしまい悔しいのと、もう時間が残っていない焦り、何よりこんな料理を見て健吾にがっかりする顔が怖くて、ポロポロと涙が止まりません。




「楓ちゃん居る?」
勝手口から佳奈絵さんが顔を覗かせました。
「あれっ、楓ちゃんどうしたの?大丈夫?どこか具合が悪いの?」
「ごめんなさい、大丈夫です。それより、どうしたんですか佳奈絵さん?」
「うん、日向さんに楓ちゃん宛のプレゼントを預かって来たの。どうしても、今日の夕方までに渡してくれって言われるから、おばあちゃんの車借りて上がって来ちゃった。本当に大丈夫?」
‥‥‥日向さん、私の事を心配してくれていたんですね
また涙が流れてきた。
「どうしたのよぉ楓ちゃん」佳奈絵さんが心配そうに覗き込んで来る。
私は、事の次第を全て佳奈絵さんに話ました。
「なるほどね。‥‥‥よし、私がアドバイスするから、今から頑張ってクリスマス料理作ろう楓ちゃん。」
「でも、時間も無いしチキンやケーキはこんな状態ですよ。」
「後1時間半でしょ、メニューを少し変更して電子レンジを活用すれば大丈夫だって。ほら‥‥‥先ずは冷めても大丈夫なローストビーフからよ。フライパン熱しておくから、お肉にニンニク塗って塩コショウ振っておいて。」
言われるがままに、おろしニンニクを牛肉の表面に擦り込み、塩とコショウを振る。
「‥‥‥はい、下ごしらえ終わりました佳奈絵さん」
「OK じゃあ、お肉をフライパンに入れて、全体にまんべんなく焦げ目を付けて。中まで火を通さなくて良いからね、肉汁が逃げない様にシールするのが目的だから。」
確かにそれなら短時間で済みますが、どうやってお肉の中に火を通すんでしょう???
「表面焼けた? じゃあ、お皿に入れてラップをかけて、電子レンジに入れて。時間はそうねぇ‥‥‥5分位で様子見ようか」
電子レンジかぁ。考えてもいなかったアイディアですね。
「これなら簡単でしょ。この方法はね、お母さんに教わったの。実は私も、高校入るまで料理苦手だったんだよね。松舞に来て、お母さんが働く様になってから、色々と覚えたのよ。‥‥‥さてっと、このケーキはどうしようかなぁ~‥‥‥そうだ、朝ちゃんと昔バレンタイン用に作った、トルテにしちゃおうか。楓ちゃん、表面の生クリームを一度剥がして、別のお皿に移しちゃって」
どうするんでしょう、もう一度塗り直そうにも生クリームの量が少ないんですけど。‥‥‥それにトルテなんて難しそうで、絶対に間に合いそうもありません。
「生クリーム少ないから、牛乳とバニラエッセンスで何とかしなくっちゃね」
佳奈絵さんは余裕で鼻歌なんか歌っちゃってます。
「このケーキは、『安い材料で済むし、火を使わないから簡単だよ』って、高校の時に日向さんに教わったんだ。日向さんや朝ちゃんには、料理に関しても随分助けてもらったんよ。・・・・・実はね、今日は日向さんに楓ちゃんの様子を見て来てって頼まれたんだ。日向さんは、私の失敗をイヤって言うほど見て、知ってるからね(笑)

ううう、日向さんや佳奈絵さんったら、本当に優しいんだから。
「佳奈絵さん、生クリーム取り除きましたけど・・・次は何をすれば良いんですか?」
「そうしたら、ロールケーキを粉々に潰しちゃって♪ そうそう、ストレス発散のつもりで良いから(笑)  ところで、小麦粉まだ有るわよね?」
佳奈絵さんは流しの下をゴソゴソと探し始める。
私は、言われるがままに、ロールケーキを粉々に砕いていく・・・確かにストレス発散になるわぁ♪
「そうしたらココアパウダーを入れてから、茶色い部分の生クリームと、少しづつ牛乳を加えてみて・・・本当は、ホイップ前の生クリームだけを加えるんだけど、今回は牛乳で誤魔化しちゃうからね。あっそれ位かな? まとまる程度で良いからね、そうしたら掌で粘土細工をする様にお団子を作って。」
ケーキを捏ねながら、佳奈絵さんが玄関で無く、勝手口から入って来た事を思い出し、不思議になった。
「そう言えば佳奈絵さん、今日はどうして、玄関じゃなくて勝手口から来たんですか?」
「んッ? 玄関に車止めちゃうと、誰かが手伝いに来たのかなって、健吾君に思われちゃうでしょ。だから、空き地に車止めて、歩いて来たの。

「うわっ、わざわざそんな気を遣ってもらって、ごめんなさい佳奈絵さん」
「良いって良いって。勝手に私が押し掛けたんだから。あっ、ローストビーフがもう少しみたいだったから、あと3分温めてあるからね。」
「はい、ありがとうございます。でも佳奈絵さんが料理苦手だったって意外ですね。」
「そう? モリヒデには随分と言われたんだから。あいつって、料理下手なくせに妙に味に拘るわよね。

「あっ、そう言えばそうかも・・・って言うか、ごめんなさい。お兄ちゃんって、口が悪いから・・・」
「楓ちゃんが謝る事無いって。 まぁ、モリヒデに言われても仕方ない様な料理、確かに出しちゃった事が有るからね。」
「へぇ~、どんな料理出しちゃったんですか?」
「一番笑えたのは、ハバネロのサラダかなぁ」
「ハバネロって、あの辛い奴?」
「そうよ(笑) 青いハバネロってさ、見た目は萎んだピーマンみたいな形なのよね。健太が近くの畑から、黙って採ってきたハバネロをくたびれたピーマンと勘違いしてね、もったいないからって輪切りにして水にさらしてサラダに入れちゃったの」
「んで、どうでした?」
「うん、ハバネロを摘まむまでは、買ってきたフレンチドレッシングがスパイシーなんだと思って我慢して食べてたんだけど、ハバネロを口に含んだ途端、口一杯にしびれる様な辛さが広がって、舌なんか火傷したみたいにピリピリしちゃって最悪だったわよ。水飲んでも、全然効かないの。モリヒデなんかポロポロ涙流すし。」
「マジっすか?」
「うん。でも、こっちも笑うと、口の中の空気の流れで舌がまたピリピリしちゃうから、笑いを堪えるのが苦しかったわぁ。‥‥‥あっ、お団子出来たわね、お皿に盛り付けておいて。その間に余った白い生クリームを、ビニール袋に入れてもう一度絞れる様にするから。」
「あっ、でも絞り器のノズル捨てちゃいましたよ。」
「ビニール袋の先っぽ切るのを細くすれば多分大丈夫じゃないかな? うんOKOK、ちゃんと絞れるわよ」
料理には機転も大事なんですね。でも、それって経験を積んだから出来るのであって、やっぱり私はまだまだ修業しなくちゃいけませんよね。
お皿の真ん中にチョコケーキを3つづづ乗せて、その周りを囲う様に生クリームを盛り付ける・・・私的にはまあまあの出来栄えです♪
それを冷蔵庫にしまい、佳奈絵さんに声をかける。

「OK、じゃあ次はローストチキンね。胸肉は元々パサパサしているから、揚げ物や炒め物に向いてるの。ちゃんと火が通っているし、しょうゆ味が付いているんだからかたくり粉や小麦粉付けて揚げれば、短時間で竜田揚げが出来るわよ。竜田揚げなら胸肉の方が美味しいし。ほらチキンをもう半分に切って小麦粉振って楓ちゃん、その間に油を熱しておくから」
私は言われるがままに、ローストチキンに小麦粉を振る。
「OKかな? 油も熱くなったよ。衣さえ揚がってしまえば良いから、揚げ過ぎない様に気を付けてね。」
揚げ物かぁ・・・正直、揚げ物って油が跳ねちゃうから苦手なんですよね。
でもでも怖がってちゃあ、先に進みませんよね(^_^;)
静かに、むね肉をフライパンの中に入れていく。ジュ~って音と共に、勢いよく湯気が立ち上り、香ばしいいい香りが辺りに立ち込める。
「あっ楓ちゃん、本当に衣が上がっていればOKだから、もう上げちゃっても大丈夫だよ。ほら、後30分よラストスパートかけるわよ。」
そう言うと佳奈絵さんは、冷蔵庫の中を覗き込んだ。
「弱ったなぁ・・・パプリカの代わりになりそうな赤い食べ物って、梅干し位よね・・・梅干し入れる?」
「梅干しですか? それはやっぱり勘弁かも・・・ドレッシングならともかく・・・あっ、梅ドレッシングってどうですか佳奈絵さん、確かお豆腐も残っていたから、それで雪って事にして」
「あっそれ面白そうね、じゃあ梅干しとお酢とだし汁ね、そっちの準備お願い。ブロッコリーとお豆腐は私が下ごしらえするからね。」
なんか急にやる気が出て来ました。自分のアイディアで作る料理って楽しいですね。
梅干しの種を取り除いて、細かく刻む・・・そこにだしと酢を加えて、砂糖と塩で味を調える。
「出来た~佳奈絵さん味見して貰えます? ちょっとあっさりし過ぎてる気がして。」
「どれどれ」そう言いながら佳奈絵さんがスプーンでドレッシングを掬い口にする。
「う~ん確かに油が入ってない分コクが無いけど、これはこれで良いんじゃない? いざとなったら、健吾君に『ノンオイルでヘルシーでしょ』って、言い聞かせれば良いのよ。自信を持ちなさい楓ちゃん、モリヒデだって随分そうやって教育してきたんだから(笑) ブロッコリー電子レンジで温め終わってるし、豆腐も水抜き終わってるわよ、後は和えるだけだね。」
「はい佳奈絵さん」
ガラスのボールにブロッコリーとお豆腐を入れてざっくりと木べらで和える、そしてそこに赤い特製梅ドレッシングをかけていく・・・・・完成です♪
「出来た~出来ました佳奈絵さん。ちゃんと時間に間に合いましたね。」
「もちろんよ、私が先生なんだから♪ さてっと、健吾君に見付からないうちに帰らなくっちゃ。

「あっ、佳奈絵さんすいませんでしたお忙しいのに。」
「全然平気よ、今度は一緒におせち料理挑戦しようね♪ じゃあね楓ちゃんメリークリスマス♪ そうそう、日向さんからのシャンメリー冷蔵庫に入れておいたからね

そう言うと佳奈絵さんは、そそくさと勝手口から出て行った。




出来上がった料理を冷蔵庫から出していたら、「うぉ~い楓、居るかぁ~」って、玄関から健吾の少し弾んだ声が聞こえてきた。
「うん健吾、今、料理運ぶから先にリビングに行ってて。」
「了解。おじゃましま~す・・・よいしょっと」
・・・?よいしょって?

リビングに料理を運んでみると、健吾は必死に部屋中を飾り付けていた。
「うわっ、どうしたん?こんなにデコレーションしてぇ」
「おる、折角だからな。部活早めに切り上げて雲山で買って来たんだ」
「え~、わざわざ雲山まで行って来たの?

「おう、折角お前とクリスマスパーティーするんだから、少し位は盛り上げないとな。

健吾にしては、気が利いてますね。


小さなキャンドルに火を点す
グラスに映り込んだロウソクの明りがゆらゆらと揺れ、シャンメリーの泡を映し出す。
「きれい・・・」
「そうだな、静かで良い感じの夜だな。じゃあ乾杯するか」
「うん」そう言いながら私は健吾とグラスを重ねる。
「そうだツリー買って来たんだった

そう言いながら、ポケットからゴソゴソと小さな箱を取り出した。
「・・・ツリーちっちゃくない?」そう言いながら、箱を開けると小さなツリーにシルバーアクセサリーがぶら下がっていた。
「メリークリスマス♪」健吾が照れくさそうに、そう呟く。
私ばっかりが大変なんじゃなくて、健吾は健吾で色々気を使って大変だったんですよね。
そんな健吾の優しさに改めて気がつきました。
「・・・・・・健吾」そう呟きながら、私は健吾にキスをする。
リビングには、静かな時間が流れている・・・

♪♪♪
いきなり健吾の携帯にメールが届き、私達は思わず飛び離れた。
「この着メロは・・・ヒデ兄からだ

・・・お兄ちゃんからですか!、相変わらず間合いが悪いですよね
「え~っと何々・・・『健吾、今夜は楓と過ごしてるみたいだな? お前の家が暗かったから、うちの玄関先にクリスマスプレゼント置いておいたぞ。楓にもヨロシク~(^.^)/~~~』だってさ・・・・・ってヒデ兄、ひょっとしたら見ちゃったんじゃないかぁ~楓?」
「え~ウソ~、マジで?」急いで玄関に出てみると、お兄ちゃんの車が走って行くのが見えた。
「・・・・・・ヒデ兄に見られちゃったかもな。」
「でも、その事はメールで触れてないから、分かんないよね。ねぇ何だろう、お兄ちゃんのプレゼントって?」そう言いながら私は足元のプレゼントの袋を開ける
「あっこれ、モンハンⅢだ、ラッキー♪」
「・・・ったく、あんた達は相変わらずゲームなのね(笑)・・・・・私には佳奈絵さんからだ、あっこのCDず~っと探してたんだ♪ きゃ~、ありがとうございます、佳奈絵さん」
一瞬、冷たい空気が頬をなでた。
空を見上げると、雪がちらつき始めている。
「あっ、健吾見て。雪だよ雪、ホワイトクリスマスになりそうだね、今夜は。」
「おっ、本当だ・・・ 楓?
私は健吾の腕にしがみついた。
「今夜が、今迄でいちばん最高のクリスマスイブだよ、健吾♪」
「馬鹿、照れるだろ・・・俺もだよ、楓」
私達はもう一度キスをした。

・・・玄関先にも関わらず(^^ゞ



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本田・沢田編【完結】
2009年収穫祭編【完結】


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「何でお前ら、昨日の夜、携帯の電源切ってたんだよ~」
「やだぁモリヒデ、そんな野暮な事聞かなくても、決まってるじゃないのよ、ねぇ楓ちゃん♪、」
予想通り、ヒデ兄は朝から御機嫌斜めです(^_^;)
「いやヒデ兄、俺達なんにもしてませんから。」
「そうだよ。お兄ちゃん安心してよ、健吾は優しかったんだから」
・・・いや、楓。今のセリフは余計に誤解を招くだろう(>_<)
おはようございます、健吾です。
―――――――――11月07日(日)―――――――――
今、ホテルの1階で、朝食バイキングを食べてます。
「本当にお前ら、何にもしてないんだろうなぁ?」
「もう、疑り深いんだからお兄ちゃん」
「そうよモリヒデ。あんたこそ人の事言える?」
「あの佳奈絵さん・・・それってぇ~」
楓がほっぺたを赤くして俯いてます。
「やだ私ったら、何言ってんでしょう。もう、これもモリヒデのせいだかんね。」
「馬鹿、ヒグラシが勝手に喋ったんだろ」
「って事はヒデ兄・・・ひょっとするとひょっとするって事ッすか?」
「馬鹿、健吾。昨日は、俺達何もしなかったんだぞ・・・」
「昨日はですか・・・ヒデ兄(^_^;)」
「うっ・・・ ちょっとおかわり取って来るわ、俺」


ふぅ~、取りあえずヒデ兄の追及は、かわせた様ですね(*^^)v
でも、携帯の電源を意図的に切ったのは・・・やっぱりヒデ兄に邪魔されたくなかったですからね。
もう一つ言うと、「何にもしていない」って言うのも、ちょっぴり嘘なんですけどね(^_^;)

‥‥‥ホテルの部屋に入った瞬間、部屋の電灯のスイッチが見当たらず、僕は焦ってた。
でも楓の機転で、目が慣れるまで僕らは、じっとしていました。
目が慣れて部屋の中を見渡すと、入口の所に注意書きが。
「へぇ~、ここにカードを差し込むと部屋の電灯が灯るんだ・・・ハイテクだな楓」
僕はそう言いながら、カードをスロットルに差し込んだ。
それと同時に電灯が灯り、落ち着いた雰囲気の明かりが僕らを優しく包み込む。
「わぁ~意外と素敵なお部屋~♪」楓が部屋を見渡しはしゃいでいます。
僕は、さっきまで差し込んでいた青白い街灯りが、なんとなく気になり窓を少しだけ開けてみた。
「うぉ、楓見てみろよ、対岸の明りがキレイだぞ」
楓が僕の横に座り窓の外を見る。
「本当だ、松舞じゃあ絶対に見れない風景だね」
そう言いながら、僕の頬にキスをしてきた。
「楓・・・」そう言いながら、僕は楓に唇を寄せる。
「・・・・・・・」「・・・・・・」
ブラウスの上から楓の胸にそっと触れてみる。
「ダメ健吾、私、今汗臭いから。取りあえずお風呂にしよ♪」
そう言いながら、楓は僕の腕を振り解いた。
「そうだな・・・」僕は、トボトボとバスルームに向かった。

「少し残念な気もするけど、焦る事は無いんだよな・・・夜は長いんだから」
そんな事を呟きながら、溜まっていくお湯を眺めていた。
「健吾~どうしたの?大丈夫?」
バスルームのドアから、楓が顔を覗かせた。
「おぅ悪い悪い、ボ~っとしてた。もう直ぐお湯が溜まるぞ楓」
「うん。ねぇ、一緒に入る健吾?」
その言葉に、思わずドキッとしてしまった。
って事は、楓の裸を見る事が出来る‥‥‥幼馴染みだから小さい頃から何も意識する事なく、何度も楓の体を見ていた気がする。
でも成長した楓の身体を見るのは、もちろん初めてです。ヒデ兄ですら知らない楓を僕は知ってしまう。
そう考えて、ほっぺたが赤くなっていくのは、湯気のせいだけじゃない気がする。
「馬鹿・・・ガキじゃあるまいし、風呂ぐらい一人で入れよな。それにこのバスルームじゃ狭くて二人は無理だろ。」
うっ・・つい気持ちと裏腹な事を言ってしまった。
「そうよね、やっぱり狭いよね・・・健吾が先に入りなよ、私、お湯を汚しちゃうかもしれないからね」
少し寂しそうに呟く、楓の表情が切なかったです。

お互いお風呂から上がった後は、どう場を繋いだらいいのか分からず、ダラダラと二人でテレビを見ていた。
11時前になり映画もエンドロールが流れ始める。
「明日、7時半集合だっけ健吾?」
「あぁそう言ってたなぁ佳奈絵さん」
「じゃあそろそろ寝なきゃだね。明日寝坊しちゃうよ。」
正直タイミングが掴めずにいたのは、僕だけじゃなかったのかもしれない。
楓はゆっくりとベッドに潜り込んだ。
僕もベッドに潜り込み、枕元のスタンドのスイッチを、ゆっくりと引っ張った。
「あっ健吾、真っ暗にしないでね。真っ暗だと怖くて眠れないんだ私。」
「OK オレンジの光でいいか?」
「うん、ありがとう‥‥‥おやすみ健吾」
「‥‥‥あぁ、おやすみ」

どれ位時間が経ったのだろう、僕は眠れずに居た。
「悶々とする」って言葉の意味を初めて知った気がする。
楓が寝返りを打つ音が聞こえてきた‥‥‥ひょっとして、楓も眠れないのだろうか?
僕は頭を横に向け、楓の方を見つめる。
不意に楓と目が合った。
「‥‥‥どうした楓? 眠れないのか?」
「うん‥‥‥そう言う健吾はどうなのよ?」
「俺も眠れないんだよな」
「ねぇ、なんだかこの部屋、寒くない?」
「そう言えばそうだな」そう言いながら僕は立ち上がり、エアコンのリモコンを探した。
リモコンはすぐに見つかったが、僕はそれを手にするのを少しためらった。
意を決し、僕は楓の方に振り返る。
「俺が温めてやろうか、楓」
耳まで熱くほてっていくのが分かる。
「うん」楓が、ためらいもなく返事をしてくれた。
ひょっとしたら、僕と同じ様に悶々としていたのかもしれない。
楓がベッドの端っこに身体をずらす。
「ねぇ、やっぱり電灯消してもらっていい?」
「あぁ」僕は、スタンドの消してから、未だ楓の体温が残るベッドに潜り込む。
楓は、何かを待つかの様にベッドの端っこに寄ったまま、身動き一つしないでいた。
「こっちに来いよ。それじゃあ、お前を温められないだろ」
「ごめん健吾」そう言いながら楓が僕に身体をすり寄せてくる。

僕らは向かい合わせになり、お互いを見つめる。
「‥‥‥なぁ楓。 考えてみたら、小さい頃から俺が思い浮かべる情景の中に必ずお前が居たんだよな。明日は遠足って夜、布団の中で想像した風景では、俺は必ずお前と手をつないでいたし、仮面ライダーに変身する時、俺が守ろうとしていたのは必ずお前だった。ずいぶん、回り道しちゃったけど、俺はお前がずっと好きだった。もちろん、その気持ちは今だって変わってないぞ」
「‥‥‥ありがとう健吾、私も大好きだよ。確かに考えてみたら、私もおままごとの相手役は、必ず健吾だったわよ。いつかこんな日が来るのを、期待していたのかもしれないわね私」
お前、それって欲求不満なんじゃぁ‥‥突っ込みを入れそうになったが、今はそんな空気じゃないと思い、言葉を飲み込む。

そっと唇を寄せてみた。
待っていたかの様に、唇を突き出す楓
‥‥‥今までで一番長いキスだったと思う。
離れた唇を、さまよい探しもう一度唇を求める、そんな事をただ繰り返す。
そこには誰にも邪魔されない、二人だけの時間が流れていた。

パジャマ代わりのTシャツの上から、楓の乳房にそっと触れてみる。
いつも、ふざけて触る楓の乳房とは、違う感触が伝わってきた。
温かくて凄く柔らかい‥‥‥それが素直な感想だ。
「あれ? ブラ外したんだ」
「うん、寝る時まで胸を締め付けていたら、悪い夢見ちゃいそうでしょ」
「なるほどね、確かにそうかもしれない。俺的には、女の子のブラを外す儀式を楽しめなくて、少し残念なんだけどな。」
「儀式ねぇ‥‥‥あんたの事だから、外し方が分からなくて苦労するんじゃないの?」
「確かにな。でも、外し慣れているのもやばいんじゃないか?」
「それも、そうだね」クスッと楓が笑いながらキスをしてきた。
キスをしながら、僕はもう一度楓の乳房に手を持っていく。
母親の胸の感触なんて、昔の事過ぎてもう覚えてはいない‥‥‥って言うか想像したくもない。
ゆっくりと楓の少し小さい乳房を揉んでみる‥‥‥本当、柔らかい。
その優しい感触に、脳がしびれて意識が飛んでいった。
「痛いよ健吾、そんなに強く握ったら」
柔らかい感触を楽しむのに、夢中になり過ぎたみたいだ、「ごめん楓」そう言いながら今度は優しく楓の乳房を揉んでみる。
ツンっと尖った乳首に指が触れる度、楓が小さく声を漏らした。

Tシャツをたくし上げると「やだ、恥ずかしい。」って呟き両腕で胸を隠してしまう。
その言葉に、その仕草に、僕の脳内回線は完全にショートしてしまい、半ば強引に楓の腕を開き、ゆっくりと乳房を揉み、乳首を吸っていた。
「恥ずかしいよ健吾、そんなにやらしくしないで」そう言いながら楓は身体をくねらす。
そんな楓の吐息が少しづつ荒くなっていくのが分かる。
今、楓は僕の腕の中で、少女から大人へと妖しく変わりつつあった。

僕がそうさせていると考えると、気持ちが大きくなった。
その気持ちが、楓のスエットパンツの中へ手を忍ばせようとさせている。
僕の右手が、ゆっくりとショーツの上を走る。
中指が何かを探すかの様に、固く閉ざされた亀裂をなぞる。
一段と大きな声をあげる楓
その声が、僕をもう一つ先の行動に囃子立てた。
ショーツを少しずらして、今度は直接亀裂をなぞる。
少し指に力を入れると、ゆっくりと亀裂が開き、僕の指を迎え入れた。
温かく湿った、楓の秘めやかな部分をゆっくりと僕の指が伝う。
小さな蕾に指先が触れた途端、楓の体が大きく波打った。

「嫌っ‥‥‥健吾、やっぱり怖い」
楓の怯えた様な小さな囁きに、僕は我に返った。
「ゴメン、楓。調子に乗り過ぎた」
「ううん。私こそ、こっちから誘ったのにゴメン。やっぱり私達には早すぎるよ、こんな事」
ここまで来て、それはないだろう~‥‥それが、正直な気持ちだった。
でも男以上に女の子には大切な事で有るのは、分かっているつもりだ。
「少し残念な気もするけど、焦る事は無いんだよな・・・夜は長いんだから」
バスルームでの呟きが、頭の中を過った。
そうだよな焦る事はないんだよな、これは競争では無いんだし(例え競争だったとしても、おっぴろげに公表出来る事じゃ無いですし)、今じゃなくても楓は、僕の前にずっと居てくれる‥‥と思う‥‥って言うか居て欲しい。
ひょっとしたら、今はダメでも雰囲気に流されて1時間後はOKなのかもしれない(往生際が悪いですか、僕?)。
色々な思いが頭の中を駆けめぐる
「ごめん健吾、怒った?」
「んっ? 怒る訳ないだろ。色々、考え事してた。」
「本当にごめんね。健吾の事、信用していない訳じゃないんだけど、急に不安になっちゃって‥‥」
「仕方ないさ、きっと。」
僕の腕から離れようとする楓
「なぁ楓。寒いから楓の事、ずっと抱きしめててもいいか?」
「‥‥うん健吾」
もう一度楓が、僕に身体を押し付けてきた。
ぎゅっと抱きしめた楓の、胸から痛い位の鼓動が伝わってきたから、きっと抱きしめ合って寝る事自体、楓にとっては一大決心なのかもしれない。
そう思うと余計に楓の事が愛しく思えた。
窓からは、相変わらず青白い光が差し込み、楓を照らしている。
このままずっと、出来るのなら一生、楓の事を見つめていたい、長めのまつげ、少し高いその鼻、プルンとした唇、すべて独り締めしてしまいたい。

いつの間にか、小さな寝息を立てていた楓。
そっとキスをして「おやすみ」って呟いてみる。
小さく微笑む楓の顔をまぶたに焼き付けてから、僕もゆっくり目を閉じた。


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